TOKIO山口達也を起訴猶予 東京地検
女子高校生に対する強制わいせつの疑いで書類送検されたアイドルグループ「TOKIO」のメンバー・山口達也(46)について、東京地方検察庁は1日、不起訴処分とし、発表した。
女子高校生が被害届を取り下げた事などから、起訴猶予にしたと見られる。
山口達也メンバーは今年2月12日、知り合いの未成年の女子高校生を東京都港区の自宅マンションに誘い、無理やりキスをするなどしたとして、警視庁から4月中旬に書類送検されていた。
警視庁の調べに大筋で容疑を認めていたと言う。
‥‥事件当時は飲酒して深酔い状態だった事などを説明した。 [2018年5月1日付/朝日新聞デジタル]
人間には脆さがあります。
堅牢に見えても、繊細で、傷つきやすい人は、たくさんいます。
そうした内面の脆く崩れやすい感情を、制御するには、
人それぞれで対応の仕方があり、時に何かに熱中したり、或いは何かに寄り掛かる。
しかし弱さが心理的、肉体的に継続すると、楽になる『依存』を探そうとする。
「アルコール依存症」は、お酒が飲める人の最も身近で簡単な『依存物』となります。
時に、飲酒運転やひき逃げ、暴力、所構わず嘔吐、飲酒強要など、犯罪に結びつく事もあり、
高圧的態度や自己過信、横柄、そして威圧感や強気へと高揚させてしまう……。
アルコールに依存していればいるほど、少量でも安心感と高揚感を味わう事になる。
「TOKIO」4人の会見では、松岡昌宏(41)は、「何度も何度も同じ過ちをしてしまう。僕らはアルコール依存症だと思っていた」と指摘。しかし「いろんな病院に診断を求めても、アルコール依存症というのは出ていない」と明かし、「そうやって(診断書を)書いて下さったほうが僕らも納得できるんですけど」と、吐露した。
城島茂(47)は、「現場で酒の臭いがするとか、二日酔いで調子が悪そうなことはありました。円滑にロケが進まないことも」と回想。[2018年5月3日付/スポニチ Sponichi Annex]
アルコール依存症の診断は、そんなに難しいものなのでしょうか?
世界保健機関(WHO)の作成した、アルコール依存症(alcohol dependence syndrome)確定診断のICD-10診断ガイドラインでは……。
1)飲酒したいという強い欲望、或いは強迫感(落ち着きがない)
2)飲酒の開始、終了、或いは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難
3)禁酒、或いは減酒した時の離脱症状(手の震え、発汗、不眠)
4)耐性の証拠(多量に飲まないと酔えない)
5)飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長
6)明らかに有害な結果が起きているにも関わらず飲酒
◎過去1年間に上記の項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いたか、又は繰り返し出現した場合、とあります。
◎有害な結果とは、アルコール性肝炎、アルコール性慢性膵炎など。
アルコールに依存し、お酒に強い人で内臓疾患が認められる症例は、よほど重度であり、その他の項目もハードルが高いようです。
また診断基準ではなく、概念としてのアルコール依存症は……、
アルコールを繰り返し摂取する事により、飲酒したいという欲求が強くなり、飲酒行動のコントロールが困難な状態となる事で、自身の健康を損なうだけでなく、社会的・経済的な影響が大きいとされる。
むしろこちらの病態概念がマトを得ているようです。
最新のアルコール依存症に対する診断・治療ガイドラインでは、飲酒量低減治療が断酒に導くための中間的ステップ、或いは治療目標の1つとして位置づけられています。
2013年(平成25年)の厚生労働省研究班の調査によると、国内のアルコール依存症患者数のうち、危険域に近い多量飲酒の人は約980万人、アルコール依存症の疑いのある人は約440万人、治療の必要なアルコール依存症の患者は、109万人と推計されています。
また、医療機関で治療を受けている患者数は、厚生労働省の調べで約4万9千人(平成26年)と推計されている。
国内でのアルコール依存症の治療の主体は、入院治療です。
外来ではほぼ不可能です。
その最大の原因は、アルコール依存症の治療法が確立しておらず、又、治療薬は3種が発売されていますが、抗酒薬と呼ばれる「慢性アルコール中毒に対する抗酒療法」剤であるため、本人と家族や周囲の人の手助けが無ければ、断酒を維持する事が難しいためです。
薬を飲み続ける事は、すなわち、薬を止めれば再び飲める、という事。
そのため、退院後、再飲酒する場合が多いのです。
断酒継続のために使用可能な国内に於ける治療薬は、抗酒療法薬「シアナマイド(一般名:シアナミド)」、「ノックビン(一般名:ジスルフィラム)」と、飲酒欲求を減らす断酒維持補助薬「レグテクト(一般名:アカンプロサートカルシウム)」が利用可能です。
抗酒療法薬は、ALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)の働きを阻害します。そのため、抗酒薬を服用していて飲酒すると、非常に激しいフラッシング反応(コップ1杯のビール程度の飲酒で起きる、顔面紅潮、吐き気、動悸、眠気、頭痛などの反応)を引き起こし、飲酒の断念に導きます。
しかし、入院治療で完全に断酒したとしても、抗酒薬や断酒維持補助薬の服用は、患者に任せられます。
完全に断酒させるには、周りの協力が不可欠となります。
急いては(強いては)事を仕損じる……の、ことわざ通り。
時に、不幸な結果になることもあります。
【警察庁の統計によると、2017年の1年間に自殺した人は2万1140人で、このうち厚生労働省の分析で、自殺者の20%以上にアルコール関連の問題が見られると言う】
そのため欧州では、完全な断酒ではなく、減酒によって飲酒欲求を抑制するという考えのもと、新たな治療薬が登場しました。。
国内でも、飲酒している人の飲酒量を下げることを目的とした薬剤が、必要とされて来ています。
大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区神田司町)は、ハンス.ルンドベック社(本社:デンマーク)と共同で開発を進めて来た、アルコール依存症患者に於ける、飲酒量を低減する治療薬として「ナルメフェン塩酸塩水和物(一般名)」の日本国内での製造販売承認申請を、2017年10月17日に行いました。
飲酒量低減薬「ナルメフェン(ナルメフェン塩酸塩水和物)」は、アルコール依存症に於いて飲酒のおそれがある場合に服用することで、飲酒量を低減する薬剤です。
「ナルメフェン」は、飲酒のおそれがある時に服用することで、中枢神経系に広く存在するオピオイド受容体調節作用を介して飲酒欲求を抑制し、アルコール依存症患者の飲酒量を低減する薬剤として、大塚製薬株式会社とルンドベック社が共同で開発を進めて来ました。
オピオイド受容体は、中枢神経系に広く分布し、脳内報酬系や情動制御、痛みのコントロールなどを司り、これまでに3つのサブタイプ(*μ、κ、δ)が知られています。
本剤は、μオピオイド受容体及び、δオピオイド受容体に対しては拮抗薬として、κオピオイド受容体に対しては部分的作動薬として作用し、飲酒欲求を抑制すると考えられています。
既に販売を開始している欧州では、アルコール依存症に於いて、健康リスクが高いとされる飲酒量(High Risk 及びVery-High Risk:成人男性では1日60g超、女性では1日40g超のアルコール摂取)を低減させるという適応をもつ経口治療薬です。
こうした作用機序を持つ「アルコール依存症治療薬」は、これまでの薬剤で断酒に失敗した患者の新たな選択肢になると期待しています。
自分自身のため、家族のため、周囲の人たちのため、これからアルコール依存症と戦う人たちにとって、希望の光の見える日が来ると願っています。
*尚、本剤は現在までのところ、まだ新薬審査に上稿されていません。
*μ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパ)