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3つの免疫抑制剤の添付文書改訂、妊娠後の妊婦も使用可能に

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厚生労働省 医薬・生活衛生局は7月10日、国立研究開発法人 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区大蔵)の「妊娠と薬情報センター」がまとめた、免疫抑制剤3剤の添付文書における妊婦等への注意喚起についての見直し報告書を審議、日本製薬団体連合会に対して、『禁忌(きんき)』としていた妊婦への投与が出来るように添付文書を改訂することを、通知で指示した。

免疫抑制剤3剤(タクロリムス水和物、シクロスポリン、アザチオプリン)の妊婦等に対する『禁忌』の見直しについては、6月26日、厚生労働省 医薬安全対策課に於いて審議され、「禁忌・妊婦の項目」が全て削除され、医師が処方可能と判断すれば、妊娠後も、免疫抑制剤3剤での治療継続が可能となる――。



臓器移植の免疫抑制剤

◆「禁忌」の対象から外される免疫抑制剤は、以下の通り。

<タクロリムス水和物(経口剤、注射剤、軟膏剤、点眼剤/Tacrolimus hydrate)>
∴免疫抑制剤…カルシニューリン阻害剤

【製品名】プログラフ(アステラス製薬)〔先発品〕
【製品名】グラセプター(アステラス製薬)〔先発品〕
 尚、タクロリムスには多数の後発品が存在します。

プログラフ注射とカプセル

グラセプター徐放カプセル

<シクロスポリン(経口剤、注射剤、点眼剤/Cyclosporin)>
∴免疫抑制剤…カルシニューリン阻害剤

【製品名】サンディミュン(ノバルティスファーマ)〔先発品〕
【製品名】ネオーラル(ノバルティスファーマ)〔先発品〕
 尚、シクロスポリンには多数の後発品が存在します。

サンディミュン注射用とカプセル

ネオーラルカプセルと内用液

<アザチオプリン(Azathioprine)>
∴免疫抑制剤…代謝拮抗薬

【製品名】イムラン(アスペンジャパン)
【製品名】アザニン(田辺三菱製薬)


イムラン錠とアザ二ン錠


これら薬剤は、
  1. 腎臓・肝臓・心臓・肺・膵臓・小腸移植に於ける拒絶反応の抑制
  2. 骨髄移植に於ける拒絶反応及びGVHD(移植片対宿主病)の抑制
  3. ベーチェット病(眼症状のある場合)。
  4. 尋常性乾癬(全身の30%以上や難治性)・膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症・関節症性乾癬
  5. 再生不良性貧血(重症)・赤芽球癆(せきがきゅうろう)
  6. ネフローゼ症候群(ステロイド抵抗性)
  7. 全身型重症筋無力症
  8. アトピー性皮膚炎(既存治療で効果不十分)
  9. 関節リウマチ(既存治療で効果不十分)
  10. ループス腎炎(ステロイド効果不十分)
  11. 難治性の活動期潰瘍性大腸炎(重症)
  12. 多発性筋炎・皮膚筋炎に合併の間質性肺炎(治療抵抗性)
  13. クローン病(ステロイド依存性)
  14. 全身性血管炎・全身性エリテマトーデス(SLE/膠原病)・強皮症・混合性結合組織病(治療抵抗性/難治性)
以上のような中程度から重症の自己免疫疾患や、臓器移植後の拒絶反応の抑制に使われます。


近年、免疫抑制剤による臓器移植患者の長期予後の改善等に伴い、妊娠可能年齢の患者の妊娠中における治療継続が課題となっており、「妊娠と薬情報センター」での相談件数も、当該免疫抑制剤3剤(タクロリムス水和物、シクロスポリン、アザチオプリン)関係で、295件(平成17年10月以降)に上るなど、医療上の必要性が指摘されている。

免疫抑制剤は、免疫に異常が生じて自身の体を免疫細胞が攻撃する膠原病などの、重い自己免疫疾患の治療や、臓器移植後の拒絶反応の抑制に用いますが、患者が妊婦の場合、投与できないとされていたため、妊娠を諦めたり中絶したりするほか、妊娠後に薬を止めて症状が悪化した事例もあったと言う事で、こうした妊婦の治療の継続が課題となっていました。
今回の禁忌の解除で、医師が処方可能と判断すれば、妊娠後も治療を継続できるようになる。

また、免疫抑制剤はこの他にも5種類の先発品が発売されていますが、それらは解除の対象とはなっていません。薬剤の選択には、注意が必要です。




厚生労働省 医薬安全対策課に提出された資料、『免疫抑制剤3剤(タクロリムス水和物、シクロスポリン、アザチオプリン)の妊婦等に対する禁忌の見直しについて、
によると……。

▼ 国立成育医療研究センターの専門家による作業部会(ワーキンググループ)により、国内外の安全性情報の評価・分析により、当該免疫抑制剤3剤に於いて、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する旨注意喚起した上で、禁忌を解除する事が適当との結果が得られた。

▼ 動物試験(ウサギ)では、過去に催奇形性が報告されているが、国立成育医療研究センターで網羅的に収集し、評価した、海外の疫学研究の結果では、免疫抑制剤を投与された妊婦に於いて、胎児の先天奇形の発生率が有意に上昇したという報告はない。

▼ 国内外のガイドライン等に於いて、妊娠中であっても使用可能な医薬品とされている。

▼ 欧米等6ヶ国の添付文書に於いて、妊婦への投与は基本的に禁忌とされておらず、潜在的有益性が胎児への潜在的危険性を上回る場合にのみ、投与できるとされている。




◆検討を基に、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)から添付文書改訂案が提案されている。

妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対する禁忌を解除する。

「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項において、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する旨の注意喚起を記載する。





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