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新規・多剤耐性肺結核治療薬「サチュロ®錠」が販売開始

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ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区西神田)は5月8日、成人の新規多剤耐性肺結核治療薬「サチュロ®錠100mg(一般名:ベダキリンフマル酸塩)の販売を開始したと発表しました。

「サチュロ®錠100mg」は、2018年1月19日に製造販売承認を取得している、既存の抗結核薬とは異なる作用機序を有する薬剤で、2015年9月に、希少疾病用医薬品として指定されている。



サチュロ錠100mg
多剤耐性肺結核治療薬「サチュロ®錠100mg(Sirturo)」


多剤耐性肺結核(MDR-Tb=Multidrug-Resistant Tuberculosis)は、治療選択肢が限られている上に、治療成功率が54%に過ぎず(WHO結核データ2017)、治癒したとしても再発が多いだけでなく、より長期間の治療を要します。

肺結核のレントゲン写真
肺結核のレントゲン写真

ヒト型結核菌電子顕微鏡写真
ヒト型結核菌(通常のマイコバクテリウム属)

また、結核菌陰性化後も、18カ月間の継続的な長期間の薬剤投与が必要である事から、本人の負担だけでなく、周囲への感染、医療費などにも影響を与える疾患です。

多剤耐性肺結核は、既存の抗結核薬との交差耐性を示さない、高い有効性、安全性及び忍容性を示す新薬を含む、併用療法の開発が緊急の課題となっています。



具体的には、一次抗結核薬のうち少なくとも「イソニアジド(製品名:イスコチン/ヒドラ)」および「リファンピシン(製品名:リファジン)」の両剤に耐性を有する結核を指します。
 *抗結核薬イソニアジド…1972年2月薬価収載。抗結核薬リファンピシン…2009年9月薬価収載。



各国の結核罹患率の比較
日本のみ2016年の数値。


WHO(世界保健機関)によると、2014年には世界で960万人が結核に新たに罹患(りかん)し、150万人が死亡しています。

国内では、2016年(平成28年)に新たに結核患者として登録された人数(新登録結核患者数)は17,625人で、前年より655人(3.6%)減少。
また、2016年の日本の結核罹患率は、人口10万人あたり13.9人で、先進主要11カ国の中で最も高い水準です。(厚生労働省. 平成28年 結核登録者情報調査年報集計結果について)

結核は、治癒可能な疾患となった一方、結核治療の中心である化学療法は、多剤併用が必須のため、副作用が大きな障害となっています。

また、化学療法は最短でも6カ月を要し、治療の中断や不規則な服薬が、結核菌の薬剤耐性化、更には多剤耐性化に影響を及ぼしています。



多剤耐性肺結核菌
『多剤耐性肺結核(MDR-TB)』
結核治療中に服薬を中断、もしくは中止することで、
結核菌の集塊(しゅうかい)状DNAに耐性能のDNAが出現する。


2016年、新規に多剤耐性肺結核(リファンピシン耐性を含む)を発症した患者数は、世界で約15万3000人、日本では210人(外国人含む)と推定されており、このうち検査機関で確認された日本の患者数は79人でした。(WHO-結核国プロフィール-日本)

WHO(世界保健機関)ガイドラインにおける結核への化学療法としては、リファンピシン(RFP:リファジンなど)、イソニアジド(INH:イスコチンなど)、エタンブトール(EB:エサンブトールなど)、ピラジナミド(PZA:ピラマイド)の4剤併用による2カ月間の強化療法に続き、リファンピシン及び
イソニアジドの併用による4カ月の維持療法を行うことが標準となっている。。)


実は2014年までの世界の多剤耐性肺結核の患者は、約45万人で、年間17万人が死亡していました。(大塚製薬抗結核プロジェクトより)

2014年9月、大塚製薬から国内で約40年ぶりの抗結核薬が登場しました。国内初の多剤耐性肺結核の適応を有する薬剤「デラマニド」です。
この薬の登場は、多くの多剤耐性肺結核患者を救う事となりましたが、研究者の間では既に超多剤耐性肺結核(XDR-TB)に対する危惧が出ており、新たな薬剤の開発が進められています。(現在、超多剤耐性肺結核に有効な治療方法がなく、治療不可能な結核菌となっている)





「サチュロ®錠100mg」は、米ヤンセン・リサーチ・アンド・ディベロップメント社が創製した、ジアリルキノリン系の新規抗結核薬で、既存の抗結核薬とは異なる作用機序を持ち、結核菌のエネルギー生成に必須の“アデノシン5-三リン酸(ATP)”合成酵素を特異的に阻害し、増殖期、及び休眠期の結核菌のいずれに対しても強い殺菌活性を示します。


多剤耐性肺結核治療薬サチュロ錠の作用機序
多剤耐性肺結核治療薬「サチュロ®錠100mg」の作用機序。


現在、既存の多剤耐性肺結核の結核菌治療薬としては、2014年9月に登場したデラマニド(製品名:デルティバ)が臨床使用されているのみで、「サチュロ錠」は、これに次ぐ日本で2番目の多剤耐性肺結核の治療薬となるが、デラマニドとは作用機序が異なる、ATPを標的にしたジアリルキノリン系の薬剤となる。


本剤は、米国では多剤耐性結核菌(MDR-Tb=Multidrug-Resistant Tuberculosis)による肺結核の新規治療薬として承認申請を行い、米国食品医薬品局(FDA)によるFast Track及び優先審査指定のもと、2012年12月に迅速承認された。
欧州に於いても、2014年3月に条件付きで承認。

2017年9月現在、本剤は多剤耐性肺結核に対する多剤併用療法の1剤として、世界49の国又は地域で承認されています。



【製品概要】
【製品名】:サチュロ®錠100mg(Sirturo®)
【一般名】:ベダキリンフマル酸塩(Bedaquiline Fumarate(JAN))
【効能・効果】
<適応菌種>本剤に感性の結核菌(多剤耐性結核菌)
<適応症>多剤耐性肺結核症

【用法・用量】:通常、成人には投与開始から2週間はベダキリンとして1日1回400mgを食直後に経口投与する。
その後、3週以降は、ベダキリンとして1回200mgを週3回、48時間以上の間隔を空けて食直後に経口投与する。
投与に際しては、必ず他の抗結核薬と併用すること。

【規格・含量】:ベダキリンフマル酸塩(ベダキリンとして)1錠中120.89mg(100mg)含有
【薬価】:サチュロ®錠100mg 1錠/21,872.5円






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