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遺伝性卵巣がん治療薬「Olaparib」の国内での製造販売承認を申請

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アストラゼネカ株式会社(日本法人本社:大阪府大阪市北区 / 本社:英国・ロンドン)は8月8日、遺伝性卵巣がん治療薬「Olaparib(日本での一般名:オラパリブ)」について、国の医薬品審査機関である、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に承認申請した事を明らかにした。

親から子に受け継いだ遺伝子が原因で発症する「遺伝性がん」に対する薬剤の申請は、国内では初めてとなる。


オラパリブ_Olaparib
遺伝性再発卵巣がん治療薬「Olaparib(オラパリブ)」
本剤は2014年12月に米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)から
「Lynparza(リンパルザカプセル)」として承認を取得。


国内での卵巣癌の1年間の罹患者数は、9,000人で、死亡者数は4,700人となっています(平成24年=2012年)。
卵巣癌の2014年の患者数はおよそ26,000人と報告されています。

最新の年齢別罹患者数と死亡者数は下図の通り(国立がん研究センターがん対策情報センター)。


卵巣癌年齢別罹患者数

卵巣癌年齢別死亡者数


この内、代表的な癌抑制遺伝子として知られる「BRCA1」遺伝子及び/又は「BRCA2」遺伝子の病的変異を伴う、『遺伝性のBRCA遺伝子変異陽性卵巣癌』は、推定患者数が3,500人未満と極めて稀であるものの、散発性の卵巣癌とは異なる病態的特性を持ち、遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome)という確立された疾患概念の一部として認識されています(卵巣がん全体の約1割)。


日本人を対象とする多施設共同研究に於いて、本人が乳がんを発症し、本人を含む第2度近親以内の親族(貴女から見た場合に、きょうだい、父母から祖父母、叔父、叔母、孫までの範囲の血縁者を指す)に、40歳未満で乳がんになった人がいる場合、両方の乳房にガンができた人や、卵巣癌になった人がいる場合には、「BRCA1/BRCA2遺伝子変異」の陽性率は38~46%でした(国立がん研究センターがん対策情報センター)。


17番BRCA1遺伝子
遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC)に関与しているBRCA1とBRCA2遺伝子は、
第17染色体と第13染色体上に存在する。


細胞が何らかの原因で損傷した場合、DNAにはその細胞を修復し、腫瘍化(異常化)を防ぐ癌抑制遺伝子が存在し、修復の為のタンパク質を放出しますが、この遺伝子に異常があると、DNAは修復されないまま分裂を繰り返し、やがて腫瘍細胞へと変化します。

乳がんや卵巣がんに於いては、BRCA1とBRCA2遺伝子がそのDNA損傷修復の指令を出し、腫瘍化を阻止しますが、遺伝的にこの遺伝子に異常があると、抑制作用が発現せず、発症リスクが高まる事になります。




「Olaparib(オラパリブ)」は、革新的なファースト・イン・クラス(画期的な作用機序をもつ医薬品)のポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であり、DNA損傷応答(DDR)経路に異常を来たしたガン細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導します。

審査期間は9か月間程度と見られ、早ければ来年前半にも承認される可能性が高いという事です。


オラパリブ_Olaparib_カプセル


本剤が承認される事で、患者にとって治療の選択肢が広がる一方、家族の発症リスクも解かる可能性があるため、関係学会は家族のケアを含めた適切な診療体制の検討を始めました。


尚、現在「Olaparib(オラパリブ)」は、原発乳がんに対する術後補助療法を検討する第III相試験(OlympiA)が行われています。

BRCA1およびBRCA2遺伝子変異に関連する乳がん患者、並びに卵巣がん患者は、非遺伝性の患者に比べ若年期に発症する傾向があります。

その為、再発する場合も多く、DNA損傷修復機能とがん細胞のDNA損傷応答による細胞死機能を持った薬剤の登場によって、治療の選択肢が広がる事が期待されています。






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