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成人関節リウマチ治療薬「シルクマブ」が日米欧で同時製造承認を申請

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ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区)は10月20日、新規作用機序のヒト型抗IL-6モノクローナル抗体製剤「シルクマブ(遺伝子組換え)」を、抗リウマチ薬として製造販売承認申請を行った。

「シルクマブ」は、ヒト型抗IL-6免疫グロブリンG1Kモノクローナル抗体で、関節リウマチのようなIL-6(インターロイキン6)が関与している炎症・免疫疾患の発症メカニズムに作用し、その炎症状態を抑制する。



シルクマブのイメージ薬
*写真はイメージです。
「シルクマブ」は欧州・米国でも現在承認申請中のため、薬剤の写真はありません。


関節リウマチは、身体の多くの関節に慢性の炎症が起こる、自己免疫疾患の一種で、手と足にその症状が表れるのが典型的です。遺伝的要因や細菌・ウイルスの感染などが考えられていますが、原因は良く分かっていません。

関節リウマチの発症しやすい部位
関節リウマチの発症部位

日本における中等度から重度の関節リウマチ患者は、約70~80万人程度と言われており、20~40歳代の女性に多く発症する慢性の炎症性疾患です。

主に関節の滑膜(かつまく=関節を囲む膜)で起こる炎症により、関節が変形するなど日常生活に多大な影響を及ぼす疾患です。
最近では、症状が現れてから2年の間に急速に炎症が進み、早い時期から関節破壊が起こる事が分かって来ました。その為、疾患の進行を抑え、関節機能を守るには、出来るだけ早い時期に治療を開始する事が重要だと考えられるようになりました。


関節リウマチの進行


今回の申請は、第3相臨床試験である国内臨床試験と国際共同臨床試験を含む計5試験(SIRROUND試験)の結果に基づくもの。

米国国立衛生研究所(ClinicalTrials.gov)のウェブサイトによると、国際共同臨床試験に参加した国名と研究機関は以下の通り。

アメリカ合衆国: FDA(食品医薬品局)
オーストラリア: オーストラリア保健省
ブルガリア: ブルガリア医薬品庁
チリ: チリ公衆衛生研究所
アルゼンチン: 国立食品管理医薬品・医療技術研究所
ベルギー: FAMHP(連邦医薬品局)
カナダ: カナダ保健省
オランダ: CCMO(ヒト被験者に関する研究中央委員会)
ポーランド: Office for Registration of Medicinal Products, Medical Devices and Biocidal Products
メキシコ: COFEPRIS(衛生リスクに対する保護のための連邦委員会)
セルビア: セルビア医薬品医療機器総合機構
コロンビア: INVIMA(医薬品監視・食品総合研究所)
日本: 医薬品医療機器総合機構
プエルトリコ: 食品医薬品局
ドイツ: ドイツ連邦医薬品医療機器研究所
グレートブリテン: MHRA(イギリス医薬品・医療製品規制庁)
南アフリカ: MCC(医薬品管理委員会)
リトアニア: リトアニア保健省・医薬品管理局
ウクライナ: ウクライナ保健省・健康管理局
ルーマニア: 国立医薬品医療機器局
フランス: ANSM(フランス医薬品・保健製品安全庁)

これらの臨床試験結果は、2016年の欧州リウマチ学会年次総会(EULAR)、及び2015年の米国リウマチ学会(ACR)年次総会で発表された。
その後、「シルクマブ」は、欧州、米国に於いて2016年9月に成人関節リウマチに対する製造承認申請を行っている。


Sirukumabシルクマブのイメージ


また国内臨床試験では、

■ 疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs=免疫調節・免疫抑制薬)に対して効果不十分だった患者群(D試験)。
■ 抗TNFα薬(生物学的製剤)に対して効果不十分だった患者群(T試験)。
■ メトトレキサート(MTX=抗リウマチ薬)に対して効果不十分だった患者群(H試験)。
■ MTXもしくはスルファサラジン(抗リウマチ薬)に対して効果不十分だった日本人の患者群(M試験)。
■ SIRROUND-D試験とSIRROUND-T試験を完了した患者群対象の長期試験(LTE試験)。

以上の国際共同臨床試験を含む計5試験を実施し、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)に対し効果不十分だった、成人関節リウマチ患者を対象としたSIRROUND-D試験では、「シルクマブ」が16週でプラセボ(偽薬)と比較して関節リウマチの症状の改善を示し、52週まで関節破壊を有意に抑制。

また、既存治療で十分な反応を示さなかった日本人患者を対象としたSIRROUND-M試験では、「シルクマブ」の単剤での安全性と効果を確認したとしている。


IL-6(インターロイキン-6)は、感染や疾患に対する身体の自然な反応を改善する事が出来る物質=生物学的反応修飾物質と言い、これらの物質は通常、体内で作られ、免疫として働く。

IL-6シルクマブ作用機序
シルクマブ作用機序
しかし関節リウマチのような炎症疾患では、免疫が過剰になる自己免疫疾患に陥るため、IL-6R(受容体)との作用を抑制する必要がある。



既に、成人関節リウマチ患者の多くで既存薬への不耐応や、効果不十分の症例が増えている事から、更なる治療薬の登場が望まれている。

今回のように、欧州、米国とほぼ同時期に国内でも製造販売承認申請を行った新規作用機序の薬剤は、最近では"エボラ出血熱"の治療薬があるのみで、極めて稀有な例と言える。







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