厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は6月9日、MeijiSeikaファルマ株式会社(本社:東京都中央区)とアッヴィ合同会社(本社:東京都港区)が共同販売している、「一般名:フルボキサミン(=フルボキサミンマレイン酸塩)」(販売名:デプロメール=Meiji / ルボックス=アッヴィ、)について、小児の強迫性障害を効能・効果に追加する承認申請を了承した。
「フルボキサミン(デプロメール/ルボックス)」は1999年5月に日本で最初のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)として発売され、成人に対する「うつ病・うつ状態、強迫性障害、並びに社会不安障害」の適応で販売されている。
他にも強迫性障害の適応を持つ製品には、SSRIのパキシル錠(2000年11月)があるが、パキシル錠もデプロメール錠/ルボックス錠も、成人患者に適応が限られている。
強迫性障害(OCD)は、強迫症状と呼ばれる症状(手を繰り返し洗う、鍵を閉めなかったなどと心配し頻繁に確認する等)に特徴付けられる疾患です。
更にこの疾患の特徴は、自分の行動が不合理だと言う自覚が患者自身にある事です。その為、「自分はおかしい」「周囲から変だと思われてしまう」という恐怖から、行動範囲が非常にせまくなってしまうことがあります。
適切な治療がなされない、もしくは治療が遅れた場合には、“強迫観念”や“執拗な確認行動”等により、日常生活が著しく妨げられ、外出困難などQOL(Quality of life=生活の質)を低下させます。
厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に於いて、強迫性障害治療薬の小児適応の開発が必要とされ、厚生労働省からMeijiSeikaファルマとアッヴィ合同会社の双方に開発要請されていた。
大脳皮質の基底にある島皮質。認知機能への関与は少ないとされ、
活動は味覚、嗅覚、触覚、痛覚、報酬、社会的な痛み、情動、共感、内臓覚などの
本能的記憶や直観力に向けられている。
(筑波大学医学医療系生命医科学域、大学院人間総合科学研究科感性認知脳科学専攻システム脳科学分野2016公開より)
『国立研究開発法人・量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所(千葉県千葉市稲毛区)』は2009年(平成21年)12月、世界で初めて、[11C]DASB(C-11放射性同位元素)を用いた陽電子断層撮像装置(PETプローブ)を使い、これまで不可能だった大脳皮質に於いて、セロトニントランスポーター(セロトニンを細胞内に取り込むタンパク質)を測定した。
その結果、強迫性障害患者群では、健常対照群と比較して、“大脳皮質の『島皮質(とうひしつ)』”でセロトニントランスポーターの減少が認められた。
国内の小児の強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder Children)の患者数は1万人強と推定されると言う。
本2剤は、2013年8月より「SME3110(フルボキサミンマレイン酸塩)の小児強迫性障害患者を対象とした臨床第Ⅲ相試験」を、日本国内で開始。
第Ⅲ相試験では、小児の強迫性障害患者にフルボキサミン又はプラセボ(偽薬)を10週間投与し、“小児用Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale 日本語版(JCY-BOCS)”の総スコアの投与開始時と最終評価時との変化量を比較。
無作為化二重盲検法による有効性の検証と、安全性を検討した。
その結果、フルボキサミン投与群はプラセボ投与群に比較して、主要評価項目であるJCY-BOCSの総スコアに於ける、投与開始時と最終評価時の変化量に有意な差が認められた。
また安全性に於いて、特に問題となるような事象は観察されなかった事を受け、2015年9月15日に結果を公表、追加承認申請に至った。
【製品概要】
【販売名】:
■ ルボックス錠25、同50、同75(フルボキサミンマレイン酸塩、アッヴィ)
■ デプロメール錠25、同50、同75(フルボキサミンマレイン酸塩、Meiji Seika ファルマ)
【追加される効能・効果】:小児強迫性障害
【用法・容量】:発売時に指示
【その他】:新用量医薬品。再審査期間4年。
本2剤(フルボキサミンマレイン酸塩)は、小児の強迫性障害の適応を持つ初の薬剤となります。
小児の強迫性障害について、海外では欧米など90の国・地域で承認済となっている。