5月28日に発表された「世界競争力ランキング」――。
スイスの名門ビジネススクールIMD(国際経営開発研究所⇒International Institute for Management Development)とやらが毎年発表してるらしいが、日本は屈辱的とも言える第30位
この順位を見て『なんで?』とか、『えこ贔屓じゃないか!?』と、ブツブツ呟いた人も多いのでは……。
第1位はシンガポール。第2位は香港。第3位はアメリカ。当のスイスは第4位に入れている。
指標としたのは、失業率、GDP、健康・教育への国の支出などのハード・データと、社会的結束や分離の度合い、グローバリゼーション、腐敗などのテーマに関する、経営幹部やマネジャーを対象としたアンケート調査とのこと。
『経営幹部のアンケートかよ?』
そういう目線なら、そりゃ、シンガポールは相続税や贈与税が掛からず、キャピタルゲイン(投資の値上がり利益)も非課税、所得税の最高税率は20%、法人税は17%と、激安税率の国。更に、シンガポールの居住者になっても、年金など国外で発生した所得には、税金が掛からない。
世界には法人税タダの国も意外と多い……。
まぁしかし、負け惜しみかもしれないが、
世界への貢献度から見ると、例えば旅客機のエアバス(Airbus industrie)を製造しているフランスが31位、共同体のオランダが6位と、離れている。
日本国内でも飛んでいる「エンブラエル」はブラジル製だが、59位に甘んじている。
結局、この順位はビジネススクールの発表だから、ビジネスに向いている国、不向きな国というだけの尺度――。世界に対して、企業や国家がどれだけ貢献しているか、世界の平和にどれだけ邪魔になっているか等は一つも考慮されていない!
では、視点を変えて、医療・医薬ではどうか?
何と、特許が切れた関節リウマチの治療薬「ヒュミラ」が、今もなおトップを独走
後発品さえ出ていない。
製法が難しく、Bio後発品の開発・製造に金が掛かるからだとか。
さて、本題に。
まだ記憶に新しいと思うが、日本人が開発し、人類に貢献した薬の最たるものと言われる薬がある。
熱帯アフリカ・中南米の亜熱帯を中心に世界35ヵ国で蔓延していた「オンコセルカ症(河川盲目症)」は、線虫(寄生虫)の感染によって発症する。
毎年1800万人が感染し、77万人が失明するという風土病。
人の体内でおよそ14年あまり潜伏し、成虫になり、死滅する際に、皮膚の皮下組織と目に激しい炎症を起こす。
この寄生虫を駆除する特効薬は、イベルメクチン(Ivermectin)と呼ばれ、北里大学特別栄誉教授・大村智氏が1974年に静岡県伊東市のゴルフ場近くで採取した土から発見された。
そして、1987年に「Mectizan tablet」として世界で初めてフランスで承認され、1988年、WHO(世界保健機関)を介して、米メルク社によるアフリカ地域への無償提供が開始された――。
年1回、集団投与が行われ、これが14年間続く。
WHOは2025年までにオンコセルカ症を撲滅出来るとの推測を述べた。これまで年間3億人以上を失明から救っている。
大村智氏は、この功績で2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。
そしてこの一般名:イベルメクチン(Ivermectin)は現在、日本でも『ストロメクトール錠3mg(保険適応外/薬価:678円/1錠)』として販売され、適応は「腸管糞線虫症」と「疥癬(かいせん)」の駆虫剤として使用されている。
昨年統計で第4位に入った「オブジーボ(一般名:ニボルマブ)」も日本人の本庶佑氏(京都大学名誉教授)が発見したもの。
他にも多くの病気の原因を探ることを得意とする日本人が発見した、最新のゲノム医療で、分子標的薬を発見したのも日本人の酒井敏行氏(京都府立医科大学分子標的癌予防医学教室)で、2013年欧米で承認され、遅ればせながら2016年日本で、BRAF遺伝子変異の悪性黒色腫・同小細胞肺癌治療薬「トラメチニブ(販売名:メキニスト錠)」が誕生している。
ただ残念な事に、創薬は外国企業に持って行かれることが多い。
しかし、ビジネスだけでは人間も動物も滅んでしまう。
日本人には好奇心や想像力はある。
しかし創薬・研究には莫大な費用が掛かることから、日本企業は消極的だが…、
ではシンガポールや香港は、人類を救ったのか?
潤沢なオイルマネーは、病に苦しむ世界の子供たちを救ったか?
〔参考文献:講談社 世界を救った日本の薬/塚崎朝子・著者〕
〔参考文献:ダイヤモンド社 新薬誕生100万分の1に挑む科学者たち/ロバート・L.シュック/小林力・著者〕