ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)は1月8日、EGFR(上皮細胞増殖因子受容体)遺伝子変異陽性の「手術不能又は再発非小細胞肺癌」の効能・効果で、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)「ビジンプロ®錠15mg、同45mg(一般名:ダコミチニブ水和物/Dacomitinib)」ついて、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表しました。
本剤は、日本に於いては優先審査品目に指定され、2018年5月28日に製造販売承認を申請後、約7ヵ月間の審査期間を経て承認となりました。
米国では、米国食品医薬品局(FDA)より優先審査に指定され、2018年9月27日に「EGFR活性化変異を有する転移性非小細胞肺がん(NSCLC)」治療の一次治療薬として承認を取得しています。
EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん治療薬
『ビジンプロ®錠15mg/45mg(Vizimpro® Tablets)』
「一般名:ダコミチニブ水和物/ダコミチニブ水和物(Dacomitinib Hydrate)」
肺がんは、癌による死亡原因の世界第1位です。
その中で日本国内では、非小細胞肺がん(NSCLC)が約85%を占めており、特に遠隔転移している場合は未だに治療が困難です。
非小細胞肺がん患者の約75%が、転移後、又は進行後に肺がんと診断され、その時点での5年生存率は僅か5%です。
【米国癌学会, 非小細胞肺癌NSCLC:詳細ガイド, Accessed October 13, 2017.Accessed October 13, 2017. http://www.cancer.org/cancer/lungcancer-non-smallcell/detailedguide/】
全米癌総合ネットワーク(NCCN)の腫瘍学に於いては、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)臨床診療ガイドラインは、EGFR突然変異、BRAF突然変異、ROS1突然変異、ALK再構成、およびPD-L1発現を含む、非小細胞肺癌(NSCLC)の診断時に全ての実用的なバイオマーカーの検査を推奨しています。
勿論、これらの遺伝子変異のない場合もありますが、多くの症例に於いて何らかの遺伝子変異が認められ、癌細胞を直接殺傷する以外の分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害剤)が使われています。
しかし薬剤に対する治療抵抗性、又は不耐容が生じる事から、第二選択薬、第三選択薬の登場が望まれています。
「ビジンプロ®錠(VIZIMPRO®)」は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)で、第7染色体にあるEGFR(上皮細胞増殖因子受容体)遺伝子の、チロシンキナーゼ領域に存在するエクソン19欠失(Exon19_Dele)またはエクソン21 L858R置換変異(Exon21_Gene mutation)を有する遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん治療薬です。
今回の承認は、「ビジンプロ®錠(ダコミチニブ)」と、一次治療の標準治療の一つ、「イレッサ(ゲフィチニブ/アストラゼネカ)」とを直接比較した、国際共同第Ⅲ相試験の結果に基づくものです。
両剤は共に、“EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌”の適応を有する分子標的薬です。
盲検下*での独立中央判定(BICR)の評価による無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ダコミチニブ群では14.7か月、ゲフィチニブ群では9.2か月で、ダコミチニブ群はゲフィチニブ群と比べ、優れた改善を示した。
また、全生存期間(OS)の中央値は、ダコミチニブ群では34.1か月、ゲフィチニブ群では26.8か月であった。
▲*盲検下とは……治験に参加する複数の当事者が、治験方法の割り付けについて知らされないようにする措置の事。
EGFR(遺伝子)は、健康な細胞と肺がん細胞の両方の表面に見られます。
しかし、かなりの数の非小細胞肺癌患者に存在するEGFR変異の検査は、非小細胞肺癌における治療の上で重要なバイオマーカーであり、初期診断時に治療の決定を導くのに役立ちます。
【ビジンプロ®の概要】
【製品名】:ビジンプロ®錠15mg/45mg(VIZIMPRO® Tablets 15mg/45mg)
【一般名】:ダコミチニブ水和物(Dacomitinib Hydrate)
【効能・効果】:EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌
【用法・用量】:通常、成人にはダコミチニブとして1日1回45mgを経口投与する。尚、患者の状態により適宜減量する。
【多く認められた有害事象(20%超)】
下痢(87%)、発疹(69%)、爪囲炎(64%)、口内炎(45%)、食欲減退(31%)、皮膚乾燥(30%)、体重減少(26%)、脱毛症(23%)、咳嗽(21%)、そう痒症(21%)でした。
■重篤な有害事象は、VIZIMPRO群の27%に認められました。多く認められた重篤な有害事象(1%以上)は、下痢(2.2%)と間質性肺疾患(1.3%)でした。<投与患者227例>
【製造販売承認取得日】:2019年1月8日
■ファイザーは「ビジンプロ®」の承認により、ALK(ザーコリ/クリゾチニブ、ローブレナ/ロルラチニブ)、ROS1(ザーコリ/クリゾチニブ)、EGFR(ビジンプロ/ダコミチニブ)と3つの肺がん遺伝子を標的とする薬剤を有する事になります。
欧州医薬品庁(EMA)ヒト医薬品委員会(CHMP)は1月31日までに、PfizerEuropeが申請していた「Vizimpro®(ダコミチニブ)」について、EGFR(上皮細胞増殖因子受容体)遺伝子変異陽性の局所進行もしくは転移非小細胞肺がん(NSCLC)について承認勧告を行いました。