群馬大学附属病院で、同じ40歳代の男性医師が行った腹腔鏡手術などを受けた患者18人が相次いで死亡した問題で、群馬大学の平塚浩士学長は2日、東京都内で記者会見し、執刀した旧第二外科助教授の須納瀬(すのせ)豊・元医師(昨年3月退職)を懲戒解雇相当、元上司の旧第二外科・竹吉泉教授を退職金の7割が支給される諭旨解雇、病院の前院長と元院長を減給相当とする懲戒処分にしたと発表した。
会見で群馬大学の平塚浩士学長は 沈鬱な表情で、
「大学の名誉と信頼を失墜させた―――」
と、処分理由を述べた。
この発表に先立ち、群馬大学病院医療事故調査委員会は7月30日、2009年以降に発生した18例の医療事故について、検証結果や再発防止に向けた提言を記した報告書を公表した。
その報告書では‥‥、
【手術件数の拡大で外科医への負担が高まる中、指導医不在や医師不足、執刀医の孤立化、単独での主治医制、カルテの記載不足、不十分なカンファレンス(手術検討会議又は協議)、状況改善を図るべき教授の管理不足――、などの要因が重なり、旧第二外科の肝胆膵グループで死亡例が続発したにも関わらず、何らの抜本的な対策を打つ事が出来なかった事】を厳しく指摘した。
問題点の一つは、旧第二外科の肝胆膵グループが負っていた過大な業務量だった。
当時の群馬大学病院は、手術件数の拡大を方針として掲げており、実際、2012年時点で年間手術件数が8000件以上と、20年前に比べて2倍に増加していた。
この手術件数について報告書は、「病院の規模に比して許容量の限界に近い手術数だった」と、指摘している。
18例の死亡事例が相次いだ2009年度以降、旧第二外科の元医師を指導する上級医が不在となり、肝胆膵グループには元医師を含めて1~2人しか医師がいない状態が続いた。
この為、元医師が概ね単独で診断から治療、手術の適応、患者のリスク評価を行い、多忙を極め、準備が不十分だった可能性が高い。
これが患者への説明時間不足や、手術記録の簡略化、死亡事例の検討時間の不足、手術適応のボーダーラインにある事例の適応判断の甘さ、と言った一連の問題を生む要因となったと考えられている。
更に、インシデント(不測の事態)や、重大な術後合併症が起こった時の報告制度、倫理審査の仕組みが活用されなかった。
その結果、病院も異常事態の把握が遅れた、としている。
所で、この医療事故では、一つ、殆ど報道されていない事がある。
それは何故、須納瀬豊・元医師がサポート医師が居ない群馬大学附属病院の旧第二外科で執刀し続けたのか?である。
もし、報告書や群馬大学病院の言う通りだとしたら、他の医師が辞めたり異動したのと同様、多忙のため満足な手術もカルテ記載もカンファレンスも、患者への説明なども出来ない事を理由に、辞めれば良かったのではないか―――?
もし、報告書や群馬大学病院の言う通りだとしたら、他の医師が辞めたり異動したのと同様、多忙のため満足な手術もカルテ記載もカンファレンスも、患者への説明なども出来ない事を理由に、辞めれば良かったのではないか―――?
厚生労働省が把握している、2009年以降に須納瀬豊・元医師が執刀した手術で累積死亡率を割り出す「ラーニングカーブ」を分析すると、当初の累積死亡率が高く、経験を経るにつれて徐々に漸減している事が分かる。
具体的には、開腹肝切除術で言うと、全109例の内、28例目までの死亡率が17.9%と高い。
その後、約100例を超えてから累積死亡率が10%を下回っている。
腹腔鏡下肝切除術においても、2010年12月の導入初期から14例目までの累積死亡率が28.6%と高く、徐々に漸減して103例目の累積死亡率が7.8%となった。
群馬大学病院のバックアップが殆ど得られない、集団から孤立させられた状況に陥りながらも、病院側の手術実績増の方針のもと、須納瀬豊・元医師は懸命だったと思われる―――。
―――しかし、こうした「ラーニングカーブ現象」は、実臨床において許されるものではない。
例えそれが、外科医療の空白を生む結果になったとしても―――
具体的には、開腹肝切除術で言うと、全109例の内、28例目までの死亡率が17.9%と高い。
その後、約100例を超えてから累積死亡率が10%を下回っている。
腹腔鏡下肝切除術においても、2010年12月の導入初期から14例目までの累積死亡率が28.6%と高く、徐々に漸減して103例目の累積死亡率が7.8%となった。
群馬大学病院のバックアップが殆ど得られない、集団から孤立させられた状況に陥りながらも、病院側の手術実績増の方針のもと、須納瀬豊・元医師は懸命だったと思われる―――。
―――しかし、こうした「ラーニングカーブ現象」は、実臨床において許されるものではない。
例えそれが、外科医療の空白を生む結果になったとしても―――
本来であれば、何らかの指導や管理体制を敷いて、死亡事例を回避するべきだが、当時の教授によって十分な対策が講じられる事はなく、特に2009年度は術後死亡が8例(膵臓手術を含む)と連発している。
この初時点で、外科部門の技術的支援や、同僚医師の評価の充実など、適切な診療科運営が実行させていれば、その後の死亡事故は回避出来た。
会見で群馬大学の平塚浩士学長は 沈鬱な表情で、
「大学の名誉と信頼を失墜させた―――」
と、処分理由を述べた。 と謝罪しているが‥‥、
まるで執刀医に全ての問題があると、強者の論理を振り回すかのような口調で、本来、何が連鎖的悲劇を生んだのか‥‥と言う根本原因には言及していない。
こんな【白い巨塔】のような権力構造が、未だに蔓延っている事に、驚いてしまう。
この杜撰な管理体制の手抜きを放置した群馬大学附属病院には、病院としての組織や体系に適正の欠如が見られ、早期に是正する自浄的な取り組みが必要だった――、と報告書は指摘している。
その後、記者会見した患者遺族は、
「教授の処分が軽い。もっと重い処分をして欲しかった」
と、不満を述べた。
執刀医については、大学の処分としては最も重いものだったが、遺族は、
「医療行為を続けられるのは納得いかない」とし、
『医師免許取り消しの行政処分』を望んだ―――。
*懈怠(かいたい)とは‥‥責任を怠り、努力を怠る事。怠慢とも言う。
*執刀医・上司実名について‥‥読売新聞Yomiuri online発表
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160803-OYTET50007/
*執刀医・上司実名について‥‥読売新聞Yomiuri online発表
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160803-OYTET50007/