《超高額がん治療薬オプジーボ、最大25%値下げ》
超高額薬剤で医療保険財政への打撃を指摘されて来た抗癌剤「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」が、2018年度に予定される定期的な薬価改定を待たずに、緊急的に引き下げる案を、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会が4日提案した事を受けて、厚生労働省の中央社会保険医療協議会・薬価専門部会が、薬価を引き下げる案を提示し、診療側(日本医師会)・支払側(全国健康保険協会)とも大筋で了承した。
最大で25%引き下げる方向で検討する。「オプジーボ」は1年間使うと、最高1人当たり約3500万円掛かる。
さすがに高過ぎると、「いい加減な薬価決定をするな」と、財務省が厚生労働省に文句を言った形となった。
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MSD株式会社(本社:東京都千代田区九段北)は9月28日、根治切除不能な悪性黒色腫に対する効能・効果について、抗悪性腫瘍剤/ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(抗PD-1抗体)「キイトルーダ®点滴静注20mg、及び100mg」(一般名:ペムブロリズマブ,遺伝子組換え)の製造販売承認を取得したと発表した。
抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ(keytruda®)点滴静注」は、米製薬大手メルク社が開発している免疫チェックポイント阻害薬で抗PD-1抗体製剤。
癌抗原特異的なT細胞の活性化、及び癌細胞に対する細胞傷害活性を増強し、腫瘍の増殖を抑えるとされる。
「キイトルーダ」は、がん免疫チェックポイント阻害薬としては、既発売で高額過ぎると問題になっている、抗PD-1抗体の「オプジーボ」、抗CTLA-4抗体の「ヤーボイ」に続く3番手となる。
また同じクラスの抗PD-1抗体としては、抗がん剤「オプジーボ」に次ぐ2番手で、作用機序で競合薬となり、「オプジーボ」のライバル製品が国内で初めて登場する事になる。
皮膚がんの一種である悪性黒色腫は、国内で約4,000人が罹患し、1年間で約600人が死亡しています。
切除不能、又は転移性の悪性黒色腫の予後は依然として悪く、治療の選択肢も限られています。
「キイトルーダ」は、免疫チェックポイント阻害薬で抗PD-1抗体。がん抗原のT細胞に特異的に発現する、PD-1受容体の活性化を阻害し、がん細胞に主に発現するリガンドPD-L1及びPD-L2の相互作用を阻害する事で、腫瘍細胞のアポトーシス(細胞自死)活性を増強して、腫瘍の増殖を抑えるとされる。
「キイトルーダ」は、国内において悪性黒色腫以外に、非小細胞肺がんにも承認申請されており、2017年前半にも判断が下される見通しで、いずれも「オプジーボ」と対象疾患が重なり競合するが、両薬剤の悪性黒色腫に対する効果の優劣は、現時点では明らかになっていない。
また本薬剤は国内において、乳がん、肺がん、膀胱がん、大腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中で、特に、治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する効能・効果について、厚生労働省から『先駆け審査指定制度』施行後初めての対象品目の一つに指定されている。
同様の免疫チェックポイント阻害薬は、現在、ロシュ社(スイス)、アストラゼネカ(英国)、米ファイザー社などでも開発中で、米国において悪性黒色腫を対象とした承認は、「キイトルーダ」の方が「オプジーボ」より先に承認されているが、日本国内では逆になってしまった。
その結果、「オプジーボ」を使用する医師が急増し、同時に患者数も激増した。
【抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®(Keytruda®) の製品概要】
【製品名】
◆キイトルーダ®点滴静注 20mg
◆キイトルーダ®点滴静注 100mg
【一般名】: ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)
【効能・効果】: 根治切除不能な悪性黒色腫
【用法・用量】: 通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回2mg/kg(体重)を3週間間隔で30分間かけて点滴静注する。
【承認申請日】:2015年12月22日
【承認取得日】:2016年9月28日
「キイトルーダ®」の製造販売はMSDが行い、大鵬薬品工業株式会社と共同してプロモーションを行う。
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《若年進行性転移性のトリプルネガティブ乳がん患者を対象とした
エンザルタミド併用第III相試験》
エンザルタミド併用第III相試験》
アステラス製薬株式会社は2014年12月17日、経口アンドロゲン受容体阻害剤「エンザルタミド」の第1/2相臨床試験を、ステージ1/2の患者で実施し、その結果を踏まえ、2016年06月03日、第3相試験のための治験患者の登録を開始している。
トリプルネガティブ乳がんは、ホルモン受容体陽性乳がんと比較して、悪性度が高く、予後不良である事が知られ、遠隔転移や骨転移の場合、抗がん剤の複数療法は患者のQOLが著しく低下し、現実的ではなく、化学療法以外の薬剤との併用が探索されています。
「エンザルタミド」は経口アンドロゲン受容体阻害剤で、転移性前立腺がんの適応で承認されていますが、アステラス製薬は「エンザルタミド」とタキソール(一般名:パクリタキセル)との併用で、病勢進行の抑制への有効性と安全性を評価する第3相試験を実施する。
治験患者の登録数は予定数に達したと報じられており、第3相試験が間もなく始まるものと思われる。
トリプルネガティブ乳がんは、進行が早い為、LH-RHアゴニストの使用より、卵巣の切除術の方が有効とされているが、国内では卵巣切除術は認められていない。
骨転移については、放射性塩化ラジウム(Ra223)医薬品「ゾーフィゴ」が有効とされているが、海外では既に臨床試験が開始されているものの、日本国内では骨転移を有する前立腺がんのみの適応で、乳がんでの臨床試験は行われていない。
しかし卵巣切除術も、「ゾーフィゴ」の適応外使用も、患者次第で不可能ではないと思われる。