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世界初の腰椎椎間板ヘルニア治療剤「ヘルニコア椎間板注用」の承認申請を了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は3月1日、生化学工業株式会社(本社:東京都千代田区丸の内)から、2014年(平成26)1月30日に、製造販売承認申請が出されていた、“保存療法で十分な改善が得られない「後縦靭帯(こうじゅうじんたい)下脱出型の腰椎椎間板ヘルニア」”を効能・効果とする、「ヘルニコア椎間板注用1.25単位(一般名:コンドリアーゼ/開発コード:SI-6603)」の国内に於ける製造販売承認を了承した。

ヘルニコア椎間板注用イメージ写真
*写真はイメージです。
後縦靭帯下脱出型の腰椎椎間板ヘルニア治療剤「ヘルニコア椎間板注用1.25単位」は、正式承認前、及び発売前であり、薬剤の写真はまだありません。





腰椎椎間板ヘルニアは、腰部の神経が通っている5個の腰椎と言う脊柱管の骨の部分を指し、腰骨の間のクッション材である「椎間板」が変形して飛び出し、神経を圧迫する病態を指します。
腰椎の位置
腰椎5個の部位。

しかし、画像診断でヘルニアが確認されたとしても、それが即、症状に結びつくとは限らず、長い間無症状のまま、ヘルニア塊が自然消滅、或いは縮小するケースも少なくありません。

腰痛のうち、85%は原因不明だと言われ、残り15%のうち、椎間板ヘルニアが原因であると特定出来るのは僅か5%程度に過ぎないと言われています。〔沢井製薬/椎間板ヘルニアの原因と症状より〕
腰椎椎間板ヘルニアの原因

腰椎椎間板ヘルニアの病態診断は、『神経学的検査』と『画像検査』により、【膨隆・突出型】【後縦靭帯下脱出型】【経後縦靭帯(突破)脱出型】【遊離脱出型】の四つに分類されますが、本剤は、このうち後縦靭帯下脱出型のみに使える。

腰椎椎間板ヘルニアの4つの病態



腰椎椎間板ヘルニアは、時間経過に伴い症状が軽減する事も多いため、治療の原則は保存療法となり、保存療法にはNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛薬=non─steroidal anti─inflammatory drugs)などの鎮痛薬の投与、ステロイド又は局所麻酔薬を用いた神経ブロック、理学療法が主に行われる。

現在、腰椎椎間板ヘルニアの根本治療となる薬物療法が存在しない事から、これらの保存療法で効果不十分な重度の場合は、ヘルニアを取り除くための手術を受けていますが、これには高額の費用負担に加え、数週間の入院とリハビリが必要です。

「ヘルニコア椎間板注用1.25単位」は、1回の投与で手術と同程度の症状改善効果が期待できる薬剤であり、患者の身体的負荷の軽減に貢献が期待されます。




ヘルニコア椎間板注用
ヘルニコア椎間板注用を椎間板内の髄核に直接投与。


【腰椎椎間板ヘルニア治療剤「ヘルニコア椎間板注用1.25単位(SI-6603)」について】
腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の中心部分にある髄核や外側の線維輪の一部が突出する事で、脊椎周辺の神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こす疾患です。

グリコサミノグリカンの構造写真
グリコサミノグリカンの構造/顕微鏡写真。

本薬剤は、髄核の構成成分であるグリコサミノグリカン(*GAG)を特異的に分解するコンドリアーゼ(Condoliase)という酵素を利用した注射薬であり、椎間板内に直接投与する事により、GAGを分解して髄核を縮小させる事で、神経への圧迫を減少させる効果が期待されます。

また、タンパク質を分解しないため、血管や神経などの周辺組織に影響を与えないと考えられています。


*グリコサミノグリカン(GAG):複合糖質の主要成分の1つ。コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸等。

ヘルニコア椎間板注用の作用




本剤は、米国でも第Ⅲ相臨床試験が行われたが、主要評価項目の投与後13週での下肢痛軽減で、統計学的に有意な改善効果が認められず、米国食品医薬品局(FDA)など海外で承認された国はない。

このため生化学工業株式会社と、フェリング・ファーマシューティカルズ社は2018年2月19日、前回実施の無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験結果から得られた知見を反映させた、米国における第Ⅲ相臨床試験(追加試験)を開始したと発表しました。




追加の第Ⅲ相臨床試験では、本剤の効果が具現しやすい症例の振るい分けなどが行われ、体格の大きい米国人に、より治療効果の高い投与量などを確認してゆく。

この点について厚生労働省の担当官は、「(日本での部会通過は)米国での試験結果も検討した上での最終的な評価。日本人での試験結果を重く見て、(部会では)承認して差し支えないと言うことになった」と説明した。






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持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ®注シリンジ12.5μg」の製造販売承認を取得

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中外製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)は、「腎性貧血」を効能・効果として販売を行っている、持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ®注シリンジ(一般名:エポエチンベータペゴル=遺伝子組換え)」の低含有量製剤「ミルセラ®注シリンジ12.5μg(マイクログラム)」について、3月19日、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表した。

ミルセラ注シリンジ12.5μg
持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ®注シリンジ12.5μg」
(一般名:エポエチンベータペゴル=Epoetin Beta Pegol)



貧血と言うと、女性の病気と思いがちですが、腎機能の低下による貧血の発症には、性別による違いはありません。女性だけでなく男性にとっても注意が必要な貧血です。

しかも「腎性貧血」は、昨今増えており、腎臓の働きが少しずつ悪くなって行く「慢性腎臓病(CKD)」の患者数は1330万人(日本腎臓学会「CKD診療ガイド2012」より)で、20歳以上の成人の8人に1人が相当します。〔アステラス製薬/「貧血」と「腎臓」の深~い関係より〕



「貧血」には、1)低血圧症で意識が低下して倒れた様な場合と、2)赤血球の材料である鉄が不足して起こる場合、3)骨髄機能の低下、4)免疫の抗原抗体反応、5)造血ビタミンB12や葉酸の不足、そして6)腎機能の低下で起こるタイプに別れます。

    1)は医学的な貧血とは違います。
    2)は鉄欠乏性貧血です。
    3)は再生不良性貧血です。
    4)は溶血性貧血です。
    5)は巨赤芽球性貧血です。
    6)が『腎性貧血』です。
〔中外製薬 ミルセラQ&A等より〕

「腎性貧血」は、慢性腎不全に伴う腎性貧血と診断された血液透析患者、保存期慢性腎臓病患者、及び腹膜透析患者に見られる貧血です。〔新潟大学腎医学医療センター CDKより〕

http://www.med.niigata-u.ac.jp/cns/CKD-8.pdf

慢性腎臓病の貧血

腎臓に於いてヘモグロビン(酸素を運搬するタンパク質)の低下に見合った、十分量のエリスロポエチン(赤血球産生促進ホルモン=EPO)が産生されない事によって引き起こされる貧血で、貧血の主因が慢性腎臓病(CKD)以外に求められないものを言う。〔日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン2015年版」より〕




「ミルセラ®注シリンジ」は、スイスのロシュ社(Roche,Ltd.)が開発したエポエチンベータ(epoetin β=EPO β)をポリエチレングリコール(PEG)化する事により、血液中での安定性を高めた持続型の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)です。

ミルセラ®注シリンジの働き
ミルセラ注シリンジの作用機序

骨髄の赤芽球系前駆細胞に存在する“エリスロポエチン受容体”を持続的に刺激することで、安定的、尚且つ持続的な貧血のコントロールを可能にした、腎性貧血治療薬です。


現在、米国を含む世界100カ国以上で発売され、日本では、2011年7月に「腎性貧血」を適応症として販売が開始されている。


ミルセラ注シリンジ

現在、「ミルセラ®注シリンジ」は25μg(マイクログラム)、50μg、75μg、100μg、150μg、200μg、250μgの計7規格を販売し、多くの腎性貧血患者の治療に使用されています。

一方で、臨床現場から、より細やかな用量調整ができるよう、更なる低含量規格製剤が望まれていた。
今回の新用量追加で、成人体重に満たない患者への投与が可能となり、UI薬以外での治療薬の選択肢が増えると期待される。






【製品概要】

【販売名】:ミルセラ®(MIRCERA®)注シリンジ12.5μg
【一般名】:エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)
【有効成分】:エポエチン ベータ ペゴル(1シリンジ0.3mL中)
注)本剤は、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて製造される。

【効能・効果】:腎性貧血

【用法・用量】:12.5μgについては不明。
【特徴】:エポエチン ベータ ペゴルは従来の赤血球造血刺激因子製剤(ESA:erythropoiesis stimulating agent)と比較すると血中半減期は長く、造血が長時間持続する。

同社の「エポジン®注」等の既存の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)よりも、長い血中半減期を有し、静脈内投与、及び皮下投与、共に維持用量は4週間に1回と少ない投与頻度で、「腎性貧血」治療のガイドラインの目標ヘモグロビン値を達成する事が可能となります。





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致死率19%…マダニ媒介性感染症抗ウイルス薬の国内第Ⅲ相試験―患者登録を開始

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マダニ媒介性感染症は――、


マダニ媒介感染症の種類

病原体(ウイルス)を保有するマダニに咬まれる事によって起こる感染症で、「クリミア・コンゴ出血熱(第一類感染症)」「回帰熱/ライム病(第四類感染症)」「重症熱性血小板減少症候群(SFTS=第四類感染症)」「ダニ媒介脳炎(第四類感染症)」「つつが虫病(第四類感染症)」「日本紅斑熱(第四類感染症)」などがあります。


このうち『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』は、2009年に中国で初めて流行が確認され、国内では2013年1月に、海外渡航歴の無い人がSFTSに罹患していた事が初めて報告され、それ以降、SFTS患者が確認されるようになり、2018年1月31日までに318名の患者が確認され、うち60名が死亡しています。

実に、5人に1人が亡くなっている事になります。


2017年7月25日のニュース
2017年(平成29年)7月25日のニュース

西日本での発症が多く、マダニの活動が盛んな春から秋にかけて罹患する危険性が高まり、非常に稀有ですが、感染したイヌやネコからヒトに感染した事例も報告されています。

重症熱性血小板減少症候群の届出地域

現段階で、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対する有効な抗ウイルス薬等の治療法はなく、対症療法が主体になります。



危機感を持った国は、2016年2月22日、厚生労働省研究班のチームが、抗インフルエンザウイルス薬の「アビガン®錠(一般名:ファビピラビル=Favipiravir)」が有効である事を、マウスの実験で確かめたと、米国微生物学会の専門誌に発表しました。

抗ウイルス薬ファビピラビル
抗インフルエンザウイルス薬「ファビピラビル(アビガン®錠)」

「アビガン®錠(ファビピラビル)」は、エボラ出血熱の治療薬としても注目を集めている抗ウイルス薬です。



それからおよそ2年――。


2018年3月12日、富山化学工業株式会社(本社:東京都新宿区/富士フイルムグループ)は、マダニ媒介性感染症である重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を対象とした、抗ウイルス薬「ファビピラビル(アビガン®錠)」の国内第Ⅲ相臨床試験の患者登録を開始したと発表しました。


「ファビピラビル(アビガン®錠)」は、既に、抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得している薬剤で、ウイルスの“RNAポリメラーゼを選択的に阻害する”事で、ウイルスの増殖を防ぐと言うメカニズムを有しています。
新薬アビガン錠の作用機序
アビガン®錠の作用機序。

このメカニズムの特徴から、インフルエンザウイルス以外のウイルス感染症分野でも、応用の可能性が高いと考えられており、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に於いても、先に述べたように、国立感染症研究所で行われた動物モデルでの基礎研究で、本剤の有効性が確認されている。

また、その後、2016年6月から愛媛大学、長崎大学、国立感染症研究所が中心となり、本剤を用いたSFTSを対象とする臨床研究を実施した結果、有効な治療法の開発に繋がる知見が得られた事が報告されている。



今回の国内臨床第Ⅲ相試験の患者登録開始によって、現在は対症療法のみである重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対して、新たな治療法の提供を目指している。


アビガン錠薬2014年10月25日のニュース


【ファビピラビル(製品名:アビガン®錠)について】
尚、本剤は日本に於いて、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効、又は効果不十分な『新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症』が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合に、患者への投与が検討される医薬品として、2014年3月に承認を取得している。







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IL-6r抗体標的の関節リウマチ治療薬「ケブザラ皮下注」が2月から発売を開始

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旭化成ファーマ株式会社(本社:東京都千代田区神田神保町)は2月5日、既存治療で効果不十分な関節リウマチ治療薬「ケブザラ皮下注150mgシリンジ、同皮下注200mgシリンジ(一般名:サリルマブ=遺伝子組換え)」の発売を開始しました。

本剤は既に、2017年9月27日に製造販売承認を取得し、2017年11月22日に保険適応で薬価収載されている。



ケブザラ皮下注シリンジ
〔インターロイキン6(IL-6)受容体ヒト型モノクローナル抗体製剤〕
関節リウマチ治療薬「ケブザラ皮下注150mgシリンジ、同皮下注200mgシリンジ」
(英名:Kevzara/一般名:Sarilumab)



関節リウマチは、身体の多くの関節に痛みや腫れを伴う自己免疫の異常による慢性の全身性炎症疾患で、日本には70~80万人程度の関節リウマチ患者がいると言われています。

関節リウマチの進行

病態は、関節内に存在する関節腔の内面を覆っている、「滑膜細胞(上図のオレンジ色)」と言う組織が異常増殖することによって、関節内に炎症を生じ、関節が変形したり、関節が破壊されて様々な機能障害を引き起こします。
「滑膜」のあるどの関節でも発症する可能性があり、罹患早期から関節破壊が進行し、長期罹患によって、関節の変形と機能障害が起こります。
関節リウマチによる関節滑膜の炎症

関節リウマチによる骨破壊
関節リウマチによる骨破壊。
右手第四指~小指関節(矢印)の炎症性骨浸食。

遺伝的要因や細菌・ウイルスの感染などが考えられていますが、原因は良く分かっていません。



現在は、メトトレキサート(従来型疾患修飾性抗リウマチ薬=DMARD)やオレンシア(生物学的製剤)での早期の寛解導入を目指す治療が行われていますが、既存の治療では、十分な効果が得られないケースもあり、新たな治療選択肢が必要とされています。

通常の滑膜細胞と関節リウマチの炎症滑膜細胞
通常の滑膜細胞(N/R)と関節リウマチの炎症滑膜細胞(I)の違い。




「ケブザラ皮下注」はインターロイキン6*受容体(IL-6R)に対するヒト型モノクローナル抗体で、関節滑膜での炎症に重要な役割を果たしていると考えられているインターロイキン6(IL-6)の作用を抑制する薬剤です。

IL-6受容体とIL-6が結合すると、
細胞増殖シグナルが滑膜細胞に送られる。

ケブザラ皮下注の作用機序
ケブザラ皮下注の作用機序1
「ケブザラ」がIL-6受容体のIL-6結合部に先に結合し、
IL-6の結合を阻止する。

「ケブザラ皮下注」は、製造元のサノフィ株式会社(本社:東京都新宿区)と米リジェネロン社(Regeneron社:ニューヨーク州)が共同で開発を行い、米国、カナダ、欧州では2017年に承認されています。


*インターロイキン6はリンパ球から分泌される、感染や疾患に対する身体の自然な反応を改善できるサイトカイン(=免疫作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用や細胞増殖の調節をするタンパク質の総称)と言う物質のこと。




【製品概要】
【製品名】:「ケブザラ(Kevzara)皮下注150mgシリンジ、同200mgシリンジ」
【一般名】:サリルマブ(Sarilumab=遺伝子組換え)
【効能・効果】:既存治療で効果不十分な関節リウマチ
【用法・用量】:通常、成人にはサリルマブ(遺伝子組換え)として1回200mgを2週間隔で皮下投与する。尚、患者の状態により1回150mgに減量すること。

【製造販売元】:サノフィ株式会社
【発売元】:旭化成ファーマ株式会社
【発売日】:2018年2月5日
【薬価】:
150mg /1シリンジ1.14mL 45,467円
200mg /1シリンジ1.14mL 60,329円

尚、IL-6を標的とする抗リウマチ薬(bDMARD)は、アクテムラ皮下注に続く2剤目となりますが、アクテムラ皮下注は162mgのみであるのに対し、「ケブザラ皮下注」は150mgと200mgでの新容量であり、アクテムラが使えない患者の新たな治療選択肢になると期待される。








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抗悪性腫瘍剤「レンビマカプセル」が切除不能な肝細胞癌の適応で追加承認を取得

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山下さん――あなたがあの日、待ち望んだ「レンビマ」が、承認され、薬価収載されましたよ‥‥。そうです、保険適応になったんです――



肝細胞癌治療薬レンビマカプセル
抗悪性腫瘍剤/切除不能な肝細胞癌の適応追加承認
「レンビマ®カプセル4㎎(一般名:レンバチニブメシル酸塩)」


エーザイ株式会社(本社:東京都文京区小石川)は3月26日付けで、抗悪性腫瘍剤「レンビマ®カプセル4㎎(一般名:レンバチニブメシル酸塩)」について、新たに「切除不能な肝細胞がん」に係る効能・効果の追加承認を取得したと発表した。

「レンビマ®(lenvima)カプセル4㎎」は既に、「根治切除不能な甲状腺がん」の適応で承認を取得しており、エーザイ株式会社が3月に、米メルク社(MSD社)と締結した『レンビマ®』の共同開発・共同販促提携契約後、初の承認となった。



肝細胞癌の腫瘍
肝細胞癌の腫瘍細胞

肝細胞癌の一次療法に対して、承認されている全身化学療法は限られており、アンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療法の確立されていない治療分野)の高い疾患の一つです。

進行・切除不能な肝細胞癌(HCC)に対して、承認されている薬剤は、これまで2008年4月薬価収載の「ソラフェニブ(製品名・ネクサバール)」が唯一の保険承認薬でしたが、2017年に「レゴラフェニブ(製品名・スチバーガ◇2013年結腸がん)」が追加の保険承認され、2剤となりました。(但しスチバーガの評価は、重篤な肝機能障害が発現する事があり、使用可能な患者が限られている)

そのため、ソラフェニブ(又はレゴラフェニブ)投与後に進行・増悪(ぞうあく)した患者や、薬剤耐性が発現した場合の、新たな2次治療薬の登場が永らく待ち望まれていました。



肝細胞癌は、腫瘍血管網が発達した典型的な多血性腫瘍である事から、VEGF(Vascular endothelial growth factor=血管内皮細胞増殖因子)およびFGF(Fibroblast growth factors=線維芽細胞成長因子)誘導性の血管新生が、重要な役割を果たしていると考えられています。
肝細胞癌の新生血管網

また、肝細胞癌はFGFR1~4を発現しており、FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)シグナルの亢進が、癌細胞の悪性化や予後不良に関連することが示唆されています。





レンビマカプセル作用機序
「レンビマカプセル(レンバチニブ)」の作用機序

「レンビマ®カプセル4㎎」は、VEGFR(血管内皮増殖因子・受容体)1~3やFGFR1~4などの受容体チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有しており、腫瘍血管新生や、悪性化を阻害する事により、切除不能な肝細胞癌に対する治療効果が期待されます。

本剤は、エーザイ株式会社・筑波研究所で研究開発された薬剤で、これまでに甲状腺癌に係る適応で、米国、日本、欧州など50カ国以上で承認を取得している。

切除不能な肝細胞癌に係る効能・効果の追加は、2017年6月に承認申請を行い、迅速審査を経て、2018年3月23日に日本で、世界に先駆けて承認を取得した。




【~以下は、福島県総合南東北病院外科勤務のがん治療認定医:
中山祐次郎氏が寄稿された
日経メディカルの記事から引用抜粋し再構築しました~】



山下弘子さんは、肝細胞がんのため亡くなりになりました。
19歳で肝臓がんが見つかって3年――22歳の彼女は、肺転移もあり、抗癌剤治療中でしたが富士山登山に挑みます。
下山は馬に乗せてもらうサービスを利用したと言います。
彼女は今年2月末に容体が急変。この文章は、容体が急変し集中治療に入る数日前に書いています。

19歳の時、余命半年と言われた山下弘子さんは、これまでいくつかの臨床試験に参加し、最終的には参加できる臨床試験が無くなってしまいました。
本人もブログやツイッターで発信していましたが、それからいくつか保険適応外の治療を行なっていました。

「ソラフェニブ」を一次治療で使用すると、二次治療でプラチナ製剤は使えません。

そのため、効果が確実とは言えない臨床段階の薬剤や、海外での臨床試験が進んでいるものの、日本人に効果があるか不明な薬剤を――。

‥‥こうした積極的な治療姿勢が、結果的に山下弘子さんの予後をかなり延長してくれました。
承認された治療薬はこの時、1剤のみでした。
当初(2012年)、余命半年と宣告された山下弘子さんが、その後幾つかの治験に参加し、6年近くの間、充実した人生を送り、尚且つ、治療薬の治験に参加したのは、治療に尽力した医師や家族のサポートだけでなく、新たな治療薬の開発に携わり、『少しでも医学の時計の針を前に進めることができるのなら』という思いでした。


【中山祐次郎氏のことば】より
標準治療が終わってしまった後の患者さんに対して、我々癌の専門家は無力です。
いえ、正確にいえば「標準治療が全て無効になってしまったが、もっと積極的治療をしたい」患者さんには無力、ですね。

彼女は正にここに当てはまりました。そういう人がどこに行けばいいのか。
おそらく殆どの場合、自由診療(保険適応外)の癌治療を行っている処へ行っているでしょう。
その中には、インチキで、超高額な処もあります。

この人たちのキチンとした受け皿が無いのは、非常に大きな問題だと思っています。

  


山下弘子さん、あなたがあの日、喜んだ新薬「レンビマ」は、2017年1月25日に国内第Ⅲ相臨床試験が終了し、2017年6月23日「肝細胞癌に係る適応追加の承認」を申請、今年3月23日、承認されました。

そしてもう一つ、米国イーライリリー社が2018年4月4日(米国現地時間)に、肝細胞癌の患者に対する二次治療として、「サイラムザ®(ラムシルマブ)」の肝細胞癌に対する二次治療の有効性を評価した第3相臨床試験で、全生存期間の評価項目を達成したと発表しました。


サムライザ

「サイラムザ®(ラムシルマブ)」は、2016年6月20日までに日本国内で、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん/胃がん/結腸・直腸がん」の適応でに承認された、プラチナ製剤使用の有無を問わない治療薬で、2018年後半にも肝細胞癌の適応で、米国で承認申請される可能性が出てきました。


山下弘子さん――、あなたが病巣に挑み続けた魂の意思は、少しずつ‥‥しかし確実に、医学の時計の針を前に進めていますよ。

――ありがとう――。



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世界初のIBAT阻害剤/慢性便秘症治療薬「グーフィス®錠5mg」が発売を開始

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エーザイ株式会社(本社:東京都文京区)、EAファーマ株式会社(本社:東京都中央区)、持田製薬株式会社(本社:東京都新宿区)の3社は、世界初の作用機序を持つ、『胆汁酸トランスポーター(IBAT阻害剤/慢性便秘症治療薬「グーフィス®錠5mg」(一般名:エロビキシバット水和物)』について、4月18日付けで薬価基準に収載された事を受け、4月19日より、EAファーマ株式会社と持田製薬株式会社から、それぞれ新発売したと発表した。
EAファーマ株式会社と、その親会社のエーザイ株式会社は共同販促する。



グーフィス錠5mg
胆汁酸トランスポーター阻害剤/慢性便秘症治療薬
「グーフィス®錠5mg」(Elobixibat Hydrate)


便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
診断は、排便回数の減少、便の硬さ、排便困難感、残便感等により診断されます。
水分摂取量の減少や、発汗、緊張など、一時的な未排便とは異なり、腹痛、直腸残便感、腹部膨満感があり慢性化するのが特徴です。

便秘症は、若年層の女性に多く、また男女共に高齢者の罹患比率が高い疾患で、日本に於ける有訴者数は、約450万人(平成28年国民生活基礎調査(厚生労働省)より推定)と推定されます。


便秘による大腸の糞塊
便秘による大腸の中の糞塊
(腹部のX線写真)

「グーフィス®錠5mg」は、EAファーマ株式会社がスウェーデンのAlbireo AB社から導入した、新規作用機序を持つ、1日1回経口投与の慢性便秘症治療薬で、本作用機序を有する薬剤としては、世界初となります。


《小耳を拝借》
胆汁酸は、肝臓でコレステロールから合成される物質で、胆汁の主成分として胆嚢に蓄えられます。
食事に伴って胆嚢から十二指腸へ分泌され、腸肝循環(腸管から再び吸収され肝臓に戻る)により小腸で約95%が再吸収される。
一方、再吸収されなかった胆汁酸は大腸へ到達して、大腸管腔内で胆汁酸が増加すると、胆汁酸の働きによって大腸管腔内へ水分が分泌され、また消化管運動が促進することが知られています。



胆汁酸の腸肝循環
胆汁酸の腸肝循環よる排泄のメカニズム

「グーフィス®錠」は、胆汁酸トランスポーター(IBAT=ileal bile acid transporter)阻害作用を有するエロビキシバット(Elobixibat)を有効成分とし、胆汁酸再吸収が阻害され、大腸へ流入する胆汁酸の量が増加すれば、大腸管腔内への水分の分泌と大腸運動促進の2つの作用で、自然な排便を促す事が期待されています。

こうした作用機序を持つ便秘症治療薬は、これまでになく、既存の便秘治療薬の長期使用による耐性化や、習慣性(薬剤の増量)、高マグネシウム血症を含む電解質異常、悪心などの発現等が起こりにくく、自発排便に近い治療効果を発揮する可能性を持つと考えられる




【製品概要】
【製品名】:グーフィス®錠5mg
【一般名】:エロビキシバット水和物
【剤型・含量】:1錠中にエロビキシバットとして5mgを含有するフィルムコーティング錠
【効能・効果】:慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
【用法・用量】:通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。尚、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする。
【薬価】:5mg/1錠 105.80円
【製造販売承認取得日】:2018年1月19日
【使用上の注意】:ウルソデオキシコール酸(ウルソ他)などの胆汁酸製剤の再吸収を阻害し、胆汁酸製剤の作用を減弱するおそれがある事から併用注意。
また腫瘍、ヘルニア、腸閉塞など器質的疾患には禁忌となっている。
その他の副作用は、腹痛、下痢。



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初のCAR-T細胞医療「CTL019」B細胞急性リンパ性白血病で製造販売承認を申請

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ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都)は4月23日、CAR-T細胞医療(=キメラ抗原受容体T細胞医療)の「CTL019(開発コード、国際一般名:tisagenlecleucel、海外製品名:Kymriahキムリア)」について、『小児を含む25歳以下のCD19陽性再発または難治性の、及び成人のCD19陽性再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫』の2つの適応で、再生医療等製品として、承認申請したと発表しました。

CAR-T細胞医療(キメラ抗原受容体T細胞医療)の承認申請は国内初となります。


キメラ抗原受容体T細胞_tisagenlecleucel
キメラ抗原受容体T細胞医療遺伝子治療パック
「CTL019/Kymriah TM」製品写真(FDA)



B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、最も高い頻度で見られる小児がんであり、ALLと診断される患者の、60%が20歳未満で発症します。(日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版)
日本に於けるALLの総患者数は約5,000人と報告されており(厚生労働省 平成26年患者調査)、患者の約20%で再発が見られます。

B細胞性急性リンパ性白血病と原因遺伝子転座
B細胞性急性リンパ性白血病と原因遺伝子転座
B細胞性急性リンパ性白血病では、
第4染色体と第10染色体で遺伝子配列が逆になる転座が起こる。


再発・難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病の患者は、化学療法や放射線、標的療法、同種造血幹細胞移植など、複数の治療を受けますが、それらの有効性が持続しない場合、予後は不良であると報告されています。(米国医学図書館 全国バイオテクノロジー情報センター)



びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、最も高い頻度で見られるリンパ腫で、日本に於ける全ての非ホジキンリンパ腫症例の約30~40%を占めています。(国立がん研究センター がん情報サービス)

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の
肥大化した中心核を持つB細胞

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者の約33%は1次治療に奏効を示さず、再発するか、もしくは難治性に移行します。
2次治療以降は、自家造血幹細胞移植(ASCT)以外には救援化学療法の選択となり、治療法が極めて限られています。
その為、自家造血幹細胞移植(ASCT)に適さない、或いはASCT治療から1年以内に再発した、再発又は難治性のDLBCL患者の予後は不良で、平均余命は4.4~6.3カ月とされています。


B細胞性急性リンパ性白血病で腫瘍細胞表面に発現する4種の抗原
B細胞性急性リンパ芽球性白血病では、
その病名が示す通り、リンパ球が腫瘍初期の芽球の段階で
最も早く癌細胞に発現するのがCD19抗原である。



CAR-T細胞医療(キメラ抗原受容体T細胞医療)である「CTL019」は、患者一人ひとりの血液からT細胞を採取し、がん細胞や、その他の細胞に発現する『CD19』を特異的に認識し、がん細胞を攻撃するよう遺伝子を導入した、革新的な免疫細胞医療の事です。


キメラ抗原受容体T細胞治療の仕組みと作用機序
キメラ抗原受容体T細胞治療(CAR-T細胞医療)の仕組みと作用機序


1人1人の患者に合わせて製造される「CTL019」の単回投与により、治療を行います。
「CTL019」は、CAR-T細胞の増殖と維持を増強するために、4-1BB共刺激ドメインをキメラ抗原受容体内に使用しています。




今回の承認申請は、米ペンシルベニア大学と協働で行われているノバルティスの国際多施設共同第II相試験(ピボタル試験)、及びJULIET試験に基づいて行われました。

FDA(米国食品医薬品局)で2017年8月、世界で初めて小児を含む25歳以下の再発・難治性ALLの適応症で承認されました。
また、1回の治療で、47万5000ドル(約5300万円)掛かる事でも話題となった。

この点について、2017年12月11日の第59回米国血液学会(ASH)年次総会で、「CTL019」の費用対効果分析の結果、標準治療と比較して費用対効果に優れている事が示されました。【「CTL019」によって得られる生存年、及び健康価値尺度(質調整生存年)を、クロファラビン単剤療法、クロファラビン併用療法、ブリナツモマブ、その他のサルベージ化学療法、及び同種幹細胞移植と比較した結果による】







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山口達也アルコール依存症か? 飲酒量低減薬「ナルメフェン」の国内製造販売を申請

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TOKIO山口達也を起訴猶予 東京地検

山口達也起訴猶予処分

女子高校生に対する強制わいせつの疑いで書類送検されたアイドルグループ「TOKIO」のメンバー・山口達也(46)について、東京地方検察庁は1日、不起訴処分とし、発表した。
女子高校生が被害届を取り下げた事などから、起訴猶予にしたと見られる。
山口達也メンバーは今年2月12日、知り合いの未成年の女子高校生を東京都港区の自宅マンションに誘い、無理やりキスをするなどしたとして、警視庁から4月中旬に書類送検されていた。
警視庁の調べに大筋で容疑を認めていたと言う。
‥‥事件当時は飲酒して深酔い状態だった事などを説明した。 [2018年5月1日付/朝日新聞デジタル]


人間には脆さがあります。

堅牢に見えても、繊細で、傷つきやすい人は、たくさんいます。
そうした内面の脆く崩れやすい感情を、制御するには、
人それぞれで対応の仕方があり、時に何かに熱中したり、或いは何かに寄り掛かる。

しかし弱さが心理的、肉体的に継続すると、楽になる『依存』を探そうとする。

「アルコール依存症」は、お酒が飲める人の最も身近で簡単な『依存物』となります。

アルコール依存症イメージ

時に、飲酒運転やひき逃げ、暴力、所構わず嘔吐、飲酒強要など、犯罪に結びつく事もあり、
高圧的態度や自己過信、横柄、そして威圧感や強気へと高揚させてしまう……。
アルコールに依存していればいるほど、少量でも安心感と高揚感を味わう事になる。

「TOKIO」4人の会見では、松岡昌宏(41)は、「何度も何度も同じ過ちをしてしまう。僕らはアルコール依存症だと思っていた」と指摘。しかし「いろんな病院に診断を求めても、アルコール依存症というのは出ていない」と明かし、「そうやって(診断書を)書いて下さったほうが僕らも納得できるんですけど」と、吐露した。
城島茂(47)は、「現場で酒の臭いがするとか、二日酔いで調子が悪そうなことはありました。円滑にロケが進まないことも」と回想。[2018年5月3日付/スポニチ Sponichi Annex]

アルコール依存症の診断は、そんなに難しいものなのでしょうか?

世界保健機関(WHO)の作成した、アルコール依存症(alcohol dependence syndrome)確定診断のICD-10診断ガイドラインでは……。


1)飲酒したいという強い欲望、或いは強迫感(落ち着きがない)
2)飲酒の開始、終了、或いは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難
3)禁酒、或いは減酒した時の離脱症状(手の震え、発汗、不眠)
4)耐性の証拠(多量に飲まないと酔えない)
5)飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長
6)明らかに有害な結果が起きているにも関わらず飲酒


◎過去1年間に上記の項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いたか、又は繰り返し出現した場合、とあります。
◎有害な結果とは、アルコール性肝炎、アルコール性慢性膵炎など。

アルコールに依存し、お酒に強い人で内臓疾患が認められる症例は、よほど重度であり、その他の項目もハードルが高いようです。



また診断基準ではなく、概念としてのアルコール依存症は……、
アルコールを繰り返し摂取する事により、飲酒したいという欲求が強くなり、飲酒行動のコントロールが困難な状態となる事で、自身の健康を損なうだけでなく、社会的・経済的な影響が大きいとされる。
むしろこちらの病態概念がマトを得ているようです。

最新のアルコール依存症に対する診断・治療ガイドラインでは、飲酒量低減治療が断酒に導くための中間的ステップ、或いは治療目標の1つとして位置づけられています。


2013年(平成25年)の厚生労働省研究班の調査によると、国内のアルコール依存症患者数のうち、危険域に近い多量飲酒の人は約980万人、アルコール依存症の疑いのある人は約440万人、治療の必要なアルコール依存症の患者は、109万人と推計されています。
また、医療機関で治療を受けている患者数は、厚生労働省の調べで約4万9千人(平成26年)と推計されている。


アルコール依存症の飲酒者に於ける割合


国内でのアルコール依存症の治療の主体は、入院治療です。
外来ではほぼ不可能です。

その最大の原因は、アルコール依存症の治療法が確立しておらず、又、治療薬は3種が発売されていますが、抗酒薬と呼ばれる「慢性アルコール中毒に対する抗酒療法」剤であるため、本人と家族や周囲の人の手助けが無ければ、断酒を維持する事が難しいためです。

薬を飲み続ける事は、すなわち、薬を止めれば再び飲める、という事。
そのため、退院後、再飲酒する場合が多いのです。



断酒継続のために使用可能な国内に於ける治療薬は、抗酒療法薬「シアナマイド(一般名:シアナミド)」、「ノックビン(一般名:ジスルフィラム)」と、飲酒欲求を減らす断酒維持補助薬「レグテクト(一般名:アカンプロサートカルシウム)」が利用可能です。
抗酒療法薬は、ALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)の働きを阻害します。そのため、抗酒薬を服用していて飲酒すると、非常に激しいフラッシング反応(コップ1杯のビール程度の飲酒で起きる、顔面紅潮、吐き気、動悸、眠気、頭痛などの反応)を引き起こし、飲酒の断念に導きます。

しかし、入院治療で完全に断酒したとしても、抗酒薬や断酒維持補助薬の服用は、患者に任せられます。
完全に断酒させるには、周りの協力が不可欠となります。

急いては(強いては)事を仕損じる……の、ことわざ通り。
時に、不幸な結果になることもあります。


【警察庁の統計によると、2017年の1年間に自殺した人は2万1140人で、このうち厚生労働省の分析で、自殺者の20%以上にアルコール関連の問題が見られると言う】

そのため欧州では、完全な断酒ではなく、減酒によって飲酒欲求を抑制するという考えのもと、新たな治療薬が登場しました。。




国内でも、飲酒している人の飲酒量を下げることを目的とした薬剤が、必要とされて来ています。





大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区神田司町)は、ハンス.ルンドベック社(本社:デンマーク)と共同で開発を進めて来た、アルコール依存症患者に於ける、飲酒量を低減する治療薬として「ナルメフェン塩酸塩水和物(一般名)」の日本国内での製造販売承認申請を、2017年10月17日に行いました。

飲酒量低減薬「ナルメフェン(ナルメフェン塩酸塩水和物)」は、アルコール依存症に於いて飲酒のおそれがある場合に服用することで、飲酒量を低減する薬剤です。


アルコール依存症 飲酒量低減薬ナルメフェン
アルコール依存症 飲酒量低減薬「ナルメフェン」
(欧州販売名:Selincro/一般名:nalmefene)


「ナルメフェン」は、飲酒のおそれがある時に服用することで、中枢神経系に広く存在するオピオイド受容体調節作用を介して飲酒欲求を抑制し、アルコール依存症患者の飲酒量を低減する薬剤として、大塚製薬株式会社とルンドベック社が共同で開発を進めて来ました。

オピオイド受容体は、中枢神経系に広く分布し、脳内報酬系や情動制御、痛みのコントロールなどを司り、これまでに3つのサブタイプ(*μ、κ、δ)が知られています。

アルコール依存症ナルメフェンが作用する3つのオピオイド受容体
アルコール依存症に関連する
3種のオピオイド受容体

本剤は、μオピオイド受容体及び、δオピオイド受容体に対しては拮抗薬として、κオピオイド受容体に対しては部分的作動薬として作用し、飲酒欲求を抑制すると考えられています。

既に販売を開始している欧州では、アルコール依存症に於いて、健康リスクが高いとされる飲酒量(High Risk 及びVery-High Risk:成人男性では1日60g超、女性では1日40g超のアルコール摂取)を低減させるという適応をもつ経口治療薬です。


ナルメフェン飲酒抑制量

こうした作用機序を持つ「アルコール依存症治療薬」は、これまでの薬剤で断酒に失敗した患者の新たな選択肢になると期待しています。

自分自身のため、家族のため、周囲の人たちのため、これからアルコール依存症と戦う人たちにとって、希望の光の見える日が来ると願っています。

 *尚、本剤は現在までのところ、まだ新薬審査に上稿されていません。
 *μ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパ)






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国指定難病・ファブリー病治療剤「ガラフォルド®」が国内製造販売承認を取得

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アミカス・セラピューティクス株式会社(本社:東京都千代田区大手町)は3月23日、ファブリー病経口治療剤「ガラフォルド®カプセル123mg(一般名:ミガーラスタット塩酸塩)」ついて、日本国内での製造販売承認を取得したと発表しました。
「ガラフォルド®カプセル123mg」は、ファブリー病に対する初めての経口治療剤となります。


ファブリー病治療薬ガラフォルドカプセル_ミガーラスタット
ファブリー病治療剤「ガラフォルド®(Galafold)カプセル123mg」
(一般名:ミガーラスタット塩酸塩=migalastat)


ファブリー病(Fabry disease=FD)は、国が難病(特定疾患)と指定している「ライソゾーム病(約31種類)」に分類される疾患の1つで――、
X染色体に存在するGLA(α-ガラクトシダーゼA)遺伝子の変異が原因で、正常なGLAタンパク質が体内で作れなくなり、本来GLAが細胞内のリソソームで分解するはずの糖脂質が、分解されずに体内に蓄積する病気です。

X染色体GLA遺伝子突然変異
X染色体GLA遺伝子の突然変異


細胞内のリソソーム(lysosome)にグロボトリアオシルセラミド(GL-3又はGb3)等の*糖脂質が蓄積し、腎障害、心筋症、脳血管疾患などの様々な症状が起こる先天代謝異常症です。(▲厚生労働省難治性疾患等政策研究事業 ライソゾーム病調査研究班/▲国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)

 *糖脂質とは‥‥脂肪酸などの脂質分子が糖と結合した化合物。細胞膜に多数存在する。

ファブリー病でαGALの不足で細胞にGL-3の有害な蓄積
ファブリー病ではαGALの不足で細胞に有害な糖脂質(GL-3)が蓄積する。


ファブリー病は、幼児期以降や学童期に生じる鋭い手足の痛み(四肢末端痛)、汗をかかない(低汗症や無汗症)、お尻や陰部の赤紫色の発疹(被角血管腫)、頻回の腹痛や下痢(虚血性腸炎)といった症状があります。

ファブリー病の症状と病状の進行
ファブリー病の症状と病状の進行

特に手足の痛みは、ストレス、高温や疲労で引き起こされ、痛みによって運動が出来なかったり、不登校になったりする事もあります。

これらの症状を放置したままだと、青年期(成人期)や中年期になって、眼の角膜混濁(渦巻状)、腎症状(初期に蛋白尿、腎不全)、循環器症状(心臓の肥大、不整脈、弁膜症、虚血性心疾患)、脳血管症状(脳梗塞、脳出血、頭痛)が出現し、年齢と共に症状が重症化していきます。
この他、難聴、耳鳴り、下肢リンパ浮腫や精神症状を認めるようになる。


ファブリー病の主な外見症状


ファブリー病は、X染色体劣性遺伝形式であり、患者の殆んどは男性ですが、ヘテロ接合体である女性では、X染色体の不活性化の偏りにより女性でも発症することがあります。

ファブリー病の発症頻度は、4万~11.7万人に1人とも言われていますが、実際の患者数は、従来の推測よりも多いのではないかと考えられ、推定国内患者数は、315人~760人と報告されている。

ファブリー病(ライソゾーム病)の診断には、臨床症状、臨床検査に基づいて行われますが、確定診断は、「白血球又は培養線維芽細胞中のα-ガラクトシダーゼ(α-galactosidase A; α-Gal A)の活性低下と、遺伝子解析によってα-ガラクトシダーゼの遺伝子変異の有無」を調べ、診断します。


正常な腎細胞とファブリー病の腎生検電顕画像

 *糸球体とは‥‥腎臓内に存在し、血液内の有形成分とタンパク質をろ過し、尿を生成する器官。


「ガラフォルド®カプセル123mg」は、α-ガラクトシダーゼ(α-GAL-A=加水分解酵素の一種)の基質であるスフィンゴ糖脂質(GSL=グリコスフィンゴリピド)の末端ガラクトースの類似体です。
変異型α-GAL-Aに結合することで、標的細胞内の糖脂質輸送を正常化する事により、本来の酵素の働きを活性化するように作用する、薬理学的シャペロン(正しく機能させるタンパク質=chaperone)となります。





【ガラフォルド®の製品概要】
製品名:ガラフォルド®(Galafold)カプセル123mg
一般名:ミガーラスタット塩酸塩(migalastat)
効能・効果:ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病
用法・用量:通常、16歳以上の患者にはミガーラスタットとして1回123mgを隔日経口投与する。なお、食事の前後2時間を避けて投与すること。

承認取得日:平成30年3月23日
承認条件:RMP、市販直後全例調査

国内では、これまでファブリー病の治療薬として、「ファブラザイム点滴静注用」や「リプレガル点滴静注用」が発売されていますが、「ガラフォルド®カプセル123mg」は経口投与による初めての治療剤であり、既存の酵素補充療法(ERT)製剤とは作用機序が異なり、本剤に反応性のある遺伝子変異を伴うファブリー病患者が対象で、そうした患者の新しい治療の選択肢の一つとなります。





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遺伝性乳がんの予防的切除術~乳癌学会ガイドライン「強く推奨」に改訂

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女性の癌として最も多い乳がんの治療法に関する学会のガイドラインが改訂され、遺伝子の変異によって、再び乳がんになるリスクが高い患者に対しては、カウンセリングの体制が整っている事などを条件に、癌になっていない乳房も切除して予防する事を「強く推奨する」ことになりました。乳がんを予防するための手術が、今後、増えるきっかけになると見られる。

予防的乳房切除術

日本乳癌学会は16日、遺伝性の乳がんについて、将来、癌になるリスクを減らすため、反対側の癌のない乳房を予防的に切除する手術を「強く推奨する」と、学会の診療指針を3年ぶりに改定し、発表した。


指針で、反対側のがんのない乳房について標準的な治療法をまとめた、日本乳癌学会の診療ガイドライン(指針)では、これまで乳がんを予防するために、癌のない乳房の予防切除は「検討してもよい」にとどまっていた。

予防的乳房切除術2

今回の改定により、患者が希望し、カウンセリング体制が整っている事などが条件で、「強く推奨する」としました。
但し、予防切除は公的医療保険の対象外で、患者は全額負担が求められる事になります。




乳がんの予防のための乳房切除術は、片方の乳房に癌が見つかった、「BRCA」と呼ばれる遺伝子に変異がある患者については、再び乳がんになるリスクが高いとして、希望により、癌がない片側乳房も切除して予防する手術の事です。

遺伝性乳癌卵巣癌症候群
遺伝性乳癌・卵巣癌症候群に関与しているBRCA1とBRCA2遺伝子は、
第17染色体と第13染色体上に存在する。

BRCA遺伝子は異なる染色体の異なる対立遺伝子が変異した時、
同一の表現型を作り出す遺伝子。

17番BRCA1遺伝子2
BRCA遺伝子はがん抑制遺伝子であり、
正常なら傷ついた遺伝子を修復し、がん化を防ぐ働きをする。


■ 乳がんの一部に、遺伝が強く関係するタイプがあり、その中で最も多くの割合を占めるのが、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」という遺伝性腫瘍によるものです。

「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」の人は、乳がんや卵巣がんの発症リスクが、一般の人よりかなり高く、遺伝的な要因が強く関与していると考えられ、その中で、最も多いのが「BRCA1」、「BRCA2」という2つの遺伝子変異を原因とする、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」です。



家系の中に、特別に乳がん・卵巣がんが多ければ(「家族歴、家族集積性が見られる」と言う)、BRCA1/2遺伝子の変異が原因の可能性があります。

但し、癌は、遺伝要因だけでなく、環境要因が絡み合って起こるため、ある家族に特殊な癌が多くても、それをもってして即、遺伝とは言い切れない事もあり、全ての乳がんが遺伝によるものではありません。




予防的乳房切除術1


現在、日本では年間8万~9万人が乳がんと診断されています。
そのうち、家族性、家族集積性が見られる「家族性乳がん」は10~20%、遺伝によるものとハッキリ分かる人は5~10%程度と言われています。


日本人には少ないと言われていた、BRCA1/2遺伝子変異による「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」の患者ですが、遺伝子解析の集積で、日本人にも欧米と同等の割合で存在する事が分かって来ました。

乳がん遺伝子の子への遺伝

これを受け、日本でも予防的乳房切除術の準備体制を整える動きがあり、これまで聖路加国際病院(東京都中央区)、がん研有明病院(東京都江東区)など、全国8施設でカウンセリングから術後ケア、乳房再建から精神的対応までの体制が整っているとされています。


「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」の原因遺伝子BRCA1/2に変異がある乳がん患者では、その後、卵巣がんに罹患する確率が高くなる。

そのため、遺伝子解析の結果、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」が明らかになった乳がん患者を対象にした、卵巣、卵管の予防的切除は、2011年夏に、臨床試験の一環として、慶応義塾大学病院と、がん研有明病院が実施したと発表している。(出産の完了または閉経前)
この治療は、予防的両側卵巣卵管切除術というより、リスク低減(軽減)両側卵巣卵管切除術と呼ばれるようになっています。


乳がんの予防切除は保険の適用外。
厚生労働省医療課の担当者は、「予防を認めるとなると、乳がんのみに留める訳にはいかず、大きな議論が必要になる」と述べ、保険適用拡大は難しいとの認識を示している。







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承認申請間近?デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「DS-5141」第2相の追加試験を実施

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第一三共株式会社(本社:東京都中央区日本橋)は4月25日、株式会社希少疾病治療研究所(ODTI/本社:東京都品川区)と共同開発中の、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療剤『DS-5141』の国内第1/2相臨床試験の結果を公表しました。

この投与試験は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者7人を対象に、慎重に投与量を漸増させた上で、週1回を12週間連続皮下投与して、『DS-5141』の安全性と有効性を評価した最初の臨床試験です。


筋ジストロフィーのタイプ別患者割合


デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD=Duchenne Muscular Dystrophy)は、筋ジストロフィーの中で最も多く見られる最も重症なタイプで、幼児期に発症します。
X染色体伴性劣性遺伝で、基本的に男性のみに発病し、国内に於いては、4700人に1人(DMDの場合)の割合で見られます。

2~3歳で発症し、主な症状は筋力低下で、心筋や呼吸のための筋肉の筋力低下が起こります。呼吸筋の筋力低下が進むと、肺炎などの病気に罹かりやすくなり、殆どの患者が心不全によって20歳前後で死に至ります。(MSDマニュアル日本語版/筋ジストロフィーと関連疾患より)




デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、筋肉細胞の構造を維持するために重要な、ジストロフィン遺伝子の欠失・欠損のため、“ジストロフィンタンパク質”が産生されず、筋細胞に“ジストロフィンタンパク質”がほぼ全くありません。

X染色体にあるジストロフィン遺伝子
X染色体にあるジストロフィン遺伝子(DMD,Xp21.2)の位置。

正常なジストロフィン遺伝子配列
正常なジストロフィン遺伝子配列


筋肉細胞とその他の神経細胞の遺伝子構成
ジストロフィン遺伝子は、79個のエクソン(構造)で構成されるヒトで最大の巨大な遺伝子です。
筋肉細胞を作るために79個のタンパク質配列を必要とします。
その他の脳神経や脳細胞、腎臓や眼底網膜を維持するためのタンパク質の産生と比較しても、筋肉細胞の産生が、いかに巨大な遺伝子を利用しているかが分かります。



「ジストロフィン遺伝子(Dystrophin gene)」は、79個のエクソン(構造)配列ならなり、このうちエクソン19、41、44、45、46、50、51、53または55のエクソンのいずれかが欠損すると、欠損したエクソン番号以降がmRNAに転写されなくなり、全て無効となり、正常なジストロフィンタンパク質が産生出来なくなり、筋力低下を来たします。





『DS-5141』は、第一三共株式会社独自の修飾核酸である「ENA®オリゴヌクレチド」を有効成分としており、患者の筋細胞内に於いて、ジストロフィン遺伝子からメッセンジャーRNA(mRNA)が作られる過程で、欠失(変異)した遺伝子による情報を読み飛ばすこと(エクソン45スキップ)で、機能する後方のジストロフィンタンパク質を発現させ、結果として筋力機能の改善を期待する核酸医薬品です。

DS-5141はエクソン45スキップ核酸医薬品

『DS-5141』の国内第1/2相臨床試験では、投薬中止や臨床上問題となる有害事象など、安全性上の懸念は認められなかったと言う事です。
また、有効性の主要評価項目である“ジストロフィンタンパク質”の発現については、「一部の患者で発現が確認されたものの、全体として明らかな発現を確認することは出来なかった」、とする試験結果概要を発表した。

このため第一三共株式会社は、第1/2相臨床試験で実施した、週1回、12週間投与ではタンパク質の発現に十分な期間では無かったとして、48週間投与の第2相継続追加試験を実施し、効果を見ることにしたと言う。


一方、副次評価項目の、ジストロフィン遺伝子のエクソン45をスキップする事によって得られるメッセンジャーRNA(mRNA)の産生については、全ての患者で産生が確認できた事から、第2相継続試験で良好な結果が得られた場合、「新薬」として承認申請するか、更なる第3相臨床試験を実施するかは、今後の試験結果や、当局との相談を踏まえて検討するとしている。

当初、2020年度までに承認申請を実施したいとしていたが、遅れるかどうかは現時点では分からないとしている。





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新規・多剤耐性肺結核治療薬「サチュロ®錠」が販売開始

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ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区西神田)は5月8日、成人の新規多剤耐性肺結核治療薬「サチュロ®錠100mg(一般名:ベダキリンフマル酸塩)の販売を開始したと発表しました。

「サチュロ®錠100mg」は、2018年1月19日に製造販売承認を取得している、既存の抗結核薬とは異なる作用機序を有する薬剤で、2015年9月に、希少疾病用医薬品として指定されている。



サチュロ錠100mg
多剤耐性肺結核治療薬「サチュロ®錠100mg(Sirturo)」


多剤耐性肺結核(MDR-Tb=Multidrug-Resistant Tuberculosis)は、治療選択肢が限られている上に、治療成功率が54%に過ぎず(WHO結核データ2017)、治癒したとしても再発が多いだけでなく、より長期間の治療を要します。

肺結核のレントゲン写真
肺結核のレントゲン写真

ヒト型結核菌電子顕微鏡写真
ヒト型結核菌(通常のマイコバクテリウム属)

また、結核菌陰性化後も、18カ月間の継続的な長期間の薬剤投与が必要である事から、本人の負担だけでなく、周囲への感染、医療費などにも影響を与える疾患です。

多剤耐性肺結核は、既存の抗結核薬との交差耐性を示さない、高い有効性、安全性及び忍容性を示す新薬を含む、併用療法の開発が緊急の課題となっています。



具体的には、一次抗結核薬のうち少なくとも「イソニアジド(製品名:イスコチン/ヒドラ)」および「リファンピシン(製品名:リファジン)」の両剤に耐性を有する結核を指します。
 *抗結核薬イソニアジド…1972年2月薬価収載。抗結核薬リファンピシン…2009年9月薬価収載。



各国の結核罹患率の比較
日本のみ2016年の数値。


WHO(世界保健機関)によると、2014年には世界で960万人が結核に新たに罹患(りかん)し、150万人が死亡しています。

国内では、2016年(平成28年)に新たに結核患者として登録された人数(新登録結核患者数)は17,625人で、前年より655人(3.6%)減少。
また、2016年の日本の結核罹患率は、人口10万人あたり13.9人で、先進主要11カ国の中で最も高い水準です。(厚生労働省. 平成28年 結核登録者情報調査年報集計結果について)

結核は、治癒可能な疾患となった一方、結核治療の中心である化学療法は、多剤併用が必須のため、副作用が大きな障害となっています。

また、化学療法は最短でも6カ月を要し、治療の中断や不規則な服薬が、結核菌の薬剤耐性化、更には多剤耐性化に影響を及ぼしています。



多剤耐性肺結核菌
『多剤耐性肺結核(MDR-TB)』
結核治療中に服薬を中断、もしくは中止することで、
結核菌の集塊(しゅうかい)状DNAに耐性能のDNAが出現する。


2016年、新規に多剤耐性肺結核(リファンピシン耐性を含む)を発症した患者数は、世界で約15万3000人、日本では210人(外国人含む)と推定されており、このうち検査機関で確認された日本の患者数は79人でした。(WHO-結核国プロフィール-日本)

WHO(世界保健機関)ガイドラインにおける結核への化学療法としては、リファンピシン(RFP:リファジンなど)、イソニアジド(INH:イスコチンなど)、エタンブトール(EB:エサンブトールなど)、ピラジナミド(PZA:ピラマイド)の4剤併用による2カ月間の強化療法に続き、リファンピシン及び
イソニアジドの併用による4カ月の維持療法を行うことが標準となっている。。)


実は2014年までの世界の多剤耐性肺結核の患者は、約45万人で、年間17万人が死亡していました。(大塚製薬抗結核プロジェクトより)

2014年9月、大塚製薬から国内で約40年ぶりの抗結核薬が登場しました。国内初の多剤耐性肺結核の適応を有する薬剤「デラマニド」です。
この薬の登場は、多くの多剤耐性肺結核患者を救う事となりましたが、研究者の間では既に超多剤耐性肺結核(XDR-TB)に対する危惧が出ており、新たな薬剤の開発が進められています。(現在、超多剤耐性肺結核に有効な治療方法がなく、治療不可能な結核菌となっている)





「サチュロ®錠100mg」は、米ヤンセン・リサーチ・アンド・ディベロップメント社が創製した、ジアリルキノリン系の新規抗結核薬で、既存の抗結核薬とは異なる作用機序を持ち、結核菌のエネルギー生成に必須の“アデノシン5-三リン酸(ATP)”合成酵素を特異的に阻害し、増殖期、及び休眠期の結核菌のいずれに対しても強い殺菌活性を示します。


多剤耐性肺結核治療薬サチュロ錠の作用機序
多剤耐性肺結核治療薬「サチュロ®錠100mg」の作用機序。


現在、既存の多剤耐性肺結核の結核菌治療薬としては、2014年9月に登場したデラマニド(製品名:デルティバ)が臨床使用されているのみで、「サチュロ錠」は、これに次ぐ日本で2番目の多剤耐性肺結核の治療薬となるが、デラマニドとは作用機序が異なる、ATPを標的にしたジアリルキノリン系の薬剤となる。


本剤は、米国では多剤耐性結核菌(MDR-Tb=Multidrug-Resistant Tuberculosis)による肺結核の新規治療薬として承認申請を行い、米国食品医薬品局(FDA)によるFast Track及び優先審査指定のもと、2012年12月に迅速承認された。
欧州に於いても、2014年3月に条件付きで承認。

2017年9月現在、本剤は多剤耐性肺結核に対する多剤併用療法の1剤として、世界49の国又は地域で承認されています。



【製品概要】
【製品名】:サチュロ®錠100mg(Sirturo®)
【一般名】:ベダキリンフマル酸塩(Bedaquiline Fumarate(JAN))
【効能・効果】
<適応菌種>本剤に感性の結核菌(多剤耐性結核菌)
<適応症>多剤耐性肺結核症

【用法・用量】:通常、成人には投与開始から2週間はベダキリンとして1日1回400mgを食直後に経口投与する。
その後、3週以降は、ベダキリンとして1回200mgを週3回、48時間以上の間隔を空けて食直後に経口投与する。
投与に際しては、必ず他の抗結核薬と併用すること。

【規格・含量】:ベダキリンフマル酸塩(ベダキリンとして)1錠中120.89mg(100mg)含有
【薬価】:サチュロ®錠100mg 1錠/21,872.5円






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同種造血幹細胞移植のCMウイルス感染症の発症抑制剤「プレバイミス」が発売開始

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MSD株式会社(本社:東京都千代田区)は5月28日、同種造血幹細胞移植患者に於けるサイトメガロウイルス(CMV)感染症の発症抑制を効能・効果として、抗サイトメガロウイルス化学療法剤「プレバイミス®錠240mg/プレバイミス®点滴静注240mg(一般名:レテルモビル)」の発売を開始したと発表した。

プレバイミス錠240mgとプレバイミス点滴静注240mg
抗サイトメガロウイルス化学療法剤
「プレバイミス®錠240mg/プレバイミス®点滴静注240mg」
<同種造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制>


ヒトサイトメガロウイルス(CMV=human Cytomegalovirus)は、通常、乳幼児期にサイトメガロウイルス保有者の唾液等の分泌物を介して、多くの場合、不顕性(ふけんせい)感染(病原菌などに感染したにも係わらず症状が現れない事=無症状感染)し、宿主に生涯潜伏し続ける事が一般的です。

サイトメガロウイルス
(ヒト)サイトメガロウイルス
(ヘルペス属のウイルスの一つで、一度感染すると一生涯潜状ウイルスを持ち続ける)

サイトメガロウイルスは非常に感染しやすく、感染者は尿や唾液中に何カ月にもわたってウイルスを排出する事があります。

ウイルスは、子宮頸管粘液、精液、便、母乳にも排出されるため、性的接触でも非性的接触でも感染します。妊婦が感染すると、妊娠中に胎児が感染する場合や、出産時に新生児に感染する場合があります。
生後1ヵ月の幼児の先天性サイトメガロウイルス感染症のウイルス包含
生後1ヵ月の乳児の先天性サイトメガロウイルス感染症のウイルス包含

日本の成人のサイトメガロウイルス抗体保有率は80~90%と言われていますが、近年は抗体保有率の低下傾向が認められています。



潜伏感染しているサイトメガロウイルス(CMV)が感染症を発症するのは、主に胎児(一部は先天性サイトメガロウイルス感染症児として出生)や、未熟児、免疫抑制剤使用、炎症、同種造血幹細胞移植後、AIDS患者などの他ウイルス感染、先天性免疫不全患者、ストレス等などです。
治療には抗ウイルス薬が用いられます。



日本に於いて、成人同種造血幹細胞移植は、年間約3,300件が実施されている。(2015年に実施された移植の診療科別報告件数:http://www.jdchct.or.jp/data/report/2016/pdf/2/2-2-1.pdf)

【日本造血細胞移植学会 造血幹細胞移植の適応ガイドライン対象疾患

(1)慢性骨髄性白血病
(2)成人急性骨髄性白血病
(3)成人急性リンパ性白血病
(4)小児急性白血病
(5)骨髄異形成症候群(成人)
(6)骨髄異形成症候群(小児)
(7)悪性リンパ腫(成人・小児)
(8)再生不良性貧血(成人)
(9)再生不良性貧血(小児)
(10)成人T細胞性白血病・リンパ腫
(11)多発性骨髄腫
(12)先天性骨髄不全症候群
(13)原発性免疫不全症
(14)先天代謝異常症
(15)自己免疫疾患
(16)固形腫瘍(小児)
◆2007 日本造血細胞移植学会 ガイドライン委員会◆

自家造血幹細胞移植(ASCT)と、同種造血幹細胞移植(HSCT)の違い。
同種造血幹細胞移植とは


特に、同種造血幹細胞移植(HSCT)患者の免疫抑制状態下では、免疫力が著しく低下しているため、再活性化された「サイトメガロウイルス感染症」が高頻度に認められ、症状が重くなり、網膜炎が重篤化し失明したり、死亡したりする事もあり、死亡率をはじめ、移植後の予後に関わっている事が報告されている。(MSD株式会社マニュアル家庭版サイトメガロウイルス(CMV)感染症)


同種造血幹細胞移植でのサイトメガロウイルス感染症



「プレバイミス(Prevymis)」は、世界初のサイトメガロウイルス(CMV)ターミナーゼ阻害剤です。
ヒトには存在しないサイトメガロウイルス(CMV)のDNAターミナーゼ複合体を阻害する事で、ウイルスの増殖を抑制します。
第3相国際共同試験で、プレバイミス群とプラセボ(偽薬)群の対比較に於いて、主要評価項目である移植後24週以内に臨床的に意味のあるCMV感染が認められた患者の割合を、統計学的に有意に低下させた。


プレバイミスの作用機序_サイトメガロウイルス感染症
「プレバイミス(レテルモビル)」の作用機序

現在のCMV感染症の対策は、CMV感染が確認された時点で抗ウイルス薬の投与を開始する先制治療が中心ですが、本剤はCMVの感染が確認される前に予防的に投与される薬剤となります。これにより患者の移植の成功と予後の改善への大きな貢献が期待されています。

尚、本剤は赤ちゃんの先天性サイトメガロウイルス感染症への適応はありません。




【製品概要】
【製品名】:プレバイミス錠240mg/プレバイミス®点滴静注240mg(PREVYMIS™)
【一般名】:レテルモビル(letermovir)
【効能・効果】:同種造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制
【用法・用量】
●プレバイミス®錠240mg:通常、成人にはレテルモビルとして480mgを1日1回経口投与する。シクロスポリン(免疫抑制剤)と併用投与する場合にはレテルモビルとして240mgを1日1回経口投与する。

●プレバイミス®点滴静注240mg:通常、成人にはレテルモビルとして480mgを1日1回、約60分かけて点滴静注する。シクロスポリンと併用投与する場合にはレテルモビルとして240mgを1日1回、約60分かけて点滴静注する。

【製造販売承認日】:2018年3月23日
【薬価基準収載日】:2018年5月22日
【発売日】:2018年5月28日
【薬価】
●プレバイミス®錠/1錠 14,379.20円
●プレバイミス®点滴静注/1瓶 17,897円

薬価については、本剤の新規の作用機序と有効性が認められ、画期性加算と市場性加算が適用されました。画期性加算は1992年に薬価算定ルールに導入されたましたが、過去に適用された新医薬品は4製品のみで、今回の本剤への適用は3年ぶり5製品目となります。







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非覚醒剤系パーキンソン病治療剤「アジレクトⓇ錠」が発売を開始

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武田薬品工業株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)は6月11日、パーキンソン病治療剤「アジレクトⓇ錠0.5mg、同錠1mg(一般名:ラサギリンメシル酸塩)」の発売を開始したと発表した。
本剤は、非可逆的かつ選択的なモノアミン酸化酵素B型(MAO-B)阻害薬として2剤目であるが、既承認の非可逆的選択的MAO-B阻害薬の「セレギリン塩酸塩(製品名「エフピーOD錠)」など)のように、“アンフェタミン骨格*①を有さないため、覚醒剤原料”には該当せず、流通上の規制から外れる初めての薬剤となる。



パーキンソン病治療薬アジレクト錠
選択的MAO-B(モノアミン酸化酵素B型)阻害剤
パーキンソン病治療薬「アジレクトⓇ錠0.5mg、同錠1mg」



<パーキンソン病について>
「パーキンソン病(PD=Parkinson Disease)」は、50歳以降に発症する事が多く、加齢と関連する神経変性疾患で、大脳の下にある中脳の黒質(こくしつ)ドーパミン神経細胞が減少して、細胞が約60~80%消失した時点で起こる、進行性・慢性の運動障害疾患です。

中脳黒質ドーパミン

一般的な症状として、手足が震える振戦(しんせん)、無動・寡動(かどう=動作が鈍い)、筋肉がこわばる筋固縮、動作緩慢及び歩きづらい等の姿勢反射障害、自律神経系症状を特徴としています。

時に、40歳以下で起こる人もあり、これを若年性パーキンソン病と呼んでいる。

日本では約13万6,500人の患者がこの病気に苦しんでいます(公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター・特定疾患医療受給者証所持者数2014年(平成26年))。

パーキンソン病の起因の黒質ドーパミン神経細胞
パーキンソン病の進行度


パーキンソン病の人が、日常生活をより円滑に送るには、この病気に対する一般的な対策が役立ちます。
運動機能を改善して、数年以上に渡って日常生活の維持を可能にする薬(レボドパとカルビドパの併用など)は数多くありますが、パーキンソン病そのものを治せる薬はありません。

また厄介な事に、パーキンソン病がある人の約3分の1に認知症が現れます。
それ以外の人でも、多くの場合、思考が障害されますが、気づかれない事があります。【MSD株式会社マニュアル家庭版 脳・脊髄・末梢神経の病気/運動障害 パーキンソン病(Parkinson病)より】




「アジレクトⓇ錠」は、非可逆的(=元に戻す事が出来ない)尚且つ選択的なモノアミン酸化酵素B型(MAO-B)阻害薬で、MAO-Bに非可逆的に結合する事で、脳内のドーパミンの分解を抑制し、シナプス間隙中のドーパミン濃度を高める事により、パーキンソン病の症状に効果を発揮する。

アジレクト錠の作用機序

本剤は、イスラエルのTeva Pharmaceutical Industries Ltd.(本社:イスラエル)が開発し、日本に於いては2014年3月、武田薬品工業株式会社と開発・販売に関する契約が締結されました。

国内に於ける、早期、及び進行期パーキンソン病患者を対象とした臨床試験で、いずれも場合でも有効性が認められると共に、安全性に大きな問題は見られなかった事から、2017年6月、厚生労働省に製造販売承認申請を行い、2018年3月23日に製造販売承認を取得した。




【アジレクトⓇ(AzilectⓇ)錠の製品概要】

【製品名】:アジレクト®錠1mg/アジレクト®錠0.5mg
【一般名】:ラサギリンメシル酸塩(Rasagiline mesilate/JAN, Rasagiline mesylate/USAN ).
【効能・効果】:パーキンソン病(Parkinson Disease)
【用法・用量】:通常、成人にはラサギリンとして1mgを1日1回経口投与する。

【薬価】:
アジレクト®錠0.5mg:512.10 円
アジレクト®錠1mg:948.50 円

【禁忌】(次の患者には投与しないこと):
他のMAO阻害薬(セレギリン塩酸塩)を投与中の患者。
ペチジン塩酸塩含有製剤、トラマドール塩酸塩又はタペンタドール塩酸塩を投与中の患者。

*①アンフェタミン骨格…交感神経刺激作用と中枢興奮作用を発現する「覚せい剤取締法」で規制を受ける覚せい剤に指定されている間接型アドレナリン作動薬⇒「セレギリン塩酸塩(製品名「エフピーOD錠など)」が該当する。

現在、ラサギリンメシル酸塩は米国・カナダ・イスラエル・メキシコ・欧州諸国など55ヵ国で承認されています。海外ではパーキンソン病の治療薬として、単独療法、レボドパとの併用療法の2つの適応が認められています。






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ALK陽性チロシンキナーゼ耐性非小細胞肺がん治療薬「ロルラチニブ」が優先審査で年内承認の見込み

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ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)は、抗悪性腫瘍剤/ALKチロシンキナーゼ阻害剤「ロルラチニブ(開発番号:PF-06463922)」が、2018年6月8日付けで、厚生労働省より『優先審査の対象』となる事が通知されたと発表しました。
予定する効能・効果は、「ALK(未分化リンパ腫リン酸化酵素)チロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性、又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」です。

これは、厚生労働省が2017年10月に導入した、「条件付き早期承認制度」の適用を受けたためで、「ロルラチニブ(Lorlatinib)」はこの制度の適用第一号と言う事になります。
本剤は、年内の承認が見込まれている。



ALK陽性非小細胞肺がん治療薬ロルラチニブのイメージ
*写真はイメージです。
第三世代ALK陽性チロシンキナーゼ阻害剤耐性非小細胞肺がん治療薬「ロルラチニブ」は
本邦に於いて優先審査の対象品目指定されたばかりで、正式承認前であり、
薬剤の写真はまだありません。



肺がんは、癌による死亡原因の世界1位です。(WHO ⇒The World Health Organization, in The International Agency for Research on Cancer, October 13, 2017)
肺がんのタイプは、大きく2つで、国内では非小細胞肺がん(85-90%)と小細胞肺がん(10~15%)の割合に分けられます。

小細胞肺癌と非小細胞肺癌の違い

非小細胞肺がん(NSCLC)は、肺がん症例の多数を占めており、特に遠隔転移している場合は、未だに治療が困難です。
非小細胞肺がん患者の約75%が、転移後、又は進行後に肺がんと診断されますが、その時点での5年生存率は僅か5%です。(全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2017年7月集計)による)

非小細胞肺がんの遺伝子変異の種類
非小細胞肺がんの遺伝子変異の主な種類。

2000年代以降に登場した分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害剤)の多くは、EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転座、ROS1遺伝子転座、BRAF遺伝子変異と言った癌発生の直接的な原因となるようなドライバーと称される遺伝子変異に対する阻害剤です。

「ロルラチニブ」は、ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容の『ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌』の効能・効果で、今年1月に国内に於ける製造販売承認を申請した、ALKチロシンキナーゼ阻害剤耐性の非小細胞肺がん治療薬となります。
日本では、2015 年の年間新規肺がん罹患患者数は110,000 人強と推計しています。



非小細胞肺がん患者のうち、ALK遺伝子陽性は3~5%、そのうちALKチロシンキナーゼ阻害剤が効かなくなった患者の腫瘍に生じた変異(薬剤耐性変異)を解明する事で、「ロルラチニブ」が創製されました。
課題となっている薬剤耐性変異が見られる、変異型ALKにも効果が期待されます。

非小細胞肺癌の臨床病期分類


重篤(ステージⅣ)で有効な治療方法が乏しいこの疾患に対し、日本も参加した国際共同第1/2相試験で、一定程度の有効性と安全性が確認された事から、「条件付き早期承認制度」の適用となった。

ファイザー株式会社は既に、分子標的薬のALK阻害剤「ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)」を発売しているほか、ノバルティスファーマ株式会社から「ジカディア(一般名:セリチニブ)」が発売されていますが、「ロルラチニブ」は特に、他のALK阻害剤に抵抗性を示す変異腫瘍に対しても、効果を発揮できるように、また、*血液脳関門を通過できるように設計されている。


  *尚、「オプジーボ」はモノクローナル抗体薬で標的分子が異なる。また、「キイトルーダ」も抗PD-1抗体薬で標的分子が異なる。

  *血液脳関門‥‥様々な有害物質から、脳の神経細胞を守るために、血液から脳内への物質の移行を制限する防御機能の事で、脳の恒常性維持に不可欠となっている。
これによって、脳の神経活動のエネルギー源となる栄養素(グルコース、アミノ酸、ヌクレオチドなど)やブドウ糖などの必要な物質は、脳内に選択的に輸送されるが、それ以外の多くの物質は、この防御システム(バリア機能)により脳内に自由に入る事が出来ない。

血液脳関門の機能
血液脳関門は、脳全体に細かく網の目の様に張り巡らされ、全長約600~650kmに及ぶ
脳毛細血管に隙間なく張り巡らされている。



「ロルラチニブ」は、まだいかなる適応症についても承認した国は無く、米国では2017年4月に、1剤以上のALK阻害剤による前治療歴を有する、ALK陽性転移性非小細胞肺がん治療に於けるブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)指定を受けています。

2018年2月、米ファイザー社は、米国食品医薬品局(FDA)が、「ロルラチニブ」の新薬承認申請(NDA)を受理し、優先審査品目に指定しました。また、欧州医薬品庁(EMA)も、「ロルラチニブ」の製造販売承認申請を受理しています。





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日本初、新機序の乾癬治療薬「トレムフィア皮下注シリンジ」が発売を開始

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ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区西神田)と大鵬薬品工業株式会社(本社:東京都千代田区神田錦町)は5月22日、ヒト型抗インターロイキン(IL)-23p19モノクローナル抗体製剤「トレムフィア®(Tremfya®)皮下注100mgシリンジ(一般名:グセルクマブ=遺伝子組換え)」について、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症を適応症として販売を開始したと発表した。

「トレムフィア®皮下注100mgシリンジ」は、2018年3月に本適応症で製造販売承認を取得し、5月22日薬価収載と共に販売を開始した。



トレムフィア皮下注シリンジ
既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症治療薬
ヒト型抗インターロイキン(IL)-23p19モノクローナル抗体製剤
「トレムフィア®(Tremfya®)皮下注100mgシリンジ(一般名:グセルクマブ)」


乾癬は、皮膚細胞の異常増殖を引き起こす慢性の自己免疫性炎症性疾患で、皮膚が赤くなって盛り上がり、炎症性の赤みを帯びた皮疹や銀白色の細かい皮膚のカサブタに覆われたような鱗屑(りんせつ)が特徴です。
一部の患者では、関節の腫れや痛みを引き起こす事もあります。

世界には乾癬患者が1億2,500万人、日本には43万人いると推定されています。(Kubota K, et al BMJ 2015 Jan BMJ Open 2015)


乾癬は正常の約3~10倍で皮膚が定着する前に新たな細胞に押し出されますが、それよりも早い30倍にも及ぶ表皮細胞の異常増殖が見られる場合もあり、その病態には『ヘルパーT細胞17(Th17)』が大きく関与していると考えられています。

関節症性乾癬_重症
(重症)関節症性乾癬の症例

乾癬性紅皮症_重症
(重症)乾癬性紅皮症の症例

「トレムフィア皮下注シリンジ」は、日本初のIL-23(インターロイキン23)のサブユニットタンパク質である『p19』を特異的に阻害するモノクローナル抗体です。


トレムフィア皮下注シリンジの作用機序

IL-23(インターロイキン23)は、Th17(ヘルパーT細胞17)の分化、増殖、及びその維持に関与するサイトカイン(免疫系細胞によって生産されて免疫反応に影響を及ぼす物質)であり、「トレムフィア皮下注シリンジ」は、IL-23の『p19』サブユニットに結合する事によって、IL-23の活性を特異的に阻害し、IL-23の下流にあるTh17へのシグナル伝達を抑制します。(Floss, D.M., et al.:Cytokine Growth Factor Rev., 26, 569, 2015)


海外では、2017年7月に米国、2017年11月に欧州で、中等症から重症の乾癬の治療薬として承認を取得している。


ヒト型モノクローナル抗体薬には、免疫反応活性化物質インターロイキンを標的にした製剤が幾つかありますが、IL-23p19は国内初となる。
〔IL-12/23p40→ステラ―ラ(ヤンセンファーマ)、IL-17A→コセンティクス(マルホ/ノバルティスファーマ)、IL-17RA/IL-17F→ルミセフ(協和発酵キリン)〕



【製品概要】

【製品名】:トレムフィア®(Tremfya®)皮下注100mgシリンジ
【一般名】:グセルクマブ(Guselkumab=遺伝子組換え)
【効能・効果】:既存治療で効果不十分な下記疾患(中等症から重症)
         尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症
【用法・用量】:通常、成人にはグセルクマブ(遺伝子組換え)として、1回100mgを初回、4週後、以降8週間隔で皮下投与する。
【製造販売承認日】:2018年3月23日
【薬価基準収載日】:2018年5月22日
【発売日】:2018年5月22日
【薬 価】:100 mg 1mL 1筒 319,130円
【製造販売元】:ヤンセンファーマ株式会社
【販 売 元】:大鵬薬品工業株式会社
【注意事項】:治療導入前に結核等、感染症のスクリーニングを要する。授乳婦は授乳回避。

2017年12月には、既存治療で効果不十分な掌蹠膿疱症について、ヤンセンが国内で効能効果追加の承認申請を行っています。





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全身型若年性特発性関節炎の新適応で「イラリス皮下注」が効能追加承認を取得

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ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区虎ノ門)は7月2日、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)治療薬「イラリス®皮下注用150mg」、及び「イラリス®皮下注射液150mg(一般名:カナキヌマブ[遺伝子組換え])」について、全身型若年性特発性関節炎(SJIA=systemic juvenile idiopathic arthritis)の治療薬として、厚生労働省より、効能追加の承認を取得したと発表しました。
新たに追加承認されたのは、「既存治療で効果不十分な全身型若年性特発性関節炎」です。



イラリス皮下注射150mg
既存治療で効果不十分な全身型若年性特発性関節炎治療薬
「イラリス®皮下注用150mg、イラリス®皮下注射液150mg(カナキヌマブ」
新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。



全身型若年性特発性関節炎(SJIA)は、16歳未満で発症する、原因不明の慢性(6週間以上持続する)関節炎である若年性特発性関節炎(JIA)の中の1つのタイプです。

若年性特発性関節炎には、大きく分けて全身型(SJIA/41.7%)少関節炎(持続型、進展型/20.2%)リウマトイド因子陰性多関節炎、リウマトイド因子陽性多関節炎(2種合わせて31.9%)、乾癬性関節炎、付着部炎関連関節炎、それに未分類関節炎(その他3種合わせて6.3%)と7つのタイプに分類されます。(日本小児リウマチ学会・診断の手引きより)

若年性慢性関節炎の分類別割合

全身型若年性特発性関節炎の症状写真
若年性特発性関節炎の症例写真

全身型若年性特発性関節炎は、発熱(2週間以上)の繰り返し、短時間で消えたり移動したりする赤い発疹、全身の関節の腫れや痛みが主な症状として見られ、治療には炎症を抑える“ステロイド剤の投与”、関節痛の痛みを抑える“非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の使用”、サイトカイン(免疫系細胞で生産され免疫反応に影響を及ぼすタンパク質の総称)抑制の“生物学的製剤の使用”などが行われています。

全身型若年性慢性関節炎の症状


日本国内での全身型若年性特発性関節炎(SJIA)の発症頻度は、小児人口10万人当たり約4人と推定され、全国で約5000人以上の患者がいると推定されており、若年性特発性関節炎(JIA)患者全体の約40%を占める、最も多い病型です。
発症年齢は、おおむね1~5歳の幼児に多く、男女差はありません。


若年性特発性関節炎(JIA)の原因は不明ですが、身体の免疫反応が異常に亢進(活発化)して、炎症が起こると考えられています。またこの疾患は遺伝しません。
(公益財団法人 難病医学研究財団・難病情報センター/ノバルティスファーマ全身型若年性特発性関節炎より)


若年性特発性関節炎の症例写真と治療後
若年性特発性関節炎の治療前の関節滑膜の炎症(左の白い部分)
→骨破壊を防ぐための治療後の写真(右)

重要な事は、骨損傷前→早期の治療開始です。

全身型若年性特発性関節炎の予後は、寛解や悪化を繰り返しますが、最終的には完治する患者(50~70%)の多い疾患で、完治しない場合でも、症状を抑え、ステロイドの減量や中止ができたり、関節炎の進行を抑え、殆どの小児が正常な身体機能に改善します。
(ノバルティスファーマ全身型若年性特発性関節炎より/監修:大阪医科大学小児科 岡本奈美先生)




「イラリス」は、ヒトIL-1βに対する遺伝子組換えヒトIgG1モノクローナル抗体製剤で、【自己炎症性疾患(autoinflammatory disease)】のうち、遺伝性周期熱症候群である、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS⇒主にNLRP3遺伝子変異)、既存治療で効果不十分な家族性地中海熱(FMF⇒MEFV遺伝子異常)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS⇒主にTNFRSF-1Aの異常)、及び高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)(HIDS[MKD]⇒MVK遺伝子変異)の治療薬として、2011年から順次適応が拡大され、販売されています。

イラリス皮下注用の作用機序

「イラリス」は、炎症性サイトカインの一つであるヒトインターロイキン(IL)-1βに対する、遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1モノクローナル抗体であり、IL-1βに結合し、その活性を中和する事で炎症を抑えます。


現在、世界約70カ国で承認されており、日本国内では、2011年9月にクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)治療薬として承認を取得。
また2016年12月に、既存治療で効果不十分な家族性地中海熱(FMF)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD症候群(MKD)について、効能追加承認を取得しました。

今回の効能適応である「全身型若年性特発性関節炎(SJIA)」に対しては、2017年10月に効能追加承認を申請していました。





【製品概要】

【製品名】
  「イラリス®皮下注用150mg」(ILARIS® for 150mg)
  「イラリス®皮下注射液150mg」(ILARIS® solution for 150mg)
【一般名】:カナキヌマブ(Canakinumab=遺伝子組換え)

【効能又は効果(下線部は今回追加承認された効能又は効果)】
  1)以下のクリオピリン関連周期性症候群
   ■家族性寒冷自己炎症症候群
   ■マックル・ウェルズ症候群
   ■新生児期発症多臓器系炎症性疾患
  2)高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
  3)TNF受容体関連周期性症候群
  4)既存治療で効果不十分な下記疾患
   ■家族性地中海熱
   ■全身型若年性特発性関節炎

【用法及び用量(今回追加承認された分)】
  ●全身型若年性特発性関節炎
通常、カナキヌマブ(遺伝子組換え)として1回4 mg/kgを、4週毎に皮下投与する。1回最高用量は300mgとする。
【効能追加承認日】既存治療で効果不十分な全身型若年性特発性関節炎 2018年7月2日





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国内初、手術不能又は再発/遺伝性乳がん治療薬「リムパーザ®錠」が適応拡大で承認を取得

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アストラゼネカ株式会社(日本本社:大阪府大阪市北区/本社:英国・ロンドン)は7月2日、世界初であり国内初のポリポリメラーゼ(PARP)阻害剤「リムパーザ®錠100mg/同150mg(一般名:オラパリブ)」について、新たに「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性、且つHER2陰性の手術不能または再発乳がん(遺伝性乳がん)」の効能・効果の適応追加、及び製造販売承認事項の一部変更の承認を取得したと発表しました。

本剤は本年1月19日、世界初及び国内初の「BRCA遺伝子変異の有無を問わない白金系抗悪性腫瘍剤(プラチナ製剤)感受性の再発卵巣癌(遺伝性卵巣がん)における維持療法」を効能・効果として、製造販売承認を取得していました。



リムパーザ錠(オラパリブ)100mgと150mg
経口ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤
「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌」
遺伝性乳がん治療薬『リムパーザ®錠100mg、同錠150mg』




BRCA1遺伝子及びBRCA2遺伝子は通常、乳がんの予防に大きな役割を果たします。

BRCA1/2は、癌に変化しようとするDNA切断や、腫瘍の制御不能な成長を修復するためのタンパク質を生成する遺伝子です。
BRCA1と2遺伝子が正常

このBRCA1/2遺伝子のどちらか、或いは双方が変異や変化を起こすと、“BRCAタンパク”が作られなかったり、正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されない可能性があります。その結果、細胞の腫瘍化、癌化を引き起こす更なる遺伝子変化を起こす可能性が高くなります。

BRCA1と2遺伝子変異がある場合

こうした働きがある事から、BRCA1遺伝子及びBRCA2遺伝子は『腫瘍抑制遺伝子』とも呼ばれています。





「リムパーザ®(LYNPARZA®)」は、BRCA遺伝子変異によって、DNA損傷応答(DDR=DNA Damage Response)経路に異常を起こしたがん細胞に特異的に作用し、がん細胞死を誘導する世界初の経口ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であり、国内初の遺伝性乳がんの治療薬です。


リムパーザ(オラパリブ)の作用機序
「リムパーザ®(オラパリブ)」はPARPの強力な阻害剤です。

PARPを阻害する事によって、一本鎖切断を担う塩基除去修復が働くのを妨げる(上図①)。

★プレスリリースや「オラパリブ」の医薬記事ではその働きが分かりにくいので、
ざっくり説明すると‥‥
⇒BRCA1/2遺伝子が正常に働く場合は、DNAに損傷が起こると、遺伝子の二重螺旋のうち1本を切断して、BRCA遺伝子が作る修復タンパク質によって、再生成され正常なDNAに修復される。

しかしBRCA1/2遺伝子に異常があると、正常な修復タンパク質が作られないため、細胞が癌化を始めるので、その前に異常なタンパク質の生成を妨害する事で、損傷したDNAが、1本切断から再生不可能な2本切断に誘導する事で、異常なDNAを持った細胞を死滅させようと言うもの――。修復されないDNAの一本鎖切断は、DNA複製の過程で二本鎖切断に至る(上図②)。

相同組み換えが出来ない癌細胞では、二本鎖切断を修復できずに細胞死に至る(上図③)。



「リムパーザ®」は、日本では2018年に卵巣がん(再発/遺伝性)の治療薬として承認されました。
今回は、BRCA1/2遺伝子変異によってDNA損傷が修復されず、細胞の癌化につながるタイプの遺伝性乳がんの治療薬として適応追加したものです。


卵巣がん治療薬_リムパーザ錠作用機序オラパリブ


愛知県がん研究センター中央病院/副院長兼乳腺科部長の岩田広冶氏は次のように述べています。
「リムパーザの臨床導入は、BRCA遺伝子変異に基づく新たなサブタイプの治療概念を定義し、これまでターゲット治療が無かった、トリプルネガティブ乳がんや、ホルモン抵抗性のホルモン受容体陽性乳がんに対して、有益な治療選択枝を獲得しました。リムパーザが、乳がん領域に於ける更なるプレシジョン・メディシン(一人ひとりの患者に適した精密医療)治療の発展に寄与していくことを期待しています」。




【製品概要】
【製品名】:リムパーザ®錠100mg(Lynparza® Tablets 100mg)/リムパーザ®錠150mg(Lynparza® Tablets 150mg)
【一般名】:オラパリブ(Olaparib)
【効能・効果】:白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法
        がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌

【用法・用量】:通常、成人にはオラパリブとして300mgを1日2回、経口投与する。尚、患者の状態により適宜減量する。

【製造販売元】:アストラゼネカ株式会社
【共同販売】:MSD株式会社(メルク・アンド・カンパニー米国ニュージャージー州)



【リムパーザ®の処方について】
◆本剤は、コンパニオン診断プログラムである「BRACAnalysis診断システム」による、生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異の判定結果に基づき決定されます。
【BRACAnalysis診断システムの製品概要】

【一般名】:生殖細胞系列遺伝子変異解析プログラム(抗悪性腫瘍薬適応判定用)
【販売名】:BRACAnalysis診断システム
【使用目的・効果】:全血から抽出したゲノムDNA中の生殖細胞系列のBRCA1又はBRCA2遺伝子変異を抽出し、オラパリブの乳癌患者への適応を判定するための補助に用いられる。

【製造販売承認日】:2018年3月29日
【海外特例承認取得者】:ミリアド ジェネティック ラボラトリーズ,インク(アメリカ合衆国)






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3つの免疫抑制剤の添付文書改訂、妊娠後の妊婦も使用可能に

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厚生労働省 医薬・生活衛生局は7月10日、国立研究開発法人 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区大蔵)の「妊娠と薬情報センター」がまとめた、免疫抑制剤3剤の添付文書における妊婦等への注意喚起についての見直し報告書を審議、日本製薬団体連合会に対して、『禁忌(きんき)』としていた妊婦への投与が出来るように添付文書を改訂することを、通知で指示した。

免疫抑制剤3剤(タクロリムス水和物、シクロスポリン、アザチオプリン)の妊婦等に対する『禁忌』の見直しについては、6月26日、厚生労働省 医薬安全対策課に於いて審議され、「禁忌・妊婦の項目」が全て削除され、医師が処方可能と判断すれば、妊娠後も、免疫抑制剤3剤での治療継続が可能となる――。



臓器移植の免疫抑制剤

◆「禁忌」の対象から外される免疫抑制剤は、以下の通り。

<タクロリムス水和物(経口剤、注射剤、軟膏剤、点眼剤/Tacrolimus hydrate)>
∴免疫抑制剤…カルシニューリン阻害剤

【製品名】プログラフ(アステラス製薬)〔先発品〕
【製品名】グラセプター(アステラス製薬)〔先発品〕
 尚、タクロリムスには多数の後発品が存在します。

プログラフ注射とカプセル

グラセプター徐放カプセル

<シクロスポリン(経口剤、注射剤、点眼剤/Cyclosporin)>
∴免疫抑制剤…カルシニューリン阻害剤

【製品名】サンディミュン(ノバルティスファーマ)〔先発品〕
【製品名】ネオーラル(ノバルティスファーマ)〔先発品〕
 尚、シクロスポリンには多数の後発品が存在します。

サンディミュン注射用とカプセル

ネオーラルカプセルと内用液

<アザチオプリン(Azathioprine)>
∴免疫抑制剤…代謝拮抗薬

【製品名】イムラン(アスペンジャパン)
【製品名】アザニン(田辺三菱製薬)


イムラン錠とアザ二ン錠


これら薬剤は、
  1. 腎臓・肝臓・心臓・肺・膵臓・小腸移植に於ける拒絶反応の抑制
  2. 骨髄移植に於ける拒絶反応及びGVHD(移植片対宿主病)の抑制
  3. ベーチェット病(眼症状のある場合)。
  4. 尋常性乾癬(全身の30%以上や難治性)・膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症・関節症性乾癬
  5. 再生不良性貧血(重症)・赤芽球癆(せきがきゅうろう)
  6. ネフローゼ症候群(ステロイド抵抗性)
  7. 全身型重症筋無力症
  8. アトピー性皮膚炎(既存治療で効果不十分)
  9. 関節リウマチ(既存治療で効果不十分)
  10. ループス腎炎(ステロイド効果不十分)
  11. 難治性の活動期潰瘍性大腸炎(重症)
  12. 多発性筋炎・皮膚筋炎に合併の間質性肺炎(治療抵抗性)
  13. クローン病(ステロイド依存性)
  14. 全身性血管炎・全身性エリテマトーデス(SLE/膠原病)・強皮症・混合性結合組織病(治療抵抗性/難治性)
以上のような中程度から重症の自己免疫疾患や、臓器移植後の拒絶反応の抑制に使われます。


近年、免疫抑制剤による臓器移植患者の長期予後の改善等に伴い、妊娠可能年齢の患者の妊娠中における治療継続が課題となっており、「妊娠と薬情報センター」での相談件数も、当該免疫抑制剤3剤(タクロリムス水和物、シクロスポリン、アザチオプリン)関係で、295件(平成17年10月以降)に上るなど、医療上の必要性が指摘されている。

免疫抑制剤は、免疫に異常が生じて自身の体を免疫細胞が攻撃する膠原病などの、重い自己免疫疾患の治療や、臓器移植後の拒絶反応の抑制に用いますが、患者が妊婦の場合、投与できないとされていたため、妊娠を諦めたり中絶したりするほか、妊娠後に薬を止めて症状が悪化した事例もあったと言う事で、こうした妊婦の治療の継続が課題となっていました。
今回の禁忌の解除で、医師が処方可能と判断すれば、妊娠後も治療を継続できるようになる。

また、免疫抑制剤はこの他にも5種類の先発品が発売されていますが、それらは解除の対象とはなっていません。薬剤の選択には、注意が必要です。




厚生労働省 医薬安全対策課に提出された資料、『免疫抑制剤3剤(タクロリムス水和物、シクロスポリン、アザチオプリン)の妊婦等に対する禁忌の見直しについて、
によると……。

▼ 国立成育医療研究センターの専門家による作業部会(ワーキンググループ)により、国内外の安全性情報の評価・分析により、当該免疫抑制剤3剤に於いて、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する旨注意喚起した上で、禁忌を解除する事が適当との結果が得られた。

▼ 動物試験(ウサギ)では、過去に催奇形性が報告されているが、国立成育医療研究センターで網羅的に収集し、評価した、海外の疫学研究の結果では、免疫抑制剤を投与された妊婦に於いて、胎児の先天奇形の発生率が有意に上昇したという報告はない。

▼ 国内外のガイドライン等に於いて、妊娠中であっても使用可能な医薬品とされている。

▼ 欧米等6ヶ国の添付文書に於いて、妊婦への投与は基本的に禁忌とされておらず、潜在的有益性が胎児への潜在的危険性を上回る場合にのみ、投与できるとされている。




◆検討を基に、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)から添付文書改訂案が提案されている。

妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対する禁忌を解除する。

「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項において、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する旨の注意喚起を記載する。





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CD20陽性の濾胞性リンパ腫治療薬「ガザイバ®点滴静注」が製造販売承認を取得

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中外製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)と日本新薬株式会社(本社:京都府京都市南区)は7月2日、国内で共同開発した糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体「ガザイバ®点滴静注1000mg(一般名:オビヌツズマブ=遺伝子組換え)」について、「CD20陽性の濾胞性リンパ腫」を効能・効果として中外製薬株式会社が、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表した。

ガザイバ点滴静注1000mg
糖鎖改変型タイプIIヒト化抗CD20モノクローナル抗体
CD20陽性の濾胞性リンパ腫治療薬
「ガザイバ®点滴静注1000mg[一般名:オビヌツズマブ(Obinutuzumab)]」



濾(ろ)胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)は、代表的な低悪性度B細胞リンパ腫で、“非ホジキンリンパ腫”の一種であり、国内の罹患者数は“非ホジキンリンパ腫”の7~15%を占めています〔日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版より〕。

ホジキンリンパ腫と“非ホジキンリンパ腫”では治療方針が異なるため、病理検査で「リード・シュテルンベルグ細胞(reed sternberg giant cell)」や「ホジキン細胞(hodgkin cell)」と言う、特徴的な細胞が見られるものがホジキンリンパ腫、それ以外が“非ホジキンリンパ腫”に分類されます。


悪性リンパ腫病型分類


“非ホジキンリンパ腫”は、癌になっている細胞の特徴(B細胞性・T細胞性・NK細胞性のいずれかとその成熟度)や、染色体検査、遺伝子検査などの結果を基に、更に細かく分類されます〔国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター 悪性リンパ腫より〕。
ホジキンリンパ腫のリード・シュテルンベルグ細胞
ホジキンリンパ腫(古典的)の特徴は、
『フクロウの目』に似た巨大化した二葉核を有する。
リード・シュテルンベルグ細胞、又は*ホジキン細胞と呼ぶ。


国内の、2012年の悪性リンパ腫の罹患者数は約2万7000人、死亡者数は約1万1000万人と報告されています。

国内では、悪性リンパ腫に占めるホジキンリンパ腫の割合が8~10%程度と報告されている事から、“非ホジキンリンパ腫”の罹患者数は約2万4000人(90%)、死亡者数は約1万人と推定されており、殆どが“非ホジキンリンパ腫”の患者という事になります。

悪性リンパ腫の罹患者数、死亡者数は近年増加傾向にあり、“非ホジキンリンパ腫”の罹患者数、死亡者数も、増加傾向にあると考えられています〔国立がん研究センターがん対策情報センター 地域がん登録全国推計によるがん罹患データ/同センター 人口動態統計によるがん死亡データより〕。


濾胞性リンパ腫のGrade別病理組織所見
◆濾胞性リンパ腫のGrade別病理組織所見(WHO分類にはグレード4はありません)
 ▲Grade 1‥‥細胞核に切れ込み。周りは正常なBリンパ球。
 ▲Grade 2‥‥細胞核がU字形核に変化した大小細胞。
 ▲Grade 3A、3B‥‥分裂し多葉性の折り重った核(新生腫瘍細胞)と周囲の小リンパ球。


B細胞の細胞表面抗原の種類


「ガザイバ®」は、非ホジキンリンパ腫の治療薬として国内外の治療ガイドラインで推奨されている「*リツキサン®注(一般名:リツキシマブ)」と同様、幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するタンパク質CD20に結合する、糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体で、「ガザイバ」は、標的となるB細胞を直接、及び体内の免疫系と共に攻撃し、破壊するようデザインされている。

ガザイバ点滴静注1000mgの作用機序
ガザイバ®点滴静注(オビヌツズマブ)の作用機序。

 *リツキサンは…《製造販売元:全薬工業=中外製薬》CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫や、腎・肝移植のABO血液型不適合移植における抗体関連型拒絶反応の抑制などの治療薬。

 *ホジキン細胞の名の由来…英国の内科医トーマス・ホジキンが1832年に発見した、悪性リンパ腫の一種。




【製品概要】
【販売名】:ガザイバ®(GAZYVA)点滴静注1000mg
【一般名】:オビヌツズマブ(obinutuzumab=遺伝子組換え)
【有効成分】:1バイアル中(40ml)オビヌツズマブ1000mg
【効能・効果】:CD20陽性の濾胞性リンパ腫
【用法・用量】:通常、成人には、オビヌツズマブ(遺伝子組換え)として1日1回1000mgを点滴静注する。導入療法は、以下のサイクル期間及び投与サイクル数とし、1サイクル目は1、8、15日目、2サイクル目以降は1日目に投与する。維持療法では、単独投与により2カ月に1回、最長2年間、投与を繰り返す。
 1)シクロホスファミド水和物、ドキソルビシン塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩及びプレドニゾロン又はメチルプレドニゾロン併用の場合
 3週間を1サイクルとし、8サイクル。

 2)シクロホスファミド水和物、ビンクリスチン硫酸塩及びプレドニゾロン又はメチルプレドニゾロン併用の場合
 3週間を1サイクルとし、8サイクル。

 3)ベンダムスチン塩酸塩併用の場合
 4週間を1サイクルとし、6サイクル。

【適用上の注意】: ◆希釈液として日局生理食塩液以外は使用しないこと。
 ◆点滴静注のみとし、静脈内大量投与、急速静注をしないこと。
【効能又は効果に関連する使用上の注意】:
 ◆フローサイトメトリー法等により検査を行い、CD20抗原が陽性であることが確認された患者に使用すること。



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尚、前回の記事に本ブログ始まって以来、最多のペタを頂きまして本当にありがとうございます。
日進月歩の医療や新薬について知らない事は、とても残念な事です。今日まで諦めていた事が、もしや明日、可能になるかもしれません。
それが生きる希望につながって欲しいと常に思っています。

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