厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は5月30日、第一三共株式会社(本社:東京都中央区日本橋)が昨年10月17日に製造販売承認申請していた、FLT3-ITD変異を有する「再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病(AML)」治療薬「ヴァンフリタ錠17.7mg、同26.5mg(一般名:キザルチニブ塩酸塩=QUIZARTINIB)」について、急遽、審議に上程された結果、承認申請を了承した。
▲「キザルチニブ(FLT3-ITD阻害剤)」に関しては、本年5月15日、米FDA(米国食品医薬品局)諮問委員会に於いて、FLT3-ITD*変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病に対する適応について、ベネフィット(治療満足度)がリスク(奏効率や副作用など)を上回らないとの否定的見解(反対8、賛成3)が示されていた。
このため、キザルチニブに関して、グローバル第3相臨床試験(欧米、及び日本を除くアジア域)の結果を踏まえた、優先審査が行われており、この審査は2019年8月25日までに終了見込み。
この事から当初、「キザルチニブ」は審議予定品目に無かったが、事務局による検討の結果、審議可能と判断され上程、承認して差し支えない旨の判断がなされた。
*ITDとは…Internal Tandem Duplication(遺伝子内縦列重複)の略
しかし、今回の様なケースは、同じFLT3遺伝子変異を標的にした再発/難治性の急性骨髄性白血病(AML)治療薬として、昨年12月3日に発売された、アステラス製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)の「ゾスパタ錠(Xospata/一般名:ギルテリチニブ)」に於いても、日本で承認された時点では、今回同様、米国でも欧州でも承認されていなかった。
米国や欧州の場合、多国籍での販売が前提となるのに対して、日本の場合は日本国内だけが対象となる事を前提としている事から、遅れるものと推察されます。
また、「ゾスパタ錠(Xospata)」は、FLT3遺伝子とAXL遺伝子の2つの遺伝子変位陽性に対する阻害剤ですが、「ヴァンフリタ錠」は、FLT3遺伝子とITD遺伝子を標的にしている点が異なる。
「ヴァンフリタ錠」は、がんの増殖に関与するとされるFLT3(FMS-Like Tyrosine kinase 3)の働きを阻害し、増殖を抑えると考えられている。
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄における白血病細胞の異常な増殖の結果、正常な血液細胞の産生が著しく阻害され、治療しないと短期間で致死的になる予後不良な血液疾患。
FLT3-ITD変異は急性骨髄性白血病患者の約25%に認められるとされる。
FLT3-ITD変異(予後不良群)を有する患者は、変異のない患者と比べ、再発率が高く生存期間が短いとされている。
「ヴァンフリタ錠17.7mg、同26.5mg(一般名:キザルチニブ塩酸塩)」は、国内第2相臨床試験に於いて、有効性および安全性が認められました。
本試験結果の詳細は、2018年10月に開催された第80回日本血液学会(JSH)で発表されました。
尚、海外での承認はない。