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IL-6抗体「アクテムラ®」がサイトカイン放出症候群と成人スチル病の追加承認を取得

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、中外製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)が効能・効果、及び用法・用量の追加承認申請をしていた、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体「アクテムラ®点滴静注用80mg、同200mg、同400mg(トシリズマブ=遺伝子組換え)」について、3月26日に、「腫瘍特異的T細胞輸注療法(CAR-T療法*)に伴うサイトカイン放出症候群」の効能効果の追加承認を了承したのに続き、4月19日には、指定難病「成人スチル病」について追加承認する新効能・新用量医薬品の承認を了承した。

*CAR-T療法は…キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞輸注療法のことで、重度の難治性血液がん患者に対する治療法として開発された。



アクテムラ点滴静注用80mg、同200mg、同400mg
ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体
IL-6阻害薬「アクテムラ®点滴静注用80mg、同200mg、同400mg」
(トシリズマブ=遺伝子組換え)


ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体(bDMARD=生物学的製剤)『アクテムラ®点滴静注用200mg(トシリズマブ=Tocilizumab)』は、2005年6月に「キャッスルマン病」の適応で販売を開始。

その後、2008年6月には「アクテムラ点滴静注用80mg」及び「アクテムラ点滴静注用400mg」が追加され、適応の効能・効果も追加されて来ました。



成人スチル病(Adult Onset Still's Disease)は国の指定難病で、発熱、皮疹、関節炎を主な症状とする全身性の炎症疾患です。
発熱に伴って皮疹や関節痛が見られ、解熱と共に皮疹、関節痛が消失するという症状が特徴的です。診断の決め手となる症状や、検査所見に乏しいため、症状や所見から総合的に診断します。


成人スチル病の皮膚皮疹症状

小児に起こる熱性疾患のスチル病(全身型若年性特発性関節炎=sJIA)という疾患と同様の病像が、成人(16歳以上)に起こったものと考えられていて、治療方針も同じである。

成人スチル病の発症年齢は、国内集計で20歳前後をピークに、年令と共に減少し、6割は16~35歳に分布する傾向にあり、女性が男性の2倍で、国内の患者は約4800人。


本剤は、成人スチル病に対する初の生物学的製剤(=bDMARD)で、これまで類似疾患である全身型若年性特発性関節炎(sJIA=systemic Juvenile Idiopathic Arthritis)に対する医薬品には、2018年5月に薬価収載された、クリオピリン関連周期性症候群治療薬「イラリス皮下注(カナキフマブ=遺伝子組換え)」がある。


イラリス皮下注射150mg

中外製薬株式会社によると、これまで副腎皮質ステロイドを用いた炎症の抑制が標準治療となっているが、ステロイド抵抗性の難治症例に対して保険適用のある薬剤が無かった。また、「アクテムラ®点滴静注用」について、成人スチル病に関する効能・効果を取得している国・地域はない。





キメラ抗原受容体T細胞治療の仕組みと作用機序
キメラ抗原受容体T細胞治療の仕組みと作用機序

サイトカイン放出症候群(CRS)は、CAR-T療法(キメラ抗原受容体T細胞療法)で発現率が50%以上という高頻度に見られる副作用で、過剰な免疫反応に伴い、細胞から多量のサイトカイン*が放出され、血中のサイトカイン濃度が高度に上昇することが原因で起こる。
症状の多くは、発熱や筋肉痛などの軽度から中等度のインフルエンザ様のものだが、一部の患者では、重度の低血圧、頻脈、呼吸困難などが誘発され、死亡することもある。



この副作用に対し「アクテムラ®点滴静注用」は、サイトカインの1つ、インターロイキン6(IL-6)の働きを抑える作用を持つ。国内で同適応症を効能・効果とする薬剤は他にない。遺伝子治療用製品「キムリア(CAR-T療法)」以外の腫瘍特異的T細胞輸注療法にも用いることができる。

*サイトカインとは…免疫系細胞で生産され免疫反応に影響を及ぼすタンパク質の総称。





【効能・効果(点滴静注用)】
[1]既存治療で効果不十分な下記疾患
  関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎
[2]キャッスルマン病に伴う諸症状及び検査所見(C反応性タンパク高値、フィブリノーゲン高値、赤血球沈降速度亢進、ヘモグロビン低値、アルブミン低値、全身倦怠感)の改善。ただし、リンパ節の摘除が適応とならない患者に限る。
★[3]腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群
★[4]成人スチル病

【効能・効果(皮下注キット)】
[1]既存治療で効果不十分な下記疾患
  関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
[2]既存治療で効果不十分な下記疾患
  高安動脈炎、巨細胞性動脈炎

【用法・用量(点滴静注用)】
◆腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群
⇒⇒通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として体重30kg以上は1回8mg/1kgあたり、体重30kg未満は1回12mg/kgを点滴静注する。
◆成人スチル病
⇒⇒本剤の投与にあたっては、学会のガイドライン等の最新の情報を参考に適応患者を選択し、その他の対症療法の実施と共に使用すること。







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