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米イーライリリー、世界初の新型コロナ・モノクローナル抗体治療薬第1相臨床試験開始

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米イーライリリー社(U.S. Eli Lilly Co.)は6月9日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して設計された、世界初のモノクローナル抗体治療薬「LY-CoV555」について、米国で最初の被験者への投与を実施したと、イーライリリー社日本法人を通じて発表した。

新型コロナウイルス抗体治療薬LY-CoV555

米イーライリリー社の最新プレスリリースによると、6月12日までに米国内の3人の患者への投与を行ったと発表。

この抗体治療薬のヒトでの有効性と安全性については、イーライリリー社と提携する中国・上海のバイオ医薬品メーカー・上海君実生物医薬科技(シャンハイジュンシーバイオ=Shanghai Junshi Biosciences Co.)が、上海に住む健常で、新型コロナウイルスの非感染者を対象にした初期臨床試験を開始している。

今回開始した「J2W-MC-PYAA試験」は、無作為化プラセボ対照二重盲検第1相臨床試験で、「LY-CoV555」を新型コロナウイルス感染症の入院患者に単回投与した時の安全性や忍容性を評価する。
第1相臨床試験は、6月末までに結果が得られる見込みとしており、単回投与での安全性が得られた場合、多施設共同の第2相臨床試験を始めると言う。

結果によって、早ければ今年9月末にも承認を取得し、市場に投入される見込みを示唆した。


新型コロナウイルスCOVID-19の標的タンパク質
モノクローナル抗体「LY-CoV555」が標的とする
新型コロナウイルスのスパイク・タンパク質(S protein)。


モノクローナル抗体治療薬「LY-CoV555」は、新型コロナウイルスの“スパイク・タンパク質(Spike protein)”に結合可能な『IgG1(免疫グロブリンG1)中和モノクローナル抗体で、新型コロナウイルスのヒト細胞への結合と侵入を阻害するよう設計されており、ウイルスを中和(ウイルスに結合して活性を減退または消失させる抗体)し、新型コロナウイルス感染症を治療・予防すると考えられている。

新型コロナウイルス感染症抗体治療薬LY-CoV555作用機序
新型コロナウイルス感染症抗体治療薬LY-CoV555


「LY-CoV555」は米イーライリリー社とカナダのアブセレラ・バイオロジクス社との提携の中で得られた最初の治療薬候補になる。

このIgG1中和モノクローナル抗体は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した、最初の米国患者群のうちの一人から血液検体を採取、その検体から米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のワクチン・リサーチ・センター(Vaccine Research Center:VRC)とカナダのアブセレラ・バイオロジクス社により発見されたもので、そこから僅か3ヶ月の期間で、イーライリリー社の科学者が開発した抗体治療薬である。

新型コロナウイルスCOVID-19


既存薬を転用するドラッグリポジショニングでの治療薬開発が加速する中、米イーライリリー社のダニエル・スコフロンスキー主任科学役員は、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2/COVID-19)を攻撃するよう設計された初めての新薬候補として期待される」と述べている。

免疫グロブリンの種類
免疫グロブリンの種類
5種類ある免疫グロブリンの中で、IgGは全体の70~75%を占める抗体。
ウイルス(抗原)が侵入すると免疫グロブリンGが二量体結合して抗体を作る。


先の、5月7日、新型コロナウイルス感染症の治療薬として、ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)」が異例の特例承認されたが、作用はアビガン錠(一般名:ファビピラビル)と同じRNAポリメラーゼ阻害剤である。

RNAポリメラーゼ阻害剤は、DNAを持たないウイルスが、ヒト細胞内に侵入するとRNAからDNAを作成して増殖するのを阻止する薬剤。
ちなみに、同様の作用機序の薬剤としては、C型肝炎ウイルス治療薬「ハーボニー配合錠」があり、C型肝炎ウイルスが増殖するために必要な酵素のRNAポリメラーゼ又はプロテアーゼを阻害することにより、抗ウイルス作用を現す。




ヒト細胞内でウイルスが活性化するので、免疫力が衰えた高齢者や、糖尿病・肝臓病・心疾患などや、他の重い疾患を治療中の患者が罹患すると、急激に症状が悪化、死に至ってしまう。
レムデシビルもアビガン錠も、投与出来ないのが現状だ。

その急速に悪化する恐ろしさを、我々は、志村けんさん、岡江久美子さんの非業の死を目の当たりにして、震撼している。




「LY-CoV555」は、これまでとは異なり、新型コロナウイルスだけを標的にしており、抗体がウイルスを感知すると、ヒト細胞内に侵入する事を阻止し、結合している免疫グロブリンG(IgG1)がウイルスを攻撃し、死滅させる。
また、新型コロナウイルスに素早く反応する事で発症を抑える予防的効果もあり、高齢者や基礎疾患のある人、医療従事者にも投与が可能であると言う。(但しワクチンの様に長期間働かず、薬剤の半減期まで)


米国や欧州での多くの死者は、介護施設や高齢者施設に入居・入院中の高齢者が大勢を占め、日本国内でも院内感染や老人介護施設での集団感染による死亡が後を絶たない事から、高齢者や医療従事者に投与できる治療薬の一刻も早い開発と市場投入が望まれている。(※ワクチンは来年以降の予測から)


▼https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lilly-begins-worlds-first-study-potential-covid-19-antibody
▼https://www.nature.com/articles/s41586-020-2180-5&prev=search
▼https://www.yakuji.co.jp/entry79652.html (2020/06/12)










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