英スコットランドのエジンバラ大学遺伝学上級講師、ジム・ウィルソン(Jim Wilson)博士の大規模国際比較研究グループは、両親の遺伝子の遺伝的類似点が似ていない程、生まれる子供の身長、及び知能が高い傾向がある事が、世界的な遺伝情報の選別パターンで見い出されたとの研究が報告され、7月1日、英科学誌「Nature(ネイチャー)」に掲載された。
研究グループは、今回の比較研究のために、世界中の主要都市と郊外に暮らす数千人に関する遺伝子解析(ゲノム解析)、及び健康状態を分析した。その数は世界で、35万人以上に達したと言う。
研究では、2人の親から全く同一の遺伝子コピーを受け継いでいる子供の例を探した。
その結果、両親の遺伝的相違点や多様性の差異が大きい程、子供の身長、認知技能(学ぶ事、覚える事、問題を解決する能力等)、学業成績、肺機能の4つの特徴に関連して、どれも両親の差異が大きい程優れていた───。
これまで両親が互いに近親であると、稀な遺伝性疾患のリスクが高まることは以前から知られており、親戚やいとこなど遺伝子情報が近い者同士では、子供は「進化の合理性(evolutionary fitness)」を減らすために、遺伝的疾患を抱えているのではないか・・・と、「種の起源」の著者で生物学者でもあるチャールズ・ダーウィンも指摘していました。
実際、チャールズ・ダーウィンは彼のいとこと結婚していて、それが彼自身の子供たちにどんな影響を及ぼすのかについて、疑問に思っていたのは有名な事です……。
しかし今回の研究は、近親婚についての遺伝的疾患や優越を調査した訳ではなく、人間の身長や知能が、どのような両親なら高い傾向になるか、と言う遺伝的相違点を探る事が目的でした。
そのために35万人以上の両親とその子供の、全遺伝子のゲノム解析を行った。
その結果、子供が両親から同一の遺伝子をコピーしていない場合、二つの家族(両親)に僅かでも関連はありそうに無く、もし同一の遺伝子コピー数が多いと、二つの家族の先祖に関連があった可能性があると言う事です。
また、両親の遺伝的相違点は、コレステロール値、体重、その他身体的特徴(○脚や腕の長さ等)に関しては、両親の遺伝子情報はあまり重要ではなかった。
それ以外の糖尿病、高血圧と心臓病のような健康問題は、人生後半に一般的に起こる事と、米ニューヨーク州ノースショア-LIJヘルスシステムの医学遺伝学者マーティン・バイラー博士は注意をうながしている。
(病院での問診票に、家族や親類の病歴を記載する欄があるが、若い時は、上記の項目では余り意味がないと言う事かな?)
最後にこの報告にコメントを寄せた、米ニューヨーク州ノースショア-LIJヘルスシステムの医学遺伝学者マーティン・バイラー博士によると、
『世界各地の35万人を超える人の遺伝情報から一貫したパターンを見出した点で「魅力的」なものだ』と述べているが・・・
ジム・ウィルソン博士の研究チームは・・・
『だからと言って、背が高く賢い子が欲しいからと、結婚相手のゲノムを解析し、先祖の遠い人を探すような事には意味がないと強調』
何故なら研究チームの推定によると、例えば、いとこ同士が結婚した場合、子供の身長は本来よりも1.2cm低くなる程度だと言う。
また、現代社会に見られる数多くの疾患については、両親の近縁性による影響はほとんどないと、冷静に述べている。
日本人の身長が、アフリカ人や南米の人々、北欧やロシア人と比べて小さいのは、島国という独特の閉鎖空間によって、昔は背の高い他民族との接触が極端に限られ、他国の植民地にもならなかったせいなのかもしれません。
今は背の高い人が増えているが、これは遺伝的に背が高くなったのではなく、国家間の人的交流と食生活の変化、住環境の変化が、主な要因であろう・・・。
ちなみに、両親や祖父母や曾祖父母が遺伝的に先祖が近いほど、白髪になるのが早いとの噂も・・・。その昔(縄文時代ころ)、隣の集落同士だったとか、或いは山脈の峠を挟んで向こう側同士だったとか・・・。