バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区)は、2016年12月19日に国内での製造販売承認を取得した、「多発性硬化症の再発予防、及び身体的障害の進行抑制」の適応症で「テクフィデラ®カプセル120mg, 同240mg(一般名:フマル酸ジメチル)」について、2月15日に薬価収載された事を受け、これに基づき2月22日から発売を開始した。
多発性硬化症治療薬「テクフィデラ®カプセル120mg, 同240mg」
Tecfidera®(dimethyl fumarate)は2013年に米国、2014年に欧州で承認された、
抗炎症作用と神経保護作用を有する経口薬です。
多発性硬化症(MS=Multiple Sclerosis)は、深刻な慢性進行性神経疾患であり、視力障害、運動障害、認知機能、感覚障害、心理社会的機能の全てに様々な神経症状を呈する、中枢神経系の“脱髄疾患”の一つで、ミエリン破壊、オリゴデンドロサイトの細胞死、軸索損傷、及びその後の神経細胞の喪失を特徴とする、自己免疫疾患です。
※多発性硬化症(MS)の原因は自己免疫疾患で、身体を細菌やウイルスから守る白血球やリンパ球などが、自分の脳や脊髄を攻撃する事で発症しますが、何故、自己免疫攻撃が起こるかは分かっていません。
多発性硬化症の有病率は人種間及び地域間で差があり、日本における推定有病率は、欧米諸国の10%程度と報告されています(多発性硬化症・EBMに基づく脳神経疾患の基本治療指針2015)。
また、多発性硬化症の日本での罹患率は、10万人当たり10.8~14.4人と報告されています。男女比は1:3.3と女性が多く、20~30歳代に好発します。
日本で多発性硬化症に罹っている方の数は、視神経脊髄炎の方も含めて現在2万人と推定され(一般財団法人 北海道多発性硬化症・視神経脊髄炎総合支援センター)、再発を繰り返す再発寛解型が9割を占めている。(2014年特定疾患医療受給者証交付件数)
多発性硬化症(MS)の治療では、早期に診断して薬物治療を開始する事で、病勢進行を抑制させると共に、再発させない事が重要となりますが、患者の中には、『指先の痺れ』や『視力低下』、『構音障害(話し言葉を正確・明瞭に発音出来ない)』、『歩行障害』などの自覚症状から、整形外科や脳神経外科を受診したものの、「異常なし」とされたり、「脳梗塞」など他の疾患と診断された例があると言う。
多発性硬化症の再発・進行抑制に用いる疾患修飾薬(disease modifying drug)は、2000年以降、IFN-β-1a製剤、IFN-β-1b製剤、フィンゴリモド、ナタリズマブ、グラチラマー酢酸塩の5剤が登場、用いられて来た。
しかしそれぞれの薬剤は、欧米で長期の使用経験があるものの、ナタリズマブでは副反応として進行性多巣性白質脳症(PML)の発生リスクが報告され、フィンゴリモドは、長期の安全性についてはデータの蓄積が無い事、グラチラマー酢酸塩は毎日注射、IFN-βは隔日または週1回の投与による注射部位反応が問題となり、IFN-βではインフルエンザ様症状が発現し、患者のQOLを低下させるという難点がある。
日本人の病状は欧米に比べ軽症例が多く、錠剤化(カプセル剤)されているのが、フィンゴリモドのみだけであり、この薬剤を初期から使用するのは難しいのが現実となっている。
多発性硬化症は……
若年で発病し、終生罹患する為、「就学・資格の取得が困難」「就職先を見つけるのが困難」「資産形成の機会喪失」「結婚・出産の機会喪失」「育児の困難」と言った、様々な困難にも見舞われる。
その為、初期から使いやすい経口薬で、身体的な負担が少なく、継続して使用できる第一選択薬が待ち望まれていました。
【製品概要】
【製品名】:テクフィデラ®カプセル120mg, 240mg
【一般名】:フマル酸ジメチル(dimethyl fumarate)
【効能・効果】:
多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制(進行型多発性硬化症に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。)
【用法・用量】:
通常、成人にはフマル酸ジメチルとして1日240mgを1日2回に分けて経口投与する事から開始し、1週間後に増量し1日480mgを1日2回に分けて経口投与する。
【収載薬価】:
テクフィデラ®カプセル120mg: 2037.20円
テクフィデラ®カプセル240mg: 4074.40円
【副作用】:
国内で実施された再発寛解型多発性硬化症患者を対象とした臨床試験において、本剤1回240mg/1日2回を投与された111例中62例(55.9%)に副作用が認められた。
主な副作用は、潮紅(20.7%)、下痢(9.0%)、腹痛(6.3%)、悪心(6.3%)、ほてり(5.4%)、そう痒症(5.4%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(5.4%)であった。