新生児期から乳児になると、言葉の発達が遅い子供の保護者は、周囲の子供との違いに不安を抱きがちです。
ネット検索すると、言葉の発達遅延=小児感音難聴と言う検索結果が多く現れるのも、余計な不安を煽っているようです。
その不安のピークは、おおむね1歳2カ月頃で、その頃になっても言葉が始まらないと、保護者は心配になります。
今回は、横井こどもクリニック院長(東京都世田谷区砧)の横井茂夫氏の「小児診療ABC」から、言葉の遅れについて知っておきたい子供のサインを取り上げましょう。
1歳頃になると、「マンマ」「ブーブー」など片言の言葉を話す子供が目立って来ます。
2歳頃には「ワンワン、きた」「パパ、かいしゃ」「ニューニューちょうだい」のような二語文も話すようになります。
しかし、1歳2カ月頃になっても言葉が始まらないと、保護者は急に心配になるものです。
掛かりつけの小児科外来を受診し、「言葉が遅いのですが・・・・・・」と相談。
医師はまず、音に対する反応があるかどうかの基本をチェックします。
通常、日本では出産後の新生児期に、聴性脳幹反応(ABR)による聴力検査をしている為、先天的、或いは出産中の物理的処置によって、耳が全く聞こえないと言った重度の聴力障害は早期に拾い上げがされています。
では他の子供と比べて言葉の発達が遅い原因は何んでしょう?
【名前や音に反応するなら聴力に問題無い】
後天的な理由として、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ:ムンプス)に自然感染した場合などに、後遺症として難聴になる事があるので、お子さんの既往歴を含めて確認する事が必要です。
新生児聴覚スクリーニングで異常の無い場合、言葉が始まらない原因として、後天的疾患による聴力の問題が考えられますが、『名前を呼ぶと振り向く』、『音楽に合わせて体を動かす』ようなら聴力に問題はほぼ無いと捉えて良いでしょう。
聴力に問題が無いようなら、次のチェックポイントは「指さし」が始まっているかどうかです。
乳幼児の「指さし」は、発達心理学的に「言葉の始まり」と、されているからです。
言葉は、意思や感情を人に伝える為のコミュニケーション・ツールです。
まだ言葉を発せない子供では、『指で何かを指し示す』と言う動作は、人に何かを伝えようとする仕草であり、「人に何かを伝えたい」と言う思いの発現だと考えられます。
こうした思いが動作に現れ、その訴求によって発語につながります。
ですから、「指さし」が始まっていれば、いずれは言葉が出て来る事が、期待出来ます。
また、子供自身が「指さし」をするだけでなく、保護者が指で指し示した時に、子供がお母さんの指ではなく、お母さんが指し示した方向を見るかどうかも、確認しておくべき点になります。
乳幼児期では、子供は自分の手や足を動かし、自分の手の位置を見ていて、中々他の物に注視しません。それが自分から離れ、目の前の事物を指さす行為は、『指さし行動(指示行動)』と呼ばれ、言葉の出現する前の「前言語行動」と捉えられています。
「指さし」は、早い子供では生後10カ月頃から始まりますが、多くは1歳前後に始めます。
その後、言葉を話し始めるといった順に発達は進みます。
その為、1歳2カ月頃で片言の言葉がまだ見られなくても、「指さし」が始まっていれば、いずれ言葉が出てくると考えられます。
もし小児科医に相談する場合、「1歳を過ぎても指さしが始まらない」とか、「バンザイ」や「おててシャンシャン」や「アワワワワ」などしても「大人のマネをしない」などを注意深く観察し、何が出来て、何が出来ていないのかをしっかり説明する事が大切です。
その上で、医師の説明を聞き、アドバイスを受けると良いでしょう。
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乳幼児の言葉の遅れ 指さし行動を見極める
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