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HER2低発現の乳がん治療薬「トラスツズマブ デルクステカン」の第3相臨床試験を開始

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2019年3月29日、抗体薬物複合体「DS-8201」を開発中の第一三共株式会社(本社:東京都中央区日本橋)は、がん領域の国際的な事業展開に豊富な経験と経営資源を持つ『アストラゼネカplc(本部:英国ケンブリッジ)』との間で、開発及び販売提携を結んだ。
そして、アストラゼネカPLCは5月8日、共同開発しているHER2に対する抗体薬物複合体(ADC)「DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン=trastuzumab deruxtecan)」について、日本を含む国際グローバル第2相臨床試験の結果、臨床的意義のある効果が示されたとして、これまで2020年を予定していた、HER2陽性の再発・転移性乳癌を対象として米国食品医薬品局(FDA)への承認申請目標時期を、2019年6~7月に前倒しすることを発表した。


抗体薬物複合体
*写真はイメージです。
HER2低発現の乳がん治療薬/抗体薬物複合体「DS-8201」は
第3相臨床試験を開始したばかりで製品写真はありません。

「DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)」は、第一三共株式会社が開発・創製した、HER2に対する抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate=ADC)で、日本国内で2017年12月4日に、世界初の子宮癌肉腫を対象に医師主導の治験が開始されました。


その後、HER2陽性の再発・転移性乳癌患者を対象とした、日米共同第1相臨床試験を行い、今回の国際共同グローバル第2相臨床試験に於いても、主要評価項目である、客観的奏効率(腫瘍が完全に消失または30%以上減少)を達成し、安全性上の新たな懸念は認められなかったと公表した。

これらの結果を受けて、アストラゼネカPLCは米国食品医薬品局(FDA)への承認申請を前倒しする事となった。
同時に第3相臨床試験に着手する。



また、第一三共株式会社は2018年9月27日、前治療を有するHER2陽性の進行乳癌患者を対象とした第3相臨床試験を開始し、対象群比較の最初の患者への投与を開始。

更に、これまで有効な治療法が確立されていなかった、HER2低発現乳癌患者を対象とした国際共同第3相臨床試験に於いても、本年1月15日、最初の患者への投与を開始しています。



HER2低発現乳がん治療薬・抗体薬物複合体
HER2低発現乳がん又はホルモン受容体陰性乳がん患者は左図。

◆現在、HER2低発現乳がん患者へは、承認されている抗HER2療法や、分子標的薬、免疫療法薬などが無いため、ホルモン受容体陰性(トリプルネガティブ)乳がんの場合と同様、最初から化学療法(抗がん剤、ホルモン剤、免疫賦活剤)等が行われていますが、いずれの場合も、治療法が極めて限られているため、多くのHER2低発現乳がん患者では、やがて病勢進行に至ります。

◆第3相臨床試験の対象患者には、ホルモン受容体陰性患者、ホルモン受容体陽性患者でCDK4/6阻害薬の投与経験のある患者、CDK4/6阻害薬の投与経験のない患者が含まれる予定。

◆「DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)」による第2相臨床試験は、先行して行われているHER2陽性乳がんに加え、HER2低発現乳がんや、HER2陽性の再発・進行性胃がん、HER2陽性の再発・進行性大腸がん、HER2過剰発現またはHER2変異のある再発・進行性非小細胞肺がんでも進行中です。



トラスツズマブ_デルクステカン作用機序「DS-8201」
抗HER2抗体+トポイソメラーゼ阻害薬(DXd)


「DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)」の、トラスツズマブ(遺伝子組換え)は「商品名:ハーセプチン」の名称で知られる抗悪性腫瘍剤で、抗HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)ヒト化モノクローナル抗体で癌細胞のHER2に結合して殺傷する分子標的薬。

他方、デルクステカンは第一三共が創製した特許新薬で、腫瘍細胞内のシステイン残基によってリンカーを切断させて働く、殺細胞性抗がん剤で、細胞の増殖に必要なDNAトポイソメラーゼ酵素の働きを阻害して癌細胞死へ招く。




米国に於いて、「DS-8201(トラスツズマブ デルクステカン)」は、米国食品医薬品局(FDA)より、HER2陽性の再発・転移性乳がん治療を対象として【画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定】及び【ファストトラック(優先審査品目)指定】を受けています。

また、国内では、HER2過剰発現のガン化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発胃がん治療を対象として厚生労働省より先駆け審査指定を受けています。




 **抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体医薬と薬物(低分子医薬)を、適切なリンカーを介して結合させた医薬群で、がん細胞に発現している標的因子(受容体)に結合する抗体医薬を介して、破壊的薬物をがん細胞へ直接届け、がん細胞のDNAそのものを破壊し死滅(アポトーシス)させることで、薬物の全身曝露を抑えつつ、がん細胞の中心DNAへの攻撃力を高めた薬剤です。





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