ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区虎ノ門)は8月26日、抗悪性腫瘍剤「アフィニトール®錠2.5mg、同錠5mg」(一般名:エベロリムス)について、消化管又は肺原発の神経内分泌腫瘍(NET:NeuroEndocrine Tumors)に対する効能追加の承認を取得したと発表した。
これまで「アフィニトール」の効能又は効果として、膵神経内分泌腫瘍(膵NET)が承認されています。
膵神経内分泌腫瘍と膵臓がんは別の病気で、予後は大きく異なり、膵臓がんは、進行が早く非常に予後が悪い事が知られていますが、膵NETは比較的ゆっくり進行します。
神経内分泌腫瘍(NET)は、身体機能を調節する様々なホルモンを生成・分泌する細胞から生じる希少がんで、特に消化管、肺、膵臓に多く発生します。
神経内分泌腫瘍は遺伝する事はありませんが、膵・消化管NETの約60%の患者で、細胞が癌になるのを防ぐ働きを持つ“がん抑制遺伝子MEN1”の、生まれつきの異常(変異)が原因となり発症する事が分かっています。
神経内分泌腫瘍は、ホルモン産生症状を有する機能性と、ホルモン産生症状の無い非機能性に大別され、機能性神経内分泌腫瘍は、ホルモンなどの物質の過剰分泌によって症状を生じ、一方の非機能性神経内分泌腫瘍では、腫瘍の増殖による症状が見られ、多くの患者が既に進行している状態――すなわち、がんが転移し治療が困難となった状態で診断されます。
国内の神経内分泌腫瘍の患者数は約15,000~17,000人と推定され、人口10万人で5.25人の割合で発症し、近年、増加傾向にあります。
「アフィニトール®」は2011年12月に、抗悪性腫瘍剤として日本で初めて承認された、経口のmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質=mammalian target of rapamycin)阻害剤で、がん細胞の増殖、成長及び血管新生の調節因子である、mTORタンパクを選択的に阻害する事により、腫瘍細胞の増殖抑制とがん細胞への栄養供給通路となる血管新生阻害と言う、2つのメカニズムで抗腫瘍効果を発揮します。
外科手術は、神経内分泌腫瘍に対して最も有効な治療法で、現時点では、唯一根治を望む事ができる治療です。
しかし一方で、他の臓器に転移した場合(特に肝臓転移)でも、減量手術による機能性症状の緩和や予後の延長が期待できる場合がありますが、極めて予後不良です。
2011年に、国内初の『膵神経内分泌腫瘍』の効能又は効果で承認されていますが、今回新たに『消化管又は肺原発』の神経内分泌腫瘍にも使用出来るようになった事で、医師などの医療従事者が、神経内分泌腫瘍の患者に、新たな治療選択肢を提供出来るようになりました。
【アフィニトール®錠の製品概要(下線部が追加承認)】
【製品名】:「アフィニトール®錠2.5mg/5mg」(Afinitor® Tablets 2.5mg/5mg)
【一般名】:エベロリムス(Everolimus)
【効能・効果(下線部は今回追加承認された効能又は効果と承認取得日)】:
1. 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌(2010年1月20日)
2. 膵神経内分泌腫瘍(2011年12月22日)
3. 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫(2012年11月21日)
4. 結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫(2012年11月21日:じょうい,かきょさいぼうせい,せいさいぼうしゅ)
5. 手術不能又は再発乳癌(2014年3月17日)
6. 神経内分泌腫瘍(2016年8月26日)
【用法及び用量】:腎細胞癌、(新)神経内分泌腫瘍、結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の場合
■ 通常、成人にはエベロリムスとして1日1回10mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
:手術不能又は再発乳癌の場合
■ 内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはエベロリムスとして1日1回10mgを経口投与する。
国際共同第III相臨床試験における主な副作用は、口内炎(62.9%)、下痢(31.2%)、疲労(30.7%)、感染症(29.2%)、発疹(27.2%)、末梢性浮腫(25.7%)、悪心(17.3%)、無力症(16.3%)、貧血(16.3%)、食欲減退(15.8%)、味覚異常(14.9%)、肺臓炎(13.4%)、咳嗽(12.9%)、そう痒症(12.9%)、発熱(10.9%)、高血糖(10.4%)、呼吸困難(10.4%)等と報告。
また「アフィニトール」は、世界120カ国以上で承認されており、腎細胞癌、膵神経内分泌腫瘍、乳癌、結節性硬化症に伴う腎臓血管筋脂肪腫、結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫に対する治療薬として使用されています。