厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は12月2日、日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市中央区)が、国内に於ける製造販売承認を申請していた片頭痛の発症抑制に係る適応で、初の抗体製剤となる抗CGRP抗体薬「エムガルティ(Emgality™)皮下注120mgオートインジェクター、同皮下注120mgシリンジ(一般名:ガルカネズマブ(galcanezumab-gnlm/遺伝子組換え))」について、「片頭痛発作の発症抑制」の効能・効果の新有効成分含有医薬品として、承認申請を了承した。
厚生労働省によると、この日の部会では投与対象患者や医療機関の要件など、多岐に渡る議論があったと言う事で。今後作成される最適使用推進ガイドラインで投与対象患者などを明らかにするとしている。
本剤の正式承認は2021年1月中に正式承認されると見込まれる。
「エムガルティ皮下注」製剤は、日本国内での販売提携契約を結んでいる第一三共株式会社(本社:東京都中央区)が流通及び販売を行い、日本イーライリリーが製造販売承認を有し、医療従事者への情報提供活動は両社で実施する。
【片頭痛とは】
一般社団法人 日本頭痛学会によると、日常生活に支障をきたす様な、頭痛の原因となる何らかの疾患がない頭痛(一次性頭痛)で、比較的頻度の高い疾患です。
米国では女性の12.9%、男性の3.6%(全米=約3000万人)が抱え、日本では、成人の約8.4%が片頭痛に罹患していると報告されています。
症状は、頭部の片側もしくは両側(こめかみを起点)に、頭全体に心臓の拍動に合わせて、中等度から重度の強さのズキズキと脈打つような拍動性の痛みを特徴とし、痛みが4~72時間持続すると共に、随伴症状として、悪心や嘔吐、光過敏、音過敏を伴うこともあります。
日常生活に大きく支障を抱えながら過ごす負担は、全疾患の中で2番目に大きいと言われています。
(1位⇒非腸チフスサルモネラ菌侵襲性腸疾患……https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(19)30418-9/fulltext)
〔*日本イーライリリー株式会社/ 国内向けニュースリリースより〕
〔*MSDマニュアル家庭版/ 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気/ 頭痛/ 片頭痛より〕
【片頭痛の前兆と予兆】
頭痛の前に起こる「前兆」症状の有無により、「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の二つのタイプに分類されます。
前兆症状は、キラキラした光、ギザギザの光(円弧から円形に)が視界に出現し、次第に視界全体に広がり見えづらくなる(閃輝暗点)と言った、視覚性の症状が最も多く(90%以上)、ほかにもチクチク感や、感覚が鈍くなる感覚症状、言葉が出にくくなる言語症状などがあります。
特殊な前兆として、半身の脱力感や回転性めまいを認める場合もあります。
通常は,前兆が5~60分続いた後に頭痛が始まります。
頭痛が始まる前に、何んとなく頭痛が起こりそうな予感や気分の変調、眠気、疲労感・脱力感、首すじの凝りといった症状を経験する場合がありますが、これは前兆とは区別して「予兆」と言います。
片頭痛の診断は,国際頭痛学会の診断基準を確認して行います。(特に前兆の無い場合)
〔*日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会訳:国際頭痛分類第2版 新訂増補日本語版〕
〔*日本頭痛学会編:慢性頭痛の診療ガイドライン2006〕
【※注意】
※抗CGRP抗体薬「エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)」の治療目標となる片頭痛とは、『慢性片頭痛』及び『反復性片頭痛』のことであり、ネット上に氾濫する“緊張型頭痛”、“群発頭痛”ではありません。注意が必要です。
【片頭痛発作の発症抑制の詳細】
◆慢性片頭痛(1ヵ月あたりの頭痛日数が15日以上、及び片頭痛日数が8日以上)
◆反復性片頭痛(1ヵ月あたりの頭痛日数が6日以上14日以下、及び片頭痛日数が4日以上)
以上が治療対象となる予定です。
また※片頭痛の診断基準・前兆のある片頭痛については、本文末尾に表を掲載しています。
〔*大塚製薬株式会社プレスリリース/ 慢性および反復性片頭痛の予防的治療/ 片頭痛予防薬「フレマネズマブ」の国内における臨床試験結果について。2020年1月27日より〕
【片頭痛の原因】
片頭痛の病因、及び病態はいまだに明らかにされていません。何が起因となって血管拡張物質(セロトニンとは異なる)の分泌増加が起こるのか、根本は解明されていません。
しかし、放射線免疫学の進歩により、第5脳神経(三叉ニューロン=三叉神経)が刺激された時に発病し、第5脳神経に沿って、眼、頭皮、前頭部、上瞼、口、顎から脳に向かって信号(痛みに関する信号を含む)を送る事で、特有の痛みが増強されます。
第5脳神経(三叉ニューロン=三叉神経)で、痛みを強める物質=『CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)』を最大50%産生することが実証されています。
CGRPは、37個のアミノ酸からなるペプチド(タンパク質を構成するアミノ酸の結合体)です。
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の頸静脈濃度は、片頭痛発病中は増加し続け、ズキズキするような片頭痛を頭部全体に誘発・持続させます。
CGRPは、作用の長い期間を持つ最も強力な内因性血管拡張物質の1つで、三叉末端から放出されたCGRPは、髄膜および脳血管表面の平滑筋細胞上に存在するCGRP受容体(CGRP receptor)を介して血管拡張をもたらします。
このCGRPメカニズムは、ペプチド、又はその受容体のいずれかを、低分子アンタゴニストやモノクローナル抗体の標的として結合させる事で、働きを阻害する事ができます。
〔*MSDマニュアル家庭版/ 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気/ 頭痛/ 片頭痛より〕
〔*片頭痛の処置のモノクローナル抗体/ ©2020 SlidePlayer.com Inc./ Calcitonin Gene Related Peptide and Migraine Current Understanding and State of Development.〕
【ガルカネズマブ(galcanezumab-gnlm)について】
「エムガルティ皮下注(ガルカネズマブ)」は、片頭痛で役割を果たしていると考えられているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP=calcitonin gene-related peptide)に特異的に結合し、CGRPの受容体への結合を阻害するよう設計された新規作用機序のモノクローナル抗体です。
片頭痛の予防を適応として2018年9月、米国に於いて承認を取得し、2020年7月現在、「片頭痛の予防」に係る効能・効果で、欧米を含む40以上の国・地域で承認済。
また「反復性群発頭痛」の治療では米国を含む5か国で承認済である。
+++++++米国FDAでの製品承認概要+++++++
▽エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター、同皮下注120mgシリンジ(一般名:ガルカネズマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー)
▽「片頭痛発作の発症抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
用法・用量は、「通常、成人にはガルカネズマブとして初回に240mgを皮下投与し、以降は1か月間隔で120mgを皮下投与して用いる」
同剤の使用に係る患者及び医療機関などの要件、留意事項は最適使用推進ガイドラインで示される。
正式承認取得後は、製造販売承認は日本イーライリリーが保持し、流通及び販売を第一三共が行い、両社で情報提供活動を実施する。
「エムガルティ(Emgality)」は、月1回皮下投与する自己注射薬です。本剤の成分(正式承認後に添付文書として記載)に対して過敏症の既往歴を有する患者に対しては禁忌とされています。
厚生労働省によると、この日の部会では投与対象患者や医療機関の要件など、多岐に渡る議論があったと言う事で。今後作成される最適使用推進ガイドラインで投与対象患者などを明らかにするとしている。
本剤の正式承認は2021年1月中に正式承認されると見込まれる。
「エムガルティ皮下注」製剤は、日本国内での販売提携契約を結んでいる第一三共株式会社(本社:東京都中央区)が流通及び販売を行い、日本イーライリリーが製造販売承認を有し、医療従事者への情報提供活動は両社で実施する。
【片頭痛とは】
一般社団法人 日本頭痛学会によると、日常生活に支障をきたす様な、頭痛の原因となる何らかの疾患がない頭痛(一次性頭痛)で、比較的頻度の高い疾患です。
米国では女性の12.9%、男性の3.6%(全米=約3000万人)が抱え、日本では、成人の約8.4%が片頭痛に罹患していると報告されています。
症状は、頭部の片側もしくは両側(こめかみを起点)に、頭全体に心臓の拍動に合わせて、中等度から重度の強さのズキズキと脈打つような拍動性の痛みを特徴とし、痛みが4~72時間持続すると共に、随伴症状として、悪心や嘔吐、光過敏、音過敏を伴うこともあります。
日常生活に大きく支障を抱えながら過ごす負担は、全疾患の中で2番目に大きいと言われています。
(1位⇒非腸チフスサルモネラ菌侵襲性腸疾患……https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(19)30418-9/fulltext)
〔*日本イーライリリー株式会社/ 国内向けニュースリリースより〕
〔*MSDマニュアル家庭版/ 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気/ 頭痛/ 片頭痛より〕
【片頭痛の前兆と予兆】
頭痛の前に起こる「前兆」症状の有無により、「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の二つのタイプに分類されます。
前兆症状は、キラキラした光、ギザギザの光(円弧から円形に)が視界に出現し、次第に視界全体に広がり見えづらくなる(閃輝暗点)と言った、視覚性の症状が最も多く(90%以上)、ほかにもチクチク感や、感覚が鈍くなる感覚症状、言葉が出にくくなる言語症状などがあります。
特殊な前兆として、半身の脱力感や回転性めまいを認める場合もあります。
通常は,前兆が5~60分続いた後に頭痛が始まります。
頭痛が始まる前に、何んとなく頭痛が起こりそうな予感や気分の変調、眠気、疲労感・脱力感、首すじの凝りといった症状を経験する場合がありますが、これは前兆とは区別して「予兆」と言います。
片頭痛の診断は,国際頭痛学会の診断基準を確認して行います。(特に前兆の無い場合)
〔*日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会訳:国際頭痛分類第2版 新訂増補日本語版〕
〔*日本頭痛学会編:慢性頭痛の診療ガイドライン2006〕
【※注意】
※抗CGRP抗体薬「エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)」の治療目標となる片頭痛とは、『慢性片頭痛』及び『反復性片頭痛』のことであり、ネット上に氾濫する“緊張型頭痛”、“群発頭痛”ではありません。注意が必要です。
【片頭痛発作の発症抑制の詳細】
◆慢性片頭痛(1ヵ月あたりの頭痛日数が15日以上、及び片頭痛日数が8日以上)
◆反復性片頭痛(1ヵ月あたりの頭痛日数が6日以上14日以下、及び片頭痛日数が4日以上)
以上が治療対象となる予定です。
また※片頭痛の診断基準・前兆のある片頭痛については、本文末尾に表を掲載しています。
〔*大塚製薬株式会社プレスリリース/ 慢性および反復性片頭痛の予防的治療/ 片頭痛予防薬「フレマネズマブ」の国内における臨床試験結果について。2020年1月27日より〕
【片頭痛の原因】
片頭痛の病因、及び病態はいまだに明らかにされていません。何が起因となって血管拡張物質(セロトニンとは異なる)の分泌増加が起こるのか、根本は解明されていません。
しかし、放射線免疫学の進歩により、第5脳神経(三叉ニューロン=三叉神経)が刺激された時に発病し、第5脳神経に沿って、眼、頭皮、前頭部、上瞼、口、顎から脳に向かって信号(痛みに関する信号を含む)を送る事で、特有の痛みが増強されます。
第5脳神経(三叉ニューロン=三叉神経)で、痛みを強める物質=『CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)』を最大50%産生することが実証されています。
CGRPは、37個のアミノ酸からなるペプチド(タンパク質を構成するアミノ酸の結合体)です。
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の頸静脈濃度は、片頭痛発病中は増加し続け、ズキズキするような片頭痛を頭部全体に誘発・持続させます。
CGRPは、作用の長い期間を持つ最も強力な内因性血管拡張物質の1つで、三叉末端から放出されたCGRPは、髄膜および脳血管表面の平滑筋細胞上に存在するCGRP受容体(CGRP receptor)を介して血管拡張をもたらします。
このCGRPメカニズムは、ペプチド、又はその受容体のいずれかを、低分子アンタゴニストやモノクローナル抗体の標的として結合させる事で、働きを阻害する事ができます。
〔*MSDマニュアル家庭版/ 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気/ 頭痛/ 片頭痛より〕
〔*片頭痛の処置のモノクローナル抗体/ ©2020 SlidePlayer.com Inc./ Calcitonin Gene Related Peptide and Migraine Current Understanding and State of Development.〕
【ガルカネズマブ(galcanezumab-gnlm)について】
「エムガルティ皮下注(ガルカネズマブ)」は、片頭痛で役割を果たしていると考えられているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP=calcitonin gene-related peptide)に特異的に結合し、CGRPの受容体への結合を阻害するよう設計された新規作用機序のモノクローナル抗体です。
片頭痛の予防を適応として2018年9月、米国に於いて承認を取得し、2020年7月現在、「片頭痛の予防」に係る効能・効果で、欧米を含む40以上の国・地域で承認済。
また「反復性群発頭痛」の治療では米国を含む5か国で承認済である。
+++++++米国FDAでの製品承認概要+++++++
▽エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター、同皮下注120mgシリンジ(一般名:ガルカネズマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー)
▽「片頭痛発作の発症抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
用法・用量は、「通常、成人にはガルカネズマブとして初回に240mgを皮下投与し、以降は1か月間隔で120mgを皮下投与して用いる」
同剤の使用に係る患者及び医療機関などの要件、留意事項は最適使用推進ガイドラインで示される。
正式承認取得後は、製造販売承認は日本イーライリリーが保持し、流通及び販売を第一三共が行い、両社で情報提供活動を実施する。
「エムガルティ(Emgality)」は、月1回皮下投与する自己注射薬です。本剤の成分(正式承認後に添付文書として記載)に対して過敏症の既往歴を有する患者に対しては禁忌とされています。