中外製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)は3月15日、「ROS1融合遺伝子陽性の局所進行又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)」を予定適応対象として開発中の、“経口チロシンキナーゼ阻害薬ROS1/TRK阻害剤『エヌトレクチニブ(Entrectinib)』”の製造販売承認申請を、厚生労働省に行ったと発表した。
本剤は、2018年12月に先駆け審査指定制度のもと、承認申請した希有な「NTRK融合遺伝子陽性の局所進行又は転移性固形がん」に続く申請となる。
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経口チロシンキナーゼ阻害薬
「ROS1融合遺伝子陽性の局所進行または転移性非小細胞肺がん」を予定適応
ROS1/TRK阻害薬「エヌトレクチニブ(Entrectinib)」は、
現在、承認申請中のため写真はありません。
「エヌトレクチニブ(Entrectinib)」が標的とするROS1融合遺伝子は、何らかの原因によりROS1(Reactive oxygen product-1)遺伝子と、CD74やEZRなどの他の遺伝子とが染色体転座や欠失の結果、融合してできる異常な遺伝子です。
ROS1(反応性酸素種-1)遺伝子は、遺伝子数1394個から成る第6染色体の6q22.1座に存在する「ROSがん遺伝子」の中の、四つのエクソン(Exon 32,34,35,36)のいずれかで破断し、他の染色体遺伝子と融合、再構築される事で、ROS1融合遺伝子から作られる『ROS1融合キナーゼ(発がん遺伝子の産物とされるリン酸化する酵素の総称)』により、がん細胞の増殖が促進されると考えられています。
ROS1融合遺伝子は、非小細胞肺がん患者の約1~2%に認められ、特に肺腺がんでより多く発現する。
「エヌトレクチニブ」は、ROS1(反応性酸素種-1/c-rosがん遺伝子1)とTRK(神経栄養因子受容体)ファミリーを強力かつ選択的に阻害し、脳転移病巣への作用も期待されています。
その結果として、ROS1及びTRKキナーゼ活性を阻害する事で、ROS1又はNTRK融合遺伝子を有するがん細胞の増殖も抑制すると考えられる。
中外製薬株式会社は、この他にも2018年12月21日に、『転移性または切除不能な局所進行乳がん』の効能効果で、追加の承認申請をした、改変型抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク®点滴静注(一般名:アテゾリズマブ/遺伝子組換え)」に次ぐものとなる。
既に、「テセントリク®点滴静注(TECENTRIQ®)」は、2018年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」を効能・効果として承認を取得した、免疫チェックポイント阻害剤で、この追加承認が了承されれば、進行乳がんに対する初の抗PD-L1抗体薬となる見通しだ。