日本新薬株式会社(本社:京都府京都市南区)は11月21日、アクテリオン・ファーマシューティカルズ・ジャパン株式会社(本社:東京都港区)と共同開発した、肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療剤「ウプトラビⓇ錠0.2mg、同0.4mg」(一般名:セレキシパグ)の販売を開始したと発表した。
本剤は、日本新薬株式会社が創薬した、世界で初めての経口投与可能な選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬で、導出先のアクテリオン社(本社:スイス)が、日本を除く全世界で実施した第3相国際共同試験(GRIPHON試験)に於いて、その有効性と安全性が確認され、国内の臨床試験に於いても、日本人での有効性と安全性が確認されている。
ヒトが生きる為には、「呼吸」によって「大気中の酸素」を肺に取り入れ、その酸素を肺から身体中に送り届ける必要があります。同時に身体に有害な二酸化炭素を、「呼吸」によって体外に排出します。
これを「肺のガス交換」と言います。
しかし「呼吸」するだけでは身体の中に酸素は取り込めません。
「肺に取り込んだ酸素」を、心臓に一度戻して、心臓の力を借りて全身に送る必要があります。
この時、心臓から肺に血液を送るための血管を「肺動脈」と言い、この肺動脈の圧力(血圧)が何らかの原因で異常に上昇するのが「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」で、予後不良な疾患となっており、「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されています。
国内の肺動脈性肺高血圧症の患者数は2,587人(2013年度/呼吸不全に関する調査研究班)、最新では2,946人(2014年度/(公)難病医学研究財団)で、患者の男女比は1:2.17と女性が男性の2倍以上となっており、発症年齢は20歳代が多く、その後40歳代まで減り、70歳代で増える傾向にあります。
肺動脈の圧力が上昇する理由は、肺の細い血管が異常に狭くなったり、或いは硬くなるために、血液の流れが悪くなる事で起こりますが、原因は以下のように分類されています。
肺動脈性肺高血圧症の原因は、(1)原因不明の特発性、(2)遺伝性、(3)薬物・毒物に伴うもの、(4)他の疾患(膠原病やHIV感染症、先天性心疾患等)に伴うものに分類されます。
その薬物治療に於いては、プロスタサイクリン系薬剤(PGI2)、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)およびホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)の、3種類の作用機序の薬剤が汎用されています。
「ウプトラビⓇ錠」は、世界で初めての経口投与可能な選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬であり、選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)は、プロスタサイクリン(PGI2)が結合する事によって血管拡張等に働く。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者では、この血管拡張作用の働きが弱まっており、IP受容体作動薬は、この働きを強める薬剤です。
日本新薬株式会社では、これまでERA(エンドセリン受容体)製剤「オプスミットⓇ錠」、PDE5i(ホスホジエステラーゼ5)製剤「アドシルカⓇ錠」を発売しており、今回の選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)製剤「ウプトラビⓇ錠」を加え、3種類の異なる作用機序の肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療剤を揃える事になる。
【製品概要】
【薬価収載日】:2016年11月18日
【発売日】:2016年11月21日
【製品名】:ウプトラビⓇ錠0.2mg、ウプトラビⓇ錠0.4mg
【一般名】:セレキシパグ
【効能・効果】:肺動脈性肺高血圧症
【用法・用量】:通常、成人にはセレキシパグとして1回0.2mgを1日2回食後経口投与から開始する。
忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量して維持用量を決定する。尚、最高用量は1回1.6mgとし、いずれの用量においても、1日2回食後に経口投与する。
【薬価】 ウプトラビⓇ錠0.2mg :1,407.90円
ウプトラビⓇ錠0.4mg :2,815.80円