ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区西麻布)は7月28日、輸血による慢性鉄過剰症の治療薬として、鉄キレート剤「エクジェイド®懸濁用錠」(一般名:デフェラシロクス)の新剤形の製造販売承認申請を行ったと発表した。
慢性鉄過剰症(輸血後鉄過剰症=Post-transfusion iron overload)は、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群などの難治性貧血や、サラセミア(遺伝性のヘモグロビン産生低下症)、鎌状赤血球症などの遺伝性貧血では、支持療法として長期間赤血球輸血を繰り返し必要とする患者がおり、輸血の回数が増える事で体内に過剰な鉄が蓄積され、慢性の鉄過剰症を発症します。
鉄は生体に最も多く存在する金属元素で、赤血球のヘモグロビン合成、各種細胞内の酸化還元反応、細胞の増殖・アポトーシス(細胞の自己壊死)などに関与する必須の元素である。
しかし、鉄が過剰に存在すると、細胞に有害な活性酸素を産生させる細胞毒として働き、下垂体・甲状腺・心臓・肝臓・膵臓・生殖器の機能不全、線維化、発がんまで引き起こす。
その為、体内に過剰に鉄が存在するのを防ぐために、生体内では巧妙な半閉鎖的回路が形成され、食物から吸収される鉄は1日1~2 mg程度と少なく、大部分の鉄は老廃した赤血球がマクロファージ(細菌などの異物を食作用で除去する細胞)など網内系で処理され、再び利用される。
しかし生体には、鉄を効率的に体外へ排泄する機能がなく、適切な除鉄治療を行わないと、心不全や肝障害といった不可逆的な臓器障害や、糖尿病といった重篤な合併症を引き起こすリスクがある。
その為、輸血による慢性鉄過剰症は、進行性の重篤な疾患であり、患者の生活の質(QOL)や予後を改善する為には、継続的な鉄キレート療法により、体内から過剰な鉄を除去する事が必要不可欠となる。
「エクジェイド(Exjade®)」は、輸血による慢性鉄過剰症の治療薬として、世界100カ国以上で承認されている経口投与可能な鉄キレート剤で、日本では2008年4月に「輸血による慢性鉄過剰症(注射用キレート剤治療が不適当な場合)」を効能又は効果として、製造販売承認を取得した。
しかし「エクジェイド」は、懸濁の手間や、空腹時投与と言った使い勝手の悪さ、コップ等に溶かした懸濁液の食味の悪さなどが、鉄キレート療法を継続する際の障害となっていた事から、患者の服薬アドヒアランス(患者が指示された薬を適切に服用しない事)を高める事を目的として、新剤形(顆粒剤)の開発を行ったとしている。