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既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎新規治療薬「デュピクセント皮下注」の承認申請を了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は11月6日、サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区)が2017年2月27日に製造販売承認申請していた、「既存治療で効果不十分(重症)なアトピー性皮膚炎(成人患者)」の新規治療薬、「デュピクセント®皮下注300mgシリンジ(一般名:デュピルマブ=dupilumab、遺伝子組換え)」について、新有効成分含有医薬品として承認を了承した。
早ければ、約1ヶ月ほどで正式承認される。

「デュピクセント®皮下注300mgシリンジ」は、最適使用推進ガイドラインの対象品目で、米国食品医薬品局(FDA)では中等症から重症のアトピー性皮膚炎成人患者に対するBreakthrough Therapy(画期的治療薬)に指定している。
再審査期間は8年。



デュピクセント皮下注300mgシリンジ
「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
【デュピクセント®皮下注300mgシリンジ(dupilumab,遺伝子組換え)】




日本皮膚科学会の診断基準によるアトピー性皮膚炎の定義は、「憎悪・寛解を繰り返す、瘙痒(そうよう⇒掻痒の字は間違い)のある湿疹を主病変とする疾患で、患者の多くはアトピー素因を持つ」とあります。

アトピー素因とは、日本皮膚科学会が定めた概念で、アレルギーを起こしやすい体質が家族や自分にある場合を【アトピー素因がある】と言いますが、アトピー性皮膚炎を発症する人が、必ずこの体質であると言う訳ではなく、根本的な原因はハッキリと分かっていませんでした。(アステラス製薬 アトピー性皮膚炎・病気の基礎知識より: https://www.astellas.com/jp/health/healthcare/ad/basicinformation02.html)


その原因究明に大きく近づく研究報告が、2016年11月21日(日本時間22日午前1時)に、英国科学雑誌「Nature Immunology」のオンライン版で公開された。

アトピー性皮膚炎の痒みの原因を解明

アトピー性皮膚炎の原因_東北大学の研究報告
【大気汚染物質がアトピー性皮膚炎の症状を引き起こすメカニズムを解明】
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/11/press20161111-01.html


発癌性などの毒性が特に高い化学物質ダイオキシン類(大気汚染物質)が、細胞質にある「転写因子AhR(芳香族炭化水素受容体)」を活性化させる事で、神経を成長させるタンパク質「artemin(アルテミン)」を高発現させ、皮膚表面の表皮内へ神経が伸長し、過剰に痒みを感じやすい状態を作り出す事が分かったと言う――。


こうして過剰状態になった皮膚表層に、環境因子(ダニ、花粉、細菌、カビ、食物など)が加わる事で、慢性に経過する痒みを伴う、慢性炎症性疾患となる。

中等症~重症のアトピー性皮膚炎は、発疹を特徴とし、持続する激しい難治性の痒み、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮(かひ=かさぶた)、毛細血管出血を伴い、更には、体力を消耗させる瘙痒(そうよう)は、患者にとって最も大きな負担となる症状で、睡眠や、生活の様々な局面に大きな影響を与えるほどの耐え難い症状になります。




大人の重症アトピー性皮膚炎
大人の中等症~重症アトピー性皮膚炎の症例。


アトピー性皮膚炎は、湿疹性疾患の中でも最も頻度の高い疾患であり、治療では、皮膚バリア機能の改善や、保持のための保湿外用薬を継続的に使用し、皮膚の炎症に対してはステロイド外用薬、タクロリムス外用薬(免疫抑制外用薬)などの抗炎症外用薬の使用が推奨されている。

これらの治療で効果不十分な場合に、免疫抑制剤の経口シクロスポリンの間欠投与が行われる。



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「デュピクセント®(デュピルマブ)」 は、IL-4とIL-13という2つのタンパク質のシグナル伝達を特異的に阻害するように設計されたヒトモノクローナル抗体です。

IL-4とIL-13の活性増強は、アトピー性皮膚炎に於ける持続する炎症を促進する上で、中心的な役割を果たしていると考えられています。

デュピクセント皮下注の作用機序
「デュピクセント」の作用機序。
即時型アレルギー促進に働くIL-4(インターロイキン-4タンパク質)と
アレルギー抑制に働くIL-13(インターロイキン-13タンパク質)を同時に阻害する。
これによって炎症を止め、痒みも止めると考えられる。


「デュピクセント®(デュピルマブ)」は現在、既存治療でコントロール不良の中等症から重症のアトピー性皮膚炎の成人患者を対象とした治療薬です。



「デュピクセント®(デュピルマブ)」は、グローバルLiberty AD 臨床試験プログラムの第III相ピボタル臨床試験の、SOLO-1試験とSOLO-2試験の単独投与、及びCHRONOS試験のステロイド局所投与併用をそれぞれ検討した。
結果、これら3試験のいずれに於いても、「デュピクセント®(デュピルマブ)」は単独投与、又はステロイド局所投与との併用でアトピー性皮膚炎の症状・徴候を有意に改善した。

この結果を踏まえ、2017年3月28日、アトピー性皮膚炎に対する初めての生物学的製剤として米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得。
2017年9月28日には、欧州医薬品庁(EMA)で承認を取得していた。

【用法・用量】は通常、成人には、投与初日に600mgを1回皮下投与し、その後は300mgを2週に1回投与して用いる。



今回、ほとんど日を置かず、日本国内でも承認が了承された事で、ステロイド外用薬などの抗炎症外用薬で効果不十分な成人アトピー性皮膚炎に対して、新たな治療選択肢を提供する事になります。





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世界初の乳がん治療剤・経口CDK4/6阻害薬など新薬12品が本日、薬価収載

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厚生労働省の中央社会保険医療協議会 総会は11月15日、新薬12製品(12成分25品目)を薬価収載する事を決め、11月22日に収載された。これで保険適応薬となる。
この決定によって、新薬12製品の薬価が明示された。



■ ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区代々木)
「手術不能または再発乳がん治療薬:サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬「イブランス®カプセル25mg、同カプセル125mg」
(HR+HER2-=ホルモン受容体陽性ヒト上皮増殖因子受容体2陰性の進行性又は転移性再発乳がん)

乳癌治療薬イブランスカプセル125mg
薬価:25mg/1カプセル 5576.40円、125mg/1カプセル 2万2560.30円(原価計算方式)



■ グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都渋谷区千駄ヶ谷)
「既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス:可溶性Bリンパ球刺激因子(BLyS)抗体薬ベンリスタ点滴静注用120mg、同400mg、同皮下注200mgオートインジェクター、同皮下注200mgシリンジ(一般名:ベリムマブ)」
ベンリスタ皮下注200mgオートインジェクター

薬価:120mg/1瓶 1万5404円、400mg/1瓶 5万245円、200mg/1mL/1キット 2万4547円、200mg/1mL/1筒 2万4540円(原価計算方式)



■ ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区代々木)
「肺動脈性肺高血圧症治療薬:ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬「レバチオ®錠20mg」(一般名:シルデナフィルクエン酸塩)及び「レバチオ®懸濁用ドライシロップ900mg」「レバチオ®ODフィルム20mg」
レバチオ経口懸濁液

薬価:20mg1錠 1213.50円、10mg1mL(懸濁後の内用液として)671.30円(1日薬価:4027.80円)



■ アッヴィ合同会社(本社:東京都港区三田)
「C型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善:NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬(グレカプレビル水和物)+NS5A阻害薬(ピブレンタスビル)マヴィレット配合錠」
ジェノタイプ1~6の全てのジェノタイプを対象とした、初のC型肝炎抗ウイルス剤でC型慢性肝炎、C型代償性肝硬変治療薬

マヴィレット配合錠

薬価:1錠 2万4210.40円(1日薬価:7万2631.20円)



■ SBIファーマ株式会社(本社:東京都港区六本木)
「経尿道的膀胱腫瘍切除時における筋層非浸潤性膀胱がんの可視化」(手術開始前使用)
アラグリオ顆粒剤分包1.5g(一般名:アミノレブリン酸塩酸塩)


薬価:1.5g/1包 7万4873.70円


■ サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区西新宿)
「既存治療で効果不十分な関節リウマチ治療剤:完全ヒト型抗IL-6 受容体モノクローナル抗体ケブザラ皮下注150mgシリンジ、同皮下注200mgシリンジ(一般名:サリルマブ)」

薬価:150mg1.14mL/1筒 4万5467円、200mg1.14mL/1筒 6万329円(1日薬価:4309円)


■ ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区西神田)
「再発又は難治性の多発性骨髄腫治療薬:CD38モノクローナル抗体ダラザレックス点滴静注100mg、同400mg(一般名:ダラツムマブ)」
ダラザレックス点滴静注100mg_400mg

薬価:100mg/5mL/1瓶 5万1312円、400mg/20mL/1瓶 18万4552円(1日薬価:2万53円)



■ メルクセローノ株式会社(本社:東京都目黒区下目黒)
「根治切除不能なメルケル細胞がん治療薬:ヒト型抗PD-L1抗体バベンチオ点滴静注200mg(一般名:アベルマブ)」
バベンチオ点滴静注200mg

薬価:200mg/10mL/1瓶 21万8955円(1日薬価:3万9099円)



■ MSD株式会社(本社:東京都千代田区九段北)
「クロストリジウム・ディフィシル感染症の再発抑制:ジーンプラバ点滴静注625mg(一般名:ベズロトクスマブ)」
ジーンプラバ点滴静注625mg

薬価:625mg/25mL/1瓶 33万500円(原価計算方式)



■ EAファーマ株式会社(本社:東京都中央区入船)
「潰瘍性大腸炎(重症を除く)泡状注腸製剤:レクタブル2mg注腸フォーム14回(一般名:ブデソニド)」
潰瘍性大腸炎治療剤レクタブル2mg注腸フォーム14回

薬価:48mg/30.8g/1瓶 6940.60円(原価計算方式)



■ 帝國製薬株式会社(本社:香川県東かがわ市三本松)
「アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒:ルパフィン錠10mg(一般名:ルパタジンフマル酸塩)

薬価:10mg1錠 69.40円


■ CSLベーリング株式会社(本社:東京都江東区東雲)
「血液凝固第8因子欠乏患者における出血傾向の抑制:エイフスチラ静注用250IU、同500IU、同1000IU、同1500IU、同2000IU、同2500IU、同3000IU(一般名:ロノクトコグアルファ)

薬価:
250国際単位1瓶(溶解液付) 2万2308円
500国際単位1瓶(溶解液付) 4万1370円
1000国際単位1瓶(溶解液付) 7万6719円
1500国際単位1瓶(溶解液付) 11万104円
2000国際単位1瓶(溶解液付) 14万2273円
2500国際単位1瓶(溶解液付) 17万3568円
3000国際単位1瓶(溶解液付) 20万4184円(1日薬価:7万2923円)




この中では、ピーク時売上を224億円(5年後)と設定された、ファイザーの乳がん治療薬として、世界初(国内初)の経口サイクリン依存キナーゼ(CDK)4/6阻害薬「イブランスカプセル」や、アッヴィ合同会社の『全てのジェノタイプのC型肝炎』を適応とする「マヴィレット配合錠」はピーク時売上を377億円(2年後)と予測した。

また、メルクセローノのメルケル細胞がん治療薬で、国内初の抗PD-L1抗体「バベンチオ点滴静注」も今回、収載される事となった。




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改変型抗PD-L1抗体/非小細胞肺がん治療薬「テセントリク点滴静注」の承認申請を了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は11月6日、中外製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)が国内承認申請していた、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する改変型抗PD-L1モノクローナル抗体「テセントリク®点滴静注1200mg(一般名:アテゾリズマブ「遺伝子組換え」)」について、新有効成分含有医薬品として承認申請を了承した。

「テセントリク®(TECENTRIQ®)点滴静注1200mg」は、非小細胞肺がん(NSCLC)に対する免疫チェックポイント阻害剤で、国内初の抗PD-L1モノクローナル抗体である。

本剤は、メルケル細胞がんを適応症として承認された「バベンチオ®点滴静注200mg」に次ぐ製品であり、非小細胞肺がんの適応を持つ初の抗PD-L1抗体薬となります。
早ければ、約1ヶ月ほどで正式承認される。再審査期間は8年。最適使用推進ガイドラインの対象品目である。



テセントリク点滴静注_TECENTRIQ
切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの適応を持つ初の抗PD-L1抗体薬
「テセントリク®(Tecentriq®)点滴静注1200mg(一般名:アテゾリズマブ」



肺がんは、顕微鏡で細胞がどのように見えるかによって、非小細胞肺がん(85-90%=扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん)と、小細胞肺がん(10~15%)に分けられます。

日本では、2015年の肺がんの予測年間罹患者数は約13万4,000人(男性9万1,000人、女性4万3,000人)と推計されています。

また、国内の年間死亡者数は約7万7,000人(男性5万5,000人、女性2万2,000人、2015年予測値)であり、癌にともなう死亡原因の第1位となっています(国立がん研究センターがん対策情報センター.2015年のがん統計予測)。


大気汚染生き残り解決手段

非小細胞肺がんでは、喫煙が特徴的な危険因子である事がよく知られていますが、非喫煙者や、近年では女性の肺がんも増加の一途をたどっています。

◆非小細胞肺がんリスク因子◆
(1)喫煙、(2)受動喫煙、(3)ラドン、(4)石綿(アスベスト)、(5*)大気汚染、(6)職業性の粉塵曝露、(7)後天性の肺疾患、(8)非喫煙女性に生じる肺がんに関連している事が疑われている室内の空気汚染(木炭ストーブ、調理にともなう蒸気)、(9)食事習慣、(10)遺伝的感受性
(11)タバコを喫わない女性に、エストロゲンの影響が大きい傾向が見られる事。
(5*)大気汚染とは‥‥空気中の様々な有害物質(細菌やウイルス因子、自動車の排気ガス、工場の煤煙、ホコリやチリなど)


肺がんの危険因子
肺がんの危険因子。
◆参考文献引用元◆
  ▼ESMO(欧州臨床腫瘍学会:スイス)非小細胞肺癌:患者の手引き
http://www.jsco.or.jp/guide/user_data/upload/File/nonsmallcell.pdf
  ▼ベルギー癌克服基金2017:Anticancer Fund Org
  ▼日本癌治療学会
  ▼国立がん研究センター研究所などによる遺伝子解析
  ▼オムロンヘルスケア「タバコを喫わないのに肺がん。なぜ?」
http://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/100.html



「テセントリク®点滴静注1200mg(一般名:アテゾリズマブ=atezolizumab)」は、腫瘍細胞(Target Cell)、又は腫瘍浸潤免疫細胞(Immune Cell)に発現するPD-L1(Programmed Death Ligand-1)と呼ばれるタンパク質を標的としたモノクローナル抗体です。

テセントリク点滴静注1200mgの作用機序a
PD-L1は、T細胞の表面上に見られる“PD-1(programmed death 1)”、“B7.1(T細胞活性化共刺激分子)”の双方と結合し、T細胞の働きを阻害します。

テセントリク点滴静注1200mgの作用機序b
「テセントリク®点滴静注1200mg」は、この結合を阻害する事により免疫細胞であるT細胞が活性化され、腫瘍細胞を効率的に検出し攻撃します。

テセントリク点滴静注1200mgの作用機序c



「「テセントリク®点滴静注1200mg(海外販売名:Tecentriq®)」は、米国食品医薬品局(FDA)が承認したPD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害剤で、2016年5月、『局所進行または転移性尿路上皮癌の二次治療』、2016年10月、『白金製剤ベースの化学療法施行中、又は施行後に病勢が進行した転移性非小細胞肺癌』に対する承認を取得している。

また、2017年1月にシスプラチン(製品名:ブリプラチン/ランダ)による化学療法が不適格な局所進行または転移性尿路上皮癌の一次治療に対し、優先審査品目に指定されています。

正式承認されれば、非小細胞肺がん(NSCLC)の適応を持つ初の抗PD-L1抗体となる。海外では2017年7月時点で、NSCLCに関する効能・効果で13の国・地域で承認済。




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難治性CD22陽性急性リンパ性白血病治療薬「ベスポンサ点滴静注」の承認申請を了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は11月24日、ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)が、本年4月27日に、国内における製造販売承認を申請していた「再発又は難治性の前駆B細胞性急性リンパ性白血病」の効能・効果で、抗悪性腫瘍剤/抗腫瘍性抗生物質結合抗CD22モノクローナル抗体「ベスポンサ®点滴静注用1mg(一般名:イノツズマブ オゾガマイシン®「遺伝子組換え/開発番号:PF-05208773 /CMC-544」)」について、新有効成分含有医薬品として承認を了承した。


ベスポンサ点滴静注用1mg_Besponsa
再発又は難治性の前駆B細胞性急性リンパ性白血病治療薬
「抗悪性腫瘍剤/抗腫瘍性抗生物質結合抗CD22モノクローナル抗体」
『ベスポンサ®点滴静注用1mg(一般名:イノツズマブ オゾガマイシン®)』



前駆B細胞性急性リンパ性白血病(B cell precursor acute lymphoblastic leukaemia=ALL)は、骨髄に於いてリンパ芽球(大型化したリンパ球)が増殖する造血器の悪性腫瘍性疾患です。
通常、急性リンパ性白血病(ALL)と呼ばれます。

リンパ芽球の増殖により、正常な造血が損なわれるほか、リンパ芽球の浸潤によるリンパ節や肝臓・脾臓などの腫大が見られる事がある。
リンパ芽球は中枢神経や精巣へと浸潤する事や、皮下腫瘤を形成する事もあります。

血液の成分種類
血液の構成成分(種類)


前駆B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)の、日本に於ける患者数は2005年に約3000例、2008年に約4000例、2011年に約5000例、2014年に約5000例と報告されており、近年増加傾向にあり【厚生労働省 患者調査/総務省 統計局】、成人の場合は、予後は不良です【米国立癌研究所】。


尚、国内での小児急性リンパ芽球性白血病の年間新規発症数は約500人と推定され、発症のピークは2~6歳、このうち前駆B細胞性ALLが約80~85%、T細胞性ALLが約10~15%、成熟B細胞性ALLが約5%である。

小児での治療成績は年々向上しているものの、乳児早期に発症した患者や、初期治療に対する反応性が不良の患者の、長期生存率は40~60%に留まっている。
成熟B細胞性ALLは、短期集中型の治療で80%を超える長期生存率が達成され、治癒可能な疾患となっています。

前駆B細胞性急性リンパ性白血病細胞
前駆B細胞性急性リンパ性白血病で増大したリンパ芽球細胞。
(形がいびつに変化)

しかし、前駆B細胞性ALLと新たに診断された成人患者のおよそ20%~40%は、現在の治療の用量や用法、治療計画によって治癒しますが、再発又は難治性の成人前駆B細胞性ALL患者の5年生存率は、10%以下であり、治療成績はまだ満足できる所まで届いておらず、治癒は一部の患者に限られている状況です【日本成人白血病治療共同研究グループJALSG】。

現在の標準治療は、米国でも日本でも、白血病細胞を根絶するための強力な化学療法を繰り返し行う事です【米国癌学会、日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版」】。

寛解に至らないケースでは、発症年齢、初診時の白血球数、染色体異常、治療反応性によって、治療効果が異なるため、予後因子が増える事で治療成績は低下します。




「ベスポンサ®点滴静注用1mg(イノツズマブ オゾガマイシン=Inotuzumab ozogamicin)」は、B細胞性悪性腫瘍のおよそ90%に発現している細胞表面抗原であるCD22を標的とするモノクローナル抗体(mAb)と、殺細胞性薬剤「カリケアマイシン(calicheamicin)」とを結合した抗体-薬物複合体(ADC=Antibody-Drug Conugate)です。

「ベスポンサ®(イノツズマブ オゾガマイシン®)」がCD22抗原に結合すると、腫瘍細胞内に取り込まれ、「カリケアマイシン」を放出して腫瘍細胞を破壊します。


ベスポンサ点滴静注用1mg_Besponsa作用機序
「ベスポンサ®(Besponsa®)」の作用機序。


「ベスポンサ®(Besponsa)点滴静注用1mg」は、日本も参加した国際共同第3相試験と海外での第1/2相試験の結果に基づくもの。

再発又は難治性前駆B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)の成人患者326人が登録されたINO-VATE 1022試験は、オープンラベル無作為化フェーズ3試験で、イノツズマブ オゾガマイシン群と、標準化学療法群の比較が行われた。
イノツズマブ オゾガマイシンは3週間の間に週1回静脈内投与され、3~4週間を1サイクルとして、6サイクルまで行った。
化学療法は、FLAG療法(フルダラビン、シタラビン、G-CSF)、高用量シタラビン(HIDAC)、またはシタラビン+ミトキサントロンの中から、治験担当医師が選択した用量や用法、治療期間や治療計画によって投与された。

試験の結果、血液学的完全寛解率、無増悪生存期間(PFS)などの評価項目において、イノツズマブ オゾガマイシン群が優れる事が明らかとなった。



本剤は2017年7月12日、欧州委員会に於いて「再発又は難治性のCD22陽性前駆B細胞性急性リンパ性白血病」の成人患者に対する単剤療法として承認され、9月1日、米国食品医薬品局(FDA)に於いても同様の効能・効果で承認されている。

「ベスポンサ®(BESPONSA)」は1時間かけて静脈内投与します。
適切な患者には外来で投与する事が出来ます。

*注:生殖能力を有する患者では、治療期間中、及び最終投与から最低5~8カ月間は有効な避妊法を用いるよう指示する事。また授乳期の母親では、治療期間中、及び最終投与から2カ月間は授乳を行わないよう指示する事。




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子供の成長障害(低身長)~低出生体重児では病気が原因の可能性も

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身長の低い子供は、両親も背が低いなど、90%以上が遺伝的・体質的な原因によるものです。身長は低いが、健康には全く問題が無いと言うケースです。

しかし、中には成長を促すホルモンが出ていない事や、染色体や、骨の異常によって子供の成長にブレーキが掛かっている場合もあります。
これらは、稀有なケースなので、見逃されてしまう可能性があります。(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社「低身長とその原因」より)




また遺伝や家系をさかのぼって、明らかに背の低い血統であっても、
「うちの子、背の順でずっと1番前なんです。ちゃんと背は伸びるのでしょうか?」
「早産で生まれて、直ぐに他の子に追い付くと言われたのですが、中々背が伸びなくて…」
などと心配になり、小児科医に相談をされた方もいると思います。


早稲田大学理工学研究所研究院教授:福岡秀興氏によると、
『出生時の体重が、2500g未満の新生児を【低出生体重児(Low-birth-weight baby)】と言いますが、日本では今や、全新生児の9.6%が低出生体重児です。この数字は、男子と女子を合わせたもので、女子だけで見れば10%を大きく超えています。
つまり、100万人の新生児のうち、10万人が【低出生体重児】なのです。この数字は、先進国の中では突出して高いと言える』
との事。


低出生体重児の出産割合
新生児に占める低出生体重児(2500g未満)の出産割合。



■「小さく産んで大きく育てる」‥‥
この意見は、誤りです!■



子供の誕生は、卵子と精子が受精してから胎児期を経て出生し、乳幼児期へ、と言う人生最初の僅か約1000日間に、母体の影響による環境と、受け継がれた遺伝子の相互作用により、種々の疾病リスクが決定すると言う考え方があります。

これを、DOHaD説(ドーハッド:Developmental Origins of Health and Disease=健康と病気の発達上の起因)と言い、小さく生まれると将来、高血圧、糖尿病、肥満など生活習慣病のほか、アレルギー疾患、うつ病などの精神疾患など、様々な疾患に罹患するリスクが高くなる事が統計学的にも明らかになっており、実際、様々な疫学研究の結果が、このDOHaD説を支持しています。

つまりどう言う事かと言うと‥‥

受精期、胎生期に低栄養状態の環境(母体が痩せている体型)にさらされると、生後に貧しい環境で生きられる様に、遺伝子の働きが制御(コントロール)されます。
生まれた後も低栄養状態であれば、疾病リスクは高くなる事はありません。身体が低栄養に順応するからです。

受精胚から出産までのプロセス
受精胚から出産までのプロセス。


しかし、豊かな環境(衣・食・住)で成長すると、低栄養状態に適応した代謝系の仕組みになっているため、栄養が過多となり、ここぞとばかりに栄養を過分に体内に蓄えてしまい、メタボリックシンドロームや糖尿病、心筋梗塞、更にうつ病などに罹患しやすくなると考えられています。


そこで早産などによって出生時の身長・体重が小さかった子供、すなわち【低出生体重児】の場合、SGA性低身長症が含まれている場合があり、その後の成長も遅い場合を【低出生体重児のSGA性低身長症】と言います。

▲SGA(small-for-gestational age)性低身長症とは‥‥
母親のお腹の中にいる期間(在胎月齢、又は在胎週数)に相当する標準身長・標準体重に比べて、小さく生まれる子供の事。


SGA性低身長症の成長曲線
SGA性低身長症の成長曲線。
SD値(標準偏差)が-2.5以下で成長障害の疑い。

しかし低身長が、成長障害によって引き起こされる病気で、治療が必要なのか…?

それとも子供の代謝状態や、様々なホルモンの出方、生活環境などによる個人差なのか…?

まず成長曲線を作成して置く事。血液検査を受ける事。
この2点が重要です。

採血で分かるホルモンの検査(内分泌検査)のうち重要なのは、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、IGF-I(ソマトメジンC)です。また、手のレントゲン写真は、骨の成熟度(骨年齢)を知るために必要な検査です。

これらの検査結果で、成長ホルモン療法による治療が必要な「低身長症」と判断された場合は、SGA性低身長症としてホルモン治療の対象となります。(*但し骨端線閉鎖を伴わない)

診断をした上で、「治療の必要がない低身長」と判断された場合は、成長ホルモンによる治療を受ける必要はありません。


SGA性低身長症の治療基準ガイドライン
SGA性低身長症の治療基準ガイドライン


国内におけるSGA性低身長症の罹患率は0.06%とされ、約9600人の患者数がいると考えられています。
近年、高齢出産の増加などに伴い、2500g未満で出生する小児は、10人に1人となっており、そのため、SGA性低身長症の患者数は増加傾向にあります。


SGA性低身長症可能性が大きい


東京都世田谷区の「たなか成長クリニック(東京都世田谷区)」院長 田中敏章氏は、
「【低出生体重児】出産の親御さんには乳児健診の際に、母子手帳などで身長・体重の成長曲線を描くように率先し、3歳時点で-2SD以下と、低身長が疑われたら、出来るだけ早く専門医を受診ほしい」
と、話す。


SGA性低身長症の追いつき率
SGA性低身長症のキャッチアップ率(追いつき率)。
ホルモン治療が効果を現しやすいのは、3歳時点以降。


■但し、成長ホルモン治療は高額‥‥
経済的な理由で治療中断のケースも!■


◇東京都世田谷区の成育医療研究センター内分泌・代謝科の堀川玲子氏によると、
「専門医が適切な治療を実施したとしても、SGA性低身長症児では、成長ホルモンを投与していても平均身長に届かない例がほとんど」
と話す。

その理由として、思春期になると骨端線閉鎖が始まるので、思春期が始まるまでに平均身長に追い付けない事が挙げられる。

また、治療費が高額な為、効果不十分なまま治療を中断せざるを得ないケースもあると言う。
成長ホルモンは薬価が高く、月に体重当たり約1万円の費用が生じる。
体重12kgの小児を治療する場合、3割負担でも薬剤の費用だけで約3万6000円掛かってしまう。


子供の成長が進むにつれて、成長ホルモン製剤の投与量は増加する。「SGA性低身長症」は、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患ではないので、途中で治療を中断しない覚悟も必要となる。



尚、低身長治療を行っていると標榜する医療機関の中には、効果が不明な口腔内へのスプレーや、舌下投与スプレーなどで成長ホルモンを投与する、高額な治療を自費診療で実施している医療機関や、成長ホルモン投与をせずに、漢方薬を処方している医療機関もあると言うから、注意が必要です。


治療を受けたいと思ったら、掛かりつけの小児科から、日本小児内分泌学会の理事、及び評議員のいる医療機関の専門医を紹介してくれるよう求めると良いでしょう。
一般社団法人 日本小児内分泌学会 理事および評議員名簿サイト(2017.9.28~2021):http://jspe.umin.jp/public/sub.html





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難治性の全身型重症筋無力症治療薬「ソリリス点滴静注」の承認申請を了承

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アレクシオンファーマ合同会社(本社:東京都渋谷区恵比寿)が2017年3月23日に効能追加申請した、「全身型重症筋無力症(難治性=免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)」を効能・効果とする、抗補体モノクローナル抗体製剤「ソリリス®点滴静注300mg(一般名:エクリズマブ=遺伝子組換え)」について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は12月4日、新効能・新用量医薬品として承認申請を了承した。

本剤は希少疾病用医薬品であり、再審査期間は10年となる。


ソリリス点滴静注300mg
抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の難治性全身型重症筋無力症治療薬
抗補体モノクローナル抗体「ソリリス®点滴静注300mg(一般名:エクリズマブ)」

尚、本剤は既に、(1)発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制〔2010年4月〕(2)非典型溶血性尿毒症症候群における血栓性微小血管障害の抑制〔2013年9月〕――で承認され、販売されています



重症筋無力症は一般的に、眼筋の筋力低下による眼瞼下垂(がんけんかすい)から始まり、ものが二重に見える複視(ふくし)、その後、易疲労性(疲れ易い)が出現します。
更に重症化して、頭部、頸部、体幹、四肢および呼吸筋の筋力低下から麻痺を起こし、呼吸困難を来す事もあります。

眼の症状だけの場合は『眼筋型』、全身の症状がある場合を『全身型』と呼んでいます。

全身型は、難治性の全身型重症筋無力症(gMG=generalized Myasthenia Gravis)として知られ、全身型重症筋無力症の患者の大半の症状は、既存の治療法でコントロール出来ますが、10~15%の患者では、これら治療法では十分な効果が得られない難治性となります。



重症筋無力症の分類
重症筋無力症の分類


難治性の全身型重症筋無力症では、既存の治療法を尽くしても、全身の著しい筋力低下が続き、その結果として、不明瞭な会話、嚥下障害(飲み込みが困難である)、むせ(咳込む)、複視、日常生活に支障を来すほどの疲労感、呼吸筋の筋力低下による息切れを示し、頻繁な通院と、呼吸不全の治療期間も含めたICU治療や長期入院が必要となります。

重症筋無力症は、厚生労働省が指定する難病(特定疾患)の一つで、患者数は1988年で5,989人、2006年には15,100人、現在は20,000人以上と推定されています。




難治性の全身型重症筋無力症は、抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の稀な自己免疫疾患で、補体系(免疫システム血清タンパク質)により神経筋接合部に進行性の炎症をきたし破壊され、その結果、神経筋伝達障害が引き起こされ、筋肉が正常に機能しなくなります。

時に、呼吸器系の深刻な症状に直面し、重症化して生命を脅かす事もあります。

全身性重症筋無力症発症の神経筋接合部のアセチルコリン受容体抗体
神経筋接合部にある神経からの命令を伝えるアセチルコリン受容体が、
抗アセチルコリン受容体抗体が作られる事で、アセチルコリン受容体の働きが減少し発症。


これまで、抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の難治性の全身型重症筋無力症(gMG)に対して、承認された治療法はありませんでした。

全身型重症筋無力症(gMG)では、ヒト補体であるC5転換酵素がC5と結合し、C5a及びC5bの産生を促進させ、c5b-9(膜侵襲複合体、又は終末補体複合体)によって神経筋伝達の欠損を引き起こしていました。


「ソリリス®点滴静注300mg」は、アレクシオンファーマ合同会社が創製したファースト・イン・クラス(画期的医薬品)の終末補体阻害剤です。

ソリリス点滴静注300mg作用機序
ソリリス®(エクリズマブ)点滴静注300mgの作用機序

ヒト補体であるC5に対して高い親和性を有するヒト化モノクローナル抗体で、C5の活性化によるC5a及びC5bの産生を阻害する事で、神経筋接合部でのアセチルコリン受容体の消失と、それに伴う神経筋伝達障害を改善すると考えられている。


難治性の全身型重症筋無力症の治療は、第1選択が経口ステロイド、第2選択がタクロリムスやシクロスポリンのカルシニューリン阻害薬、第3選択が免疫グロブリン静注療法及び血漿交換とされている中、「ソリリス®点滴静注」は第3選択でも治療困難な患者の治療選択肢となる。


海外では難治性の全身型重症筋無力症に関して、2017年8月に欧州で、2017年10月に米国で承認されている。


「ソリリス®点滴静注」の投与に於いて、2016年8月23日、京都大学医学部付属病院で治療を受けていた発作性夜間ヘモグロビン尿症の女性患者が、妊娠に伴い血栓症予防のため本剤を投与。
その後、副作用による急激な発熱に見舞われ、髄膜炎菌敗血症で死亡する事案が発生した。

ソリリスの添付文書には、重大な副作用として「髄膜炎菌感染症を誘発する」と記載されているにも関わらず、京都大学医学部付属病院内の産科の助産師が、発熱の初期段階で髄膜炎菌感染症を疑い、抗菌剤による治療が行われなかった(助産師の範囲を超える)。医師の診断が必要だったにも関わらず情報が共有されなかったとする、事故調査委員会の報告書が出された。
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20170710000020



いかなる薬でも副作用は起こるもの。早い適切な処置によって助かる症状が大多数であり、そのためにも、患者自身も、医師も、どのような薬剤を使っているかを、多くの診療科や医師に伝える事…無駄に思えるような事でも共有する事が、万が一を救う。
知っているだろう…は、不測の事態を招く恐れがある。

*これは国内での唯一の死亡例である。



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子宮癌肉腫治療薬の抗体薬物複合体「DS-8201」、世界初の医師主導治験を開始

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今回、医師主導治験(*本文末尾参照)を開始したのは、希少がんの中でも更に発症頻度の極めて少ない、“子宮癌肉腫”を対象に、新規の抗体薬物複合体(ADC=Antibody-drug conjugate)『DS-8201』で、国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院など全国7つの医療施設で、12月4日から始まった──。

試験ID番号、UMIN000029506の試験が実施されるのは、◆国立がん研究センター中央病院、◆埼玉医科大学国際医療センター、◆静岡県立がんセンター、◆愛知県がんセンター中央病院、◆兵庫県立がんセンター、◆四国がんセンター、◆九州がんセンターの7施設です。


子宮癌肉腫治療薬・抗体薬物複合体DS-8201のイメージ写真
子宮癌肉腫治療薬・抗体薬物複合体「DS-8201」は、
医師主導治験を開始したばかりであり、製品写真はありません。
*写真はイメージです。




普通の子宮内膜の組織構造

子宮体癌の組織構造

知られている子宮がん(子宮体がん)は、粘膜や皮膚などの上皮性細胞から発生する悪性腫瘍ですが、子宮癌肉腫は、筋肉や骨などの非上皮性細胞から発生する悪性腫瘍と定義され、がん腫部位(上皮性細胞)と肉腫部位(筋肉や骨)から構成される悪性度の高い腫瘍です。

日本国内に於ける子宮体がん(子宮頸がんは除く)の年間発症数は約13,600例、死亡数は約2,200例です(人口動態統計2014年)が、2014年の子宮癌肉腫の発症数は475例で、その死亡数については把握されていません。

その理由として、子宮癌肉腫の疾患概念が、いまだ確立されておらず、子宮体がんに対して推奨される化学療法とは異なっており、子宮癌肉腫に対する標準治療は、世界的にも未だ確立されていないためです。


上皮性成分と間葉性成分が共に悪性の子宮体癌

癌性と肉腫性の両方を持つ子宮癌肉腫

有糸分裂が増幅された高悪性度の子宮癌肉腫

病期によらず、治癒切除が可能と考えられる場合には、一般的に手術が実施されます。

また治癒切除が困難な場合であっても、性器出血に対し、止血目的の子宮全摘出術が先行される例も多く、リンパ郭清術(手術時がんを切除するだけでなく、がんの周辺にあるリンパ節を切除する事)についてはI期~III期症例の生命予後を改善する事が、米国から報告されています。

切除不能の子宮癌肉腫に対する薬物療法は、子宮体がんに準じて行われますが、選択肢は限定的で、予後不良の疾患です。



子宮癌肉腫においては、『HER2受容体』が過剰発現している事が報告されています。

子宮がん細胞のHER2遺伝子増殖とHER2受容体過剰発現
子宮癌肉腫細胞に過剰発現する「HER2受容体」と増殖する「HER2遺伝子」。


国立がん研究センター中央病院で治療を実施した患者の腫瘍組織を解析した所、HER2が3+と判定された患者が8.3%、HER2が2+と判定された患者が36%、HER2が1+と判定された患者が33%、HER2陰性と判定された患者が23%となり、45%弱の患者でHER2が2+以上の過剰発現患者でした。




『DS-8201』は、第一三共株式会社が創製した、HER2タンパク質に対する抗体薬物複合体で、抗HER2抗体とトポイソメラーゼ阻害薬の“DXd”を結合させた、分子標的薬抗体薬物複合体製剤です。
抗体薬物複合体(Antibody Ddrug Conjugate)は、がん細胞に発現している標的分子(HER2)に結合する抗体を介して、薬物をがん細胞に直接届け、がん細胞のDNAを直接破壊するものです。


抗体薬物複合体DS-8201の仕組み
トポイソメラーゼ阻害薬“DXd”は、癌細胞に運ばれると、癌の細胞核DNAに結合し
DNAの複製を阻止して癌細胞核の内部から直接破壊する。


これまでの抗体薬は、HER2に結合して免疫細胞の攻撃を援護する物でしたが、がん細胞内のDNAを直接攻撃できるので、薬物の全身曝露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高める事が出来ます。

尚、今回の試験は、子宮癌肉腫に発現するHER2蛋白質を標的とした分子標的薬として、世界初の医師主導治験だと言う事です。


『DS-8201』は、既に、第一三共株式会社主導で実施された、日米第I相臨床試験(標準的治療が不応又は不耐となったHER2陽性の再発・転移性乳がんや胃がん患者を対象にDS-8201の安全性、忍容性および予備的有効性を評価した試験)で良好な結果が得られ、米国食品医薬品局(FDA)よりHER2陽性の再発・転移性乳がん治療を対象として「画期的治療薬(Breakthrough Therapy)」に指定された。

『DS-8201』は、第一三共株式会社主体で、乳がん、胃がん等を対象とした臨床試験が進められていますが、発症頻度の極めて少ない子宮癌肉腫を対象にした試験は行われていない。


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*『医師主導の治験』とは…

▼海外では既に承認されている。
▼或いは、既に標準薬として確立されている薬物。
▼日本国内の臨床現場でも必要性があるが、承認されていない医薬品。
▼採算性等の理由により製薬企業が治験を行わない。
▼製薬企業が採算性などの理由で興味を示さない。
▼そのため、医師自らが治験を実施することを制度上可能にした。
▼治験目的が明確化されている。


と、公益社団法人日本医師会 治験促進センター医師主導治験、及び厚生労働省の「医師主導治験の現状と課題」に記載されています。

そして、全ての関係者が、医師主導の治験は社会貢献である事の再認識が必要がある、と記されている。

『医師主導の治験』は、治験の準備から管理を医師自ら行う事であり、治験を実施する事により、その医薬品や医療機器の薬事承認を取得し、臨床の現場で適切に使えるようにする事が可能となります。


是非とも、有意な結果がもたらされる事を期待したい!




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針穿刺時の外用局所麻酔剤「エムラ®パッチ」が発売を開始

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佐藤製薬株式会社(本社:東京都港区元赤坂)は、2017年3月23日に製造販売承認を取得した、外用局所麻酔剤「エムラ®パッチ」を12月13日に発売したと発表しました。
「エムラ®パッチ」は、既に発売されている外用局所麻酔剤「エムラ®クリーム」の新しい剤形で、ワンタッチで処置できる利便性の高い貼付剤(ちょうふざい又は、てんぷざい)です。



外用局所麻酔剤エムラパッチ
皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和、又は注射針・静脈留置針穿刺(せんし)時の
予定部位の疼痛緩和用外用局所麻酔剤「エムラ®パッチ」



「エムラ®パッチ」は、エムラクリーム同様のリドカイン、プロピトカインを25mgずつ混合し、正常皮膚に於ける皮膚透過性を高めたパッチタイプの外用局所麻酔剤で、一定量の薬剤を確実かつ簡単に塗布できるようになります。

患者にとって治療や処置に伴う痛みは、一時的な辛さでは終わらず、痛みが記憶として残るため、次回以降の治療や処置が、より困難になるなど長期的な影響を与える事が分かって来ました。

注射に非常に狼狽して怯えた16か月の子供

特に小児では、痛みを伴う医療行為(注射を打つ時の針に対する恐怖心など)を受ける事に大きな精神的負担を感じる事から、治療や処置に伴う疼痛を緩和する事は、小児患者やご家族にとっても、負担の軽減につながると考えられます。


注射時の刺す痛みが感じられなければ、その後、針に対する恐怖心は相当軽減されるでしょう。


エムラクリームの使用方法
既発売のエムラクリームの使用方法。

エムラパッチの使用方法
新剤形エムラパッチの使用方法。



【製品概要】
【製品名】:エムラ®パッチ
【成分・含量(1枚中)】:
▼日局リドカイン25mg、▼プロピトカイン25mg

【性状・剤形】:貼付剤
▼大きさ:約60mm×約70mm(薬液を含む部分:直径約35mm)

【効能・効果】
(1).皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和
(2).注射針・静脈留置針穿刺時の疼痛緩和

【用法・用量】: 
<成人>
通常、成人には、レーザー照射予定部位、又は注射針・静脈留置針穿刺予定部位に60分間貼付する。尚、1回あたりの貼付枚数は10枚までとし、貼付時間は120分を超えないこと。

<小児>
通常、小児等には、レーザー照射予定部位、又は注射針・静脈留置針穿刺予定部位に60分間貼付する。尚、1回あたりの貼付枚数及び貼付時間は下表を超えないこと。

年齢(月齢) 体重   最大貼付枚数  最大貼付時間
0~2ヶ月    /      1枚       60分
3~11ヶ月  5kg以下    1枚        60分
       5kg超     2枚      60分
1~14歳   5kg以下    1枚        60分
      5kg超10kg以下 2枚        120分
       10kg超    10枚     120分

【製品特性】:
エムラ®パッチは、リドカイン、プロピトカインを等量ずつ混合した共融混合物で、正常皮膚における皮膚透過性を高めたパッチタイプの外用局所麻酔剤です。貼付剤のため、一定量の薬剤を確実かつ簡単に塗布できます。

【薬価】:251.6円/枚(薬価収載日:2017年11月29日)

【副作用の注意】:新生児ではメトヘモグロビン血症に注意が必要。その他はエムラクリームと同様。




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今年一年、当ブログに訪問して頂きありがとうございます。
皆様、どうぞ良い年をお迎えください。

日本の真実…2017年都道府県別凶悪犯罪被害者数

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2018年が始まりました。明けましておめでとうございます。

2017年が良い年だった方は、本年も良い年になりますように…
2017年に不運があった方は、本年が幸運の年になりますように…

新たな年が、全ての皆様方にとって、笑顔に包まれる日、健康で送られる日の多い1年になりますように。


線


ペタしてね鳥



懸命に生命の“電池”が切れるまで、己の生涯を貫き通そうとする人がいる一方で、
容易く、本人の意思とは関係なく、命を絶たれてしまった人がいます。


その最悪の報に接した時、あなたはどんな事を思うでしょうか‥‥?

悲痛な叫びが誰にも聞こえないまま。
助けを呼ぶ声さえ発せないまま、不条理の凶行に倒れた人たちの声ならぬ声が‥‥



本数字は、平成29年都道府県別 殺人事件等被害死亡犠牲者数です。(警察庁発表の犯罪認知件数とは異なります)

~表の数値の読み方~

◆この数字は、死亡者数(被害者数)のみを単純集計しています。事件発生後、病院等で死亡が確認された場合も加えています。
(全国ニュース、全国ウェブニュースチャンネル、各都道府県の新聞報道、ニュース配信会社の配信報道:時事通信などより毎日加算集計)

◆強盗致傷、放火、自動車事故(殺人と認定された1件のみ含む)等は含まず。
その後不起訴になった事案も被害者が死亡している場合は、いずれかに含む。

◆殺人未遂や暴行傷害について…
被害者がその後死亡した場合は各項目に加算していますが、重体や意識不明の場合は加算しない。
小児は15歳未満又は中学生以下。虐待は死亡した場合のみ。児相預かりも含まず。

◆無理心中について…
一方が他方を殺害後に自殺した場合は、1件の殺人と1件の変死体と見なす。
但し、煉炭自殺や同時入水死は自死とし、カウントしない。

◆死体遺棄又は死体放置とは…
ご遺体発見時、病死や老衰で死亡したにも関わらず、死亡届未提出の場合、及び事件性があり殺害され埋められたり、死体を損壊、又は放置された場合。
証拠隠滅目的の為発見困難な場所に隠匿した場合。

◆変死体とは…
ご遺体発見時、既に白骨化し、身元も死因も特定されない場合、及び事件か自殺か事故か不明の場合。電車等への飛び込み及び高層階からの飛び降りは含まず。


平成29年都道府県別殺人事件等被害死亡犠牲者数

尚、加害者や容疑者がその後、不起訴や処分保留になった場合は、殺人事案は変死、暴行・虐待死はそのまま、傷害致死もそのままカウントしています。
(殺人未遂・傷害致傷を加えた場合は、総合計が1000人以上となりますが、立件されない場合も多く逮捕だけでは判断できない)
順位は敢えて掲載していません。


凶悪犯罪、及び殺人・傷害致死・暴行死ともに毎年、減少傾向にありますが、
昨年は親族や家族による殺人事案が多く発生しました。

またこれらの事件の最多発生月は、2017年7月と8月と12月の各41件。一昨年の最多は2016年7月の44件で、お酒を飲む機会の増える盆と年末に多く発生しています。

高齢化に伴う先行き不安や、認知症・介護疲れも多く発生しました。


しかし、親族間の殺人事件が『0』と言う県も多くあります。
そうした地域は何が他と違うのかを真摯に見つめ直す事で、高齢化社会のミチシルベになるのかもしれません。




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抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ」肺がん、ホジキンリンパ腫、尿路上皮がんで追加承認取得

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MSD株式会社(本社:東京都千代田区九段北)は、2017年2月15日に国内発売を開始した、“ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(抗PD-1抗体)”「キイトルーダ®点滴静注20mgおよび100mg(一般名:ペムブロリズマブ=遺伝子組換え)」について、2017年12月25日、「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん」に対する効能・効果を追加する、国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表しました。

また、これに先立ち2017年11月30日には、「再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫」でも承認を取得しており、今回の尿路上皮がんの適応追加承認で、4つの悪性腫瘍に対する新たな治療選択肢が、患者に提供される事になります。



キイトルーダ点滴静注
抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®(keytruda®)点滴静注20mg及び100mg」

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尿路上皮がんは、尿路上皮から生じる悪性腫瘍の総称で、“膀胱がん”、“腎盂がん”、“尿管がん”および“尿道がん”を含みますが、尿路上皮がんの中でも“膀胱がん”の占める割合が約95%となっています(昭和学士会誌,2016井上克己 他108-115)。

膀胱の構造と尿路上皮がん発症部位
尿路上皮がん発症部位と膀胱の構造。


日本での膀胱がんの推定総患者数(有病者数)は約6万6,000人(厚生労働省 2014年患者調査)。
2015年の推定新規患者数(罹患者数)は約2万1,000人(がんの統計編集委員会 がんの統計 2015年版)で、罹患率は増加の一途をたどっています(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より)。


膀胱がん_尿路上皮がん
尿路上皮がん(膀胱がん)の深達度。

筋層非浸潤性の表在性膀胱がんの場合は致命的になる事は稀です。
しかし尿路上皮がん、及び膀胱がんは、膀胱内に多発し、何度も再発する事が特徴ですので、定期的に膀胱内を観察する必要があります。

根治切除不能な尿路上皮がんに対しては、全身化学療法が標準療法として行われています(日本泌尿器学会, 膀胱癌診療ガイドライン2015年版)。
しかし、既存治療後に増悪した場合の選択肢は限られていましたが、今回の「キイトルーダ®」の効能・効果の追加により、治療の選択肢が広がる事になります。



「キイトルーダ®(keytruda®)」は、2016年9月28日、最初に「根治切除不能な悪性黒色腫」の治療薬として、国内製造販売承認を取得。
その後、2016年12月19日には「切除不能なPD-L1陽性進行・再発の非小細胞肺がん」でも承認を取得し、2017年2月15日に販売を開始しました。

◆抗原分子のPD-1に結合する作用は、先行して販売された「オプジーボ」と同じですが、非小細胞肺がんに関しては、がん細胞表面に発現するPD-L1陽性に限定され、PD-L1陽性の非小細胞肺がんであれば、オプジーボと異なり、初回治療から使用可能になった事です。

そして2017年11月30日、『PD-L1陽性の再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫』と、今回の『がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん』が加わり、適応疾患は4種となりました。




「キイトルーダ®」は、免疫細胞であるT細胞に主に発現するPD-1受容体と、腫瘍細胞に発現するPD-L1、及びPD-L2の相互作用を阻害する、抗PD-1抗体です。

T細胞のPD-1受容体に結合して、この受容体とPD-L1/PD-L2との結合を阻害する事で、腫瘍細胞のアポトーシス(細胞自死)活性を増強して、腫瘍の増殖を阻止する。


「キイトルーダ®(keytruda®)点滴静注20mg、及び100mg」の
免疫チェックポイント阻害作用機序。

T細胞の通常の免疫反応

矢印下向き

T細胞不活性化による腫瘍回避

矢印下向き

T細胞がKEYTRUDAによって活性を復活



【製品概要】
【製品名】:キイトルーダ®点滴静注20mg/同100mg
【一般名】:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)
【効能・効果】:
(1)根治切除不能な悪性黒色腫
(2)PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
(3・新)再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
(4・新)がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌

【用法・用量】:
<根治切除不能な悪性黒色腫>
▽ 通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回2mg/kg(体重)を3週間間隔で30分間かけて点滴静注する。

<PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌>
<再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫>
<がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌>
▽ 通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する。

【承認取得日】:
(1)根治切除不能な悪性黒色腫:2016年9月28日
(2)PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌:2016年12月19日
(3・新)再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫:2017年11月30日
(4・新)がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌:2017年12月25日

【薬価基準収載日】:発売日2017年2月15日
【薬価】:
キイトルーダ®点滴静注 20mg:1バイアル 8万4,488円
キイトルーダ®点滴静注 100mg:1バイアル 41万0,541円


*参考価格:オプジーボ点滴静注
20mg 15万0,200円
100mg 72万9,849円



尚「キイトルーダ®点滴静注」は現在、更に、乳がん、大腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、高頻度マイクロサテライト不安定性固形がん等を対象とした、後期臨床試験(第Ⅱb相および第Ⅲ相)が進行中です。


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難治性B細胞性急性リンパ性白血病治療薬「ブリナツモマブ」を国内承認申請

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アステラス製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)とアステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社(AABP社=本社:東京都千代田区丸の内)は1月9日、アステラス・アムジェン・バイオファーマ(AABP)が日本で共同開発した、腫瘍細胞表面抗原のCD19とCD3に、二重特異性を有するT細胞誘導(BiTE®)抗体製剤「ブリナツモマブ(遺伝子組換え/開発コード:AMG 103)」について、日本で、『再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病(ALL)』の治療薬として、製造販売承認申請を行ったと発表しました。


ブリナツモマブ-blinatumomab
再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病治療薬
「ブリナツモマブ(遺伝子組換え)」
米国食品医薬品局(FDA)承認名=BLINCYTO®(blinatumomab)


B細胞性急性リンパ性白血病(B-cell acute lymphoblastic leukaemia=ALL)は、血液中及び骨髄中に、白血球の一種であるリンパ球が、幼若なリンパ芽球の段階で悪性化し、癌化した細胞が無制限に増殖することで発症する、造血器の悪性腫瘍性疾患です。

白血球は、骨の内部にある造血幹細胞で生成され、このうちリンパ系幹細胞から産生されるのが、B細胞、T細胞、NK細胞などのリンパ球で、B細胞性急性リンパ性白血病はB細胞が腫瘍化したものです。

造血幹細胞からのリンパ球分化
造血幹細胞から造られる血液細胞の主な分化。
骨→骨髄→白血球→リンパ球系前駆細胞→B細胞


白血病の発症原因は、いまだにハッキリ解明されていません。

しかし、特定の染色体での遺伝子転座が多く見られる事が分かって来ました。
遺伝子転座は、非小細胞肺がん、胆管がん、神経膠芽腫などでも見つかっていますが、何故、遺伝子転座が起こるのかは分かっていません。


B細胞性急性リンパ性白血病の染色体転座
B細胞性急性リンパ性白血病では、
第4染色体と第10染色体で遺伝子配列が逆になる転座が起こる。


日本国内のB細胞性急性リンパ性白血病(ALL)の患者数は、約5,000人と報告されており(厚生労働省 平成26年患者調査)、このうち、再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病患者は、年間あたり約670人と推定されています(2017年国立がん研究センターがん情報サービス、急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫、基礎知識)。


成人及び小児の再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病患者に対する治療選択肢は限られており、同様の作用機序を持つ、幾つかの薬剤に依存する上、その有効性は限定的です。

この為、再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病患者の病態を改善させるには、「ブリナツモマブ」の様な、単剤で有効性を示し、他の細胞傷害性治療薬とは異なる作用機序を持つ薬剤の開発が求められています。




「ブリナツモマブ(BLINCYTO®(blinatumomab))」が標的とする、腫瘍細胞表面に発現するCD抗原には‥‥
腫瘍細胞表面に発現するCD抗原
実は多くの、様々な特徴ある抗原が発現している。
その中から、最も治療効果が期待できる抗原をターゲットにする。

*昨年11月24日に承認された抗体-薬物複合体「ベスポンサ®点滴静注用1mg(過去記事参照)」は、CD22抗原を標的とした「再発又は難治性のCD22陽性前駆B細胞性急性リンパ性白血病」が適応でした。


B細胞性急性リンパ性白血病で腫瘍細胞表面に発現する4種の抗原
この中で最も早く発現するのがCD19抗原で、
リンパ芽細胞が初期のB細胞に変化した段階で発現する。



「ブリナツモマブ(blinatumomab)」は、腫瘍細胞表面抗原のCD19とCD3に、二重特異性を有するT細胞誘導(BiTE®=Bispecific T-cell Engager)抗体であり、特にB細胞系の細胞表面に発現するCD19、及びT細胞表面に発現するCD3と結合します。

BiTE®抗体は、生体に備わっている免疫システムが、がん細胞を察知して標的とするのを助ける事によって抗がん作用を発揮する。
この抗体は、T細胞とがん細胞が架橋するように設計された修飾抗体であり、T細胞を標的細胞の近くに誘導し、T細胞を介した殺作用により、がん細胞をアポトーシス(プログラム細胞死)に導くことを目指している。



「ブリナツモマブ(遺伝子組換えBLINCYTO®(blinatumomab))」の作用機序。
ブリナツモマブ作用機序


本剤は、2017年7月17日、米国食品医薬品局(FDA)より画期的治療薬及び優先審査の指定を受け、成人及び小児の再発又は難治性のB前駆細胞性急性リンパ性白血病の治療薬として承認されています。
欧州連合(EU)では、2015年11月に、成人の再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陰性(
Ph-)B前駆細胞性急性リンパ性白血病の治療薬として条件付き承認を取得している。





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慢性腎不全球形吸着炭用剤「クレメジン速崩錠500mg」の販売を開始

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田辺三菱製薬株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)は、株式会社クレハ(本社:東京都中央区日本橋)が2017年8月15日に製造販売承認を取得した、慢性腎不全用剤「クレメジン®速崩錠500mg」について、2018年1月16日より発売を開始したと発表しました。
本剤は、2017年12月8日に薬価基準に収載されています。



慢性腎不全用剤クレメジン速崩錠500mg
球形微粒状経口吸着薬
慢性腎不全用剤「クレメジン®速崩錠500mg」



腎不全とは、腎臓の機能が低下して、正常に働かなくなった状態のことです。
腎不全には、急性腎不全と慢性腎不全の2種類があり、急性腎不全(急性腎障害)では、腎機能が急激に(1日以内から数週間のうちに)低下して、脱水やショック状態になります。主に薬剤などが重要な原因です。急性腎不全は適切な治療によって腎機能が回復する可能性があります。

一方、慢性腎不全では、数カ月から数十年かけて、腎機能が徐々に低下し、慢性腎臓病(CKD)となります。
慢性腎臓病(CKD)が進行すると、慢性腎不全になり、腎機能の回復が見込めないため、高度な腎機能低下では多くが末期腎不全へと進行します。
そして最終的には、透析や腎移植をする必要が出て来ます。



「クレメジン®」は、慢性腎不全(進行性/保存期)に於ける尿毒症症状の改善や、透析導入に至るまでの期間を延長する、世界初の慢性腎不全用剤として、1991年にカプセル剤(現販売名:クレメジン®カプセル200mg)を発売。


その後、2000年には細粒剤(現販売名:クレメジン®細粒分包2g)を追加し、慢性腎不全の患者の服薬アドヒアランス向上に貢献して来ました。

 *アドヒアランスは~患者が、積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受ける事。

クレメジン速崩錠500mg保存期
慢性腎不全(進行性/保存期)


今回新たに追加された「クレメジン®速崩錠500mg」は、服薬量を大きく増やす事なく、少量の水で速やかに崩壊しながらも、口腔内での拡散を抑える工夫を施した製品です。




「クレメジン®」は、株式会社クレハが開発した、高純度の多孔質炭素からなる“球形微粒状の経口吸着薬”(球形吸着炭)です。

慢性腎不全における尿毒症毒素を消化管内で吸着し、生体内に吸収されずに、便と共に排泄される事で、慢性腎不全(保存期/進行性)における尿毒症症状の改善や、透析導入に至るまでの期間を延長する世界で初めての慢性腎不全用剤です。


球形吸着炭クレメジン
吸着炭素製剤の働き。

球形吸着炭の電子顕微鏡写真
球形吸着炭の参考電顕写真。
(a)炭化水素由来の滑らかな球形吸着炭表面(b)高温酸化・還元処理後の球形微粒多孔質。
1マイクロメートルの微細な多孔の集合体。



「クレメジン®」服用の注意事項として本剤は化学物質を吸着する薬ですので、例えば糖尿病や高血圧などの薬も化学物質の為、同時にこれらの薬を服用した場合、活性炭に薬剤の有効成分が吸着され、効果が弱くなってしまう事があります。

これを避けるために、「クレメジン®」は『毎食後』など他の薬と一緒に服用するのではなく、単独で、服用間隔をあける必要があります。




【製品概要】

【販売名】:クレメジン®速崩錠500mg(KREMEZIN® Tablets 500mg)
【効能・効果】:慢性腎不全(進行性)における尿毒症症状の改善及び透析導入の遅延
【用法・用量】:通常、成人にクレメジン原体として1日6g を3回に分割し、経口投与する。
【包装】:クレメジン®速崩錠500mg 336錠(4錠×84)

【薬価】:47.80円(500mg/1錠)
【製造販売承認日】:2017年8月15日
【薬価基準収載日】:2017年12月8日
【発売日】:2018年1月16日
【製造販売元】:株式会社クレハ
【販売元】:田辺三菱製薬株式会社

【服薬改善】:毒素を吸着するクレメジンは、当初カプセル剤のみだった為、1日6g(6,000mg)服用するためには、30カプセルを服用する必要があり、きちんと服薬を守れない方が多いと言う難点がありました。
 その後、細粒分包2gが追加され、1日3包になりましたが、粉の量が多く、コップの水と一緒に一気にストローで吸って飲むと言う、わずらわしさがありました。
 追加承認された速崩錠500mgは、僅かの水で1回4錠を1日3回で必要量の1日6g(6,000mg)を満たす事になります。





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未熟児動脈管開存症治療剤「イブリーフ」の製造販売承認を取得

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千寿製薬株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)は1月19日、厚生労働省より未熟児動脈管開存症治療剤として、「イブリーフ®静注20mg(一般名:イブプロフェン L-リシン)」の製造販売承認を取得したと発表しました。

「イブリーフ」の開発に当たっては、日本未熟児新生児学会(現:日本新生児成育医学会)が、厚生労働省に未承認薬・適応外薬の要望書を提出。
開発支援品目として選定された後、開発企業が公募され、千寿製薬株式会社が開発を受諾。
未承認薬等開発支援センターの助成金を活用して、国内での開発を進めていたものです。



イブリーフ静注20mg_イブプロフェンL-リシン剤
*製品の参考写真(国内品とは異なります)
米国で2006年7月に未熟児動脈管開存症治療剤として発売された
イブプロフェン L-リシン静注(Ibuprofen-Lysine Injection)製剤10mg
日本国内承認品は「イブリーフ®静注20mg」で1バイアル(イブプロフェンとして20mg)×3



未熟児動脈管開存症(PDA=Patent ductus arteriosus)とは、非常に小さい体重(2500g未満の低出生体重児)で生まれた赤ちゃんにおいて、最も多い先天性心疾患の一つで、全体の5~10%を占めています。

動脈管は、胎児が母親のお腹の中にいる時は肺呼吸をしていないので、卵円孔(らんえんこう)と共に、胎児の血液循環系に見られる血管で、肺動脈と大動脈とを連結して肺への血液循環をバイパスしている血管の事を言います。

先天性心疾患の卵円孔開存と動脈管開存症

動脈管があるおかげで、空気の無い子宮内でも、胎盤を通して酸素を効率良く取り込む事が出来ています。

出産により肺が機能を始めると、卵円孔と共に生後2日~2週までに狭搾し閉じて、肺への血液循環が始まります。
しかし、この動脈管が自然に閉じずに残っているものを『動脈管開存症』と言います。

 ◇卵円孔(らんえんこう)は……胎児期の心臓の左右の心房を貫く孔(あな)の事で、生後間もなく、肺呼吸開始に伴って閉じます。


未熟児動脈管開存症
動脈管閉鎖前(胎盤呼吸)と閉鎖後(肺呼吸の始まり)。


低出生体重児にとって、太い動脈管では肺や心臓に大きな負担となり、“呼吸が荒く回数が多い”“ミルクの飲みが悪い”“ミルクを飲むが体重が増えない”“汗っかき”などの心不全症状が見られ、心雑音が特徴的で、その場合には早期に治療を必要とする場合があります。

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米国では、未熟児動脈管開存症(PDA)の治療のための第一選択薬は、インドメタシン静脈注が処方され、日本でもインドメタシン静脈注が使われています。

しかし、インドメタシンは腎臓、胃腸、及び脳灌流(のうかんりゅう=脳へ血を送る事)に影響を及ぼすため、インドメタシンの使用に関する安全性に懸念があり、更に一時的な腎機能障害を招く場合がある事から、新しい薬剤が求められていました。

未熟児動脈管開存症のプロセスと作用機序


2006年4月、米国食品医薬品局(FDA)は、未熟児の臨床的に重要な未熟児動脈管開存症(PDA)の閉鎖にイブプロフェン-リシン(NeoProfen)を使用する事を承認。イブプロフェン-リシンは、副作用が少なく、尚且つインドメタシンと同等に有効である事が示されています。

イブプロフェンは、プロスタグランジン(血管平滑筋を収縮させる作用の生理活性物質)合成の阻害を介して作用すると考えられている。


 ◆国立バイオテクノロジー情報センター(アメリカ国立医学図書館)の「Ibuprofen lysine (NeoProfen) for the treatment of patent ductus arteriosus(動脈管の治療のためのイブプロフェンリジン)」に関する米国食品医薬品局(FDA)の承認要覧により。

【注釈】
 ◆尚、市販薬のイブプロフェン鎮痛解熱剤は最低用量、及び中用量の低濃度な製品のため、連続投与しない限り、腎機能障害を起こす事はありません。これはインドメタシン貼り薬/塗り薬でも同様です。

 ◆動脈管開存症に使われているインドメタシン、及び今回のイブプロフェン L-リシン製剤は高濃度で、静脈内点滴するもので、市販薬とは異なります。





【製品概要】
【製品名】:イブリーフ®静注20mg
【一般名】:イブプロフェン L-リシン
【剤形・含量】:1バイアル2mL中にイブプロフェン L-リシンとして34.18mg(イブプロフェンとして20mg)を含有する水性注射剤

【効能・効果】:下記疾患で保存療法(水分制限、利尿剤投与等)が無効の場合。
        未熟児動脈管開存症。
【用法・用量】:通常3回、イブプロフェンとして初回は10mg/体重1kg、2回目及び3回目は5mg/kgを15分以上かけて、24時間間隔で静脈内投与する。

【使用上の注意】:
▼ 新生児医療及び未熟児動脈管開存症患者の管理に習熟した医師が使用するか、又はそれら医師の監督下で使用すること。

▼ イブプロフェンはアルブミン結合部位からビリルビンを置換させることがあるので、総ビリルビンの上昇がみられる患者では、黄疸の発現に注意し、慎重に投与すること。

▼ 他のプロスタグランジン合成阻害剤と同時に投与しないこと。


「イブリーフ®静注20mg」は、治験症例が限られているため、発売後において「一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象とした使用成績調査(全例調査)を実施する」旨の承認条件が付されている。
このため、当該承認条件が解除されるまでは、使用成績調査に協力できる施設に限定して使用するよう、当局から指導を受けていると言う。




本剤は米国で2006年7月に未熟児動脈管開存症治療剤として発売。また、イブプロフェン L-リシンの活性体であるイブプロフェンフリー体の静注製剤も、EUで2004年9月に発売され、2017年6月時点で46の国と地域で製造販売されている。

なお、同剤は薬価基準収載後の発売を予定しており、現在のところ、2018年6月頃の発売を見込んでいる。また販売元は武田薬品工業となる。





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国内初、再発卵巣がん治療薬「リムパーザ®錠」が製造販売承認を取得

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アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区)は1月19日、「BRCA遺伝子変異の有無を問わない白金系抗悪性腫瘍剤(プラチナ製剤)感受性の再発卵巣癌における維持療法」を効能・効果とした「リムパーザ®錠100mg/同150mg(一般名:オラパリブ)」の国内製造販売承認を取得したと発表しました。

「リムパーザ®錠」は、DNA損傷応答(DDR)機能を活用した新規の作用機序を持つ、世界初のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害剤で、国内初のポリポリメラーゼ(PARP)阻害剤となります。



卵巣がん治療薬_リムパーザ錠100mgと150mg
白金(プラチナ)系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌治療薬
「リムパーザ®錠100mg/同150mg」
米国食品医薬品局(FDA)承認・販売名=Lynparza® Tablets(olaparib)



卵巣がんは、世界では女性の癌種において7番目に多い癌であり、女性の癌による死因の第8位です。
近年、日本において卵巣がん罹患数は増加傾向にあり、毎年9000人以上(国立がん研究センターがん情報サービス/がん登録・統計『グラフデータベース』)の女性が、卵巣がんと診断されています。


卵巣がん_イメージ図

2013年卵巣がん年齢別罹患数
<2013年卵巣がん年齢別罹患者数>

5年生存率も58%(国立がん研究センターがん情報サービス/がん登録・統計『最新がん統計』)と、婦人科がんの中で最も低く、2012年の死亡者数は4,758人と、卵巣がん患者の約2人に1人が亡くなっています。

⇒再発卵巣がんとは、初回治療により完全寛解となった後、画像診断などで再発腫瘍が確認された場合です。
再発卵巣がんは、根治が困難な事から、一般的に延命やQOL(生活の質)の改善を目的とした治療が行われます。


2016年卵巣がん死亡者数の推移
<2016年までの卵巣がん死亡者数の推移>




「リムパーザ®錠」は、DNA損傷応答(DDR)機能を活用した新規の作用機序を持つ、世界初のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP=poly ADP-ribose polymerase)阻害剤です。
DNAの相同組換え修復機構(HR=Homologous Recombination
が機能していないがん細胞に、特異的に働く分子標的薬で、がん細胞の細胞死を誘導する画期的な作用機序を持ちます。
卵巣がん治療薬_リムパーザ錠作用機序オラパリブ
<卵巣がん治療薬「リムパーザ®錠(olaparib)」の作用機序>


外因性および内因性因子(例えば、活性酸素種、代謝副産物)によって引き起こされるDNA一本鎖切断(DNA損傷)は、塩基除去修復(BER)と言う、損傷/変異塩基したDNA鎖領域を、加水分解により切断。
残った相補鎖を鋳型(いがた=残った塩基から)として新たにDNAを再合成する事で修復します。

しかし、どうしても修復不可能な場合は、正常なら細胞死(アポトーシス)に誘導されますが、この機能が働かず、DNAを損傷した異常なDNAが増える事で、癌化します。

「リムパーザ®錠」は、この異常なDNAに対して特異的に働き、細胞死(アポトーシス)に誘導する事で、病勢進行や死亡のリスクを下げる事が期待されます。

また、本剤は経口錠剤のため、注射による疼痛や、点滴のために必要な時間的拘束などの、患者の負担を回避しながら治療する事も可能となる。


ポリ_ADP-リボース_ポリメラーゼ-PARP阻害剤
細胞死を誘導する


本剤は米国に於いて、米国食品医薬品局(FDA)により、プラチナ製剤感受性再発卵巣がんの維持療法、及び3回以上の化学療法の治療歴がある病的変異または病的変異疑いに分類される生殖細胞系列BRCA(gBRCA)遺伝子変異陽性進行卵巣がん、更にgBRCA遺伝子変異陽性転移乳がんの承認を受けている。

また、欧州連合(EC)に於いては、BRCA遺伝子変異陽性のプラチナ製剤感受性再発卵巣がんの維持療法の承認を取得している。

尚、日本では今回の承認のほか、BRCA遺伝子変異陽性の手術不能又は再発乳がんを予定効能・効果として承認を申請中である。




【製品概要】
【製品名】:リムパーザ®錠100mg(Lynparza® Tablets 100mg)/リムパーザ®錠150mg(Lynparza® Tablets 150mg)
【一般名】:オラパリブ
【効能・効果】:白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法
【用法・用量】:通常、成人にはオラパリブとして300mgを1日2回、経口投与する。尚、患者の状態により適宜減量する。

【製造販売承認日】:2018年1月19日

【保険外併用療養費制度の実施】
アストラゼネカ株式会社は、厚生労働省の定める「保険外併用療養費制度」のもと、「リムパーザ®錠」の無償提供を実施すると発表。同剤提供は、製造販売承認取得日以降、各治療施設での準備が整った時点から開始し、薬価収載前日に終了する予定としている。




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重症/難治性気管支喘息治療薬「ファセンラ®皮下注」が製造販売承認を取得

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アストラゼネカ株式会社(本社:大阪府大阪市北区)は1月19日、「(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)気管支喘息」を効能・効果とした、「ファセンラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:ベンラリズマブ(遺伝子組換え)」の国内に於ける製造販売承認を取得したと発表した。


ファセンラ皮下注30mgシリンジ_Fasenra
重症/難治性気管支喘息治療薬「ファセンラ®皮下注30mgシリンジ」
米国食品医薬品局(FDA)承認販売名「Fasenra™ Injection(benralizumab)」





重症喘息について…
日本では約1,177万人が喘息に罹患していると推定されています(厚生労働省 厚生労働統計一覧2014 主な傷病の総患者数・平成26年10月)。

このうち、高用量吸入ステロイド薬に加えて、その他の長期管理薬(及び/又は全身性ステロイド薬)による治療を要する喘息患者、或いはこうした治療にも関わらず「コントロール不良」である喘息を、『重症喘息』と定義され、喘息患者全体の5~10%に該当するとされています(一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会 監修:喘息予防・管理ガイドライン 2015)。

喘息死亡者の喘息重症度

コントロール不良の『重症喘息』は死に至る事もある過酷な疾患であり、“喘息予防・管理ガイドライン 2015”によると、喘息による死亡者数は2013年が1728人、2014年が1550人と新しい薬剤の登場で、減少傾向にあるものの、吸入や服薬、注射のわずらわしさから、勝手に中断してしまう患者も多く、これが病勢悪化を招いています。



特に、既存の喘息治療で症状のコントロールが出来ない『重症喘息』患者は、頻繁に起こる“喘息悪化”や“呼吸機能の低下”により、高い喘息死リスクと、生活の質(QOL)の著しい低下などで、身体的・経済的な負担を強いられます。

その為、2017年10月、日本アレルギー学会から厚生労働省に、「ファセンラ」の早期承認を求める要望書が提出されていました。

喘息患者の死亡発作の原因



「ファセンラ®」は、ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤で、身体の免疫システムをになう白血球の一種である『好酸球』の表面に発現するインターロイキン-5受容体αに直接結合し、増強された抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)によって、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)等を誘導することで、『好酸球』のアポトーシス(プログラム細胞死)を引き起こし、『好酸球』を直接的かつ速やかに、ほぼ完全に除去します。

血液中の好酸球

この作用機序により、血中だけでなく喀痰中や気道組織中に潜在する『好酸球』まで除去されます。

重症喘息患者の約50%で好酸球値が高い傾向がありますが、好酸球レベルが上昇すると、気道炎症や気道過敏性を引き起こし、その結果、喘息の悪化や呼吸機能の低下を起こし、喘息が重症化します。

「ファセンラ®」は、針刺し防止機能付きプレフィルドシリンジの注射剤で、1回30mgを初回、4週後、8週後に皮下に注射し、以降、8週間隔で皮下に注射します。

好酸球IL-5受容体とIL-5結合

類薬に「ヌーカラ皮下注用(2016年6月10日発売)」がありますが、ヌーカラは4週間毎であるのに対し、「ファセンラ®」は呼吸器生物学的製剤で初めての8週間隔維持投与製剤です。

また作用機序も多少異なり、「ヌーカラ」はヘルパーT細胞が産生するIL-5と結合するのに対し、「ファセンラ®」は好酸球に発現するIL-5受容体と結合し、IL-5との結合を阻害します。






【ファセンラ®皮下注30mgシリンジの製品概要】
【製品名】:ファセンラ®皮下注30mgシリンジ
【一般名】:ベンラリズマブ(遺伝子組換え)
【剤 型】:注射剤(プレフィルドシリンジ)
【効果・効能】:気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)
【用法・用量】:通常、成人にはベンラリズマブ(遺伝子組換え)として1回30mgを、初回、4週後、8週後に皮下に注射し、以降、8週間隔で皮下に注射する。
◎ファセンラは、固定用量があらかじめ充填された“プレフィルドシリンジ”の注射剤で、皮下に注射します。
【製造販売承認】:2018年1月19日

【補足事項】
重症喘息患者が一刻も早く、「ファセンラ」の治療が開始できるよう、アストラゼネカ株式会社は、厚生労働省の定める『保険外併用療養費制度』のもとで、薬価収載までの期間、「ファセンラ」の倫理的無償提供を実施します。

「ファセンラ」の倫理的無償提供の対象施設は、本剤開発の治験を実施した施設のうち、承認された効能・効果、及び用法・用量に従ってのみ使用する事。

尚且つ、倫理的無償提供期間中にアストラゼネカ株式会社が実施する、適正使用推進のための活動に協力する事に同意された施設に限定されます。
この倫理的無償提供は、各施設の受入れ準備が整った時点から開始し、薬価収載前日に終了する。



「ファセンラ®皮下注」の国内販売承認は、2017年11月14日の米国食品医薬品局(FDA)による承認、2018年1月10日の欧州委員会(EC)による販売承認に続く、迅速承認となります。




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20年ぶり、抗真菌爪白癬治療薬「ネイリン®カプセル」が 製造販売承認を取得

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佐藤製薬株式会社(本社:東京都港区元赤坂)は1月19日、ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物を有効成分として含有した、経口抗真菌爪白癬治療薬「ネイリン®カプセル100mg〈一般名:Fosravuconazole L-Lysine Ethanolate〉」について、「皮膚糸状菌(トリコフィトン属)による爪白癬」を効能・効果とする医薬品製造販売承認を取得したと発表した。

「ネイリン®カプセル100mg」は、新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年。



爪白癬治療薬ネイリンカプセル100mg
経口抗真菌爪白癬治療薬「ネイリン®カプセル100mg」
<ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物>


爪白癬(つめはくせん)は、白癬菌と言う皮膚糸状(しじょう)菌(トリコフィトン属=カビの一種)を主な原因菌とする爪の感染症です。
この白癬菌が足に存在していれば、足白癬(水虫)で、爪の中に侵入すると爪白癬となります。
皮膚糸状菌
爪白癬の原因菌=皮膚糸状菌(トリコフィトン属)
真菌(カビ菌)には様々な種類があり、
大別では爪白癬は「白癬菌」と呼ぶ。

皮膚糸状菌(トリコフィトン属)は、私たちの皮膚を覆っている角層や爪、髪の毛などに住み着き、これらの感染症を引き起こします。

爪白癬は、日本人の10人に1人(足白癬=水虫は5人に1人)、約1,250万人が罹患していると報告されています(第60回日本医真菌学会 シンポジウム8-1 爪真菌症の疫学2017/4/6)。


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「ネイリン®カプセル100mg」の有効成分である『ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物』は、エーザイ株式会社(本社:東京都文京区小石川)が創製した、新規のトリアゾール系抗真菌剤で、経口の爪白癬治療剤としては、約20年ぶりの新薬誕生となります。
皮膚糸状菌の細胞壁
皮膚糸状菌の細胞壁

『ホスラブコナゾール(Fosravuconazole)』は、新規の経口抗真菌剤であり、主活性成分の「ラブコナゾール(Ravuconazole)」の溶解性や生体内利用率を向上させた*プロドラッグで、ヒトに経口投与すると速やかに「ラブコナゾール」に変換される。

 *プロドラッグは……それ自体は薬理活性を全く持たないが、体内で代謝される事により活性化し、薬効を発揮する薬剤で、胃腸障害などの副作用を軽減できる。
ネイリン®カプセルの作用機序
ネイリンカプセルの作用機序

「ラブコナゾール」は、真菌細胞の膜成分であるエルゴステロール(Ergosterol)生合成を阻害することにより、抗真菌作用を現します。



爪白癬の症状写真

本剤の適応症である爪白癬は、病状が進行すると、爪の肥厚に伴う痛みや歩行困難等のQOL(生活の質)の低下を生じさせる可能性があり、また、未治療のまま放置する事で、足白癬(水虫)の再発や家族内感染の引き金になり得る疾患です。


爪白癬に適応を有する薬剤として、経口剤及び外用液剤が臨床応用されており、経口投与の類薬にはイトリゾールカプセル(=パルス療法/一般名:イトラコナゾール)やラミシール錠(テルビナフィン塩酸塩)がありますが、重篤な副作用や、併用禁忌薬が多くあり、また爪の表面が白く濁った症例には効果が期待できませんでした。

新規の塗り薬など、治療選択の幅は広がっていますが、爪白癬の治療ゴールである完全治癒を達成するためには、より治療効果が高く、安全で、利便性を兼ね備えた新たな抗真菌薬が望まれて来ました。

佐藤製薬は、爪白癬患者を対象とした国内第III相臨床試験を実施し、本剤の有効性と安全性を確認したことから、2017年1月に製造販売承認申請を行った。

爪白癬の疫学





【製品概要】
【販売名】:ネイリン®カプセル100mg
【一般名】
<和名>:ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物(JAN)
<洋名>:Fosravuconazole L-Lysine Ethanolate(JAN)

【成分・含量】:(1カプセル中)ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物169.1mg(ラブコナゾールとして100mg)
【効能・効果】
<適応菌種>皮膚糸状菌(トリコフィトン属)
<適応症>爪白癬
【用法・用量】
通常、成人には1日1回1カプセル(ラブコナゾールとして100mg)を12週間経口投与する。
【包装】:84カプセル(PTP 14カプセル×6)

【用法・用量に関連する使用上の注意】
●投与終了後は、爪の伸長期間を考慮して経過観察を行うこと。尚、本剤は、新しい爪が伸びて来ない限り、一旦変色した爪所見を回復させるものではない。






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アミロイドβを標的のアルツハイマー病新薬、開発中止相次ぐ!

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アルツハイマー病の新薬として最近、注目されていた3種類の薬剤について、1月~2月、相次いで臨床試験が失敗に終わり、開発中止の論文の掲載、又は発表がなされた事が分かった。

研究者たちが注目していた、アルツハイマー病に関係すると考えられている、脳のアミロイドβ(ベータ)と呼ばれるタンパク質を標的に、蓄積する前に除去を促す新薬の臨床試験で、ことごとく、認知機能の低下の有意な抑制は示されなかった、と報告された。


アルツハイマー病新薬開発中止相次ぐ




◆Journal of the American Medical Association(JAMA⇒ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション=米国医師会誌)の2018年1月9日号に掲載された論文で、アルツハイマー病患者に対して選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗薬であるIdalopirdine(イダロピルジン=大塚製薬株式会社/ルンドベック社)の有効性が示されなかったとする臨床試験の成績が報告された。





◆その後、Eli Lilly社(日本イーライリリー社)が開発を目指していた抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬のsolanezumab(ソラネズマブ)についても、同薬による認知機能の低下の有意な抑制は示されなかったとする臨床試験の結果が「New England Journal of Medicine」1月25日号に掲載された。





◆また、米Merck社(メルク・アンド・カンパニー/MSD社)は2月13日、アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1の低分子阻害剤「ベルベセスタット」(MK-8931)を、アルツハイマー病による健忘型軽度認知障害(Prodromal AD)患者を対象に評価する第3相試験を中止する事を発表した。試験のデータは今後の学会で発表する予定だと言う。

今回の決定は、安全性中間解析に基づき、全般的な満足や恩恵、及びリスクを検討した結果、試験を継続した場合のリスクを上回る満足な結果が得られる可能性は低いと結論づけた。





<アミロイドβのみ標的とした研究に限界か>

有望視されていたアルツハイマー病の新薬の開発が相次いで中止され、一部の専門家から、研究の方向性を疑問視する声が上がっている。


その一方で、これまでのアルツハイマー病研究で見逃していたものが何だったのか?
研究者たちによる新たな探求が続けられている──。




米アルツハイマー病協会(AA)のJames Hendrix氏は…
「10年前に比べ、研究資金が拡充されつつあり、アミロイドβ以外にも、タウやニューロンの炎症、脳のエネルギー利用といった様々な因子について、研究が行われるようになって来た──。アルツハイマー病を発症しても、記憶力をある程度維持したまま、他の原因で死亡するまで進行を遅らせる事ができれば、治療の成功と言えるだろう」
と、話している。




これまで主犯格と見られてきたアミロイドβ……
ところが10年に及ぶ臨床研究・試験の結果、アミロイドβを蓄積させる『黒幕』が存在するかもしれない、と言う報告が相次いだ事で、これまでに注ぎ込んだ莫大な研究開発費は、無駄に終わった、のか?

いや、そうではない。

これは次なる目標への挑戦の節目と言えるだろう──。

人間の英知は、まだまだAIに追い越される事はない! あらゆる謎が解き明かされるまで、人間の挑戦は続く──。




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世界初・結節性硬化症に伴う皮膚病変治療薬「ラパリムスゲル」の承認申請を了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は3月1日、ノーベルファーマ株式会社(本社:東京都中央区日本橋)が承認申請していた、「結節性硬化症に伴う皮膚病変(血管線維腫)」を効能・効果とする新投与外用治療剤、「ラパリムスゲル0.2%(一般名:シロリムス=NPC-12G12G)」について、承認申請を了承した。
早ければ、約1~2ヶ月ほどで正式承認される。




ラパリムスゲル0.2%
*写真はイメージです。
結節性硬化症に伴う血管線維腫外用治療薬「ラパリムスゲル0.2%」は、
世界初のゲル剤で発売前あり、薬剤の写真はまだありません。



結節性硬化症(TSC=tuberous sclerosis complex)は常染色体優性遺伝疾患の一つで、主に心臓、脳、皮膚、目、腎臓、肺などの様々な臓器に、「過誤腫」と呼ばれる、良性の腫瘍が出来る疾患です。

結節性硬化症の発症率は、約1万人に1人と言う希少疾患ですが、症状は様々で、非常に重症の人もいれば、診断されずに過ごしてしまうほど軽症の人もいます。
結節性硬化症患者の中には、発達障害(0-6歳)、知的障害(IQが測定できる年齢)や自閉症を伴う人もいます。

結節性硬化症の年齢別の症状
結節性硬化症の年齢別の症状

しかし、同じ結節性硬化症患者でも、自立して生活し、健康的な人生を送り、医師、弁護士、教育者や研究者などの専門職に就いている人達もたくさんいます。(ここまで日本結節性硬化症学会HPより)


結節性硬化症の患者の約9割に、顔面に赤いニキビの様な発疹が出る『血管線維腫』の皮膚病変が現れ、外観に著しい影響を及ぼします。他に白斑、シャグリンパッチ(粒起革様皮=サメ肌様皮膚)、爪囲線維腫などの皮膚病変が現れる。
結節性硬化症の顔面の血管線維腫の症例結節性硬化症の顔面の血管線維腫
『C』は血管線維腫のピンク色斑の症例

中でも顔面の血管線維腫の影響は大きく、2~5歳頃の思春期にかけて、鼻や両頬、額に赤みを帯びた腫瘤が現れ、重症化の場合は、鼻閉塞や触るだけで出血する事もあり、患者のQOL(生活の質)に著しく悪影響を及ぼす疾患と言われています。


現在の治療法としてはレーザー治療や、外科的切除のみで、再発が多く、色素変化や傷あと、感染等のリスクもあります。

多くの結節性硬化症(TSC)患者は、より良い医療ケアを受ける事で、平均寿命を全うします。



結節性硬化症を引き起こす、二つの原因遺伝子が同定されています。
第9染色体上にある『TSC1』遺伝子と、第16染色体上にある『TSC2』遺伝子で、この二つの原因遺伝子のうち、一つでも遺伝子が壊れていると結節性硬化症を発症します。
結節性硬化症の原因遺伝子座位
結節性硬化症の原因遺伝子座

しかし、この二つの遺伝子がどのような役割を担っているか? また、この遺伝子の欠陥がどのように結節性硬化症を引き起こすのかは、症状が多岐に及ぶ事からハッキリしていません。




「ラパリムスゲル0.2%」は、結節性硬化症(TSC)に伴う皮膚病変=血管線維腫(顔面)に対する世界初の医薬品であり、ゲル様外用塗布剤で、TSC1遺伝子、又はTSC2遺伝子変異によって過剰に活性化している、*mTORの働きを抑制する事で症状を緩和する。
*mTOR=哺乳類ラパマイシン標的タンパク質
ラパリムスゲルの作用機序

通常は、mTORの働きを「TSC1遺伝子」と「TSC2遺伝子」がコントロールしていて、「過誤腫」の様な過剰な活性化にブレーキを掛けていますが、結節性硬化症患者ではその機能が働かず、発症してしまう。

「ラパリムスゲル0.2%」は、通常、1日2回、患部に適量を塗布して用いる。

尚、この主成分で承認されている「ラパリムス錠」はこれまで通り、リンパ脈管筋腫症にのみ使用する。






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「ベルケイド注射用3mg」が原発性マクログロブリン血症への新適応で追加承認を取得

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厚生労働省の薬事承認取得前の新薬、及び新適応症で、新規薬剤での「公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について」で、既に、承認前の2017年(平成29年)9月8日に、保険適用の対象となっていた、ヤンセンファーマ株式会社(東京都千代田区西神田)が承認申請していた、「原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞性リンパ腫」治療薬、『ベルケイド注射用3mg(一般名:ボルテゾミブ)』に関して、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は3月2日、承認申請を了承した

本剤は、一般社団法人 日本臨床腫瘍薬学会、日本リンパ網内系学会、日本血液学会から「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に提出され、この追加する適応症について公知申請が妥当と判断され、既に保険適用されています。


ベルケイド注射用3mg
原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞性リンパ腫治療薬
抗悪性腫瘍/プロテアソーム阻害薬「ベルケイド注射用3mg」
(一般名:ボルテゾミブ)




原発性マクログロブリン血症(及びリンパ形質細胞性リンパ腫)は、多発性骨髄腫と同じ様に、身体の免疫機能を担う抗体タンパク質(免疫グロブリン)を作る、骨髄に存在する【形質細胞】が癌化して、異常に増殖して起こる疾患です。

免疫グロブリンの構造と種類_原発性マクログロブリン血症
免疫グロブリンの基本構造と種類

多発性骨髄腫は、産生される免疫グロブリンのうち、IgG、IgA、IgD、IgEの4つを産生する細胞が異常に増殖し、癌化した場合を言います。

一方、原発性マクログロブリン血症(及びリンパ形質細胞性リンパ腫)は、IgMを産生する細胞が癌化した場合を指します。(セルジーン株式会社の原発性マクログロブリン血症とは。より)
形質細胞と呼ばれる抗体と呼ばれる免疫グロブリン
免疫グロブリンの種類


原発性マクログロブリン血症の原因IgM免疫グロブリン
免疫グロブリンの軽鎖の遊離で
形質細胞が増殖し癌化すると考えられている。


国内での原発性マクログロブリン血症(及びリンパ形質細胞性リンパ腫)の罹患数は、極めて少なく、統計的数値が無いため、はっきりしませんが、1996年から2003年の「その他の造血器腫瘍」の罹患者数280人とあります。
これらから推定して、人口10万人あたり0.053人と推定される。(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科原研内科資料より)

免疫グロブリンの異常による疾患




「ベルケイド注射用3mg」は既に、◎未治療の多発性骨髄腫(他剤併用)、◎再発又は難治性の多発性骨髄腫、◎マントル細胞リンパ腫(他剤併用)の適応で販売されており、「原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞性リンパ腫」が効能・効果に追加される事となった。




【製品概要】
【販売名】:ベルケイド注射用3mg
【一般名】:ボルテゾミブ
【効能・効果】:原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫

【用法・用量】
原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫に対し他の抗悪性腫瘍剤との併用において、成人に1日1回、ボルテゾミブとして1.3mg/m2(体表面積)を週2回、2週間(1、4、8、11日目)静脈内投与又は皮下投与した後、10日間休薬(12~21日目)する。この3週間を1サイクルとし、投与を繰り返す。





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緊急避妊薬「ノルレボ錠」の安価な後発医薬品の製造承認を申請

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富士製薬工業株式会社(本社:東京都千代田区三番町)は2月26日付けで、レボノルゲストレル(levonorgestrel)を含有する緊急避妊薬について、国内初となるジェネリック医薬品の製造販売承認申請を行い、受理されたと発表した。


ノルレボ錠1.5mg
国内で唯一の緊急避妊薬「ノルレボ®錠」
あすか製薬:1.5mgは2016年4月15日販売開始。



「レボノルゲストレル(仮称)」の先発品は、あすか製薬株式会社(本社:東京都港区芝浦)が2011年から発売している、国内で初めて承認された「緊急避妊」の効能・効果を有する薬剤「ノルレボ®錠」で、望まれない妊娠が危惧された場合に、性交後72時間以内に服用することで避妊効果を発揮する。


有効成分のレボノルゲストレル(合成黄体ホルモン)は、WHO(世界保健機関)による緊急避妊のエッセンシャルドラッグ(=その国の保険医療に最低限必要な医薬品)に指定されており、本剤による緊急避妊法は効果が高く、安全性にも優れていると言われており、世界の多くの国で使用され、日本国内に於いても、標準的な方法として用いられています。



ノルレボ錠1.5mgの作用機序
「ノルレボ®錠(レボノルゲストレル)」の作用機序


しかし、「ノルレボ®錠」は薬価未収載品で、保険適応から除外されており、1錠当たり1万5000円前後と見られ、患者の経済的負担が大きい製剤である事から、以前より、多くの医療機関から「ノルレボ®錠」のジェネリック医薬品(後発品)の開発要望が出されていました。

「ノルレボ®錠」は現在、1.5mg錠のみが発売されている(0.75mgは販売終了)。

富士製薬工業株式会社が今回申請したのも1.5mg錠で、1回1錠の服用で用いる。
本剤は、卵胞ホルモンを含有しないため、服用後の吐き気が今まで使用されている製剤に比べ少ない。


問題の価格について富士製薬広報部は、「ノルレボ®錠」の後発品がどの程度になるか、答えられないとしながら、開発経緯に患者の経済的負担もある事から、これを考慮し、今後検討して行く、と話した。





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