武田薬品工業株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)は5月24日、経口プロテアソーム阻害薬の多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ®カプセル2.3mg、同3mg、同4mg」(一般名:イキサゾミブクエン酸エステル)について、レナリドミド及びデキサメタゾンとの併用において、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の効能・効果で販売を開始したと発表した。
「ニンラーロ®カプセル」は、今年3月30日に製造販売承認を取得していた。
多発性骨髄腫は、治癒が困難な難治性の造血器腫瘍で、骨髄の中にある、ウイルスなどが体内に侵入して来た時に攻撃する、免疫グロブリンと呼ばれる蛋白を造る「形質細胞」というリンパ球が、癌化(腫瘍化)した病気です。
異常な抗体(M蛋白)が、異物が無いのにどんどん増殖し、骨の痛み、病的骨折・圧迫骨折、倦怠感、貧血、出血傾向、感染症に対する抵抗力の低下が起こり、腎臓の機能低下、過粘稠症候群、アミロイドーシス、ウイルスなどの感染による体力の低下などが起こります。
多発性骨髄腫は、日本における推定総患者数は約14,000人、人口10万人当たりの推計年齢調整罹患率は約3人(国立がん研究センターがん情報サービス・地域がん登録全国推計値2012年)、年間死亡数は4,185人と報告されています(厚生労働省大臣官房統計情報部・人口動態統計によるがん死亡データ2014年)。
近年、本疾患の総患者数、推計罹患数および死亡者数は、徐々に増加する傾向が見られています。
治療には、造血幹細胞移植や薬物療法(抗がん剤療法)による治療が行われますが、ほとんどの患者で再発又は病勢の進行が見られ、治療を繰り返すごとに薬剤への反応性が低下し、難治性の病態に移行して行きます。
今回新たに販売を開始した「ニンラーロ®カプセル」は、多発性骨髄腫治療薬としては日本で初めての、経口プロテアソーム阻害剤で、細胞内で不要となったタンパク質を、分解する酵素の複合体プロテアソームに結合し、そのキモトリプシン様活性を阻害する事で、がん細胞の増殖を抑制します。
本剤は、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の患者を対象に実施した、国際共同臨床第3相試験で得られた安全性、有効性のデータに基づき、製造販売承認を取得。
この試験では、免疫調節薬「レナリドミド」、副腎皮質ホルモン製剤「デキサメタゾン」と併用投与する事で、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)が、イキサゾミブクエン酸エステル群20.6か月に対し、プラセボ(偽薬)の対照群14.7か月と、統計学的に有意な差を示した。
【ニンラーロ®の製品概要】
【製品名】:
ニンラーロ®カプセル2.3mg
ニンラーロ®カプセル3mg
ニンラーロ®カプセル4mg
【一般名】:イキサゾミブクエン酸エステル
【効能・効果】:再発又は難治性の多発性骨髄腫
【用法・用量】:免疫調節薬レナリドミド、及び副腎皮質ホルモン製剤デキサメタゾンとの併用に於いて、通常、成人にはイキサゾミブクエン酸エステルとして、1日1回4mgを空腹時に週1回、3週間(1、8及び15日目)経口投与した後、13日間休薬(16~28日目)する。この4週間を1サイクルとし、投与を繰り返す。尚、患者の状態により適宜減量する。
【効能・効果に関連する使用上の注意】
(1)本剤による治療は、少なくとも1つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者を対象とすること。
(2)臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、(添付文書内に記載の)【臨床成績】の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
【薬価】:
ニンラーロ®カプセル 2.3mg:96,519.00円
ニンラーロ®カプセル 3mg:123,355.60円
ニンラーロ®カプセル 4mg:160,886.00円
本剤は、新規の経口プロテアソーム阻害剤であり、多発性骨髄腫の他に、全身性ALアミロイドーシスを対象に開発を進めています。
本剤は、2017年4月現在、米国、欧州を含む世界40カ国で販売許可を取得しています。