塩野義製薬株式会社(本社:大阪府大阪市中央区道修町)及び、武田薬品工業株式会社(本社:大阪府大阪市中央区道修町)は、6月18日までに2つの注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療剤について、厚生労働省より、新規治療剤「ビバンセ®(塩野義/武田薬品)」の製造販売承認を取得した事と、既発売治療剤「インチュニブ®(塩野義/シャイアー)」の成人患者に対する適応追加をそれぞれ取得したと発表しました。
小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」治療剤
ドパミン/ノルアドレナリン遊離促進・再取り込み阻害薬
「ビバンセ®(Vyvanse®)カプセル20mg/同30mg」
(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩)
注意欠陥/多動性障害(AD/HD=Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)は、多動性・不注意・衝動性の3症状を主な特徴とする行動面の神経発達症候群(発達障害)の1つで、明らかな身体異常所見を示さず、行動の特徴から同定される。
個人間の症状に差違もあり、子ども一人ひとりで症状の程度が異なっており、社会的、認知的、学業面、家庭内、情緒的な発達や適応の側面で様々な問題を生じうる。
注意欠陥/多動性障害の診断は、アメリカ精神医学会作成の「DSM-IV-TR」診断基準を使用し、心理社会的治療・支援と薬物療法により治療可能な脳機能障害である。
〔注意欠陥/多動性障害の病態、解明研究と新規介入法の提案~(国立研究開発法人)精神保健研究所 知的障害研究部 部長:稲垣真澄/合同シンポジウム発表より〕
*DCD…発達性協調運動障害。
現在、AD/HDの薬物療法としては、中枢神経刺激剤「コンサータ®錠(一般名:メチルフェニデート塩酸塩/2007年12月販売開始)」、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤「ストラテラ®カプセル/同内用液(一般名:アトモキセチン塩酸塩/2009年6月販売開始)」、それに、2017年5月薬価収載された選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬「インチュニブ®徐放錠(一般名:グアンファシン塩酸塩)」が使用されていますが、治療有効性の評価が難しく、治療選択肢の限られている現状があります。
◆今回、新たに新有効成分含有医薬品として製造販売承認を取得したのは、「小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」の適応で、ドパミン(ドーパミン)/ノルアドレナリン遊離促進・再取り込み阻害剤「ビバンセ®カプセル20mg・同30mg(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩=Lisdexamfetamine dimesylate)」です。
「ビバンセ®カプセル(Vyvanse capsule)」は、既に薬価収載されていますが、覚醒剤の原料になりうる成分が含まれているため、たびたび審議上程が見送られて来ました。
「ビバンセ®カプセル」は、2011年11月18日に塩野義製薬株式会社とShire plc社(本社:アイルランド・ダブリン)の子会社であるShire International GmbH(シャイアー社)との間で締結された、日本国内における共同開発・商業化に関するライセンス契約に基づき、開発が進められて来ました。
そして、2019年1月8日、武田薬品工業のシャイアー社買収に伴い、卸売販売業者でもあるShire International GmbHを子会社化する事で、厳重な流通管理を義務づける事によって、今回の承認となった。
本剤の国内製造販売承認取得日は2019年3月26日。
「ビバンセ®(Vyvanse)カプセル」は、1日1回投与のドパミン(ドーパミン)/ノルアドレナリン遊離促進・再取り込み阻害薬で、プロドラッグテクノロジー(それ自体は薬理活性が殆ど無いが体内で代謝されて薬効を発揮する機序)を用いることにより、投与後に体内で徐々に活性体に変換され、活性体の急激な血中濃度上昇を抑制すると共に、その血中濃度を持続的に維持することを目的とした製剤です。
【効能・効果】 小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
【用法・用量】 1日1回30mgを朝。1日最高70mg。増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として20mgを超えない。
【薬価】
ビバンセ®カプセル20mg…1カプセル674.80円
ビバンセ®カプセル30mg…1カプセル747.70円
★『インチュニブ®錠1mg・同3mg』は、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療薬として初めての作用機序である「選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬」で、「1日1回」投与の非中枢刺激薬です。
これまで世界36ヵ国において、AD/HDの小児患者(6~17歳)の治療薬として承認を取得しています。
「インチュニブ®錠」は日本で、世界に先駆けて成人患者(18歳以上)を対象とした臨床試験を実施し、AD/HD評価スケール等で統計的に有意な改善を示した事などから、6月18日、成人患者(18歳以上)に対する適応追加による一部変更が承認されました。
また、「インチュニブ®錠」は、最長1年間の長期投与時の安全性及び有効性も確認されています。
【製品概要】
【製品名】 インチュニブ®錠1mg・同3mg(Intuniv®)
【一般名】 グアンファシン塩酸塩(Guanfacine Hydrochloride)徐放錠
【効能・効果】 注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
(*2019年6月18日より、「小児期における」という文言を削除)
【用法・用量】
18歳未満の患者:(下線部:2019年6月18日より追加)
通常、18歳未満の患者には、体重50kg未満の場合はグアンファシンとして1日1mg、体重50kg以上の場合はグアンファシンとして1日2mgより投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、下表の維持用量まで増量する。
なお、症状により適宜増減するが、下表の最高用量を超えないこととし、いずれも1日1回経口投与すること。
18歳以上の患者:
通常、18歳以上の患者には、グアンファシンとして1日2mgより投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、1日4~6mgの維持用量まで増量する。
なお、症状により適宜増減するが、1日用量は6mgを超えないこととし、いずれも1日1回経口投与すること。
【薬価】
インチュニブ®錠1mg…1mg1錠407.20円
インチュニブ®錠3mg…3mg1錠537.50円
国内では2017年5月に塩野義製薬が販売を開始し、シャイアー・ジャパン社と共に販促プロモーションと製品情報の提供を行っています。