厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は2月21日、帝人ファーマ株式会社(本社:東京都千代田区霞が関)が承認申請していた、指定難病のアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症治療薬「レブコビ(revcovi)筋注2.4mg(開発コード:EZN-2279/一般名:エラペグアデマーゼ=遺伝子組換え)」の国内製造販売の承認を了承した。
本剤はADAの活性を補い、代謝異常を改善するとされる日本で初めての治療薬となります。本剤は、2018年10月に米国FDA承認済。
アデノシンデアミナーゼ欠損症(adenosine deaminase deficiency)は、常染色体劣性遺伝によるADA遺伝子(第20染色体q13.11)の変異が原因で、細胞分裂で生じるデオキシアデノシン(Deoxy adenosine)酵素をデオキシイノシン(Deoxy inosine)へ変換するADA酵素が産生できなくなる原発性免疫不全症(PID)を呈する疾患です。
その結果、血液中のリンパ球が減少し、デオキシアデノシンが細胞内に蓄積して、リンパ球が障害されるため、感染症を発症しやすくなり、ADA欠損症のある人は、バクテリア、ウイルスと真菌から実質的に全く免疫保護されなくなります。
そのため、生後より重症免疫不全(重症複合免疫不全症=Severe combined immunodeficiency: SCID)や成長障害などを引き起こします。
ADA欠損症の特徴的な症状は、肺炎、慢性下痢、広範囲な皮膚発疹です。
ADA欠損症は、早期に診断され効果的な治療が開始されない限り、通常2歳になる前に死亡します。
しかし発症年齢は様々で、大部分は生後6ヵ月で診断されますが、10~15%は生後24ヵ月までに発症し、数%が成人期に発症するケースもあります。
発症頻度は20~100万人に1人とされており、公費負担対象となる指定難病です。
〔アメリカ国立衛生研究所(NIH)Adenosine deaminase deficiency: Description〕
〔国立研究開発法人 国立成育医療研究センター〕
疾患が確認された場合、直ぐに既存する感染症(ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス、真菌、抗酸菌など)の治療と、あらゆる病原体に対する感染予防が重要となる。
その上で、ADA欠損症の治療は、第一選択が造血幹細胞移植で、HLA一致血縁ドナーからの移植では良好な成績が確認されていますが、骨髄バンクやハプロ一致ドナー(HLAの一部しか一致しない)の場合、移植成績は良くなく、免疫不全症が重症化(SCID)する傾向があります。
第二選択として、幹細胞移植が困難な場合は、欠損しているアデノシンデアミナーゼ(ADA)を注射で補充する事により免疫機能を回復させる「酵素補充療法」が行われます。
海外では、ウシ由来のADA製剤による酵素補充療法が、150名ほどに実施されていますが、日本国内では承認されていません。
またこれまで、国内に於いて20例程度の遺伝子治療が行われていますが、実施医療施設での試験に留まり、遺伝子治療も承認されていません。
〔国立研究開発法人 国立成育医療研究センター〕
〔帝人ファーマ株式会社 学術情報部〕
〔公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター/原発性免疫不全症候群〕
〔Teijin Pharma Limited, in Japan 〕
〔 https://revcovi.com/wp-content/uploads/2018/10/revcovi-final-labeling-text-10-05-2018.pdfより翻訳 〕
「レブコビ(revcovi)筋注2.4mg◇一般名:エラペグアデマーゼ筋注(Elapegademase-lvlr)」は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症患者に、ADAを補充する事で、リンパ球の減少を抑える注射剤です。
本剤は日本初のADA酵素補充療法用の承認薬となります。
「レブコビ(revcovi)」は、厚生労働省が日本における未承認薬・適応外薬の開発促進に向けて設置した「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に於いて、医療上の必要性が高い薬剤として開発企業の募集があり、帝人ファーマ株式会社がそれに応えたもの。
「レブコビ(revcovi)筋注2.4mg」は、英シグマタウ社(Sigma-Tau Pharma U.K.)が創製し、帝人株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)が国内独占的開発・販売契約を締結。帝人ファーマ株式会社が「EZN-2279」として開発を進めて来ました。