米国アレクシオン・ファーマスーティカルズ(米コネチカット州)とアレクシオンファーマ合同会社(東京都渋谷区)は7月6日、命を脅かす、極めて稀な代謝性疾患である『低ホスファターゼ症(HPP)』の患者に対する治療薬として、「ストレンジックⓇ(=STRENSIQⓇ)」(一般名:アスホターゼ アルファ=Asfotase Alfa)の使用に関する新薬承認申請(NDA)を、厚生労働省から承認したと発表した。
本剤は低ホスファターゼ症(HPP)の治療薬として、世界に先駆けて日本で初めて承認されました。
アレクシオンファーマは、日本で最初の「ストレンジックⓇ)」の市販品によるHPP患者の治療が、第3四半期(10月から12月)後半までには開始されると見込んでいます。
「低ホスファターゼ症」は、極めて稀な代謝性骨疾患で、組織非特異的アルカリホスファターゼ(ALP)遺伝子の活性低下により、骨の石灰化が障害される常染色体劣性または優性の遺伝性疾患です。
病状は、骨が成長できず、肺が成長しても、肋骨が成長できないので、肺炎や呼吸困難などを起こしやすく、呼吸不全で亡くなったり、人工呼吸器での管理が必要となります。
またカルシウムが骨に沈着できない為、血中、尿中に出てしまい、高カルシウム血症、尿症を引き起こし、進行すると腎不全になり、予後は不良です。
「低ホスファターゼ症」は重症度、発症時期などにより、6つに分類されます。
1.周産期重症型 : 最も重症な病型で、出生時に四肢短縮、頭囲の相対的拡大、狭い胸郭を認める。X線で、全身骨の低石灰化、長管骨の変形、などを認める。
2.周産期軽症型 :骨変形などから胎児期に診断された低ホスファターゼ症症例の中に、良好な骨石灰化を認める予後良好な病型。
3.乳児型 :生後6か月までに発症し、乳児期に死亡する症例もある予後不良な病型。
4.小児型 :小児期に発症するタイプで重症度はさまざまである。乳歯の早期喪失を伴うのが特徴である。
5.成人型 :成人期、主に中年期になってから発症するタイプで、病的骨折、骨痛によって気づく。
6.歯限局型 :骨に病変が限定されるタイプで、乳歯の早期脱落などを認める。
「低ホスファターゼ症」を引き起こす、遺伝子変異の場所は、第1番染色体上にあります。
「低ホスファターゼ症(HPP)」の根本的な原因である、骨形成に必要な指令を出すアルカリホスファターゼ(ALP)遺伝子は、第1番染色体のp36.12座に存在する『ALPL』遺伝子の欠損が原因ですが、この遺伝子の塩基対は21,508,981~21,578,411と広範に分布しており、どの部分の塩基対が欠損するかによって、発症病例も異なって来る。
患者数は、海外では10万人に1人くらいと言われていますが、日本での正式な調査はなく、毎年、10人ほど、この病気の子どもが生まれていると思われますが、軽症の場合は、診断されずに過ごされている方も多いと思われています。
2010年に小児科医・産科医にアンケート調査を行ったところ、合計24名の患者の存在が確認され、このうち胎児期に発症した例が、15名と過半数を占めたと報告されている。
しかし、これまで有効な治療法も薬もありませんでした。
今回世界で初めて日本で承認された「ストレンジックⓇ」は、低ホスファターゼ症の根本的な原因であるアルカリホスファターゼ(ALP)の欠損を解消すべくデザインされた、骨を標的とした画期的新薬の酵素補充療法です。
「ストレンジックⓇ」による治療は、主に骨組織において欠乏したALPの補充、骨石灰化を阻害する無機ピロリン酸を分解し、産生した無機リン酸がカルシウムとともにハイドロキシアパタイトを生成することにより、骨石灰化を促進します。
それにより、重篤な骨格および全身性の重篤な病態と早期死亡を予防することを目標としている。
【用法・用量】
通常、アスホターゼ アルファ(遺伝子組換え)として、1回1mg/kgを週6回、又は1回2mg/kgを週3回皮下投与する。なお、患者の状態に応じて、適宜減量する。