ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都)は4月23日、CAR-T細胞医療(=キメラ抗原受容体T細胞医療)の「CTL019(開発コード、国際一般名:tisagenlecleucel、海外製品名:Kymriah™キムリア)」について、『小児を含む25歳以下のCD19陽性再発または難治性の、及び成人のCD19陽性再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫』の2つの適応で、再生医療等製品として、承認申請したと発表しました。
CAR-T細胞医療(キメラ抗原受容体T細胞医療)の承認申請は国内初となります。
B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、最も高い頻度で見られる小児がんであり、ALLと診断される患者の、60%が20歳未満で発症します。(日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版)
日本に於けるALLの総患者数は約5,000人と報告されており(厚生労働省 平成26年患者調査)、患者の約20%で再発が見られます。
再発・難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病の患者は、化学療法や放射線、標的療法、同種造血幹細胞移植など、複数の治療を受けますが、それらの有効性が持続しない場合、予後は不良であると報告されています。(米国医学図書館 全国バイオテクノロジー情報センター)
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、最も高い頻度で見られるリンパ腫で、日本に於ける全ての非ホジキンリンパ腫症例の約30~40%を占めています。(国立がん研究センター がん情報サービス)
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者の約33%は1次治療に奏効を示さず、再発するか、もしくは難治性に移行します。
2次治療以降は、自家造血幹細胞移植(ASCT)以外には救援化学療法の選択となり、治療法が極めて限られています。
その為、自家造血幹細胞移植(ASCT)に適さない、或いはASCT治療から1年以内に再発した、再発又は難治性のDLBCL患者の予後は不良で、平均余命は4.4~6.3カ月とされています。
CAR-T細胞医療(キメラ抗原受容体T細胞医療)である「CTL019」は、患者一人ひとりの血液からT細胞を採取し、がん細胞や、その他の細胞に発現する『CD19』を特異的に認識し、がん細胞を攻撃するよう遺伝子を導入した、革新的な免疫細胞医療の事です。
1人1人の患者に合わせて製造される「CTL019」の単回投与により、治療を行います。
「CTL019」は、CAR-T細胞の増殖と維持を増強するために、4-1BB共刺激ドメインをキメラ抗原受容体内に使用しています。
今回の承認申請は、米ペンシルベニア大学と協働で行われているノバルティスの国際多施設共同第II相試験(ピボタル試験)、及びJULIET試験に基づいて行われました。
FDA(米国食品医薬品局)で2017年8月、世界で初めて小児を含む25歳以下の再発・難治性ALLの適応症で承認されました。
また、1回の治療で、47万5000ドル(約5300万円)掛かる事でも話題となった。
この点について、2017年12月11日の第59回米国血液学会(ASH)年次総会で、「CTL019」の費用対効果分析の結果、標準治療と比較して費用対効果に優れている事が示されました。【「CTL019」によって得られる生存年、及び健康価値尺度(質調整生存年)を、クロファラビン単剤療法、クロファラビン併用療法、ブリナツモマブ、その他のサルベージ化学療法、及び同種幹細胞移植と比較した結果による】