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難病ALS進行抑制新薬「KP-100IT」が国内第2相試験を開始

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東北大学大学院・医学系研究科神経内科学分野と、大阪大学大学院・医学系研究科神経内科学は5月13日、共同で全身の筋力が低下する難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS=Amyotrophic Lateral Sclerosis)」の新薬の臨床試験を始めると発表した。

東北大学と大阪大学の研究チームが実施する医師主導治験(第2相試験)には、肝細胞増殖因子(HGF)組換えタンパク質と呼ばれる神経栄養因子が使用される。





筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に脳や脊髄の運動神経細胞の変性によって全身の筋肉に痩せと筋力低下が進行し、多くは4~5年で呼吸筋麻痺に至り、人工呼吸器を装着しなければ生きていけなくなる最も過酷な難治性の神経難病です。

症状の進行を遅くする薬剤はあるものの、症状の進行を抑制したり、症状を改善するような治療法が無いため、新しい治療法の開発が切望されています。

ALSの患者は国内で9,200人、世界で35万人以上とされる。


ラジカット点滴静注剤
2014年11月に発売されたALS進行抑制治療薬
「ラジカット®注30mg」と「ラジカット®点滴静注バッグ30mg」
(一般名:エダラボン/田辺三菱製薬)
本剤は、本年6月20日に米国FDAへ承認申請。
(承認されれば米国では約20年ぶりの新しいALS治療薬となる)



筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を対象とする国内第2相試験は、東北大学病院神経内科・科長の青木正志教授のグループと、大阪大学医学部附属病院神経内科・脳卒中科長の望月秀樹教授のグループが、日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業による支援を受け、東北大学病院、及び大阪大学医学部附属病院において行われる。
(現時点で既に投薬が開始されています)


研究チームは、肝細胞を増殖させるHGFというタンパク質に着目。
肝細胞増殖因子(HGF)は、神経細胞を保護する働きがあり、ラットの動物実験では、筋力低下が抑制され、生存期間が約1.6倍延びた。

研究チームは、ALS患者計15人に、脇腹から脊髄腔にHGFを最長5週間投与し、重大な副作用が無い事を確認した。


HGF投与図
脊髄腔内留置カテーテル
NP022(脊髄腔内カテーテルと皮下埋込みポート)を使用し投与。


肝細胞増殖因子(HGF)組換えタンパク質は、日本で発見された神経栄養因子で、もともとは肝細胞の増殖因子として発見された生理活性物質ですが、運動神経細胞の保護効果を示す作用も強く、難治性神経疾患に対する治療薬として、臨床応用が期待されて来ました。


東北大学の青木正志教授らは、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、及び整形外科学教室の中村雅也教授、旭川医科大学脳機能医工学研究センターの船越洋准教授らと協同で、組換えHGFタンパク質を医薬品化する創薬研究を行った。

2011年(平成23年)~2014年(平成26年)、世界初の組換えHGFタンパク質の脊髄腔内投与による第I相試験(安全性確認治験)を東北大学病院で実施した。

その結果、安全性と薬物動態を15名の軽症ALS患者で確認した事で、今回、ALSに対するHGFの有効性と安全性を確認する第2相試験を開始した。



新規ALS治療薬KT-100IT
©クリングルファーマ株式会社

期待される新規ALS治験薬「KT-100IT」


本治験で使用する治験薬は、ヒトのHGFを、遺伝子組換え技術により製造・製剤化したもの(開発コード:KP-100IT)で、クリングルファーマ株式会社から提供される。


国内第2相試験は、20歳以上70歳以下で、発症後2年半以内の症状が比較的軽い患者が対象で、東北大学病院、大阪大学医学部附属病院のそれぞれで24人ずつ、合計48人のALS患者が参加。
ALS患者の脊髄腔に、治験薬を2週間に1回の間隔で繰り返し投与する。

治験薬は、被験薬「KP-100IT」又はプラセボ(生理作用のない偽薬)の2種類で、最初の6か月間はそれぞれの参加患者に、どちらかの治験薬を投与。これにより、「KP-100IT」が投与された患者とプラセボが投与された患者の結果を比較し、「KP-100IT」の効果と安全性を評価すると言う。

ALSの運動ニューロンに対するHGF保護効果
HGF組換えタンパク質治験薬「KP-100IT」は、
これまでの病状の進行を遅らせるだけだったALS治療薬と異なり、
進行を停止させたり、又は病状の改善も期待されています。


ALS発症初期に、運動ニューロン(運動神経細胞)を保護出来れば、ALSによる細胞変性を最小限に止める事が可能となる。


東北大学の青木正志教授(神経内科)は「3年後を目標に新薬の実用化を目指したい」としている。
治験期間は2019年8月までを予定している。









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