小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区)は9月7日、再発又は難治性の多発性骨髄腫の治療薬としてプロテアソーム阻害剤「カイプロリス?点滴静注用10mg、40mg」(一般名:カルフィルゾミブ=Carfilzomib)を、8月31日に新発売したと発表した。
本薬剤の製造販売承認年月日は、2016年7月4日。
多発性骨髄腫は、骨髄中にある形質細胞と言うリンパ球が腫瘍化した血液癌で、単に骨髄腫と言う事もある。
形質細胞は抗体(免疫グロブリン)を産生する細胞ですが、多発性骨髄腫になると異常な抗体(M蛋白)が産生され、正常な抗体が低下する為、免疫力は低下します。
日本国内における総患者数は、約18,000人と報告されています。
現在、多発性骨髄腫に対する治療法は複数存在し、特に難治性の多発性骨髄腫治療薬としては、2015年、「ポマリスト?」や「ファリーダック?」が承認・販売され、治療の選択肢は広がって来ています。
しかし厄介な事に、多発性骨髄腫は主に50歳以上の中高齢者に発症する病気であり、有効療法の一つである、大量化学療法(抗がん薬による治療)後に造血幹細胞移植を行う為の、強力な化学療法は高齢者では行えないのが現状です。
一般的な抗がん剤治療を行う場合、寛解と再発を繰り返し緩やかに進行する、或いはどの治療法も有効で無くなる難治性の病状に移行する場合も少なくありません。
また、治療が長期的になる事で、副作用や合併症が報告されており、治療に難渋する場合があり、これらの事から、多発性骨髄腫に対する新たな治療薬の開発が今も尚、期待されています。
「カイプロリス?」は、小野薬品工業株式会社が2010年9月に米Onyx Pharmaceuticals社(=オニクス・ファーマシューティカルズ/ 現:米アムジェン・Amgen社の子会社/カリフォルニア州)から導入したもので、高い選択性を有するプロテアソーム阻害剤です。
プロテアソームは、細胞内に存在する酵素複合体で、ポリユビキチン化されたタンパクを分解する作用があり、細胞の増殖、分化、機能的細胞死(アポドーシス)を制御している。
「カイプロリス」はプロテアソームの作用を阻害する事で、骨髄腫細胞の機能的細胞死を誘導します。
■ 承認用法に関しては、抗造血器悪性腫瘍剤「レナリドミド(2010年6月25日承認)」、副腎皮質ステロイド剤「デキサメタゾン」と併用して用いる。
■ 再発又は難治性の多発性骨髄腫患者26例(いずれも前治療回数1回以上)を対象。
■ 国内第Ⅰ相試験において、本剤が投与された26例中26例(100%)に副作用(臨床検査値の異常を含む)が認められた。
◎主な副作用(15%以上)は、▼血小板減少12例(46.2%)、▼リンパ球減少11例(42.3%)、高血糖10例(38.5%)、▼ALT(GPT)増加7例(26.9%)、▼発疹7例(26.9%)、▼便秘6例(23.1%)、▼筋痙縮6例(23.1%)、▼低リン酸血症5例(19.2%)、▼白血球増加5例(19.2%)、▼AST(GOT)増加4例(15.4%)、▼好中球減少4例(15.4%)、▼好中球増加4例(15.4%)、▼発熱4例(15.4%)、▼末梢性ニューロパチー4例(15.4%)、▼血中ビリルビン増加4例(15.4%)、▼白血球減少4例(15.4%)であった。(承認時)
■ 薬価 点滴静注用10mgバイアルが2万3982円、40mgバイアルが8万6255円となっている。
■ 用法・用量 レナリドミド及びデキサメタゾンとの併用において、通常、成人には1日1回、本剤を1、2、8、9、15及び16日目に点滴静注し、12日間休薬する。この28日間を1サイクルとし、12サイクルまで投与を繰り返す。
13サイクル以降は、1日1回、1、2、15及び16日目に本剤を点滴静注し、12日間休薬する。
本剤の投与量はカルフィルゾミブとして、1サイクル目の1及び2日目のみ20mg/m2(体表面積)、それ以降は27mg/m2(体表面積)とし、10分かけて点滴静注する。尚、患者の状態により適宜減量する。
■ 承認条件 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。