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リポソーム封入型/抗悪性腫瘍剤・治癒切除不能な膵癌治療薬「オニバイド®点滴静注」が発売開始

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日本セルヴィエ株式会社(本社:東京都文京区本郷)と株式会社ヤクルト本社(本社:東京都港区海岸)は、リポソーム修飾型/抗悪性腫瘍剤「オニバイド®点滴静注43mg(一般名:イリノテカン塩酸塩水和物)」について、「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵癌(膵管がん/膵臓がん)」を効能・効果として、2020年6月1日、国内に於いて販売を開始したと発表しました。

オニバイト点滴静注
イリノテカン塩酸塩水和物PEG修飾リポソーム製剤/抗悪性腫瘍剤
<がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵がん治療薬>
「オニバイド®点滴静注43mg(一般名:イリノテカン塩酸塩水和物)」


膵臓は上腹部にある臓器です。
消化管に分泌される消化液を分泌しています。
また膵臓では、血糖の調節を助けるインスリンも分泌されます。


膵臓がんイメージ

膵癌の約95%が膵管細胞、及び腺房細胞から発生する腺がんです。腺がんは通常、膵管の粘膜にある腺細胞から発生し、その殆どが膵頭部(小腸の最初の部分の十二指腸)に最も近い部分に発生します。

ご存じのように、がん死亡のうち、2018年に膵癌は4番目に多いがん腫であり、がん死亡全体の9.5%を占めています。

膵癌の予後は病期によって異なりますが、多くの患者が診断時点で、進行例であり、治療選択肢が限られ、全体的に予後不良の癌であることから、アンメットメディカルニーズの(未だに有効な治療法が確立されず強く望まれている)治療分野であり、新しい薬物治療薬が求められて来ました。


これまでも、有効成分であるイリノテカン塩酸塩水和物は、カンプト点滴静注(先発品/2008年6月)、トポテシン点滴静注(先/2009年9月)やこれらの後発品が多く発売されているものの、膵癌治療のために開発された薬剤とは言えない、広義の抗悪性腫瘍剤であって様々な癌種が適応となっている。
他にもゲムシタビン、FUT、TS-1、フルオロウラシル(抗悪性腫瘍剤)、ADM、アブラキサン(アルブミン懸濁型パクリタキセル)などがあるが、進行膵癌では病状の進行抑制にとどまっているのが現状です。








イリノテカン修飾リポソーム製剤オニバイドの構造図

「オニバイド®点滴静注」は、有効成分の*イリノテカンをポリエチレングリコール(PEG=polyethylene glycol)で修飾(しゅうしょく)したリポソーム(一つの分子上に親水性部分と疎水性部分とを持たせた分子の複合体)に封入した製剤です。

本剤は、DNAトポイソメラーゼ阻害薬であり、イリノテカンをリポソームに封入することで、時間をかけて徐々に薬剤を放出し、より長く腫瘍組織に働きかけることが特徴のひとつとなる。

ガン細胞は自らの増殖のために新生血管を形成して腫瘍内に導入します。
しかしリポソーム製剤(大きさ100-110nm)は毛細血管を作る血管内皮細胞層のような健康な組織には溢血(いっけつ=身体組織の内部に出血が起きること/~脳いっ血など)する事が出来ません。

リポソーム製剤はガン細胞が作った新生血管を通じて腫瘍に到達します。

イリノテカンはI型トポイソメラーゼを阻害することで、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。


オニバイト点滴静注の作用機序

*イリノテカンは、*I型トポイソメラーゼを阻害し、DNA合成を阻害する事により細胞増殖抑制作用を発現する。
⇒⇒本剤が貪食(大食い)作用等によりマクロファージに取り込まれると、イリノテカンが細胞外に放出され、腫瘍組織に於いて活性化代謝物であるSN-38に変換され、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられる。

*I型トポイソメラーゼとは……DNAの複製や転写の際、DNA二重らせんをほどく酵素で、I型は、DNAの片方の鎖に切れ目を入れ、回転させて巻きをほどく役目。



国内では2019年3月に、日本セルヴィエ株式会社が製造販売承認申請を行い、2020年3月25日に承認を取得しました。
2019年10月に締結した日本セルヴィエとヤクルト本社とのプロモーション契約に基づき、日本セルヴィエが製造販売、流通を行い、ヤクルト本社がプロモーション活動を実施します。




【製品概要】
【販売名】:オニバイド®(Onivyde I.V.®)点滴静注43mg10mL/1瓶(in liposome)
【一般名】:イリノテカン塩酸塩水和物(Irinotecan liposome injection)
【効能・効果】:がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵癌
【用法・用量】:フルオロウラシル及びレボホリナート(活性型葉酸製剤)との併用に於いて、通常、成人にはイリノテカンとして1回70mg/m2(体表面積)を90分かけて2週間間隔で点滴静注する。尚、患者の状態により適宜減量する。

【重要な基本的注意】
◆本剤はイリノテカン塩酸塩水和物をリポソームに封入した製剤である事から、本剤の有効性、安全性、薬物動態等は従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤と異なる。本剤を従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤の代替として使用しないこと。
◆また、本剤を従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤と同様の用法・用量で投与しないこと。
◆本剤を単独投与した場合の有効性及び安全性は確立していない。

【製造販売元】:日本セルヴィエ株式会社
【製造販売承認日】:2020年3月25日
【薬価基準収載日】:2020年5月20日
【薬価】:12万8,131円(43mg10mL 1瓶)
▼【先発品薬価/非リポソーム製剤】:3,145~1,955円(40mg2mL/1瓶)
【発売日】:2020年6月1日
【プロモーション】:株式会社ヤクルト本社

尚、本剤は2020年5月現在、世界21か国で販売されています。









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小児期の神経発達症に伴う入眠困難改善剤「メラトベル®顆粒小児用」が発売開始

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ノーベルファーマ株式会社(本社:東京都中央区日本橋小舟町)は6月23日、小児期に伴う入眠困難の改善を効能・効果とした、メラトニン受容体作動性入眠改善薬「メラトベル®顆粒小児用0.2%(一般名:メラトニン)」を発売したと発表しました。

「メラトベル®顆粒小児用0.2%(一般名:メラトニン)」は、日本で初めての生体内ホルモンと同一の化学構造式を持つ“メラトニン(Melatonin)”を有効成分とする、メラトニン受容体作動性入眠改善剤であり、神経発達症に伴う入眠困難の小児を対象とした国内臨床試験に於いて、入眠困難の改善に対する有効性及び安全性が示された製剤です。



メラトニン受容体作動性入眠改善薬メラトベル顆粒小児用
小児の神経発達症に伴う入眠困難治療薬
メラトニン受容体作動性入眠困難改善剤
「メラトベル®顆粒小児用0.2%(一般名:メラトニン)」



睡眠⇔覚醒リズムは、自律神経や内分泌機能を調節する体内時計によって制御されています。

“メラトニン(Melatonin)”は、体内時計の情報を伝えるホルモンの一種で、夜になるとその分泌量が増え、眠気を引き起こす「催眠作用」と、明るくなると光の刺激で分泌が低下し、日中の活動に合わせて体内の環境を整える「睡眠・覚醒を含む概日(がいじつ)リズム(=環境の変化に関係なく一日のリズムで変動する生命現象)の維持・調整」を担っている。

神経発達症の小児では、定型発達児と比べて、睡眠障害の合併率や有病率が高いとの報告や、神経発達症群の分類の中でも自閉スペクトラム症(ASD)では50~80%、注意欠如・多動症(ADHD)では25~50%の割合で睡眠障害が併存するという報告があります。


神経発達症に伴う入眠困難
図・名古屋大学 脳とこころの研究センター/精神疾患横断的なPSG(睡眠ポリグラフ検査)等を用いた検討より


神経発達症に伴う睡眠障害の実態は、慢性的な睡眠不足と不規則な睡眠覚醒リズムの問題に特に注意を要します。

入眠困難による睡眠不足は、神経発達症の多動や過活動(意志通りにならない事)、興奮症状などの症状を強める可能性があり、不規則な睡眠覚醒リズムは、日中は目覚めていても体調が悪く、夕方に近づくと比較的元気になり、夜は興奮して眠ろうと思っても寝付けないという悪循環を招くとされています。

神経発達症に伴う睡眠障害

〔MSDマニュアル プロフェッショナル版/07.神経疾患/ 睡眠障害および覚醒障害/ 概日リズム睡眠障害〕
〔ノーベルファーマ株式会社 プレスリリース/2020年3月25日&同年6月23日〕
〔日経メディカルオンライン/https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/matsumoto/202005/565474.html〕





メラトニンは、トリプトファンからセロトニン(5-HT)を経て体内で合成され、主として松果体(しょうかたい)から分泌される生体内ホルモンです。
松果体と視床下部の視交叉上核

メラトニンは、2種類の受容体(MT1受容体&MT2受容体)を介して睡眠に対する作用を発揮します。
MT1受容体の活性化は催眠(さいみん)に関与し、MT2受容体の活性化は視床下部の視交叉上核(しこうさじょうかく=神経細胞の小さな集団の核で体内時計の機能を持つ)によって制御される、睡眠・覚醒を含む概日リズムの維持調整、及び直接的な催眠作用に関与します。



神経発達症のうち、自閉スペクトラム症を有する睡眠障害の小児を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験(国内第Ⅱ/Ⅲ相試験)、及び神経発達症を有する睡眠障害の小児を対象とした26週間投与のオープン試験(国内第Ⅲ相試験)の結果より、神経発達症の診断分類に関係なく、本剤は有効性を発揮することが確認された。

〔独立行政法人􀀃医薬品医療機器総合機構ホームページ/添付文書 解説〕
〔ノーベルファーマ株式会社 プレスリリース/2020年3月25日&同年6月23日〕






【製品概要】
【製品名】:メラトベル®(Melatobel®)顆粒小児用 0.2%
【成分名】:メラトニン(規格・含量1g中メラトニン2mg)
【効能又は効果】:小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善
【用法・用量】:通常、小児にはメラトニンとして1日1回1mgを就寝前に経口投与する。尚、症状により適宜増減するが、1日1回4mgを超えないこと。
【包装】:ボトル 100g[瓶]
【薬価】:207.80 円(0.2%1g)(1日薬価:103.90円)
【製造販売元】:ノーベルファーマ株式会社
【製品サイト】:https//nobelpark.jp/








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EZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫治療薬「タゼメトスタット」を国内承認申請

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エーザイ株式会社(本社:東京都文京区小石川)は7月8日、新規作用機序の抗がん剤/EZH2阻害剤「タゼメトスタット臭化水素酸塩(=一般名、開発コード:E7438)について、EZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫に係る適応で、日本国内に於いて新薬の承認申請を行ったと発表しました。

「タゼメトスタット(tazemetostat)」は、米国マサチューセッツ州に本社を置くバイオ医薬品メーカーのEpizyme,Inc.(エピザイム社)が、独自の創薬プラットフォームから創製した『EZH2(Enhancer of zeste homolog 2)』を標的とするファースト・イン・クラス(画期的医薬品)の経口低分子阻害剤です。



濾胞性リンパ腫治療薬タゼメトスタット(TAZVERIK)
EZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫治療薬
EZH2阻害剤「タゼメトスタット臭化水素酸塩(一般名)」
米国FDA承認の商品名「TAZVERIKT」(承認日:2020年1月)



濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)は、非ホジキンリンパ腫の*10%~20%を占める低悪性度B細胞リンパ腫です。
濾胞性リンパ腫は一般的に進展が緩徐(かんじょ)であり、化学療法の感受性は良好とされますが、しかし、再発を繰り返す事が多く、再発した場合それまでの薬剤への反応が鈍くなるため、依然として治癒が困難な疾患で、新たな治療選択肢が求められています。

〔日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版では7~15%と記載〕
〔*日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版で10%~20%と増加の記載〕



濾胞性リンパ腫のうち、7%~27%がEZH2遺伝子に、機能獲得型変異を有すると報告されている事から、国内の濾胞性リンパ腫患者のうち、約600~2400人が機能獲得型変異を有していると推定されています。


EZH2遺伝子の位置は第7染色体
EZH2遺伝子・第7染色体


EZH2(Enhancer of zeste homolog 2)は、*エピジェネティクス関連タンパク質群のうちヒストンメチル基転移酵素の一つで、ヒストンタンパクH3の27番目のリジン残基(H3K27)のメチル化を特異的に触媒することで種々の遺伝子発現をコントロールします。

EZH2遺伝子の機能獲得型変異や過剰発現、或いはEZH2抑制因子の機能不全によるH3K27のメチル化の亢進が、発がんプロセスに重要な役割を担っていると考えられています。


→*エピジェネティクス(epigenetics)とは、遺伝子機能の後天的な活性化・不活性化のための機構の一種で、DNAの塩基配列の変化を伴わずに細胞分裂後も継承される遺伝子機能の変化のしくみ、又はそれを研究する学問領域を指す。



遺伝子発現の制御につながる修飾として、DNAのメチル化や、ヒストンタンパクの修飾(メチル化、アセチル化、リン酸化等)が挙げられます。





濾胞性リンパ腫治療薬タゼメトスタット(TAZVERIK)の作用機序
濾胞性リンパ腫治療薬「タゼメトスタット(TAZVERIK)」の作用機序
H3K27のメチル化(me化)を阻害する。

「タゼメトスタット(tazemetostat/開発コード:E7438)」は、米Epizyme,Inc.(エピザイム社)が、独自創製したEZH2を標的とする画期的医薬の経口低分子阻害剤です。
本剤はEZH2を選択的に、尚且つ、S-アデノシルメチオニン(メチル基供与体)と競合的に阻害することでH3K27のメチル化を抑制し、がん関連遺伝子の発現を制御します。


タゼメトスタットの臨床試験結果

米国では2020年1月、手術不適応の成人、又は16歳以上の小児の局所進行性類上皮肉腫に係る適応で迅速承認を取得。
更に、2020年6月には、「少なくも2レジメン(薬剤の用法用量を記した治療計画)以上の前治療歴があり、FDA(米国食品医薬品局)が承認したEZH2遺伝子変異の検査で、陽性と診断された成人の再発・難治性の濾胞性リンパ腫」、及び「他に治療手段が無い成人の再発・難治性の濾胞性リンパ腫」の適応で迅速承認を受けています。








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承認申請中の頭頸部がん光免疫療法抗がん剤「ASP-1929」が条件付き早期承認制度適用

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楽天メディカルジャパン株式会社(本社:東京都世田谷区玉川)は6月29日、特定のがん細胞に選択的に光感受性物質を運び、非熱性赤色光(690nm)を照射することによって、ピンポイントでがん細胞を攻撃し壊死させる光免疫療法に使用する医薬品(抗がん剤)「ASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム(遺伝子組換え))」について、厚生労働省より5月29日付で、「条件付き早期承認制度」が適用されたとの通知を受けたと発表した。

楽天メディカルジャパン株式会社は、日本と米国で、再発頭頸部がん患者を対象とした臨床試験の結果をもとに、製造販売承認申請を3月26日に行っている。

また、本治療で用いられる医療機器「レーザ照射システム」についても、3月19日に医療機器の製造販売承認の申請を行っており、早ければ年内の承認取得を目指すとしている。
光免疫療法に関する医薬品、及びそれに関わる医療機器などの一連の一括承認申請は世界で初めてとなる。


光免疫療法690nm
再発頭頸部がん光免疫療法用抗がん薬
「ASP-1929」用レーザ照射非熱性赤色光の使用波長(690nm)


頭頸部(とうけいぶ)とは、鼻、口、舌、のど、あご、耳などを含む頭部から頸部(首)までの範囲を指します(脳、眼球、歯を除く)。
これらの器官は食事をする呼吸をする声を出す聞くという日常生活を送る上で必要な動作と大きく関わっており、喉頭(こうとう)は空気の通り道の気道の入り口にある器官で、声帯などがあります。咽頭は鼻の奥から食道までの飲食物と空気が通る部位で、筋肉と粘膜で出来た器官です。

頭頸部に発生したガンをまとめて、『頭頸部がん』と呼びます。

頭頚部がんの部位

主な種類として口腔がん、鼻・副鼻腔がん、喉頭がん、上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん、唾液腺がん等があります。
〔MSD oncology がんを生きる/頭頸部がんとは:https://www.msdoncology.jp/head-and-neck_carcinoma/about/〕



「ASP-1929(Cetuximab-Sarotalocan Sodium)」は、様々な種類の固形がんに発現する、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする分子標的薬の抗EGFRキメラ型モノクローナル抗体「セツキシマブ」に、光感受性物質の「IRDye®700DX」が結合した抗体色素複合体です。

頭頸部癌光免疫療法ASP-1929


点滴投与すると、24時間後、頭頚部がんなどに発現するEGFRと結合する。
頭頸部癌光免疫療法ASP-1929作用機序2

その後、ASP-1929は非熱性赤色光(690nm)を専用のレーザ機器を用いて、5分間照射する事により、局所的に励起(れいき=外部からエネルギーを得る事で初めより高いエネルギーをもつ定常状態)されます。
これにより、標的がん細胞を選択的かつ局所的に破壊します。


頭頸部癌光免疫療法ASP-1929作用機序3

ASP-1929は上皮細胞増殖因子(EGFR)を目標とします。
この光(近赤外線)免疫療法は、米国に於いて、頭と首扁平上皮癌、食道ガン、肺がん、結腸直腸がん、膵がんと他のガンを含む固形腫瘍の複数の種類で臨床試験が進行中です。

注目が集まる光免疫療法ですが、課題もある。それは出血です。

頸静脈や頸動脈などの太い血管に腫瘍が浸潤しているような症例では、近赤外線照射で癌細胞が破壊されることによって血管が破れ、重度の出血を起こす可能性がありますが、2回目以降のレーザー照射は、レーザー照射機の数を減らし、ガン細胞を取り囲むように照射する。

もちろん、可能な場合は血管を結紮(けっさつ)などにより、出血リスクへの対応が事前に行われる事があります。







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ヒト型IL-17Aモノ抗体「コセンティクス」が体軸性脊椎関節炎の新効能承認を取得

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は7月17日、ウェブ会議を開催し、ノバルティスファーマ株式会社(本社:東京都港区虎ノ門)が承認申請していた、「既存治療で効果不十分なX線基準を満たさない体軸性脊椎(せきつい)関節炎」を新効能・効果及び、新用量とするヒト型抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体製剤「コセンティクス®皮下注150mgシリンジ、同皮下注150mgペン(一般名:セクキヌマブ(遺伝子組換え))」について、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないことを報告した。
本剤は、この8月中にも正式承認される見込みである。



コセンティクス皮下注150mgシリンジと皮下注150mgペン
ヒト型抗ヒトIL-17A モノクローナル抗体
既存治療で効果不十分なX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎
『コセンティクス®皮下注150mgシリンジ、コセンティクス®皮下注150mgペン』



体軸性脊椎関節炎(axSpA=Axial spondyloarthritis)は、慢性炎症性背部痛を特徴とする一連の慢性炎症性疾患で、体軸性脊椎関節炎には、非X線疾患とX線疾患(強直性脊椎炎としても知られる)が含まれます。

X線基準は、体軸性脊椎関節炎の疾患スペクトラム(一連の関連疾患性)に於いて、X線基準により仙腸関節の損傷が確認される強直性脊椎炎(AS)と、X線基準により明らかな関節損傷が認められない「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA/またはX線陰性体軸性脊椎関節炎)」が含まれます。

体軸性脊椎関節炎(axSpA)の危険因子

病態は、強直性脊椎炎と体軸性(背骨)脊椎関節炎の両者に於いて、付着部と呼ばれるアキレス腱や肩の靭帯ゃ付け根に炎症をきたす為、夜間痛、倦怠感、朝の腱のこわばり及び、機能障害と言った症状が同程度に認められる。


X線基準を満たさない活動性の体軸性脊椎関節炎の病期


体軸性脊椎関節炎(axSpA)を未治療のまま放置すると、身体活動の低下から労働時間の損失が起こり、QOL(生活の質)に重大な影響を及ぼす可能性があります。

“X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)”の患者数は、欧州上位5カ国、及び米国を併せて約170万人と推計されています。
国内の脊椎関節炎の有病率は10万人あたり0.48人と稀で、男女比は3~4:1程度とされている。

〔Nature Japan K.K/体軸性脊椎関節炎/https://www.natureasia.com/ja-jp/clinical/review/65804〕
〔ノバルティスファーマ株式会社/プレスリリース/2020年7月14日〕
〔協和発酵キリン株式会社/ ニュースリリース/2019年6月17日〕
〔大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学/脊椎関節炎の分類〕







「コセンティクス®(Cosentyx)」は、初のヒト型生物学的製剤で、尋常性乾癬(PsO)、乾癬性関節炎(PsA)及び強直性脊椎炎(AS)の炎症と発症に中心的役割を持つ、サイトカインのインターロイキン17A(IL-17A)を直接阻害します。
コセンティクスの作用機序
作用機序


「コセンティクス®(Cosentyx)」は、2015年2月に中等症から重症の尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬の効能・効果で販売(皮下注シリンジ)を開始。2016年11月には皮下注ペン製剤を発売。
その後、2018年12月に強直性脊椎炎の効能・効果を追加適応を取得しています。

「コセンティクス」は、尋常性乾癬(PsO)、乾癬性関節炎(PsA)及び強直性脊椎炎(AS)の3種類の適応症に関する5年間データ、並びにリアルワールドでのデータなど、堅固な臨床的エビデンスを有しています。


2020年5月15日、欧州委員会(EC)が、疾患活動性を示すX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)の成人患者の治療に「コセンティクス®」を承認。
2020年7月14日には米FDAの承認を取得しました。





【製品概要】
【製品名】:
「コセンティクス®皮下注150mg シリンジ」
「コセンティクス®皮下注用150mg ペン」

【一般名】:セクキヌマブ(Secukinumab/遺伝子組換え)
【効能又は効果】:*(下線太字部は今回追加承認された効能又は効果)*
既存治療で効果不十分な下記疾患
 1. 尋常性乾癬
 2. 関節症性乾癬
 3. 膿疱性乾癬
 4. 強直性脊椎炎
 5. X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎

【用法及び用量】:
 1. 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬
 2. 強直性脊椎炎
 3. X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎
◆現時点で詳細不明

【製造販売】:ノバルティス ファーマ株式会社
【販売】:マルホ株式会社
【薬価(薬価は改定されています)】:
皮下注シリンジ 150mg/mL シリンジ 7万2,849円
皮下注ペン 150mg/mL ペン 7万4,486円








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世界初の難治性耳管開放症治療機器「耳管ピン」が製造販売承認を取得

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東北大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科と、日本大学医学部附属板橋病院 耳鼻咽喉科、及び医療法人寶樹会・仙塩利府(せんえんりふ)病院、富士システムズ株式会社(本社:東京都文京区本郷)、並びに東北大学病院臨床研究推進センター、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構と浜松医療センター中耳手術センターの共同開発チームは8月3日、産学連携により、難治性耳管開放症患者に対する世界初の治療機器「耳管ピン」について、2020年5月29日に製造販売承認を取得したと発表しました。

本治療機器は、医師主導治験により有効性および安全性が認められた難治性耳管開放症患者に対する世界初の治療製品です。


難治性耳管開放症用の耳管補綴材・耳管ピン
難治性耳管開放症用の耳管補綴材
「耳管ピン」




耳管(じかん)は、鼓膜の内側にある中耳(ちゅうじ)と鼻の奥を結ぶ細い管で、通常は閉じており、鼓膜内に空気をためて置くことで、耳から入った音を聞くことが出来る。

また、耳管は一時的に開くことで、鼓膜の内と外の圧力の調整も行う。

耳管開放症とは


★例えば、飛行機などで急に高い場所へ上った時に、音が聞こえにくくなったり、ツーンと耳の痛みを感じることがあるのも、鼓膜の内側と外側の空気の圧力が違うため起こる状態です。
その際には、ものやツバを飲み込んだり、アクビをしたりする事で一時的に耳管を開き、鼓膜の内側の空気圧を外と同じにする事で、いつも通り音が聞こえるようになります。

耳管開放症は、耳管が閉鎖されず、常に開放した状態になる疾患です。

難治性耳管開放症



開いた耳管を通って、内側から自分の声や呼吸の音が聞こえてしまうため、発声・会話の障害になり、聞こえ方も不自然になります。

多くは、生活指導や生理食塩水を鼻から入れる処置、漢方薬などで対処することが出来ますが、難治性耳管開放症の場合は、僅かな効果しか得られず、ほぼ毎日症状が現れるため、多くの苦痛を伴ってしまいます。

特に、声を発することが多い職業の接客業の人や、講演をする人、歌手の人や教師などでは、非常に辛い症状ですが、これまで効果の継続する良い治療方法はありませんでした。



【難治性耳管開放症の定義】
◎強い症状があり、6ヵ月以上の保存的治療(生活指導、生理食塩水を鼻に入れる、漢方薬など)を実施しても改善しない耳管開放症…。








難治性耳管開放症の耳管ピン7タイプ


[類 別] 医療用品4 整形用品
[一般的名称] 耳管用補綴材
[販 売 名] 耳管ピン
[耳管ピン挿入術] 局所麻酔下で鼓膜を切開した後、本品を耳管に留置する。最後に鼓膜切開部を被覆する。
[申 請 者] 富士システムズ株式会社
[申 請 日] 2019年6月18日(製造販売承認申請)
[承 認 日] 2020年5月29日
[薬 価] 保険適応申請中
[発 売 日] 保険適応後


難治性耳管開放症の耳管ピン挿入図


◆使用目的◆
保存的治療が奏功しない難治性耳管開放症の症状改善を目的に、過度に開放している耳管内腔を狭くする。

◆承認条件◆
耳管開放症の診断及び治療に関連する十分な知識・経験を有する医師が、本品の使用方法に関する技能や手技に伴う合併症等の知識を十分に習得した上で、治療に係る体制が整った医療機関において、使用目的及び使用方法を遵守して本品を用いるよう、関連学会と連携の上で必要な措置を講ずること。






※本治療機器開発のため、多施設共同での医師主導治験に参加・協力された協力施設は以下の通りです。

▼研究代表:仙塩利府病院 耳科手術センター(センター長 小林俊光)
 ▼東北大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 (医工学研究科教授 川瀬哲明)
 ▼日本大学医学部附属板橋病院 耳鼻咽喉科(教授 大島猛史)
 ▼浜松医療センター中耳手術センター(センター長 水田邦博)









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MET遺伝子ex14陽性の切除不能な非小細胞肺癌治療薬「タブレクタ錠」が薬価収載

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厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会は8月19日、新薬13成分25品目を薬価収載することを了承した。
このうち、ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区虎ノ門1丁目)が、2020年6月29日に製造販売承認を取得した、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬「タブレクタ®錠150mg、及び同錠200mg(一般名:カプマチニブ塩酸塩水和物)」が、希少疾病用医薬品として新薬創出等加算の対象で、新たに薬価収載されました。



MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の非小細胞肺がん治療薬タブレクタ錠
抗悪性腫瘍剤/MET遺伝子ex14変異陽性阻害剤
カプマチニブ塩酸塩水和物
非小細胞肺がん治療薬「タブレクタ®錠150mg、同錠200mg」




肺がんは、癌による死亡原因の世界第1位です。
その中で日本国内では、非小細胞肺がん(NSCLC)が約85%を占めており、特に遠隔転移している場合や遺伝子変異による非小細胞肺がんは未だに治療が困難です。


肺がんの組織型と特徴
肺がんの組織型と特徴

MET(間葉上皮転換因子)遺伝子エクソン14スキッピング(ex14)変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)の予後は不良で、生命を脅かす重篤な疾患です。
しかし、治療選択肢が非常に限られており、MET遺伝子を標的とした治療法の開発が切望されていました。


第7染色体のMET遺伝子座


MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性によって
下流のシグナル伝達が亢進。

MET遺伝子変異を有する患者は、非小細胞肺がん患者数の約3~4%と報告されており、日本国内でのMET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者は、約3,000名程度と推定されます。

このMET遺伝子エクソン14スキッピング変異の検出には、「タブレクタ®(TABRECTA™)」のコンパニオン診断薬として、中外製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋室町)の「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル」が用いられます。







「タブレクタ®錠(一般名:カプマチニブ塩酸塩水和物)」は、MET(Mesenchymal-epithelial transition factor=間葉上皮転換因子)に対する選択的な阻害作用を有する低分子化合物の経口阻害剤です。

METのリン酸化を阻害(ATP阻止)し、下流のシグナル伝達を阻害する事により、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

非小細胞肺がんに於ける、発がんドライバー遺伝子*であるMET遺伝子エクソン14スキッピング変異に対しても阻害活性を有します。
MET遺伝子変異は、非小細胞肺がんを含む種々の癌で報告されており、この遺伝子異常によって生じるMET経路の制御異常が、腫瘍細胞の増殖、生存、浸潤及び転移、並びに腫瘍血管新生を促進すると考えられています。


タブレクタの作用機序


「タブレクタ®錠」は、米国では2019年9月に画期的治療薬に指定、2020年2月に優先審査品目に指定され、2020年5月に米FDAの承認を取得しています。
〔ノバルティスファーマ/製品情報/ タブレクタ製品基本情報〕
〔ノバルティスファーマ/製品情報/ タブレクタの作用機序〕
〔中外製薬/遺伝子変異解析プログラム・FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル〕


 *ドライバー遺伝子とは……がん遺伝子・がん抑制遺伝子など、発がんや癌の悪性化の直接的な原因となるような遺伝子のこと。






【製品概要】
【製品名】:
「タブレクタ®錠150mg」(TABRECTA™ Tablets 150mg)
「タブレクタ®錠200mg」(TABRECTA™ Tablets 200mg)
【一般名】:カプマチニブ塩酸塩水和物
【効能又は効果】:MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌

【効能又は効果に関連する注意】:
▲十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異が確認された患者に投与すること。検査に当たっては、承認された体外診断用医薬品又は医療機器を用いること。
▲本剤の術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない。

【用法及び用量】:通常、成人にはカプマチニブとして1回400mgを1日2回経口投与する。尚、患者の状態により適宜減量する。

【承認取得日】:2020年6月29日
【薬価収載日】:2020年8月26日
【薬価】:希少疾病用医薬品であり新薬創出等加算有り。
150mg/1錠 5055.50円
200mg/1錠 6573.50円(1日薬価:2万6293.80円)
【市場予測(ピーク時10年後)】:投与患者数443人



 *尚、同じMET遺伝子阻害剤にはメルクバイオファーマの「テポチニブ塩酸塩水和物(テプミトコ錠)」がある。薬価 1万4,399円/錠。2020年3月25日承認。




今回の承認について、“ノバルティス オンコロジー ジャパン(プレスルーム)”のプレジデントであるブライアン・グラッツデン氏は、
「近年、遺伝子検査の技術が進み、多くのがん患者の癌の原因となる“ドライバー遺伝子”が特定されるようになった一方で、遺伝子変異が特定されたにも関わらず、その遺伝子を標的とした治療法が無い患者さんがいます。
『タブレクタ®』の承認により、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の非小細胞肺がん患者により適した標的療法を提供すると同時に、患者さまの人生に貢献できる事を大変嬉しく思います」
と、述べています。







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ロキソニンS外用薬が第1類から第2類医薬品に

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厚生労働省は、7月3日に開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会に於いて、次の項目を了承した。
第1類医薬品から第2類医薬品への変更について。
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第三十六条の七 第一項第一号及び第二号の規定に基づき、厚生労働大臣が指定する第一類医薬品及び第二類医薬品の一部を改正する件」(令和2年厚生労働省告示第297号)が令和2年(2020年)8月25日に告示されました。



1.改正概要
ロキソプロフェン(外用剤に限る)を第二類医薬品に指定することに伴い、通知別紙2(略)にロキソプロフェン(外用剤に限る)を追加する。




第1類医薬品から第2類医薬品への変更を官報告示。
.適用期日令和2年8月25日(火)

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会に於いて、下記4製品における製造販売後調査の結果が報告され、リスク区分の見直しについて検討された。
その結果、接触性皮膚炎や掻痒症、発疹などの副作用が表れる場合があるものの頻度は低く、又いずれの製品でも、重篤な副作用が発生しなかったことなどから、第2類医薬品への移行が了承された。



◆ 現在販売されているロキソプロフェン外用薬、「ロキソニンSテープ」、「ロキソニンSテープL」、「ロキソニンSパップ」、「ロキソニンSゲル」の4製品。
(薬局店頭にはまだ第1類が置いてある可能性があります)




ロキソニンSテープ


ロキソニンSテープL


ロキソニンSパップ


ロキソニンSゲル


下矢印

ロキソプロフェン外用薬4タイプ第2類医薬品









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初の原発性腋窩多汗症外用治療剤「エクロックゲル5%」の製造販売承認を了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は8月27日、Web会議を開催し、科研製薬株式会社(本社:東京都文京区本駒込)が2020年1月10日に製造販売承認申請していた、外用薬として初めての原発性腋窩(えきか)多汗症外用治療剤「エクロックゲル5%(一般名:ソフピロニウム臭化物/開発コード:BBI-4000)」を審議し、承認することを了承した。
9月中にも正式承認される見込み。


原発性腋窩多汗症外用剤エクロックゲル5%ソフピロニウム・BBI-4000
写真はイメージです。
正式承認前のため製品写真はありません。

国内初(世界初)原発性腋窩多汗症外用治療剤
「エクロックゲル5%(一般名:ソフピロニウム臭化物)
(開発コード:BBI-4000)


原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)は、原発性局所多汗症の中の、手掌(しゅしょう=てのひら)、足底、腋窩(えきか)と言った限局した部位から両側性に過剰な発汗を認める疾患で、腋窩は両ワキの下の事を指す。

腋窩多汗症

原発性局所多汗症は、温熱や精神的な負荷などや、またそれらと関係なく、手のひらや足の裏、ワキの下などに、日常生活や仕事に支障をきたすほどの大量の発汗を生じる状態を言い、特にワキの下(腋窩)に生じる場合を、原発性腋窩多汗症と言います。

東京医科歯科大学の大規模疫学調査(2012年)では、国内の原発性腋窩多汗症の罹患率は、人口の5.75%(約719万8000人)であった。


原発性腋窩多汗症の治療アルゴリズム
原発性腋窩多汗症の治療アルゴリズム

多汗症の重症度を自覚症状から判定・評価・診断には、国際的なワーキンググループによって策定されたHyperhidrosis Disease Severity Scale (HDSS=多汗症重症度スケール)スコアで、1~4の4つに分類したうちの3以上、かつ各腋窩の発汗重量が共に『50mg/5分』以上、原因不明の過剰な局所性発汗が6ヵ月以上持続していること等が、原発性腋窩多汗症の診断基準、及び重症度尺度となります。
原発性腋窩多汗症のHDSSによる重症度判定


臨床試験では、新しい腋窩多汗症の重症度尺度の、Hyperhidrosis Disease Severity Measure-Axillary(HDSM-Ax=腋窩多汗症重症度処置)スコア(0~4の5段階)で、原発性と診断した。
〔*科研製薬株式会社 ニュースリリース/原発性腋窩多汗症治療剤「BBI-4000」の製造販売承認申請について〕
〔*グラクソ・スミスクライン株式会社 原発性腋窩多汗症/診断について〕




「エクロックゲル5%(一般名:ソフピロニウム臭化物/BBI-4000)」は、神経伝達物質であるアセチルコリンの作用を阻止する抗コリン剤に分類さる薬剤です。

アセチルコリンは、ムスカリン受容体(ムスカリン作働性アセチルコリン受容体M3)と結合することで、汗腺から発汗を誘発すると考えられており、本剤は、ムスカリン受容体と結合することで、アセチルコリンの結合を阻害し、発汗を抑制します。


エクロックゲル5%(ソフピロニウム)の作用機序


【BBI-4000】は、2015年3月に米国コロラド州に本拠を置く、Brickell Biotech, Inc.(ブリッケル・バイオテック社)より科研製薬株式会社が導入し、日本国内で外用剤として開発を進め、原発性腋窩多汗症の患者を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験に於いて、実薬群(141例)と基剤群(140例)との多施設共同、ランダム化二重盲検比較試験を実施、6週間投与時の有効性と安全性について検討を行った。

結果、良好な有効性と安全性が確認されたことで、多汗症治療の新たな選択肢として提供できるようになった。




【本剤の概要】
【一般名】:
ソフピロニウム臭化物(Sofpironium bromide)
【効能・効果】:原発性腋窩多汗症
【特徴】:新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

◆同剤は1日1回、適量を腋窩(ワキの下)に塗布して用いる。


重症の原発性腋窩多汗症
A型ボツリヌス毒素製剤の注射
A型ボツリヌス毒素製剤による治療

◆現在は、重度の原発性腋窩多汗症に対する治療薬としてA型ボツリヌス毒素製剤「ボトックス注用」があるが、エクロックゲルは外用塗り薬であり軽度から使用できる。

今回の承認適応でゲル製剤は国内初となる。海外でも2020年6月現在、承認されている国・地域はない。








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医師たちの苦悩~新型コロナ重症患者への治療法~大学病院の治療実態から

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厚生労働省の厚生労働科学研究班が2020年4月2日に示した、「新型コロナウイルス感染症の重症患者等に係る臨床学的治療法の開発」(国立国際医療センター 大曲 国際感染症センター長)で、対象治療薬として指定された3製剤と、その他の有効性が期待される薬剤について、全国の大学病院の医学部長病院長会議は9月10日、新型コロナウイルス感染症における重症例に対する治療実態調査の結果を報告しました。




◎対象治療薬は次の製剤。

アビガン(一般名:ファビピラビル)、カレトラ(一般名:ロピナビル リトナビル)、オルベスコ(一般名:シクレソニド)、その後に承認されたベクルリー(一般名:レムデシビル…5/7)とステロイド剤のデカドロン等(一般名:デキサメタゾン…7/21)。


◆投与の治療実態と治療結果を次の一覧表にしてみました。

尚、総重症症例数は487例で、死亡割合は20.1%(98例)だった。
重症例は、1病院当たり平均5.94例を受け入れており、45症例と回答した医療機関もあった。
重症例とは、ICUに入室、又は人工呼吸器を必要とした患者と定義。エクモ(人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療)の使用症例は含まない。


新型コロナウイルス感染症の治療薬治療実態結果


▲ここで考慮すべきは、重症者に対しては、新型コロナウイルスの増殖を細胞外で阻止する薬剤と、細胞内に入り込みRNA分裂によって増殖し新たなウイルスが放出されるのを防ぐ薬剤。
▲さらに肺や気管支の炎症による呼吸困難や肺細胞の炎症を抑える薬剤の、2タイプ以上が使われ、重症化から危篤に至る経過を防止する手立てが、患者の年齢や持病などを考慮して、医師があらゆる治療の道を模索しながら治療に当たっている事があげられる。

ここに新型コロナウイルスが一筋縄では行かない難しさがうかがえるのだ。





レムデシベル投与されず


7月31日までに治療した重症患者487例に対する治療として、アビガンは約8割に当たる378例に投与され、275例が軽快したという。
国内で唯一新型コロナの治療薬として承認されているベクルリー(一般名:レムデシビル)は54例に投与されており、軽快例は57.41%(31例)だった。


重症患者に対して行われていた各治療法の割合
重症患者に対して行われていた各治療法の割合


今回の報告は重症例であるため、複数の治療を併用する例が多く、個々の治療薬の有用性を検証することは出来ないが、重症例に対する現状の治療実態が浮き彫りになった。

このほか、肺炎症状なども呈する中で、抗菌薬(抗生物質)が398例(81.72%)に投与されていたほか、人工呼吸は356例(73.10%)、ヘパリン(未分画)※が269例(55.24%)、栄養介入(経腸栄養もしくはTPN)は325例(66.74%)などだった。

※ヘパリン(未分画)とは、血栓を防ぐ抗凝固薬。





インフルエンザウィルスを人々が恐れないのは、有効なワクチンが確立されている事と、複数の治療薬があり、それらが極めて有効である――と言う安心感にほかならない。

新型コロナウイルスに、今臨床試験段階にあるワクチンが、全ての人に有効なのかさえ判っていない。そればかりか、何一つ、確立された治療薬も無いのだ。

幼い子供から、高齢者まで――全ての人に効果のある治療薬とワクチンが車の両輪の様に揃わない限り、感染罹患対策と感染拡大対策を決して怠ってはならない!!






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再発難治性多発性骨髄腫治療薬「サークリサ®」が発売を開始

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サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区西新宿)は2020年8月31日、抗悪性腫瘍薬で新規のヒト型抗CD38モノクローナル抗体製剤「サークリサ®(Sarclisa®)点滴静注100mg/ 同500mg(一般名:イサツキシマブ(遺伝子組換え))」を、再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能・効果で、発売を開始しました。

多発性骨髄腫治療薬サークリサ点滴静注
新規ヒト型抗CD38モノクローナル抗体製剤
再発又は難治性の多発性骨髄腫治療薬
「サークリサ®(Sarclisa®)点滴静注100mg/ 同500mg」
(一般名:イサツキシマブ=Isatuximab)」


多発性骨髄腫(Multiple Myeloma=MM)は、骨髄中にある血液細胞の一つである「形質細胞」のリンパ球が腫瘍化した血液癌で、異常な形質細胞が骨髄や、時には他の部位で、制御を失った状態で増殖する病気です。

形質細胞は、正常な血液内には存在しない白血球細胞の一種で、慢性の炎症症状がある時、多く出現するため、白血病や多発性骨髄腫などの診断に使われています。

形質細胞の癌化


形質細胞は免疫システムの役割を担っており、ウイルスなどが体内に侵入して来た時に攻撃する免疫グロブリン(抗体)を産生する細胞ですが、多発性骨髄腫になると、異常な抗体(M蛋白)が産生され、これが異物が無いのにどんどん増殖します。

その結果、正常であれば、形質細胞が骨髄中に占める割合は1%未満ですが、多発性骨髄腫では骨髄組織の大半に癌化した形質細胞が見られ、正常な抗体が低下する為、骨の痛み、病的骨折・圧迫骨折、倦怠感、貧血、出血傾向、感染症に対する抵抗力の低下、腎臓の機能低下、アミロイドーシス(臓器機能の低下)、過粘稠度症候群(血液の粘りが高くなる)、ウイルス感染による体力の低下などで、免疫力低下などを来たします。



多発性骨髄腫の治療と経過
近年、多発性骨髄腫の治療法・治療薬には目覚ましい進歩が見られるにも関わらず、まだ治癒が望める状況ではありませんが、治療する事で殆どの人に効果が得られ、最近では、平均生存期間は約2倍に延びています。

しかしそれでも、多発性骨髄腫では、最終的に死に至る事は避けられない事から、緩和ケアなどについて主治医と話し合ったり、適切な家族や友人を交えて話し合う事が有益となる事が多いようです。

〔MSDマニュアル家庭版--13. 血液の病気 / 形質細胞の病気 / 多発性骨髄腫より〕




「サークリサ®(Sarclisa®)」は、多発性骨髄腫(MM)の腫瘍細胞表面に高頻度で尚かつ一様に発現している、シグナル伝達分子CD38受容体を標的とする新規モノクローナル抗体製剤です。

サークリサ(イサツキシマブ)の作用機序

CD38に結合し、多発性骨髄腫(MM)細胞に対して『抗体依存性細胞傷害(ADCC)』『抗体依存性細胞貪食(ADCP)』『補体依存性細胞傷害(CDC)活性』、並びにアポトーシス(プログラム腫瘍細胞死)を誘導することなどにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

ポマリドミド(サリドマイドの誘導体)、デキサメタゾン(副腎皮質ステロイド)と併用して使う。
尚、CD38を標的とする抗体製剤にはダラザレックス(一般名:ダラツムマブ)がある。





【製品概要】
【販売名】:サークリサ®点滴静注100mg、サークリサ®点滴静注500mg
【一般名】:イサツキシマブ(遺伝子組換え)新有効成分含有医薬品
【効能・効果】:再発又は難治性の多発性骨髄腫
【用法及び用量】:
ポマリドミド及びデキサメタゾンとの併用に於いて、通常、成人にはイサツキシマブとして 1回 10mg/kgを点滴静注する。28日間を1サイクルとし、最初のサイクルは、1週間間隔で4回(1、8、15、22 日目)、2サイクル以降は2週間間隔で2回(1、15 日目)点滴静注する。

【国内製造販売承認取得日】:2020年6月29日
【薬価収載日】:2020年8月26日
【発売日】:2020年8月31日
【薬価】:100mg5mL/1瓶 6万4699円
       500mg25mL/1瓶 28万5944円(1日薬価:2万425円









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小児用てんかん重積状態治療剤「ブコラム口腔用液」が製造販売承認を取得

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武田薬品工業株式会社(グローバル本社:東京都中央区日本橋)は9月25日、18歳未満のてんかん重積状態の治療剤「ブコラム口腔用液2.5mg、同5mg、同7.5mg、同10mg(一般名:ミダゾラム/開発コード:SHP615)」について、「てんかん重積状態」を対象疾患とする新投与経路医薬品、及び希少疾病用医薬品として、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表しました。


ブコラム-Buccolam口腔用液
ブコラム-Buccolam口腔用液




【てんかん重積状態とは…】
てんかん発作(てんかん性発作)とは、脳に於ける、過剰または同期性の異常なニューロン(脳の神経細胞)活動による一過性の徴候、又は症状と定義されています。

てんかん発作が持続する場合や、連続して発生する場合、文字通り発作の連続状態を意味する“てんかん重積状態”の危険性が高まります。
status_epilepticus
てんかん重積状態の脳の神経細胞
てんかん重積状態の脳波と
脳の神経細胞の発作領域


国際抗てんかん連盟(ILAE)は、てんかん重積状態を「発作がある程度の長さ以上に続くか、短い発作でも反復し、その間の意識の回復が無いもの」と定義しており、発作が5分以上持続する場合、速やかに治療を開始する必要があるとしています。

初発てんかん重積状態の年間発症率は、小児人口10万あたり42人であり、日本の0~17歳人口から推計すると、年間約8,000人の初発てんかん重積患者が存在すると推定されます。







<ブコラムについて>
「ブコラム」に含まれる有効成分のミダゾラムは、合成イミダゾベンゾジアゼピン誘導体であり、催眠、鎮静、麻酔、抗不安などの作用に加え、抗けいれん作用を有しています。

「ミダゾラム」は速効性があり、持続静脈内投与も可能である事から、多くのてんかん重積状態の患者に使用されていましたが、2014年に、静脈投与によるてんかん重積状態に対する治療薬として承認されています(※アルフレッサファーマ:ミダフレッサ静注0.1%/麻酔の適応は無い)。

今回は、頬粘膜投与製剤として国内初の治療剤であり、家庭や学校で、てんかん発作が起きた時など緊急を要する場合に、利便性及び即効性を有する治療オプションとして開発されました。



【ブコラム口腔用液プレフィルドシリンジの使用手順】
▲(1)もし可能なら、あなたの子供を自分の側に寄せてください。
▲(2)先端の赤いキャップを外す。
▲(3)注射部位は、床に最も近い側の上の頬と歯茎の間のくぼみに注射器の先端を当てます。
▲(4)一定の適所に薬剤を投与する為、優しく静かにプランジャー(突針)を押し下げる。


ブコラム-Buccolam口腔用液の使い方


海外では、ブコラムの頬粘膜投与は既に非静脈経路の薬剤として広く使用されており、米国てんかん学会(American Epilepsy Society)、並びに英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインに於いても、小児てんかん重積状態初期治療に於ける推奨薬剤の一つとして記載されています。

「ブコラム口腔用液」は、てんかん重積状態を発症した患者に対する頬粘膜投与用プレフィルドシリンジ製剤で、医療機関内外で使用できる薬剤として、『BUCCOLAM®』の製品名で、EU加盟27カ国のほか、英国など33カ国で承認されています(2020年9月現在)。

日本では、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議での協議を踏まえ、てんかん重積状態の治療薬として開発が進められて来ました。








【承認された製品概要】

【販売名】:ブコラム(Buccolam®)口腔用液2.5mg・5mg・7.5mg・10mg(各プレフィルドシリンジ製剤)
【一般名】:ミダゾラム(Midazolam)
【効能・効果】:てんかん重積状態

【用法・用量】
通常、修正在胎52週(在胎週数+出生後週数)以上1歳未満の患者には、ミダゾラムとして1回2.5mg、1歳以上5歳未満の患者には、ミダゾラムとして1回5mg、5歳以上10歳未満の患者には、ミダゾラムとして1回7.5mg、10歳以上18歳未満の患者には、ミダゾラムとして1回10mgを頬粘膜投与する。

【投与法及び投与量に関連する注意】
◆本剤のシリンジ液剤の全量を、片側の頬粘膜に緩徐に投与すること。
◆体格の小さい患者や用量が多い場合は、必要に応じて両側の頬粘膜に半量ずつ投与すること。
◆18歳以上の患者に対する有効性及び安全性は確立していない。(国内臨床試験では18歳未満で実施された)









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超希少難病/急性肝性ポルフィリン症治療薬「ギボシラン」を承認申請

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Alnylam(アルナイラム)Japan株式会社(本社:東京都千代田区丸の内)は9月29日、指定難病の急性肝性ポルフィリン症(AHP)の治療薬として、RNA干渉(RNAi※)治療薬「ギボシランナトリウム:一般名/FDA承認名:Givlaari(givosiran)」について、日本国内における製造販売承認申請を行った。
本剤は、厚生労働省から希少疾病用医薬品に指定されており優先審査される。


急性肝性ポルフィリン症治療薬ギボシラン
超希少指定難病
急性肝性ポルフィリン症(AHP)RNAi治療薬
「一般名:ギボシランナトリウム(givosiran)/EU・FDA承認名:Givlaari」


急性肝性ポルフィリン症(AHP=acute hepatic porphyria)は、重症かつ原因不明の腹痛や嘔吐の呼吸器症状、痙攣などの消耗性発作を特徴とする遺伝性の超希少疾患群です。
発作中に麻痺や呼吸停止の可能性もある事から、生命を脅かす危険があります。

急性肝性ポルフィリン症の多くの患者で、発作と発作の間にも持続する疼痛などの慢性症状を伴い、日常機能とQOL(生活の質)に悪影響を及ぼす疾患です。


急性肝性ポルフィリン症AHPの症状


急性肝性ポルフィリン症(AHP)には、急性間欠性ポルフィリン症(AIP=acute intermittent porphyria)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP=hereditary co-proporphyria)、異型ポルフィリン症(VP=variegate porphyria)、及びALA脱水酵素欠損性ポルフィリン症(ADP=ALA dehydratase deficiency porphyria)の4つの病型があり、これらを総称します。(特に発症者の多い急性間欠性ポルフィリン症を指す事が多い)

ポルフィリン症候群の病型分類と病型別発症割合

いずれの病型も、遺伝子変異により肝臓内のヘム※産生に必要な特定の酵素が欠如する事で生じ、これにより体内のポルフィリンが毒性量まで蓄積します。


急性肝性ポルフィリン症発作のメカニズム

[*ALAS1=アミノレブリン酸合成酵素1]
[*ヘム=たんぱく質のグロビンと結合してヘモグロビンとなり、鉄としてその赤色素部分に酸素が結合し、全身に輸送する酸素の担体となる]





急性肝性ポルフィリン症(AHP)の発症は、労働年齢や、出産年齢の女性に偏って発生し、20~30代の女性に多いことが明らかになっており、女性ホルモン分泌との関係で、閉経後は症状が発現しにくくなるとされています。

症状などから、婦人科疾患やウイルス性胃腸炎などの一般的な他の疾患と診断される場合もあり、確定診断までに10年以上かかる患者もいます。


急性肝性ポルフィリン症の症状は様々で、最も良く見られる症状は重症かつ原因不明の腹痛で、随伴症状として、呼吸不全、てんかん発作、四肢痛、背部痛、胸痛、悪心、嘔吐、精神の錯乱、不安、痙攣、四肢脱力、便秘、下痢、暗色尿(赤褐色)または赤色尿も見られます。

急性肝性ポルフィリン症の内臓神経症状


ポルフィリン分子の蓄積による発作は、突然起こり、永久的な神経学的損傷や、死に至ることもありながら、これまで急性肝性ポルフィリン症に対する治療選択肢は、これら発作を特徴づける激しく繰り返す痛みを部分的に除去するなどしかありませんでした。
〔*Alnylam Japan 株式会社プレスリリース:2020年9月29日より]
〔*MSDマニュアル・プロフェッショナル版 /10. 内分泌疾患と代謝性疾患 /ポルフィリン症 /急性ポルフィリン症 より]




急性肝性ポルフィリン症のイメージ2
急性肝性ポルフィリン症のイメージ1

日本国内のポルフィリン症の患者数は、2011年の全国調査では63例でした。
但し、多くの未診断症例が存在している事も示唆されており、1920年(大正9年)に、国内で初めてポルフィリン症が報告されてから2010年12月末までの91年間に、926例のポルフィリン症関連疾患の患者が報告されていますが、実際にはもう少し多いと考えられています。

〔*Alnylam Japan 株式会社 /急性肝性ポルフィリン症(AHP)の疫学 /Porphyria.jp]
〔*公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター /ポルフィリン症診断ガイドライン(厚生労働省研究班 /指定難病254)]






『ギボシラン(ギボシランナトリウム/Givlaari(givosiran))』は、急性肝性ポルフィリン症を治療するための“アミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)”を標的とするRNAi(RNA干渉※)治療薬です。
有効性と持続性を強化するために、安定化を促進したESC-GalNAcコンジュゲート技術に基づいています。


   ※▲RNA干渉とは‥‥標的遺伝子と同じ配列をもつ2本鎖のRNA(リボ核酸)を細胞内に導入すると、mRNA(メッセンジャーRNA)が分解され、遺伝子の発現が抑制される現象です。標的となるmRNAを分解させる事が出来るため、癌やエイズ、遺伝病の治療などへの応用が期待されています。

RNAi治療薬の治療作用機序
RNAi治療薬の仕組み
DNA中の異常な染色体情報を細胞内でRNA→→mRNAにコピーした段階で、
このmRNAを切断する事で、異常なタンパク質が作られるのを阻止する。


「ギボシラン(givosiran)」は、アミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)メッセンジャーRNA(mRNA)を特異的に低下させる事で、急性肝性ポルフィリン症の発作やその他の症状の発現に関連する毒性を減少させます。


国際共同第III相試験(日本を含む世界18カ国から94名のAHP患者)に於いて、ギボシランはプラセボ(偽薬)と比較して、入院、緊急訪問診療、自宅での静脈内ヘミン投与を要するポルフィリン症の急性発作率を有意に低下させる事が示されました。







参考:米国での承認処方情報

製品名:GIVLAARI(givosiran)皮下注射剤
適応症:成人の急性肝性ポルフィリン症
使用法:推奨用量は2.5mg/kgです。
製品特徴:アミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)指向性低分子RNA干渉治療に適応。
投薬法:皮下注射。
剤形:注射剤。単回投与。バイアルで189mg/mL。

禁忌:ギボシランに対する重度の過敏症。
警告と注意事項:アナフィラキシー反応。医療サポートが利用可能であることを確認する事。投与時にアナフィラキシー反応が起こった場合、適切に管理する。













血液脳関門通過型ムコ多糖症II型治療剤「パビナフスプアルファ」を承認申請

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JCRファーマ株式会社(本社:兵庫県芦屋市春日町)は9月29日、血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用したムコ多糖症II型(ハンター症候群)治療酵素製剤「パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)/開発番号:JR-141血液脳関門(BBB=blood-brain barrier)通過型遺伝子組換えイズロン酸2スルファターゼ」について、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったと発表しました。
「JR-141(パビナフスプ アルファ=Pabinafusp Alfa)」は、2018年3月に先駆け審査指定制度の対象品目に指定されています。



イメージ・ムコ多糖症
*写真はイメージです。
ムコ多糖症II型(ハンター症候群)治療酵素製剤
「パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)/開発番号:JR-141」


ムコ多糖症II型(MPS:Mucopolysaccharidosis II)は、日本で最も多く報告されているライソゾーム病の一種で、ムコ多糖症は7つに分類され、ハンター症候群はムコ多糖症II型と呼ばれ、ムコ多糖を体内で分解するライソゾーム酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ/Iduronate-2-sulfatase)が生まれつき欠損する事で発症する、X染色体連鎖劣性遺伝性疾患で、全身の細胞にムコ多糖が蓄積する遺伝性代謝異常症です。
 ※ムコ多糖は、アミノ酸を含む多糖(ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸)の総称。


ムコ多糖症II型(ハンター症候群)は、中枢神経障害を伴う重症型と、中枢神経障害を伴わない軽症型に大別されていますが、疾患の重なる中間型もあります。

ムコ多糖症の分類と欠損酵素と原因遺伝子

日本国内に於ける患者数は、約250人(JCRファーマ株式会社調べ)が報告されている。

幅広い症状がある中、よく見られる症状は、記憶・学習障害、発達の遅れ、低身長、骨格変形、特徴的な顔立ち、固い関節、お腹の膨れ(肝脾腫)、臍・鼠径ヘルニア、心弁膜症(心雑音)、中耳炎、難聴など・・・。


これらの症状は赤ちゃんの頃は目立たず、3~5歳頃になるとハッキリして来ます。
重症の患者では、徐々に症状が進行し10歳代になると、歩けなくなる・自分で食事が出来なくなる・自発呼吸が困難になる・寝たきりになる、などの状態になります。

また軽症の患者では、軽度の低身長や心雑音のみで、大人になるまで診断されない事もあります。

▽ムコ多糖症II型に対する既存の治療酵素製剤(エラプレース)は、血液脳関門(BBB)を通過出来ない為、脳内で薬の効力を発揮できず、中枢神経症状に効果が期待できないと言う課題がありました。


血液脳関門-BBBの構造と仕組み

血液脳関門は、様々な有害物質から、脳の神経細胞を守るために、血液から脳内への物質の移行を制限する防御機能で、脳の恒常性維持に不可欠となっている。

この血液脳関門は、脳全体に細かく網の目のように張り巡らされ、全長約600~650キロメートルに及ぶ脳毛細血管に隙間なく張り巡らされている。








JR-141_パビナフスプアルファの構造

『JR-141(パビナフスプ アルファ/Pabinafusp Alfa)』は、マンノース-6-リン酸受容体を介した作用に加え、JCRファーマ社が開発した独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」により、トランスフェリン受容体(TfR)を介して血液脳関門を通過させる事で、脳の中枢神経症状に対する作用を期待される薬剤です。


JR-141の作用機序・脳内到達輸送経路

JR-141を52週間投与した国内臨床第3相試験では、トランスフェリン受容体への親和性だけでなく、JR-141が血液脳関門を通過し、神経細胞へ到達する事を確認し、脳の各組織中への治療酵素成分の取り込み、蓄積基質の減少を確認した言う。


主要評価項目とした、中枢神経症状に対する有効性評価の代替指標である、脳脊髄液中の『ヘパラン硫酸』濃度が、全症例で減少し主要目的を達成。
静脈内投与による「JR-141」の脳への薬剤移行や、中枢神経系障害の改善効果において、脳内の濃度が十倍~百倍に上昇する非常に良好な結果を示した。



BBB・血液脳関門通過技術J_Brain_Cargo


安全性ついては、「臨床上問題となるような重要な有害事象は認められなかった」と言う事です。



また、JCRファーマ株式会社は10月30日、血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用した、ムコ多糖症I型(ハーラー症候群、ハーラー・シャイエ症候群、シャイエ症候群)に対する、グローバル第I/II相臨床試験における患者への投与を開始したと発表しました。

ブラジル・米国、日本に於いて、安全性を確認する投与治験が開始されており、この結果に基づいて第3相試験が間もなく開始されるだろうとしています。












再発卵巣がん治療薬PARP阻害剤「ゼジューラ®カプセル」が製造販売承認を取得

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武田薬品工業株式会社(グローバル本社:東京都中央区日本橋本町二丁目)は9‎月‎25‎日、経口ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP=Poly ADP Ribose Polymerase)阻害薬「ゼジューラ®(ZEJULA™)カプセル100㎎」(一般名:ニラパリブトシル酸塩水和物=Niraparib)について、【卵巣癌に於ける初回化学療法後の維持療法白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌に於ける維持療法白金系抗悪性腫瘍剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣癌】を適応とする再発卵巣がん治療薬として、厚生労働省より製造販売承認を取得しました。


卵巣癌PARP阻害薬ゼジューラカプセル
再発卵巣がん治療薬
経口ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬
「ゼジューラ®(ZEJULA™)カプセル100㎎(一般名:ニラパリブトシル酸塩水和物=Niraparib)」




卵巣がん
卵巣がんは、女性特有の癌で、女性生殖器悪性腫瘍の中で、罹患者数・死亡者数ともに年々増加しており、最も死亡者数の多い疾患です。

近年では年間に約10,000人の女性が新たに卵巣がんに罹患し、約4,800人が亡くなっています(2012~2014年)。
卵巣がんは、主に閉経期と閉経後(45~70歳)の女性に最も多く発生します。


卵巣がん年齢別罹患率


卵巣がんのリスクの上昇は以下の影響が考えられており、80%以上は、卵巣の表面に発生する上皮性卵巣がんです。
  • 第1度近親者の卵巣癌の既往
  • 未経産
  • 高齢での出産
  • 早い初経
  • 閉経の遅れ
  • 子宮内膜癌(子宮体がん),乳癌,または結腸癌の既往歴または家族歴


〔*武田薬品工業株式会社/ 国内向けニュースリリースより〕
〔*MSDマニュアル家庭版 /22.女性の健康上の問題/ 女性生殖器のがん/ 卵巣がんより〕
〔*アストラゼネカ(公式)株式会社/ 卵巣がんについて: 卵巣がんとは?より〕





卵巣癌と卵巣嚢胞の違い

卵巣癌と卵巣嚢胞の違い

卵巣は、骨盤内の比較的奥深くに位置する臓器のため、初期の段階では自覚症状に乏しく、卵巣がんの進行期分布を観ると、半数近くが予後不良な進行期ステージⅢ・Ⅳ期症例となっています。

卵巣がんの自覚症状には、腫瘍の増大に伴う“腹部膨満感、下腹部痛、頻尿など”がありますが、早期発見が困難な事から予後不良な癌として知られています。

卵巣がんステージ別(病期)進行度
卵巣がん超音波検査画像
卵巣がん超音波検査画像


治療は、極く初期の段階を除き、手術療法と化学療法の組み合わせが基本となります。
また、半数以上の患者が治療後再発のリスクがあり、不安を抱えながら過ごしています。


〔*武田薬品工業株式会社/ 国内向けニュースリリースより〕
〔*MSDマニュアル家庭版 /22.女性の健康上の問題/ 女性生殖器のがん/ 卵巣がんより〕




Robotic Surgery for Ovarian, Cervical, Uterine Cancer - Baltimore, Mercy
ダヴィンチ・ロボットによる卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん全摘の外科手術。
海外サイトに飛びます(2012年版)






「ゼジューラ®カプセル」は、これまでの抗がん剤とは異なる作用機序のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬で、DNAの相同組換え修復機構が機能していないがん細胞に対し、特異的に細胞死を誘導する新規機序の薬剤です。


オラパリブ作用機序
PARP阻害薬は、既にアストラゼネカの「リムパーザ錠(一般名:オラパリブ)」があり、「ゼジューラ®カプセル」は2番手となりますが、ただ、「ゼジューラ®カプセル」の方が適応が広くなっています。

リムパーザは、「卵巣がんに於ける初回化学療法後の維持療法」の適応について、BRCA遺伝子変異陽性で、HER2陰性の患者を対象としていますが、「ゼジューラ®」は、BRCA遺伝子変異の発現有無に関係なく使用できる。


ゼジューラ(ZEJULA)の作用機序

また「ゼジューラ®」の適応に入る、「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣がん」の適応は、リムパーザには無い。

さらに、リムパーザは1日2回経口投与で用いるが、「ゼジューラ®」は1日1回経口投与で用いる。







【製品概要】
【販売名】:ゼジューラ®(ZEJULA™)カプセル100㎎
【一般名】:ニラパリブトシル酸塩水和物=Niraparib
【効能・効果】:

〇卵巣癌における初回化学療法後の維持療法
〇白金系抗悪性腫瘍剤(プラチナ製剤)感受性の再発卵巣癌における維持療法
白金系抗悪性腫瘍剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣癌

【用法及び用量】:
通常、成人にはニラパリブとして1日1回200mgを経口投与する。但し、本剤初回投与前の体重が77kg以上、尚かつ血小板数が150,000/μL以上の成人には、ニラパリブとして1日1回300mgを経口投与する。尚、患者の状態により適宜減量する。

【国内製造販売承認取得日】:2020年9‎月‎25‎日
【薬価】:100mg1カプセル 1万370.20円(1日薬価:2万740.40円)









「ゼジューラ®」は、バイオマーカーで限定されず、卵巣がん患者の初回、及び再発の維持療法として──また再発卵巣がん患者の後方ライン(サードライン及び第4ライン)での治療として、1日1回単剤での投与が可能な唯一のPARP阻害剤となっています。
本剤が、国内の卵巣がん患者にとって、新たな治療選択肢となると期待されます。


「ゼジューラ®」は2017年3月に、再発性上皮性卵巣がん卵管がん、又は原発性腹膜がんで、白金系抗悪性腫瘍剤を基本とした化学療法で完全奏効、又は部分奏効が得られた成人患者の維持療法として、米国食品医薬品局(FDA)から最初の承認を取得しました。










爪水虫治療薬に睡眠薬混入、70代女性死亡・134人が健康被害

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製薬会社「小林化工(福井県あわら市)」の「爪水虫(つめみずむし)」などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入していた問題で、小林化工は12日、服用して12月10日に死亡した患者が、首都圏の病院に入院していた70代の女性だと発表した。



同社は自主回収を始めているが、死者が判明したのは初めて。
亡くなった女性が服用したのは、イトラコナゾール錠50「MEEK」のロット番号「T0EG08」。小林広幸社長は12日、記者団の取材に「重大な過失を起こしたことを深くおわびする。責任の重大さを痛感している」と謝罪した。
死亡との因果関係について詳しく調べるとしている。


福井県によると、問題の錠剤を処方されたのは31都道府県の364人。最も多いのは大阪府の58人で、次いで徳島県57人、岐阜県49人、東京都35人など。




同社によると、同じロット番号の錠剤は約9万錠あり、服用後に意識を失ったり、ふらついたりするなどの健康被害が12日時点で134件寄せられている。このうち救急搬送や入院が確認された事例(退院者を含む)は33件、自動車などによる事故は15件に上る。


小林化工によると、Meiji Seika ファルマと共同販売している爪白癬などの治療に用いる経口抗真菌薬「イトラコナゾール錠50『MEEK』」の一部ロットのクラスI回収事案について、1日4錠服用すると、混入したベンゾジアゼピン系睡眠薬「リルマザホン塩酸塩水和物」が、通常臨床用量の10~20倍に達する事を7日、明らかにした。





症状は、ふらつきや意識消失などの健康被害が想定され、6日までに、▲交通事故(自損)8件▲精神・神経系の症状で救急搬送・入院10件……など、計63件の健康被害を把握していたと言う。

1錠中に含まれるリルマザホン塩酸塩水和物は5mg。

1日4錠服用すると計20mgになり、通常臨床用量の10~20倍に達すると言う。

これによって、ふらつき、意識消失のほか、▲転倒▲記憶消失▲意識もうろう──などの症状を引き起こす可能性がある。

具体的な事例としては、服用直後に意識を失ったり、ろれつが回らなくなったりしたと言う。自動車の運転中に意識を失い、中央分離帯に接触した例も報告されている。

小林化工は「甚大な健康被害が発生」とし、7日、薬剤師会などを通じて回収への協力を呼び掛けていた。





薬は厚生労働省の承認を得ていない工程で製造されており、原料を継ぎ足す際に、睡眠導入剤の成分である「リルマザホン塩酸塩水和物」を取り違えて入れたとみられる。

小林化工ではダブルチェックが機能せず、見抜けなかったと言う。

福井県は9日に同社を立ち入り調査。
医薬品医療機器法違反に当たる可能性もあるとみて調べている。
薬は医師の処方箋が必要のため、市販はされていない。




この影響は他の後発医薬品企業にも影響を及ぼしており、小林化工が経口抗真菌剤「イトラコナゾール錠50」を自主回収したため、科研製薬の同じ規格品が供給制限を余儀なくされている。

後発医薬品のイトラコナゾール錠は、小林化工とMeiji Seika ファルマが50/100/200を共同販売していたが、睡眠剤リルマザホン塩酸塩水和物が混入した50の一部ロットをクラスI、50のそれ以外のロットと100、200の全ロットをクラスIIで自主回収している。


ただし、今回の措置を受け需要が急増した科研製薬は同錠50について、今後の安定供給のため、出荷調整を実施。既存の取引先を優先し、新規は当面割り当てを実施する。


それ以外では、日医工が同錠50/100を販売しており、自主回収でも代替品として推奨された。
日医工は十分な在庫があるとして、供給制限は行わない。

また、イトラコナゾールの「カプセル50mg」を扱う沢井製薬や、「内用液1%」を持つファイザーも錠剤回収の影響は受けていないと言う。(日刊薬業)




国内初の片頭痛発作発症抑制剤「エムガルティ皮下注」の製造販売承認を了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は12月2日、日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市中央区)が、国内に於ける製造販売承認を申請していた片頭痛の発症抑制に係る適応で、初の抗体製剤となる抗CGRP抗体薬「エムガルティ(Emgality™)皮下注120mgオートインジェクター、同皮下注120mgシリンジ(一般名:ガルカネズマブ(galcanezumab-gnlm/遺伝子組換え))」について、「片頭痛発作の発症抑制」の効能・効果の新有効成分含有医薬品として、承認申請を了承した。

厚生労働省によると、この日の部会では投与対象患者や医療機関の要件など、多岐に渡る議論があったと言う事で。今後作成される最適使用推進ガイドラインで投与対象患者などを明らかにするとしている。
本剤の正式承認は2021年1月中に正式承認されると見込まれる。


「エムガルティ皮下注」製剤は、日本国内での販売提携契約を結んでいる第一三共株式会社(本社:東京都中央区)が流通及び販売を行い、日本イーライリリーが製造販売承認を有し、医療従事者への情報提供活動は両社で実施する。

片頭痛抑制剤エムガルティ(ガルカネズマブ)皮下注120mg
抗CGRP抗体/片頭痛発作の発症抑制剤
「エムガルティ(Emgality™)皮下注(一般名:ガルカネズマブ)」



【片頭痛とは】
一般社団法人 日本頭痛学会によると、日常生活に支障をきたす様な、頭痛の原因となる何らかの疾患がない頭痛(一次性頭痛)で、比較的頻度の高い疾患です。
米国では女性の12.9%、男性の3.6%(全米=約3000万人)が抱え、日本では、成人の約8.4%が片頭痛に罹患していると報告されています。

症状は、頭部の片側もしくは両側(こめかみを起点)に、頭全体に心臓の拍動に合わせて、中等度から重度の強さのズキズキと脈打つような拍動性の痛みを特徴とし、痛みが4~72時間持続すると共に、随伴症状として、悪心や嘔吐、光過敏、音過敏を伴うこともあります。



片頭痛発作イメージ

日常生活に大きく支障を抱えながら過ごす負担は、全疾患の中で2番目に大きいと言われています。
(1位⇒非腸チフスサルモネラ菌侵襲性腸疾患……https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(19)30418-9/fulltext)

〔*日本イーライリリー株式会社/ 国内向けニュースリリースより〕
〔*MSDマニュアル家庭版/ 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気/ 頭痛/ 片頭痛より〕




【片頭痛の前兆と予兆】
頭痛の前に起こる「前兆」症状の有無により、「前兆のある片頭痛」「前兆のない片頭痛」の二つのタイプに分類されます。

前兆症状は、キラキラした光、ギザギザの光(円弧から円形に)が視界に出現し、次第に視界全体に広がり見えづらくなる(閃輝暗点)と言った、視覚性の症状が最も多く(90%以上)、ほかにもチクチク感や、感覚が鈍くなる感覚症状、言葉が出にくくなる言語症状などがあります。

片頭痛の前兆キラキラ光
閃輝暗点(せんきあんてん)
典型的な片頭痛発作の前兆と言われる。

特殊な前兆として、半身の脱力感や回転性めまいを認める場合もあります。
通常は,前兆が5~60分続いた後に頭痛が始まります。

頭痛が始まる前に、何んとなく頭痛が起こりそうな予感や気分の変調、眠気、疲労感・脱力感、首すじの凝りといった症状を経験する場合がありますが、これは前兆とは区別して「予兆」と言います。

片頭痛の診断は,国際頭痛学会の診断基準を確認して行います。(特に前兆の無い場合)


片頭痛の診断基準・国際頭痛学会
〔*日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会訳:国際頭痛分類第2版 新訂増補日本語版〕
〔*日本頭痛学会編:慢性頭痛の診療ガイドライン2006〕





【※注意】
※抗CGRP抗体薬「エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)」の治療目標となる片頭痛とは、『慢性片頭痛』及び『反復性片頭痛』のことであり、ネット上に氾濫する“緊張型頭痛”、“群発頭痛”ではありません。注意が必要です。


【片頭痛発作の発症抑制の詳細】
◆慢性片頭痛(1ヵ月あたりの頭痛日数が15日以上、及び片頭痛日数が8日以上)
◆反復性片頭痛(1ヵ月あたりの頭痛日数が6日以上14日以下、及び片頭痛日数が4日以上)

以上が治療対象となる予定です。
また※片頭痛の診断基準・前兆のある片頭痛については、本文末尾に表を掲載しています。



片頭痛と誤診される頭痛
〔*大塚製薬株式会社プレスリリース/ 慢性および反復性片頭痛の予防的治療/ 片頭痛予防薬「フレマネズマブ」の国内における臨床試験結果について。2020年1月27日より〕



【片頭痛の原因】
片頭痛の病因、及び病態はいまだに明らかにされていません。何が起因となって血管拡張物質(セロトニンとは異なる)の分泌増加が起こるのか、根本は解明されていません。

しかし、放射線免疫学の進歩により、第5脳神経(三叉ニューロン=三叉神経)が刺激された時に発病し、第5脳神経に沿って、眼、頭皮、前頭部、上瞼、口、顎から脳に向かって信号(痛みに関する信号を含む)を送る事で、特有の痛みが増強されます。


三叉神経_第5脳神経
第5脳神経(三叉ニューロン=三叉神経)で、痛みを強める物質=『CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)』を最大50%産生することが実証されています。
CGRPは、37個のアミノ酸からなるペプチド(タンパク質を構成するアミノ酸の結合体)です。
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の頸静脈濃度は、片頭痛発病中は増加し続け、ズキズキするような片頭痛を頭部全体に誘発・持続させます。


片頭痛・第5脳神経網のCGRPレベル

CGRPは、作用の長い期間を持つ最も強力な内因性血管拡張物質の1つで、三叉末端から放出されたCGRPは、髄膜および脳血管表面の平滑筋細胞上に存在するCGRP受容体(CGRP receptor)を介して血管拡張をもたらします。

このCGRPメカニズムは、ペプチド、又はその受容体のいずれかを、低分子アンタゴニストやモノクローナル抗体の標的として結合させる事で、働きを阻害する事ができます。

〔*MSDマニュアル家庭版/ 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気/ 頭痛/ 片頭痛より〕
〔*片頭痛の処置のモノクローナル抗体/ ©2020 SlidePlayer.com Inc./ Calcitonin Gene Related Peptide and Migraine Current Understanding and State of Development.〕





【ガルカネズマブ(galcanezumab-gnlm)について】
「エムガルティ皮下注(ガルカネズマブ)」は、片頭痛で役割を果たしていると考えられているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP=calcitonin gene-related peptide)に特異的に結合し、CGRPの受容体への結合を阻害するよう設計された新規作用機序のモノクローナル抗体です。


片頭痛発作予防薬エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序
片頭痛発作予防薬エムガルティ(ガルカネズマブ)作用機序

片頭痛の予防を適応として2018年9月、米国に於いて承認を取得し、2020年7月現在、「片頭痛の予防」に係る効能・効果で、欧米を含む40以上の国・地域で承認済。
また「反復性群発頭痛」の治療では米国を含む5か国で承認済である。





+++++++米国FDAでの製品承認概要+++++++

▽エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター、同皮下注120mgシリンジ(一般名:ガルカネズマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー)
▽「片頭痛発作の発症抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

用法・用量は、「通常、成人にはガルカネズマブとして初回に240mgを皮下投与し、以降は1か月間隔で120mgを皮下投与して用いる」

同剤の使用に係る患者及び医療機関などの要件、留意事項は最適使用推進ガイドラインで示される。
正式承認取得後は、製造販売承認は日本イーライリリーが保持し、流通及び販売を第一三共が行い、両社で情報提供活動を実施する。

「エムガルティ(Emgality)」は、月1回皮下投与する自己注射薬です。本剤の成分(正式承認後に添付文書として記載)に対して過敏症の既往歴を有する患者に対しては禁忌とされています。


片頭痛の診断基準・前兆りある片頭痛










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