このニュースが最初にもたらされたのは、2017年5月24日のこと――。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、抗悪性腫瘍剤/ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体「キイトルーダ®(KEYTRUDA®)」を、特定の遺伝子の特長を有する全ての“固形癌”への使用を承認すると発表した。
米FDAによると、このような条件で癌の治療薬を承認するのは、史上初の事。
一体、何があったのか この発表から7カ月余り――
2018年12月21日、国内での製造発売元、MSD株式会社(本社:東京都千代田区)は、抗PD-1抗体「キイトルーダ®点滴静注20mg、同点滴静注100mg(一般名:ペムブロリズマブ=遺伝子組換え)」について、厚生労働省より、「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の効能・効果の追加承認を取得したと発表しました。
今回の承認拡大によって、特定の癌種を定めず、バイオマーカー*が「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)」を示す全ての固形癌に対して、横断的に使用可能となりました。
固形癌は、血液がん以外の全ての癌種を指します。
抗悪性腫瘍剤/ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体
『キイトルーダ®点滴静注20mg、同点滴静注100mg』
【がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)
を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)】に適応拡大。
★高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High=MicroSatellite Instability-High)とは、傷ついたDNAを修復する機能が低下していることを示すバイオマーカー*(正常な機能や病的な工程、或いは治療に対する薬理学的な反応の指標)の事。
細胞は、DNA複製時に自然に起こる複製ミスを修復する機能を持っています。
しかし、様々な起因で、この修復機能が低下して、DNAの繰り返し配列(マイクロサテライト)が、正常な細胞と異なる状態になっている事を『マイクロサテライト不安定性(MSI)』と呼びます。
このマイクロサテライト不安定性(MSI)が、高頻度に起きている現象を【高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)】と呼び、大腸がん、胃がん、膵臓がんと言った消化器系の癌のほか、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、甲状腺がんなどの生殖器系でも報告されている。
その割合は大腸がんの約6%、子宮内膜がんの約17%で、高頻度マイクロサテライト不安定性固形癌が見られたとの報告がある。
〔米国立バイオテクノロジー情報センター〕
〔Mismatch-repair deficiency predicts response of solid tumors to PD-1 blockade. Dung T. Le2017〕
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5576142/◆ミスマッチ修復欠陥による固形癌のPD-1阻止に対する反応予測。
【製品の適応拡大概要】
高頻度マイクロサテライト不安定性固形癌のほか、以下の6項目について承認事項一部変更の承認を取得。
- がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)への適応拡大
- 悪性黒色腫の術後補助療法としての適応拡大
- 悪性黒色腫について、固定用量への用法・用量の変更
- PD-L1発現に関係なく、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)に対する初回治療としてペメトレキセド+プラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)との併用療法としての適応拡大
- PD-L1発現に関係なく、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(扁平上皮癌)に対する初回治療としてカルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルとの併用療法としての適応拡大
- PD-L1陽性(TPS≧1%)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対する初回治療としての単独療法としての適応拡大
今回の適応拡大に関する承認取得事項は、いずれも厚生労働省による優先審査の対象に指定され、「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」への適応拡大については、医薬品の条件付き早期承認制度の適用、悪性黒色腫に関する適応拡大については、希少疾病用医薬品の指定をそれぞれ受け、優先審査のもとでの承認となった。