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皮膚T細胞性リンパ腫治療薬「タルグレチン®」が製造販売承認を取得

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悪性腫瘍(がん)化したT細胞が、主に皮膚で増殖・進行し、多発や再発を繰り返しながら数年から数十年の経過で徐々に進行して行き、稀に予後不良に至る希少疾病の皮膚リンパ腫、「皮膚T細胞性リンパ腫」(CTCL=Cutaneous T-Cell Lymphoma)を効能・効果として、抗悪性腫瘍剤「タルグレチン®カプセル75mg」(一般名:ベキサロテン)について、株式会社ミノファーゲン製薬(本社:東京都港区)は1月22日、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表した。


タルグレチンカプセル
抗悪性腫瘍剤「タルグレチン®カプセル75mg」
(1999年に米国で「Targretin®」の製品名で承認)


「皮膚T細胞リンパ腫」は、皮膚に出来る血液の癌の一つで、普段、外敵から身体を守っている免疫細胞の一種「T細胞」が、皮膚で活性化しながら増殖する悪性のリンパ腫です。

皮膚病変を生じるT細胞リンパ腫には、大きく二つあり、菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)とセザリー症候群と言い、「皮膚T細胞リンパ腫」はこの二つの総称を指します。

また、菌状息肉症とセザリー症候群以外の皮膚悪性リンパ腫としては、「成人T細胞白血病・リンパ腫」でも皮膚病変が現れる事が多く、その他のT細胞リンパ腫(難治性末梢性T細胞リンパ腫など)やB細胞リンパ腫(CD19抗原陽性など)、更には、様々な種類の良性、又は悪性のリンパ腫も皮膚病変を生じます。


悪性リンパ腫の発症割合

厚生労働省統計情報部が集計した平成23年患者調査によれば、皮膚T細胞性リンパ腫の患者数は国内で1,000人と推定される希少疾病です。


血液の免疫細胞とは‥‥

血液の免疫細胞
血液は大きく白血球、赤血球、血小板に分かれる。
リンパ球は、細菌や感染症から身体を守る機能があり、白血球の中に存在する。


免疫細胞の種類
白血球の中にある免疫細胞群。
このうちガン細胞を直接攻撃するのが、リンパ球の中に存在する
四つの攻撃細胞(T細胞、B細胞、キラー細胞、NKT細胞)である。

このうち腫瘍の由来となる細胞がT細胞であるものを、
「皮膚T細胞性リンパ腫」と言う。



「タルグレチン®」は、レチノイドの一種であるベキサロテンを有効成分とする抗悪性腫瘍剤で、レチノイドX受容体(RXR)に対して選択的に結合し、アポトーシス誘導及び細胞周期停止作用により、腫瘍増殖を抑制すると推測されている。

ベキサロテンとRXR
「タルグレチン®(ベキサロテン)」の作用機序。
選択的に腫瘍細胞のレチノイドX受容体(RXR)に結合して
腫瘍の増殖を抑制する。


本剤は、2011年3月に日本、2012年3月にアジア・オセアニアなどにおける独占的開発権、並びに商業化権に関するライセンス契約をエーザイ株式会社(本社:東京都文京区)と締結し、2011年より日本国内で、皮膚T細胞性リンパ腫患者を対象とした臨床試験を開始した。

2013年には厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受け、国内で行われた第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(B-1101試験)と、海外臨床試験の成績に基づき、2015年3月、「皮膚T細胞性リンパ腫」の効能効果で承認申請を行っていた。


■ 効能・効果
 皮膚T細胞性リンパ腫

■ 製品名
 タルグレチン®カプセル75mg

■ 一般名・有効成分
 ベキサロテン

■ 用法・用量
 通常、成人にはベキサロテンとして1日1回300mg/m2(体表面積)を食後経口投与する。
 尚、患者の状態により適宜減量する。


「タルグレチン®」は治療薬の選択肢として、欧州と米国では多少異なり、1999年に米国で承認された際は、「少なくとも一つ以上の全身療法に対して治療抵抗性を示した皮膚T細胞性リンパ腫」とのガイドラインが付加され、欧州では2001年に、「少なくとも一つ以上の全身療法に対して治療抵抗性を示した進行期皮膚T細胞性リンパ腫」の治療薬として承認されている。

日本国内では、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験おいて、病期ⅡB以上、又は病期IB~ⅡAで標準的初回治療(ステロイド外用を除く)に治療抵抗性を示した患者様(16例)を対象に実施された。

その結果、病変部位/紅斑/腫瘤等の体表面積に占める割合(%)に基づく有効性評価で、13例中8例(61.5%)に50%以上の改善効果が認められたとの事である。


タルグレチン?
米国で販売されている「タルグレチン®ジェル外用薬」
塗り薬が登場し、患者のQOLが向上。
日本でも外用塗り薬の登場が待たれる。





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抵抗性慢性骨髄性白血病治療薬「ポナチニブ」国内での販売承認を申請

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大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区)は1月8日、2つの稀な血液と骨髄の疾患である、既存のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病(CML)と、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)に対する新規経口治療薬「ポナチニブ」(海外製品名:Iclusig®、アイクルシグ)」について、日本国内で初の製造販売承認申請を行ったとを発表した。

「ポナチニブ」Iclusigアイクルシグ
[ポナチニブ]ponatinib
Iclusig®(FDA=米国食品医薬品局,2012年12月14日承認)


日本では、TKI抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病は、10万人に1人程度の割合で、全ての年齢層で発症。
患者数は約1万1,000人と推定されている。



チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)治療の進歩により、死亡率は低下しているが、高齢者の人口増加に伴い、罹患者数は増加傾向にある。

慢性骨髄性白血病は、(1)病気発症時からの慢性期(5~6年間)では、初期症状は殆ど見られないが、白血球数、芽球の比率が高くなり、病気の進行と共に全身倦怠感、体重減少、皮膚のかゆみ、肝臓あるいは脾臓の腫大による腹部膨満感を自覚する事があります。

(2)移行期(6~9か月間)になると骨痛、肝臓あるいは脾臓の増悪、(3)更には急性転化期(3~6か月間)になると動悸・息切れ・全身のだるさなどの貧血症状、皮下出血・鼻血・歯肉出血などの出血症状、発熱などの感染症状のほか、関節痛、骨痛など段階的に増悪して行き、治療抵抗性となる。

既存の3種類のチロシンキナーゼ阻害薬
既存のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の治療効果。
「イマチニブ」による治療開始後8年間の生存率は93%だが、副作用が強い。


治療には第一選択薬としてチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が使用されるが、病気が進行してくると病因である、BCR-ABL遺伝子の増幅や過剰発現、遺伝子の突然変異など様々な原因によりTKI治療に抵抗性を示すようになり、既存のTKIを使用しても十分な治療効果が得られない場合が出てくる。


チロシンキナーゼ阻害薬の副作用
しかし3剤とも副作用がひどくて、薬を飲み続けられない「不耐容」が生じる。
治療抵抗性によって薬剤を変えても、約8%の患者で最終的に投与が中止される場合も。



一方、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)は、染色体転座によって発症する極めて予後不良な白血病で、小児および高齢者で見られ、初期治療後に再発、或いは治療抵抗性を呈する。

フィラデルフィア染色体転座
第9番染色体の下と、第22番染色体のBCRより下が、入れ替わる事で、
発病するが、なぜ染色体転座が起こるのかは分かっていない。



これまで既存の「イマチニブ」や「ニロチニブ」「ダサチニブ」、更に2014年に承認された「ボスチニブ」などが効果を発揮するのは、BCR-ABL融合遺伝子によって変異した『T315』と言うタンパク質のアミノ酸配列の時で、薬剤服用を続けると、これが『T315i』に変異し、既存のTKI薬がタンパク質に結合出来なくなり、効果を発揮しなくなる。

チロシンキナーゼ阻害薬の作用機序
既存のチロシンキナーゼ阻害薬の作用機序。



「ポナチニブ」は、米アリアド・ファーマシューティカルズ・インク(本社:米国マサチューセッツ州)が開発・創製した、既存のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病とフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病治療薬で、染色体が入れ替わる事で発現する変異型「BCR-ABL」遺伝子に結合し、効果を発揮する。

ポナチニブ作用機序
「ポナチニブ」の作用機序。



国内では、アリアド社が有効性と安全性、忍容性についてフェーズ1/2試験を多施設共同試験として実施。大塚製薬は、この試験結果と海外の試験結果を併せて申請したと言う。
尚、日本では2015年9月に「オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)」としての指定を受けているほか、日本を含む、インドネシア、マレーシア、中国(香港含む)、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾、タイ、ベトナムにおいて、「ポナチニブ」の共同開発・商業化の権利を、大塚製薬が2014年12月に取得している。





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新規経口抗リウマチ剤「イグラチモド」が承認条件(全例調査)を解除

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エーザイ株式会社(本社:東京都文京区)と富山化学工業株式会社(本社:東京都新宿区)は2015年12月1日、抗リウマチ剤「イグラチモド」(一般名)について、本剤の承認条件となっていた特定使用成績調査(全例調査)に関し、厚生労働省から解除の通達を受けたと発表しました。

「イグラチモド」は、富山化学が創製した疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)で、関節リウマチ患者を対象とした、標準治療薬である「メトトレキサート(MTX)」との併用試験において、メトトレキサートの効果不十分な患者に対して、経口の抗リウマチ剤として国内で初めてメトトレキサートとの併用での有効性が確認された。


ケアラム錠25mg_careram
抗リウマチ剤「イグラチモド」
(製品名「ケアラム®錠25mg」/エーザイ)

コルベット錠25mg_kolbet
抗リウマチ剤「イグラチモド」
(製品名「コルベット®錠25mg」/富山化学)

「イグラチモド」は、2012年6月に関節リウマチを効能・効果として承認を取得し、エーザイから製品名「ケアラム®錠25mg」富山化学から製品名「コルベット®錠25mg」として同年9月から販売を開始した。

その際、「製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施する事により、本剤使用患者の背景情報を把握すると共に、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる事」、との承認条件(市販第四相試験)が付されていた。




エーザイおよび富山化学は、全例調査を共同で実施し、2,246例を対象症例として評価。

投与開始から24週後までの副作用の発現率31.34%(704例)。
矢印(右)重篤な副作用の発現率は3.07%(69例)だった。
矢印(右)主な副作用は、■胃腸障害(8.41%)、■臨床検査値異常変動(7.08%)、■感染症および寄生虫症(5.03%)。
一方、重篤な副作用は、■感染症および寄生虫症(1.16%)、■呼吸器、胸郭および縦隔障害(0.76%)、■胃腸障害(0.49%)だった。

今回の承認条件解除は、全例調査の安全性及び有効性データに基づき、新たな措置を必要とする問題点は認められないと判断された事によるものです。



関節リウマチの発症しやすい部位
関節リウマチの発症部位

関節リウマチは、身体の多くの関節に慢性の炎症が起こる、自己免疫疾患の一種で、手と足にその症状が表れるのが典型的です。遺伝的要因や細菌・ウイルスの感染などが考えられていますが、原因は良く分かっていません。

関節リウマチの進行

関節腔の内面を覆っている、滑膜細胞が増殖する事で炎症が起こる為、滑膜のあるどの関節でも発症する可能性があり、罹患早期から関節破壊が進行し、長期罹患によって、関節の変形と機能障害が起こります。
日本では約70~80万人、全世界では約2,370万人の患者が関節リウマチに罹患しています。

既存の治療薬は複数ありますが、治療効果が十分でない患者も少なくありません。
実際に、患者の3分の1では、治療が十分に奏効せず、約半数は5年以内に特定の抗リウマチ薬(DMARD)に反応しなくなり、依然として、更なる治療薬の登場が望まれています。




関節リウマチ治療薬メトトレキサート
関節リウマチの標準治療薬「メトトレキサート(MTX)」


関節リウマチの標準治療薬である「メトトレキサート」は、疾患修飾性経口抗リウマチ薬(DMARD)であり、メトトレキサートの効果不十分な患者に対しては、経口の抗リウマチ剤が限られ、メトトレキサートの薬効が強いため、追加出来る薬剤は生物学的製剤の点滴静注、又は皮下注射が殆どでした。

分子構造が異なる製剤では、メトトレキサートと併用しなくても良い薬剤もありますが、多くはメトトレキサートとの併用が推奨されています。

しかし点滴静注や皮下注射を継続する事は、患者のQOLが低く、メトトレキサートと併用出来る経口薬の登場が望まれていました。


「イグラチモド」は、新規の疾患修飾性経口抗リウマチ薬(DMARD)で、メトトレキサート併用試験において、これまでメトトレキサートの効果不十分な患者では、点滴静注や皮下注射製剤が選択されて来ましたが、経口の抗リウマチ剤として国内で初めてメトトレキサートとの併用での有効性が確認されました。


■ 販 売 名 : 「ケアラム®錠25mg(エーザイ)」「コルベット®錠25mg(富山化学)」
■ 一 般 名 : イグラチモド
■ 効能・効果 : 関節リウマチ
■ 用法・用量 : 通常、成人にはイグラチモドとして、1回25mg を1日1回朝食後に4週間以上経口投与し、それ以降、1回25mg を1日2回(朝食後、夕食後)に増量する。

■ 薬価 : 150.50円/1錠
■ 包装 : 100 錠(PTP)


また現在、国内で初めて承認された新規経口関節リウマチ治療薬JAK阻害剤「ゼルヤンツ®錠5mg」が、ファイザー株式会社と武田薬品工業の共同創薬により発売されています。
本剤は、メトトレキサートによる治療を3カ月以上継続してもコントロール不良な患者を治療対象として推奨しています。新規有効成分のトファシチニブクエン酸塩により、関節リウマチ領域における世界初のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬です。

ゼルヤンツ錠5mg
JAK阻害剤「ゼルヤンツ®錠5mg」

作用機序は、細胞内シグナル伝達に着目した新しいJAK Pathwayを利用するサイトカインによる、細胞内のシグナル伝達を阻害します。
過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与するとなっている。

JAK阻害剤は、関節リウマチ分野において、近い将来、経口薬のみで治療できる可能性を示唆しました。
現在、より副作用の弱い、JAK阻害薬としては世界で2剤目となるバリシチニブも開発中で、昨年11月、2つの第3相試験の結果が発表されたが、いずれも画期的な内容だったとの事。今後、安全性評価と更なる臨床試験を積み重ね、市場投入される日も近い。






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抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン」が悪性軟部腫瘍の効能・ 効果の承認を取得

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エーザイ株式会社(本社:東京都文京区小石川)は2月29日、自社創製の抗がん剤「ハラヴェン®」(一般名:エリブリンメシル酸塩)について、日本国内において新たに「悪性軟部腫瘍」の効能・ 効果の承認を取得したと発表しました。
「ハラヴェン」は、進行または再発の「悪性軟部腫瘍(脂肪肉腫または平滑筋肉腫)」を対象とした臨床第Ⅲ相試験において、全生存期間の有意な延長を示した唯一の薬剤です。

本剤は、日本において「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として承認され、2011年7月に発売され、これまでに日本、欧州、米国、アジアなど約60カ国で乳がんに係る適応で承認を取得しています。

「ハラヴェン」の悪性軟部腫瘍適応は、日本において「手術不能又は再発乳癌」に続き、統計学的に有意な全生存期間の延長が認められ「ハラヴェン」が取得した、2つ目の適応となる。


悪性軟部腫瘍剤ハラヴェン
抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン®」


悪性軟部腫瘍は、身体の様々な軟部組織(脂肪、筋肉、神経、線維組織、血管など)で発生する悪性腫瘍の総称で、米国では約12,000人が、欧州では約29,000人が、毎年、悪性軟部腫瘍と診断されており、日本では、厚生労働省の患者調査によると患者数は約4,000人とされています。

悪性軟部腫瘍の発症頻度

悪性軟部腫瘍発症部位

悪性軟部腫瘍は、発生部位の組織が様々である事から、多彩な組織型が存在しますが、比較的頻度の高い組織型として、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫などが知られています。

悪性軟部腫瘍の治療は、根治的な外科切除術が中心で、悪性度が高い場合は、化学療法や放射線療法を組み合わせた治療がなされます。進行した場合、予後は不良となります。


悪性軟部肉腫1
悪性軟部肉腫2
悪性軟部肉腫3




今回新たに悪性軟部腫瘍の効能・ 効果の承認を取得した「ハラヴェン®」は、海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出された「天然物ハリコンドリンB」の全合成類縁化合物で、微小管の伸長(重合)を阻害・抑制する事で、細胞分裂の停止作用を有する、ハリコンドリン系の微小管ダイナミクス阻害剤です。

kuroisokaimen okadai


 ※昨年9月に製造販売承認を取得した、悪性軟部腫瘍治療薬「ヨンデリス®点滴静注用0.25mg/1mg」も、ホヤの一種『エクテインアシジア・トゥルビナータ』から創製された薬剤(本稿掲載:http://ameblo.jp/aki-prism/entry-12096224509.html)で、こちらは染色体転座による遺伝子異常を有する悪性軟部腫瘍治療薬であった。
海洋生物からは、他にも抗悪性腫瘍剤の合成に成功している物もあり、今後の創薬に期待が広がる・・・。


加えて、従来の作用機序のほかに、最近の非臨床研究において、【1】腫瘍の血流循環を改善する事【2】乳がん細胞の上皮細胞化を誘導する事【3】乳がん細胞の転移能力を減少させる事 など、ユニークな特異作用を有する事が報告されています。


「ハラヴェン」の悪性軟部腫瘍に係る適応については、2016年1月に、米国で「アントラサイクリン系抗がん剤治療を含む化学療法の前治療歴のある、手術不能または転移性の脂肪肉腫」の適応で承認を取得し、2016年2月に日本でも「悪性軟部腫瘍」の適応で承認を取得。
また欧州(EU)、スイス、ロシア、オーストラリア、ブラジルでは、現在申請中です。


EUハラヴェン


本剤は米国及び日本において、悪性軟部腫瘍に対する『希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)』の指定を受けています。


■ 製品概要(太字下線が今回の追加部分)
 1) 製品名:ハラヴェン®静注1mg
 2) 一般名:エリブリンメシル酸塩
 3) 効能・効果:手術不能又は再発乳癌、 悪性軟部腫瘍(今回新承認)
 4) 用法・用量:通常、成人には、エリブリンメシル酸塩として、1日1回1.4mg/㎡(体表面積)を2~5分間かけて、週1回、静脈内投与する。これを2週連続で行い、3週目は休薬する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。尚、患者の状態により適宜減量する。





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T790M変異非小細胞肺がん治療薬「タグリッソ錠」が承認取得

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アストラゼネカ株式会社(日本法人本社:大阪市北区/ 本社:英国ロンドン)が国内承認申請していた、「上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん」を効能・効果とする、新有効成分含有治療薬「タグリッソ錠®40mg、同80mg(一般名:オシメルチニブメシル酸塩)」について、厚生労働省の薬事食品衛生審議会・医薬品第二部会は2月26日、製造販売を承認した。

本剤は、日本肺癌学会が早期承認を求めていたもので、再審査期間は8年となる。


タグリッソ錠


肺がん(臨床的に治療方法の違いから、小細胞肺がん、非小細胞肺がんの2つに区別)は、男性および女性双方のがん死因の第1位で、全てのがんによる死亡の約3分の1を占めています。
これは、乳がん、前立腺がん及び大腸がんの死亡合計を上回ります。


小細胞肺がん

非小細胞肺がんでは、早期発見・早期治療をすれば5年生存率は50~70%ですが、肺内のリンパ節に転移した場合、5年生存率は30~50%に下がってしまいます。

診断時に胸腔内にがんが留まっていた場合(限局型)で、5年生存率20~30%、胸郭外に転移があった場合(広範型)で、2年生存率10~20%です。

非小細胞肺がんの治療第一選択肢は、病巣が肺の片側に限局している場合、手術による病巣の切除ですが、反対側のリンパ節にも転移が認められた場合は、抗がん薬か、手術不能な場合は、抗がん薬と放射線治療が主体となります。




イレッサ
 手術不能、または再発非小細胞肺がんに対する治療薬として、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤の「*イレッサ」が、EGFR変異陽性の肺腺がん、女性、非喫煙者といった特定の患者で有効性が高く、生存期間の延長が期待できるようになりました。
 (*「イレッサ」はEGFR変異陰性の患者には殆ど効果が期待出来ないため、他剤使用)



EGFR-T790M変異
投与にはコンパニオン診断薬でT790M変異が陽性である事を確認する。

しかし効果をもたらす反面、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療を受けている患者の約3分の2は、「EGFR T790M変異」に関与する耐性が生じる。その為、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を投与しても、殆どの症例で、1年程度で耐性化し病状が進行する。
但し、「EGFR T790M変異」陽性肺がんに対する治療薬が市場には無いため、日本肺癌学会が2015年7月、「タグリッソ錠®40mg、同80mg」の早期承認を厚生労働相に求めていた。



「タグリッソ錠®40mg、同80mg」は、2015年11月18日に米国で臨床試験開始から僅か2年半で承認を取得。そして2016年2月3日に欧州で承認を取得しました。それに続いて日本でも極めて異例の優先審査で承認を取得したものです。

日本では、「EGFR T790M変異」陽性の非小細胞肺がん患者数は約1万9700人~3万5300人と推測されている。投与には、EGFR T790M変異の遺伝子変異があるかどうかを検出するため、厚生労働省はコンパニオン診断薬も承認する方針で、本剤が市場投入されるのは6月下旬頃と見られている。




「タグリッソ錠」は1日1回経口投与で用いる。
抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)などと同様、「タグリッソ錠」は肺がん治療に精通し、リスクなどについても十分管理できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ投与する。

患者は、処方医から交付される同剤の効果や副作用について十分な説明を受けた事を証明するカードが無いと、薬を受け取れない。




イレッサ変異陽性型肺がん

“イレッサ”は2002年7月に手術不能、または再発非小細胞肺がんを適応に承認された。しかし、その後急性肺障害や間質性肺炎の報告が相次ぎ、同年10月15日には緊急安全情報が出される事態となった。しかし、関係者らの尽力によって間質性肺炎症例の集積が積極的に行われ、それらの解析が行われ、危険因子の探索が続けられた。
2004年になって、米国から上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異を持つ症例で効果が高いという報告が出された。
その結果、肺がん治療において「EGFR T790M変異」群を検出、区別する事が重要となり、EGFR変異がなければ“イレッサ”は効かない、EGFR T790M変異にのみ効果を示すことが証明された。






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不妊治療用プロゲステロン膣用カプセル「ウトロゲスタン」販売開始

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人工授精


日本での生殖補助医療(人工授精治療)は、近年、晩婚化や出生率低下による少子化が急速に進んでおり、不妊治療は少子化対策の一端を担うものとして、重要視されている。

その一方で、ホルモン分泌が不安定な“難治性不妊症”の治療では、最近、体外受精・胚移植や卵細胞質内精子注入法など、新たな生殖補助医療が登場し実施されて来ています。



生殖補助医療の方法
「生殖補助医療=人工授精、又は顕微授精」

その生殖補助医療において、「黄体ホルモン」は着床や妊娠の維持のために重要な役割を果たしており、治療の際には、体外からの黄体ホルモン補充が必要になります。

黄体ホルモンが不十分の場合、着床失敗や流産のリスクが高くなり、その分、治療を受ける患者の負担も増す事になります。





本年1月22日、富士製薬工業株式会社(本社:東京都千代田区)は「生殖補助医療における黄体補充」を効能・効果として、プロゲステロン(黄体ホルモン)を有効成分とする天然型黄体ホルモン製剤「ウトロゲスタン®腟用カプセル200mg」の製造販売承認を取得し、2月18日から販売を開始した(薬価基準未収載)。

ウトロゲスタン腟用カプセル

「ウトロゲスタン」は、海外での黄体ホルモン補充が必要な諸疾患の治療薬として30年以上使用され、2016年1月現在、世界80カ国以上で承認・販売されています。

この状況を踏まえ、日本受精着床学会などから、本製剤の早期開発・承認の要望書が厚生労働省に提出され、2010年4月の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、高い評価が得られた。

国内の第3相臨床試験(対象:体外受精・胚移植を受ける女性)において有効性と安全性が確認された為、今回の承認となった。




生殖補助医療では、プロゲステロン投与による黄体ホルモン補充を行う事で、妊娠率が向上する事が確認されており、海外では、標的臓器である子宮に、プロゲステロンを効果的に送達できる膣剤の使用が主流となっていますが、日本では2014年12月に、ようやくプロゲステロンの膣錠製剤(商品名:ルティナス)が臨床使用できるようになりました。

ルティナス膣錠
既存のプロゲステロン膣錠製剤「ルティナス」


今回承認された「ウトロゲスタン腟用カプセル」は、生殖補助医療における黄体補充の適応を持つプロゲステロン膣製剤で、ルティナスに次ぐ日本で2番目の膣製剤となる。



臨床試験では副作用(臨床検査値異常を含む)が16.9%に認められている。
主な副作用は、卵巣過剰刺激症候群(2.5%)外陰膣そう痒症不正子宮出血性器出血がそれぞれ1.9%であった。
重大な副作用として頻度は不明だが血栓症が示されている。

尚、「ウトロゲスタン®腟用カプセル200mg」と同一成分であるルティナス膣錠は、適応は同じだが用法・用量が異なるので、医師の指示に従う。

また「ウトロゲスタン®腟用カプセル200mg」は、添加物にラッカセイ(ピーナッツ)油を有している為、ピーナッツアレルギーのある患者には投与禁忌である事など、相違点には注意しなければならない。



適応は「生殖補助医療における黄体補充」で、1回200mgを1日3回、胚移植2~7日前により経腟投与する。
妊娠が確認できた場合は、胚移植後9週(妊娠11週)まで投与を継続する。


ウトロゲスタン腟用カプセルとアプリケーター
海外での「ウトロゲスタン®腟用カプセル200mg」と専用アプリケーター。


効能・効果
【経腟投与】
・卵巣機能不全、又は卵巣不全(卵子提供を受ける)に対するプロゲステロン補充
・体外受精(IVF)における黄体補充
・原発性/続発性不妊(特に排卵障害)における自然周期、又は誘発周期の黄体補充
・妊娠12週までの黄体機能不全による流産リスク、又は反復流産の予防。
プロゲステロンのもつ他のすべての適応で、経腟投与は経口投与の副作用(眠気)を避けるための代替となる。

ウトロゲスタン投与期間


【経腟投与】
各カプセルを腟に深く挿入しなければならない。

・妊娠継続率
妊娠12週目の妊娠継続率は25.2%(55/218例)であった。

・流産/稽留流産率
妊娠12週目までの流産/稽留流産率は4.6%(10/218例)であった。
本剤投与群とプロゲステロンゲル群の間には統計学的な有意差は認められなかった。(p=0.990、Fisherの正確検定)

・有害事象
有害事象は9.6%(21/218例)に認められた。2例以上に発現した有害事象は、卵巣過剰刺激症候群3.2%(7例)、腟出血1.4%(3例)、悪心/嘔吐0.9%(2例)であった。





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重篤な筋ジストロフィー治療薬2剤、ほぼ同時に国内初の臨床試験を開始

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根本的な治療法の無い極めて重篤な伴性劣性の遺伝性希少疾患、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療剤2品が、本年2月、国内で初めての第1/2相臨床試験で、被験者への投薬を開始した。


デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、民族差なく、新生男児の約3,500人に1人で発症する、最も頻度の高い遺伝性筋疾患です。


2~5歳から軽度の自立障害が起こり、年齢を重ねると共に筋萎縮が進行して、各種運動障害が起き、最終的には心不全・呼吸不全等により、多くは20~30歳代で死に至る、極めて重篤な伴性劣性の遺伝性希少疾患で、発症原因は、患者の筋細胞で"ジストロフィン"と呼ばれる、筋肉組織を作るタンパク質の遺伝子に変異が起こり、正常な"ジストロフィンタンパク質"が産生されない事で、重篤な筋力低下を示します。


DMD患者の年齢差の筋肉量

デュシェンヌ型筋ジストロフィー発症前(上部写真)と
発症したあと(下部写真)の筋肉組織。
DMDを発症すると筋組織が壊死し、脂肪質や繊維質に変化してしまう。


現在、根本的な治療法は無く、進行を遅らせるステロイド剤以外に有力な治療法は存在せず、新たな治療薬の開発が期待されています。



筋ジストロフィーの臨床病型割合
筋ジストロフィーの病態別型



今回第1/2相臨床試験(治験)が行われる2つの治療薬は、共に核酸医薬品で、「エクソン・スキップ治療」と呼ばれているもの。


一つ目は、日本新薬株式会社(本社:京都府京都市南区)が2月2日から第1/2相臨床試験を開始した、核酸医薬品『NS-065』。

本薬は、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)と日本新薬が共同開発した薬剤で、エクソン53スキップ(注)により、ジストロフィン遺伝子の一部の遺伝情報を読み飛ばす事によって、機能するタンパク質を発現させ、筋機能の改善に繋がる事が期待される薬剤である。

エクソン53スキップとは
(注)筋肉細胞を作るタンパク質の遺伝子に変異が起こり、
欠失した遺伝子によって正常なジストロフィンが作られなくなる。
『NS-065』は53番を読み飛ばし、遺伝子型が適合する前後を接合する。

本薬剤は、国立精神・神経医療研究センターにおいて、2013年6月~2015年3月まで医師主導の早期探索的臨床試験で、良好な結果を得た事から、厚生労働省より先駆け審査指定制度の指定を受け、2月2日より第1/2相臨床試験へ進み、患者への投与が開始された。



もう一つは、第一三共株式会社(本社:東京都中央区日本橋)が2月25日から第1/2相臨床試験を開始した、核酸医薬品『DS-5141b』。

本薬は、産業革新機構などの官民ファンド・株式会社Orphan Disease Treatment Institute(希少疾患治療研究所=所在地:東京都品川区)と第一三共が共同開発中の薬剤で、エクソン45スキップ(注)により、ジストロフィン遺伝子から不完全ながらも機能が保持されたジストロフィンタンパク質を産生する事で、筋機能の改善に繋がる事が期待される核酸医薬品である。

エクソン45スキップ核酸医薬品
(注)ジストロフィン遺伝子欠失は、主に9つあり、
『DS-5141b』は欠失した45番と余分な46番を読み飛ばし、
型の合う、その前後のジストロフィンタンパク遺伝子を接合する。

本薬剤は、第一三共独自の修飾核酸であるENA®オリゴヌクレオチドを有効成分とし、核酸の糖部フラノース環の2′位と4′位をエチレンで架橋した修飾核酸医薬品で、2013年から開発が始まり、2月25日、被験者への投薬を開始した。



両核酸医薬品は、いずれも2020年までに国内製造販売の承認を取得する事を目標に、開発を進めて行くとしている。

医薬品の臨床過程


難病や希少疾患治療剤の開発には、病気の原因がある程度分かっているものと、殆ど判明していないものがあり、福音を待ち望む患者にとっては、一日千秋の思いで新たな治療薬の登場を待ち望んでいます。

新薬の開発には、莫大な資金と膨大な時間を必要としていますが、病気に苦しむ患者へ吉報を届けるべく、日々、様々な治験薬が創製されています。
その中から、一つでも実用域で使用できる薬剤が登場してくれる事を、切に望んで止みません。




病態英語原文:
Duchenne muscular dystrophy: デュシェンヌ型筋ジストロフィー
Becker muscular dystrophy : ベッカー型筋ジストロフィー
Facio-Scapulo-Humeral dystrophy : 顔面肩甲上腕型ジストロフィー
Hereditary Neuropthy : 遺伝性ニューロパチー
Spinal Muscular : 脊髄筋萎縮症
Myotonic Dystrophy : 筋緊張型ジストロフィー
Congenital Myopathy: 先天性筋疾患(先天性ミオパチー)
Limb Girdle Muscular Dystrophy : 肢帯筋型ジストロフィー
Fukuyama type Congenital muscular dystrophy : 福山型先天性筋ジストロフィー





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難治性慢性リンパ性白血病治療薬「イムブルビカ®」が承認取得

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ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区)が申請していた、「再発または難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」を効能・効果として、新有効成分含有医薬品・抗悪性腫瘍剤「イムブルビカ®カプセル140mg(一般名=イブルチニブ,Imbruvica®=ibrutinib®)」が、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会・医薬品第二部会おいて了承され、3月28日製造販売承認を取得したと発表しました。




慢性リンパ性白血病(CLL)と小リンパ球性リンパ腫(SLL)は血液がんの一群で、白血球(リンパ球)の一種であるB細胞由来のB細胞性悪性腫瘍として知られている。慢性リンパ性白血病と小リンパ球性リンパ腫は、本質的に同一の疾患とされ、がん細胞の分布の違いにより分類されます。

がん細胞の大部分が血液中や骨髄(リンパ節や脾臓など)にあれば慢性リンパ性白血病、リンパ節に位置すれば小リンパ球性リンパ腫とされている。

慢性リンパ性白血病は、通常緩やかに進行する血液がんで、診断時年齢中央値は60~70歳以上、日本での発症率は、年間10万人に0.3人です。患者数は慢性リンパ性白血病が約1000人、小リンパ球性リンパ腫が約1600人と推定されている。


通常のリンパ球
慢性リンパ性白血病

慢性リンパ性白血病(Chronic Lymphocytic Leukemia)は、患者数が少なく稀な腫瘍であり、未だに有効な治療法が確立されておらず、新規治療薬の開発が強く望まれる、治療分野における大きい領域の一つとなっている。

慢性リンパ性白血病治療薬としては、既に「マブキャンパス点滴静注」や「アーゼラ点滴静注」などがあり、本薬剤は再発・難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫に対する治療選択肢の一つに加わる。




今回新たに承認を取得した「イブルチニブ(イムブルビカ®カプセル140mg)」は、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTK-R)です。

ブルトン型チロシンキナーゼは、B細胞の成熟と生存を制御している、細胞内シグナル伝達に関与する重要なタンパク質で、悪性B細胞では、ブルトン型チロシンキナーゼを含むB細胞受容体シグナル伝達経路が過剰に活性化している。
腫瘍(癌)細胞は、細胞死を導く自然なシグナルを無視して増殖し、リンパ節組織などに移動、生着し、生存・増殖し続けます。



「イブルチニブ」は、ブルトン型チロシンキナーゼを特異的に標的とし、阻害するよう設計された作用機序の新規有効成分を有する薬剤で、「イブルチニブ」がブルトン型チロシンキナーゼ・タンパク質と強固な共有結合を形成し、悪性B細胞の過剰な細胞生存シグナルの伝達を抑え、リンパ節などにおける過剰な細胞増殖を阻止します。




本薬剤は、1日1回経口投与タイプの新規作用機序を有するブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬(BTK-R)です。
製 品 名 : イムブルビカ®カプセル140mg
一 般 名 : イブルチニブ
剤 型 : カプセル剤
効能・効果 :再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
用法・用量 :通常、成人にはイブルチニブとして420mg(3カプセル)を1日1回経口投与する。尚、患者の状態により適宜減量する。


尚、本薬剤は海外では2015年12月現在、慢性リンパ性白血病の効能・効果で64カ国で承認済であるが、日本国内では2014年11月26日にヤンセンファーマ株式会社が製造販売承認を申請していた。




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クローン病治療薬インターロイキン抗体製剤「ステラーラ®」を承認申請

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ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区)は3月30日、乾癬の治療薬として販売している、ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤「ステラーラ®(一般名:ウステキヌマブ:遺伝子組み換え)」について、中等症から重症の活動期にある「クローン病」治療薬として追加承認申請を行った。

「クローン病」の治療は、寛解導入療法と維持療法に分かれ、「ステラーラ®」は寛解導入療法の治療薬として、新たに開発した点滴静注製剤と、既に国内で、尋常性乾癬および関節症性乾癬の治療薬として2011年1月に承認されている、「ステラーラ®皮下注45mgシリンジ」について、クローン病の維持療法に適応を追加する形で申請を行った。



乾癬治療薬ステラーラ


クローン病は、炎症性腸疾患の一つで、全世界に500万人以上、日本では4万人以上の患者がいるとされる。
10~30代の若年者に発症する事が多く、大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症又は潰瘍を引き起こす原因不明の疾患で、腹痛や下痢、血便、発熱、体重減少などが生じ、寛解・再燃を呈しながら慢性的に持続する疾患です。






「ステラーラ®」は、ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤であり、炎症性腸疾患に深く関わるIL(インターロイキン)-12/23を阻害する事により、消化管の炎症を抑制します。

クローン病の既存の治療薬では充分に効果が得られなかったり、効果が弱まったりする場合があり、作用機序の異なる新たな治療選択肢薬剤が求められていました。

クローン病


クローン病に対する「ステラーラ®」の有効性と安全性は、日本も参加した国際共同第III相試験で確認されました。これらの試験成績に基づき、米国および欧州では2015年11月に「中等症から重症の活動期にあるクローン病」の効能・効果の取得を目的とした承認申請を行いました。



何故、乾癬の治療薬がクローン病にも効果があるのか?

乾癬の発症メカニズムの詳しい原因は判っていませんが、症状の経過はクローン病と類似しています。
乾癬は、皮膚の外側の表皮の皮膚代謝が極端に早くなり、短期間で角化細胞が鱗屑となって剥がれ落ちます。この為、皮膚表面が赤く盛り上がって来て、炎症を起こし出血傾向を呈する。

正常な表皮細胞は28日サイクルで代謝していますが、乾癬の場合は4~5日と極めて短い新陳代謝が繰り返される為、常に赤く腫れ、炎症が続いている状態になっています。

クローン病の炎症は、大腸や小腸の粘膜に発症しますが、乾癬と同じように原因は不明ながら、寛解と増悪を繰り返す自己免疫疾患であると考えられています。




ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体とは

人の免疫反応に関する病気では、免疫反応を調節する蛋白物質の総称の、IL=インターロイキンが深く関与しており、これらから発するシグナルによって、免疫細胞のリンパ球やT細胞の分化が進む。
モノクローナル抗体製剤は、このシグナルをブロックする事で、過剰なサイトカイン(細胞から放出され、免疫作用・抗腫瘍作用を示すタンパク質の総称)を抑制する。

「ステラーラ®」は、IL-12とIL-23p40を標的に結合し、シグナル伝達を阻止します。



ステラーラ シリンジ


これまで様々な薬剤が登場しましたが、ヒト型抗ヒトIL(インターロイキン)-12/23p40モノクローナル抗体製剤は初めてとなります。
本薬剤が新たな治療選択肢として加わり、クローン病患者のQOL向上に貢献される事を期待します。






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増え続ける梅毒患者…過去最悪ペース、今年4ヵ月で既に883人!!

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国立感染症研究所・感染症疫学センターは4月8日、IDWR(感染症発生動向調査/週報)2016年第12号・注目すべき感染症『梅毒』に関する疫学的暫定値を発表した。

『梅毒』は細菌感染症であり、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)が病原体である。



それによると、2014年12月29日~2016年1月3日までに、感染症法に基づく医師の届出による【梅毒】として報告された症例数は2698例(2016年3月30日時点、暫定値)で、現在の方法で統計を取り始めた平成11年(1999年)以降、最も多くなった。

性別は男性1,934例、女性764例で、感染経路別では、男性は、異性間性的接触(女性から感染した場合)が840例、同性間性的接触が585例の報告であった。また女性の異性間性的接触(男性から感染した場合)が、555例であった。



梅毒の患者数推移


2015年(2014年12月29日~2016年1月3日)の都道府県別報告患者数では、東京都1057例、大阪府324例、神奈川県165例、愛知県122例、埼玉県103例が上位となった。

この増加傾向は今年になっても続き、本年は4月3日の時点で、既に883人(速報値)に達していて、去年の同じ時期より500人近く多くなっており、国立感染症研究所が注意を呼びかけている。


梅毒の病期の症状と潜伏


本年1月4日~3月27日に梅毒と診断され、梅毒患者として報告された症例の確定暫定数値は、796例で、昨年同時期(397例)の2.0倍となっている。
性別は男性563例、女性233例で、昨年同時期(男性289例、女性108例)のそれぞれ1.9倍、2.2倍で、女性の患者数が増加傾向を示している。

都道府県別では、東京都389例(前年同時期147例)大阪府112例(同43例)神奈川県53例(同29例)愛知県37例(同14例)埼玉県29例(同13例)が多く報告され、男性では40代前半の患者が‥‥女性では20代前半の患者が最も多くなっている。




梅毒患者数

2010年以降「梅毒」の患者報告数は増加傾向に転じており、本年3月までの報告は、昨年と同様な傾向で増加が継続していて、全国的に増加の傾向が見られるが、特に東京都と大阪府、そしてその周辺の地域からの報告が、際立って特に多い。



【厚生労働省 梅毒の感染経路・症状・治療・予防・抗体に関するQ&A】
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/qanda2.html
性感染症予防ポスター



【梅毒】は、不特定多数の人との性的な接触などで、「梅毒トレポネーマ」という細菌によって起きる細菌性感染症で、早期ではペニシリン薬がよく効くので、治療すれば治りますが、長年、放置していると身体の麻痺などを引き起こすほか、妊婦が感染すると、子供に重い障害が残る可能性があります。


治療によって体内には抗体が出来るものの、再感染で再発するケースもあります。

特に問題なのは、若い女性に感染が増えると、妊娠している場合、胎盤を経由した胎児への感染が心配され、生まれた赤ちゃんが「先天梅毒」になる可能性があります。


先天性梅毒


厚生労働省が標準とする妊婦健診では、妊娠初期(13週まで)に1回、梅毒を含めた性感染症の有無を調べる事になっている。

その時点で感染が判明すれば、妊婦が薬を飲む事で、赤ちゃんと共に完治できます。
しかし、妊娠中期(14週)以降に性交渉で感染する事もあり、妊婦が自分で検査を受けない限り、赤ちゃんの感染に気づくのは困難となる。
その結果、流産や死産を招くリスクが高くなり、生まれても、赤ちゃんが神経系の障害や肝臓の病気を持っている事が多く、赤ちゃんの梅毒の治療は困難となるのです。




国立感染症研究所の砂川富正室長は、「コンドームを適切に使用するなどして感染を防いで欲しい。痛みが無くても、下半身にしこりがあるなど、疑わしい症状が出たら医療機関を受診する事が必要だ」と、話している。

また、経済的な事情などで妊婦健診を一度も受けない女性もいる事から、厚生労働省は「感染リスクを知ってもらう事が最大の予防策」として、女性を意識したピンクのポスターを新たに作った。

女子の梅毒急増中

パートナーと一緒に検査を受ける事や、【コンドーム】を適切に使う事などを積極的に呼びかけている。







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国内企業で27年ぶり、新抗てんかん薬「フィコンパ®錠」が製造販売承認を取得

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エーザイ株式会社(本社:東京都文京区小石川)は3月28日、自社創製の新規抗てんかん剤「フィコンパ®錠」(一般名:ペランパネル水和物、海外製品名「Fycompa®」)について、「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められない、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)及び強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法」の効能・効果で、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表した。

日本の製薬会社が開発し、国内で販売する抗てんかん薬は1989年以来、実に27年ぶりだと言う。
本薬剤は、5月頃発売する見込みとの事。






日本におけるてんかん患者数は約100万人と報告されています。

てんかんは、患者の約30%が既存の抗てんかん剤で発作を十分に抑えらず、未だに有効な治療法が確立されていない為、医療上の必要性が強く望まれる医療分野(アンメット・メディカル・ニーズ=Unmet Medical Needs)であり、新薬の開発ニーズが望まれている疾患です。

また、強直間代発作は、突然の転倒による重篤なケガの恐れがあるほか、その発作頻度は、「てんかん患者の予期せぬ突然死(SUDEP: Sudden Unexpected Death in Epilepsy=てんかん突然死)」の最も重要な危険因子とされていて、てんかんの中でも極めて重篤な発作型の一つです。

今回承認された薬剤は、こうした患者向けで、元々使っていた薬に追加して使います。



てんかん発作の分類
抗てんかん剤「フィコンパ」は、てんかん発作の分類において、
赤枠で囲んだ『部分発作(二次性全般化発作を含む)』
及び『全般発作・強直間代発作』に対して、
他の抗てんかん薬との併用療法で効果を発揮します。


シナプス回路
シナプスは、神経細胞と神経細胞との連結部分を指す。
ここには“シナプス間隙”という隙間があり、信号伝達物質を介して信号が伝えられる。


てんかん発作では、神経細胞から信号伝達物質が過剰に放出され、脳が異常に興奮する事で発作が起こる。
特に強直間代発作(きょうちょくかんだいほっさ)は ‥‥てんかん(癲癇)の全般発作の一つで、意識を失い、全身が硬直する強直発作に続いて、ガクガクと痙攣する間代発作が起こる症状である。



臨床試験では、日本とアジアにおける12歳以上の難治性部分てんかん患者の部分発作‥‥すなわち、目の前が暗くなったり、動作が止まったりする発作のほか、突然意識を失い、手足が痙攣するような重い発作の患者に実施した臨床第3相試験の結果、及びグローバルでの12歳以上の、難治性全般てんかん患者の強直間代発作に対する併用療法として実施した、臨床第3相試験の結果、発作頻度が、既存の薬に「フィコンパ」を足す事で軽減された事に基づく。



「フィコンパ®」は、1日1回投与の錠剤。
てんかん発作は、神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発される事が報告されており、本剤は、グルタミン酸によるシナプス後AMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択、非競合AMPA受容体拮抗剤です。


シナプス受容体抑制
「フィコンパ®」は、AMPA受容体の活性化を阻害し、信号伝達物質の過剰伝搬を阻止する。




1) 製品名 : フィコンパ®錠2mg、フィコンパ®錠4mg
2) 一般名 : ペランパネル水和物
3) 効能・効果 : 他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の下記発作に対する抗てんかん薬との併用療法
部分発作(二次性全般化発作を含む)
強直間代発作
4) 用法・用量 : 通常、成人及び12歳以上の小児にはペランパネルとして1日1回2mgの就寝前経口投与より開始し、その後1週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増する。本剤の代謝を促進する抗てんかん薬を併用しない場合の維持用量は、1日1回8mg、併用する場合の維持用量は、1日1回8~12mgとする。なお、症状により1週間以上の間隔をあけて2mgずつ適宜増減するが、1日最高12mgまでとする。






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リゾチーム製剤の有効性認めず…消炎剤の販売中止と自主回収

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品再評価部会は3月17日、消炎酵素剤「リゾチーム塩酸塩(塩化リゾチーム)」及び「プロナーゼ」の2成分について再評価を審議し、現時点で有効性が確認出来ないと判定した。


既に昨年12月11日、リゾチーム塩酸塩(商品名:ノイチーム、レフトーゼ他)を取り扱う製薬会社各社は、再評価の試験で、「慢性副鼻腔炎」の標準治療におけるリゾチーム塩酸塩の追加効果が認められなかった為、各薬剤商品名の効能・効果から「慢性副鼻腔炎」を削除する一部変更承認申請が承認されていた。

昨年12月11日付で適応は削除されており、リゾチーム塩酸塩(塩化リゾチーム)を処方し、慢性副鼻腔炎で保険請求する事は出来なくなっている。


リゾチーム添付文書の改訂


リゾチーム塩酸塩が厚生労働省から再評価指定を受けたのは2012年1月。

同じ消炎酵素薬であるセラペプターゼ(商品名:ダーゼン他)がプラセボ(偽薬)に対する有効性を示す事が出来ず、自主回収されたのを機に、「リゾチーム塩酸塩」と「プロナーゼ(エンピナース・P)」が再評価指定を受け、臨床試験を実施していた──。

再評価の対象となったリゾチーム塩酸塩の適応は、慢性副鼻腔炎、気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症の4つ。

このうち『慢性副鼻腔炎』については、リゾチームの上乗せ効果(自覚症状、他覚所見の改善)が確認出来ず、エーザイなど製薬会社5社は、慢性副鼻腔炎の適応を削除する申請を2015年5月に行い、この申請が今回承認される事となった。



■ 2016年3月17日より、製薬会社各社は「リゾチーム塩酸塩(塩化リゾチーム)」の販売中止と自主回収を行う事を決定した。

自主回収が決定したのは以下の17品目(全て医師処方薬)。

「リゾチーム塩酸塩」
【エーザイ】
・ノイチーム錠10mg
・ノイチーム錠30mg
・ノイチーム錠90mg
・ノイチーム顆粒10%
・ノイチーム細粒20%
・ノイチームシロップ0.5%

【あすか製薬】
・アクディーム錠30mg
・アクディームカプセル90mg
・アクディーム細粒10%
・アクディーム細粒45%
・アクディームシロップ0.5%
・アクディームシロップ1%

【日本新薬】
・レフトーゼ錠10mg
・レフトーゼ錠(30mg)
・レフトーゼ錠(50mg)
・レフトーゼ顆粒10%
・レフトーゼシロップ0.5%

尚、リゾチームの軟膏製剤(リフラップ)と点眼薬(ムコゾーム、リゾティア)は対象外。



また「プロナーゼ製剤」も同様に、現時点での医療上の有用性は確認出来ないとして、以下の3品目について販売中止と自主回収を行う事を決定した。

「プロナーゼ」
【科研製薬】
・エンピナース・Pカプセル9000
・エンピナース・P錠18000
・イソパール・P配合カプセル

エンピナース・Pカプセル9000



尚、消炎酵素剤「リゾチーム塩酸塩(塩化リゾチーム)」配合の市販薬について、総合風邪薬では有効期限が2018年5月以降のものには全て塩化リゾチームは使用されていない(現在販売されている物)、ようです。
(全製品を確認していないので、総合風邪薬を薬局で購入される場合は、成分を確認するか、有効期限を確認しましょう)

鼻炎薬に関しては、大正製薬パブロン、小林製薬ブルミンでは既に配合されていません。


■ 2016年3月時点で塩化リゾチーム含有鼻炎用内服薬(OTC医薬品)。

     ・カイゲン鼻炎カプセル12(カイゲンファーマ)
     ・コンタック600プラス(グラクソ・スミスクライン) 
     ・スカイナー鼻炎N(エーザイ) 
     ・ストナリニ・サット(佐藤製薬)


上記市販薬は既に製造を終了しており、在庫限りで発売中止となります。
有効期限が2018年5月以降の製品をお買い求め下さい。

また通販などではまだ出回っていますが、これも在庫限りです。


塩化リゾチーム配合2

塩化リゾチーム配合3


尚「リゾチーム塩酸塩(塩化リゾチーム)」が配合されていても、健康に害を及ぼす事はありませんが、鼻炎薬としての効果に有効性が無いという事になります。






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1回1錠の緊急避妊薬「ノルレボ錠1.5mg」が新発売

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あすか製薬株式会社(本社:東京都港区芝浦)は4月15日、緊急避妊薬「ノルレボ錠1.5mg(一般名:レボノルゲストレル)」を新発売したと発表した。
同名薬剤はこれまでにもありましたが、従来は0.75mg錠で必ず2錠を1度に服用する必要がありましたが、今回新たに発売した「ノルレボ錠1.5mg」は、1錠の服用で済むようになります。


ノルレボ錠1.5mg


あすか製薬は、「ノルレボ錠1.5mg」について、「アドヒアランス(患者が指示された薬を適切に服用しないで治療に失敗する事)向上を目的に開発した1回1錠タイプの緊急避妊薬」としている。
これに伴い「ノルレボ錠0.75mg」は、在庫限りをもって販売を終了する。


在庫限りのノルレボ錠0.75mg
緊急避妊薬「ノルレボ錠0.75mg」は在庫消尽で販売終了。



緊急避妊薬「ノルレボ錠」は、性交時の避妊に失敗した際や、望まれない妊娠が危惧された場合に、性交後72時間以内に女性が服用する事で、避妊効果を発揮する国内初の緊急避妊薬(アフターピル)で、2011年5月に発売されました。

有効成分のレボノルゲストレル(合成黄体ホルモン)は、世界保健機関(WHO)による緊急避妊のエッセンシャルドラッグ(保険医療に最低限必要な医薬品)に指定されており、同剤による緊急避妊は国際的な標準方法になっている。


ノルレボ錠1.5mgの作用機序
【レボノルゲストレルの作用】
排卵が起こる直前、妊娠を継続させる為に、黄体形成ホルモン(LH)と呼ばれるホルモンが大量に分泌されます。
ただ、ここでプロゲステロン(黄体ホルモン)が投与されると、黄体形成ホルモン(LH)が抑えられ、その結果、排卵が起こらなったり、遅延させたりします。
レボノルゲストレルは、プロゲステロン(黄体ホルモン)と同じ作用を有している為、排卵を止めるので、受精する事はありません。



有効成分のレボノルゲストレル(合成黄体ホルモン)は、WHOによる緊急避妊のエッセンシャルドラッグ(保険医療に最低限必要な医薬品)に指定されています。

医師の診断と処方箋が必要となります。また本薬剤を服用する事で、完全に妊娠が回避出来るものではありません。
本薬剤服用後も、妊娠する可能性がありますので、適切な避妊を行って下さい。
また本薬剤の成分は、乳汁中に移行しますので、授乳中の方は服用後少なくとも24時間は授乳しないで下さい。

同剤は薬価未収載品です。保険の対象とはなりません。






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新規ALK陽性非小細胞肺癌治療薬「セリチニブ」が承認を取得

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ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区虎ノ門)は3月28日、抗悪性腫瘍薬・ALK阻害剤『セリチニブ(商品名:ジカディアカプセル150mg)』について、「クリゾチニブに抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を対象に、国内における製造販売承認を取得したと発表した。

ジカディアカプセル150mg-抗悪性腫瘍剤セリチニブ
米国・欧州等で承認されている「ZYKADIA™(ジカディア)150mg」
『セリチニブ(ceritinib capsule)』


肺がん(臨床的に治療方法の違いから、小細胞肺がん、非小細胞肺がんの2つに区別)は、男性および女性双方のがん死因の第1位で、全ての癌による死亡の約3分の1を占めています。
これは、乳がん、前立腺がん及び大腸がんの死亡合計を上回ります。


非小細胞肺癌症例写真
非小細胞肺癌のX線症例写真。

肺がんのうち、約85%は非小細胞肺がん(NSCLC)と言われており、非小細胞肺がんでは、早期発見・早期治療をすれば5年生存率は50~70%ですが、残念ながら、その内75%は診断された時点で進行又は転移が認められ、その5年生存率は、僅か6%である。

従来の標準治療である「白金併用療法」の進行非小細胞肺がんに対する奏効率は、15~35%と言われている。

進行非小細胞肺がん(NSCLC)のうち、日本人の研究者から、“EML4(微小管会合蛋白)”と“ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)”の遺伝子が融合した、「EML4-ALK融合遺伝子」が発症に大きく関与しているタイプの癌がある事が報告された。




このEML4-ALK融合遺伝子が、肺がんの強い癌化能を獲得している事を発見したのは、公益財団法人がん研究会・有明病院と、自治医科大学分子病態治療研究センター、東京大学大学院医学系研究科の共同研究グループが、2007年に発見した。

それから9年の年月を費やし、この逆位遺伝子から産生されるEML-ALK融合蛋白質を標的とした、抗悪性腫瘍薬「セリチニブ」がようやく登場する事となった──。



2番染色体のEML4-ALK融合遺伝子
「2番染色体で逆位変異するEML4-ALK融合遺伝子」

EML4遺伝子とALK遺伝子は、正常細胞では、どちらもヒト2番染色体上の極く近い位置に互いに反対向きに存在するが、両遺伝子を挟む領域が「逆位」となる事でEML4-ALK融合遺伝子が生じる。


この発見を受けて、近年、ALK受容体チロシンキナーゼ(RTK)とその発癌性変異体(ALK融合蛋白質及び特定のALK変異体)を標的とする、チロシンキナーゼ阻害薬が開発・承認されて来ました。
それが、クリゾチニブ(商品名:ザーコリ,2012年5月)、アレクチニブ(商品名:アレセンサ,2014年9月)ですが、しかし既存のALK阻害薬に対し、不耐容、効果不十分、或いは一旦効果があったものの耐性を獲得し、症状が増悪する症例も少なくないのが現状です。

ザーコリカプセルとアレセンサカプセル
(既存の非小細胞肺がん治療薬)



今回、新たに承認された抗悪性腫瘍薬「セリチニブ」は、クリゾチニブなどと同様にALKのリン酸化阻害作用により、癌細胞の増殖を抑制する、強力で、尚且つ選択的なALK阻害薬である。

これまでの日本人を含む国際共同治験、「化学療法及び既存のALK阻害薬(クリゾチニブ)の治療歴があるALK融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺がん」を対象にしたフェーズ2試験で、「セリチニブ」は奏効率37.1%(95%信頼区間:29.1-45.7%)と、高い抗腫瘍効果を示している。


セリチニブ投与後のPET写真
PET検査(陽電子放射断層撮影=ポジトロンCT)画像比較。
クリゾチニブ耐性非小細胞肺癌(左)とセリチニブ投与後(右)。
投与3.5週目で52%の腫瘍縮小。

また、脳転移を有するALK融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺がん患者において、脳転移病変に対する抗腫瘍効果が認められた。



ノバルティス ファーマによると「セリチニブ」は、クリゾチニブ投与後で化学療法未治療のALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者には投与出来るが、アレクチニブを1次治療に用いた患者には投与出来ないと言う。

尚、「セリチニブ(商品名:ジカディアZYKADIA™)」は、2014年4月に米国、2015年5月にEUで承認されて以降、2016年3月までに、アジアを含む世界50カ国以上で承認されている。
日本では2015年6月希少疾病用医薬品として指定されていた。


効能効果
「ジカディアカプセル150mg」
【効能又は効果】と【用法及び用量】







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超音波内視鏡下穿刺吸引術用新生検針「EZ Shot 3 Plus」を新発売

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オリンパス株式会社(本社:東京都新宿区西新宿)は、超音波内視鏡を用いて行われる「超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)」に使われるディスポーザブル吸引生検針「EZ Shot 3 Plus」(イージーショットスリープラス)を、4月21日から国内で販売を開始した。

ディスポーザブル吸引生検針EZ-Shot-3-Plus
ディスポーザブル吸引生検針「EZ Shot 3 Plus」


超音波内視鏡下穿刺(せんし)吸引術とは‥‥、口から超音波内視鏡を挿入し、直接内視鏡ではアクセス出来ない、膵臓、粘膜下腫瘍、リンパ節などに、内視鏡の先端から超音波を出し、粘膜下の状況を確認しながら、消化管壁を介して針を刺し(穿刺と言う)、患部の組織・細胞を吸引採取する検査方法である。

採取された組織は、顕微鏡などで良性か悪性かの病理診断を行い、治療方針を決める重要な手技である。


超音波内視鏡と胃と膵臓の位置関係
膵臓は胃の真後ろに位置する臓器。
超音波内視鏡挿入時の胃と十二指腸と膵臓の位置関係。
内視鏡先端から超音波を出し、採取位置を確認する。


今回発売する「EZ Shot 3 Plus」は、従来の製品より超音波内視鏡の先端が、大きく湾曲した状態でも挿入しやすい設計を目指したと言う。

挿入部に、柔軟なコイルシースとナイチノール針を採用。これにより、内視鏡を大きく湾曲させても抵抗の少ない挿入をサポート。


コイルシースの採用

また穿刺用の針管には、形状保持力と柔軟性の高いナイチノールを採用し、従来製よりも、急峻な角度でもスムーズな針の出し入れをサポートする。ナイチノールは弾性が高いため、優れた形状保持力を発揮。内視鏡の湾曲部を通過しても針が変形しにくく、耐久性を備えていると言う。

穿刺性についても、鋭利に加工された「メンギーニ形状」と言う針先を採用し、硬い組織でもスムーズに刺せる高い穿刺性を追求した。
また針先には、サイドホール有り、無しの両タイプを用意した。


メンギーニ形状針
メンギーニ形状針(左)と従来の針先(右)

サイドホール針先
サイドホール有りのメンギーニ形状針先

手元の操作部は、滑りにくく使いやすいハンドル形状を採用。針の先端の表面の加工も改良し、超音波下の観察での針の見えやすさを追求している。
ハンドル操作性向上
操作部を改良し、ハンドル操作性も向上している。





超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA=Endoscopic UltraSound-Fine Needle Aspiration)は、1990年初頭から欧米を中心に行われるようになった。国内では、2010年の保険収載を期に広く普及している検査法。

EUS-FNAによる採取
内視鏡生検針と膵臓嚢胞の組織採取。

EUS-FNAで、より正確な診断を行う為には、狙った部位に穿刺出来る事が求められる。

しかし、膵臓がんで多く発生すると言われる膵頭部などへは、アプローチが難しく、目標部位から僅かに外れて組織を採取しないよう、内視鏡の先端を大きく湾曲させて行う場合がある。
そのため、湾曲状態の内視鏡の中でも少ない力で滑らかに動かせ、狙った位置へ滑らずに穿刺できる必要がある。
湾曲した内視鏡でも使用可
超音波内視鏡が湾曲した時でも、滑らかな操作と穿刺が可能。

今回開発された「EZ Shot 3 Plus」は、それらのニーズに応えるために開発されたものだと述べている。



膵臓がんは、消化器がんの中で最も予後不良の癌です。
腫瘍マーカーでも、ある程度の腫瘍サイズにならないと高値にならず、早期診断が困難で、また極めて悪性度が高く、例えば2cm以下の小さな癌であっても、直ぐ周囲(血管、胆管、神経)への浸潤や、近くのリンパ節への転移、肝臓などへの遠隔転移を伴う事が多い。

膵臓がんの年間罹患数は約37,000人(部位別第7位)で、死亡者数は約28,000人(部位別第4位)と予後不良であり、早期発見が極めて重要となっている。

人間ドッグなどや、各自治体の集団検診で、胃カメラ検査の機会が増えている昨今、胃・十二指腸の検査と同時に、超音波内視鏡を併用した膵臓の検査を実施し、疑わしい症例をいち早く見つけられれば、早期診断や早期治療が可能になるのではないだろうか‥‥はてなマーク
更に改良が加えられる事を望む。




本デバイスの販売名は、『ディスポーザブル吸引生検針「NA-U200H」(愛称:EZ Shot 3 Plus:イージーショットスリープラス)』と言い、システム本体の「EU-ME2シリーズ」「GF-UCT260」と組み合わせて使用する。

尚、製造販売元はオリンパスメディカルシステムズ株式会社となる。






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国内初、ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症治療薬「カヌマ®」が製造販売承認

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アレクシオンファーマ合同会社(本社:東京都渋谷区恵比寿)は3月29日、ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(LAL-D)治療薬として、「カヌマ®点滴静注液20mg(一般名:セベリパーゼ アルファ〔遺伝子組換え〕)」の製造販売承認を取得したと発表した。

カヌマ点滴静注液20mg
世界初のライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(LAL-D)治療薬
「カヌマ®点滴静注液20mg(一般名:セベリパーゼ アルファ)」。
2015年9月EUで承認、2015年12月米国で承認。


ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(LAL-D)は、生命を脅かす遺伝性疾患で、常染色体の劣勢遺伝で生じる、急速又は慢性に進行する代謝性疾患です。
進行性の多臓器障害により、多くの重篤な症状が認められ、早期死亡に至る可能があります。


乳児の場合は、治療をしなければ疾患が急速に進行し、数ヵ月もしない内に死に至ります。乳児の生存期間の中央値は3.7ヵ月と極めて早いのが特徴です。

乳児期以降の発症では、他の肝臓疾患と同様、多くの患者で無症状のまま進行し、重症化します。その結果、肝組織の線維化、肝硬変、肝不全、アテローム性動脈硬化症が進み、心臓疾患やその他の深刻な疾患を含む、進行性の多臓器障害をもたらします。

乳児期を超えてから発症した場合、小児および成人の約50%が3年以内に、肝組織の線維化、肝硬変、肝移植に至っています。


ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症の発症年齢の中央値は5.8歳で、簡単な血液検査で診断が可能です。


ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症
真核細胞の中にリソソーム(リソゾームやライソゾームと呼ばれる事も)がある。

ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(LAL-D)は、遺伝子変異により、ライソゾーム内にあるライソゾーム酵素やタンパク質の活性が低下、もしくは欠損していて、本来代謝されるべき老廃物質が分解されずに、ライソゾーム内に過剰に蓄積し、細胞の働きに進行性の多臓器障害をもたらす疾患です。

正常なリソソームの大きさ
ライソゾームの大きさは直径0.1~1.2μmの細胞小器官。



正常なライソゾームと異常なライソゾーム
正常な働きのライソゾーム(左)と、
遺伝子変異により機能低下又は欠損したライソゾーム(右)。
分解出来ないコレステロールエステルとトリグリセリドが蓄積し黒くなる。

特に、体内の老廃物を分解する肝臓では、LAL-Dによって老廃物が蓄積し、肝臓組織の線維化、肝硬変、肝移植へと至る。


「カヌマ®点滴静注液20mg」は、ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(LAL-D)の酵素補充療法に用いる世界で初めての治療薬で、LAL-Dの病態に深く関与する酵素を標的とし、体内組織のライソゾーム内におけるコレステロールエステル及びトリグリセリドの蓄積を減少させます。

国際共同試験では、乳児の患者において生存率の向上、小児及び大人の患者においては、肝機能ALTや肝臓の脂肪量の有意な減少、及び脂質パラメータの有意な改善が認められました。

臨床試験で認められた主な副作用は、腹痛、下痢、蕁麻疹、発熱、嘔吐、悪心、頻脈など。


尚、乳児に見られるライソゾーム酸性リパーゼ欠損症は「ウォルマン病」、小児及び成人に見られる場合は、「コレステロールエステル蓄積症(CESD)」と呼称されています。






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国内初、肺動脈性肺高血圧症治療薬「ベンテイビス®吸入液10μg」が発売

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バイエル薬品株式会社社(本社:大阪市北区梅田)は5月16日、日本で初めての吸入型肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬「ベンテイビス®吸入液 10μg」(一般名:イロプロスト)の発売を開始したと発表した。
「ベンテイビス®吸入液 10μg」は、日本で初めての吸入型の肺血管拡張剤で、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での継続的な協議を経て、2010年に厚生労働省より正式に開発要請を受け開発された製品です。



ベンテイビス吸入液


肺高血圧症(PH)は、進行性で生命を脅かす深刻な心肺疾患であり、肺動脈圧が正常値よりも高くなり、心不全や死に至る場合のある疾患で、運動能力を著しく低下させ、患者の生活を制限するに至ります。一般的な症状は、息切れ、疲労、めまい、失神などで、いずれも労働作業により悪化します。

肺は、呼吸によって酸素を体内(気管支)に取り入れ、肺動脈が全身から回収した不要な二酸化炭素を"ガス交換"によって体外に除去し、新鮮な酸素を心臓を介して肺静脈中に送り出します。


肺高血圧症の症状は、固有の特徴的な症状が無いため、診断が遅れることが多く、治療開始の遅れは生命予後に悪影響を及ぼす為、早期診断と正確な肺高血圧症タイプの確認が非常に重要です。


肺高血圧症の5分類

肺高血圧症には5種類あり、その内の肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、血管収縮によって肺動脈圧が大きく上昇し、心不全や死に至る可能性がある進行性の疾患です。

肺動脈性肺高血圧症そのものは希少な疾患であり、その患者数は100万人当たり15~52人。2014年度における総登録患者数は2,946名で、多くの場合、原因は明らかではありません。

この10年に渡って、既に幾つかの治療方法が提供されているにも関わらず、患者の死亡率は、診断から1年で15%、3年で32%と依然として高くなっています。



肺高血圧症の肺血管

日本においては、特定疾患治療研究事業の対象疾患に指定されていて、新しい治療の選択肢が待ち望まれています。



「ベンテイビス®」は、バイエルヘルスケア社(本部:ドイツ,レーバークーゼン)が開発した合成プロスタサイクリン誘導体で、狭くなった肺血管を拡張し、心臓から多くの血液を肺に送り込むようにする事で、肺動脈圧を低下させ、全身への酸素供給を改善して、心臓への負担を減少させる薬剤です。

ベンテイビス_アンプル

新たに承認された「携帯型ネブライザ(吸入器)」を用いる事で、エアロゾル化した薬剤を直接、肺血管に到達させ、肺動脈圧を低下させる事が出来ます。

ネブライザ(吸入器)が携帯型であるため、患者自ら吸入する事が出来ると言うメリットがあり、2003年の発売以来、世界各国で広く使用され、長期の安全性と有効性が確認されています。


ベンテイビス吸入液


製品概要;
販売名: ベンテイビス®吸入液 10μg(マイクログラム)
一般名: イロプロスト
効能・効果: 肺動脈性肺高血圧症
用法・用量: 通常、成人にはイロプロストとして初回は1回2.5μgをネブライザを用いて吸入し、忍容性を確認した上で2回目以降は1回5.0μgに増量して1日6~9回吸入する。1回5.0μgに忍容性がない場合には、1回2.5μgに減量する。
製造販売承認日: 2015年9月28日
販売開始日: 2016年5月16日
薬価: 2,386.50円





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国内初のアルファ線放出前立腺癌治療薬「ゾーフィゴ®」販売承認を取得

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2月26日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、国内初の前立腺癌の治療薬「ゾーフィゴ®静注(一般名・塩化ラジウム【223Ra】)」について、承認の可否を審議し、正式に製造販売を了承した。

これを受けて、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は2016年5月18日に開催された総会で、本薬剤を含む新薬16成分27品目の薬価収載を了承──5月25日に収載された。



新たに製造販売承認を取得した「ゾーフィゴ®静注」は、バイエル薬品株式会社(本社:大阪市北区梅田)が製造販売する薬剤で、日本で初めてのアルファ線を放出する放射性医薬品で、骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌に対して抗腫瘍効果を発揮する。



前立腺癌は、世界の男性における癌の中で2番目に多く(1位は肺がん)、がん死亡例の約20%を占めています。
日本では人口10万人あたり28.6人が、1年間に前立腺癌と診断されており、患者数は急速に増加し、近い将来、胃がんを抜いて肺がん、大腸がんに次ぐ3番目に多い癌になると予想されている。(資料:国立研究開発法人 国立がん研究センター)



前立腺癌の原因は“遺伝子の異常”と考えられており、加齢と男性ホルモンの存在が影響しますが、未だに明確ではありません。その為、効果的な予防法も明らかではありません。

前立腺癌は、前立腺の外腺の腺上皮から発生する率が高く、初期には殆ど症状が無く、癌細胞が大きくなって尿道が圧迫されると、“尿が出にくい”“尿の回数が多い”“排尿後に尿が残った感じがする”“夜間の尿の回数が多い”など、前立腺肥大症と同じ症状が現れます。





癌細胞が尿道、又は膀胱に広がると、排尿の時の痛み、尿もれや肉眼で分かる血尿が認められ、更に腫瘍が大きくなると尿が出なくなります(尿閉)。
精嚢腺に広がると、精液が赤くなる事があります。

更に進行すると、リンパ節や骨(脊椎や骨盤骨)に転移します。リンパ節に転移すると、下肢のむくみ、骨に転移すると痛みや下半身麻痺を起こす事があります。


好発しやすい年齢は、45歳以下では稀有で、50歳以降その頻度は増え、70代では10万人あたり約200人、80歳以上では300人以上になります。このように、前立腺癌は高齢者のがんであると言えます。

前立腺癌は早期(初期)では症状が無いので、腫瘍マーカーPSA検査(前立腺特異抗原検査)で早めに診断する事が大切です。PSA検査は血液検査だけの簡単な検査法ですので、“尿が出にくい”“尿の回数が多い”“排尿後に尿が残った感じがする”“夜間の尿の回数が多い”といった症状が現れた際は、迷わず泌尿器科を受診する事をお勧めします。



前立腺は、男性ホルモン依存性の臓器であるため,前立腺癌の手術、又は放射線治療に続く薬物療法においては、内分泌療法(LH-RH作動薬+抗男性ホルモン薬)が第一選択となります。

男性ホルモンの分泌や作用を抑制する内分泌療法は、殆どの前立腺癌に対して効果を現しますが、数年後には抵抗性が生じ、この状態を去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)と呼びます。



去勢抵抗性前立腺癌の患者のおよそ10人中9人(90%)が転移性骨転移を有し、身体障害や死亡のリスクを増加させるに至ります。


「ゾーフィゴ®静注」は、日本で初めてのアルファ線を放出する放射性医薬品で、有効成分の『ラジウム-223』は、主にアルファ線を放出する放射性同位元素で、これはカルシウムと同様に、骨塩(ヒドロキシアパタイト)複合体を形成する事により、骨、特に骨転移巣を選択的に標的とする。

本剤を静脈内に注入すると、高LET(線エネルギー付与)放射線であるアルファ線は,腫瘍細胞の骨転移部位に集積して、高頻度でDNA二本鎖切断を誘発、強力な殺細胞効果をもたらす。又、アルファ線の飛程は100μm未満であるため、周辺正常組織へのダメージを最小限に抑える。



ゾーフィゴ_カルシウム同属アルカリ土類金属
「ゾーフィゴ」は、カルシウムと同族のアルカリ土類金属であり、
骨転移部位など骨代謝の亢進した部位に集積する特性を有します。


ゾーフィゴ_高LET放射線-線エネルギー付与
「ゾーフィゴ」は、高LET(線エネルギー付与)放射線であるアルファ線を放出し、
隣接する腫瘍細胞のDNA二重鎖を切断することにより、
骨転移に対して抗腫瘍効果を示します。


ゾーフィゴ_アルファ線の組織内飛程
アルファ線の組織内飛程は100μm未満と短いことから、
骨髄など周辺の正常組織における吸収線量は限定的です。



■効能・効果
   骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌

■成分
   1バイアル(5.6mL)中、塩化ラジウム(223Ra)としてラジウム223を6,160kBq(キロベクレル)含有

■用法・容量
   成人には通常、1回に1キログラム当たり55キロベクレルを4週間間隔で6回まで、静脈内に注入する。

ゾーフィゴ®は、2013年にEU及び米国で発売以来、世界40カ国以上で使用されており、安全性と有効性が確認されている。








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A型ボツリヌス毒素製剤「ボトックスビスタ」が目尻の表情皺の適応追加取得

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アラガン・ジャパン株式会社(本社:東京都渋谷区)は5月23日、A型ボツリヌス毒素製剤「ボトックスビスタ®注用50単位」が、65歳未満の成人における目尻の表情皺(シワ)の効能・効果に対して、適応追加承認を取得したと発表した。

「ボトックスビスタ®」は2009年1月、「65歳未満の成人における眉間の表情皺」を効能・効果として厚生労働省より国内で唯一、製造販売承認を取得した。

今回の「65歳未満の成人における“目尻の表情皺”」の新たな適応追加は、2010年11月にグラクソ・スミスクライン株式会社からアラガン・ジャパン株式会社に製造販売承認が承継された事を受け、臨床試験を開始。「眉間の表情皺」に続く、「目尻の表情皺」の効能・効果について承認を取得するに至った。





A型ボツリヌス毒素製剤は、、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)により産生されるA型ボツリヌス毒素を有効成分とする筋弛緩剤である。

1973年に「斜視」の薬物療法を検討する目的でサルの眼筋に投与した所、全身性の毒性を発現する事なく、持続的な効果が認められ、これを契機に、A型ボツリヌス毒素の筋弛緩作用を臨床応用する試みが進められた。

「ボトックスビスタ®/ボトックス®」は、1989年に米国アラガン社が、アメリカ食品医薬品局(FDA)より承認を取得して以来、現在までに世界91ヵ国で承認されている。


美容医療用A型ボツリヌス



国内においては、グラクソ・スミスクライン株式会社が1996年に、「*眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」を効能・効果として輸入承認。
その後、2000年に「*片側顔面痙攣」、2001年に「*痙性斜頸」の追加効能が承認された。

2005年12月13日からは、グラクソ・スミスクライン株式会社が開発権及び販売権の供与を受け、2008年10月には「ボトックス®注用50単位」の剤形が承認され、更に2009年2月に「2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足」、2010年10月に「*上肢痙縮、*下肢痙縮」、2012年11月に、「重度の*原発性腋窩多汗症」、2015年6月に「*斜視」の追加効能が承認されている。



本薬剤の「眉間又は目尻の表情皺を含む除皺」については、カナダ、オーストラリア、米国、フランスをはじめ、世界80ヵ国以上で承認されている。
尚、本邦での承認条件に基づき、アラガン・ジャパン株式会社では「ボトックスビスタ®注用50単位」の適正で安全な使用を目的として、以下の対策を実施している。




【用法・用量】
  眉間の表情皺:
通常、65歳未満の成人にはA型ボツリヌス毒素として合計10~20単位を、左右の皺眉筋に各2部位(合計4部位)及び鼻根筋1部位に均等に分割して筋肉内注射する。
症状再発の場合には再投与する事が出来るが、3ヵ月以内の再投与は避ける事。

眉間の表情皺の注射部位



  目尻の表情皺:
通常、65歳未満の成人にはA型ボツリヌス毒素として合計12~24単位を、左右の眼輪筋の外側に各3部位(合計6部位)に均等に分割して筋肉内注射する。
症状再発の場合には再投与する事が出来るが、3ヵ月以内の再投与は避ける事。

目尻の表情皺の注射部位


【基本的な注意事項】
  ■  妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦には投与しないこと。外国において、ボトックス注用を投与された患者で胎児死亡が報告されており、また、本剤は動物実験で妊娠及び胎児への影響が認められている。
  ■ 小児等に対する安全性は確立していない
  ■ 過量投与:投与部位及び周辺部位に過剰な薬理反応である脱力、筋肉麻痺等の局所性の副作用が現れる事がある。
  ■ 効果持続時間の中央値(最大緊張時でのCFLの程度が「なし」または「軽度」)は44単位群で113.5日、32単位群で115.0日であった。
  ■ 薬価基準未収載(保健適応外)。
  ■ 注用100単位は「眉間又は目尻の表情皺を含む除皺」の美容医療への使用は承認されていません。

【重要な基本的注意】
今回承認された「ボトックスビスタ®」を、“眉間の表情皺及び目尻の表情皺”以外の適応に対して絶対に使用しない事。

*眼瞼痙攣、*片側顔面痙攣、*痙性斜頸、*上肢痙縮、*下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う*尖足、重度の*原発性腋窩多汗症及び*斜視の適応に対しては、「ボトックス®注用50単位又はボトックス®注用100単位」を用い、添付文書を熟読して使用する事。これら以外の適応には安全性が確立していないので絶対使用しない事。



【用語解説】
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)=両方の瞼(まぶた)の筋肉が攣縮を起こし、瞼が開けにくく不随意に眼瞼が瞬きする状態。
片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん)=片側の顔面がピクピクと痙攣を起こす不随意運動の一つ。
痙性斜頸(けいせいしゃけい)=首が左右上下のいずれかに傾く、捻じれる、震えるといった不随意運動。
上肢痙縮・下肢痙縮=手と腕、又は足の不随意運動。
尖足(せんそく)=足首の関節が直角より大きく伸びきり、足先が足の裏の方に屈曲した状態。
原発性腋窩(えきか)多汗症=脇の下からの重度の多汗症。
斜視(しゃし)=目の筋肉の異常の為、一方の目がある目標を直視する時、他方の目がそれとは別方向を見るもの。両眼の視線が正しく見る目標に向かわない状態。

上記疾患には「ボトックスビスタ®注用50単位」は使用できません。

ボトックス注用50と100単位

各科専門医の疾患判断で、保険適用される「ボトックス®注用50単位又はボトックス®注用100単位」(処方箋医薬品)が使用されます。

「ボトックスビスタ®注用50単位」による「眉間の表情皺」と「目尻の表情皺」の除皺治療は、美容外科のほかに皮膚科でも実施しています。







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抗悪性腫瘍剤「アバスチン®」が進行又は再発の子宮頸癌での効能・効果追加の承認取得

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中外製薬株式会社(本社:東京都中央区)は5月23日、既に「手術不能又は再発乳癌、卵巣癌、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌、扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、悪性神経膠腫」に対する効能・効果として販売を行っている、抗VEGFヒト化モノクローナル抗体ベバシズマブ(遺伝子組換え)抗悪性腫瘍剤──販売名『アバスチン®点滴静注用100mg/4mL、同400mg/16mL』について、厚生労働省より「進行又は再発の子宮頸癌」に対する効能・効果で、追加の製造販売承認を取得したと発表した。

本薬剤は、2015年9月14日に、「進行又は再発の子宮頸癌」を予定効能・効果として希少疾病用医薬品に指定され、優先審査を受けていた。



アバスチン100mgと400mg


今回の追加承認取得は、海外で実施した第III相臨床試験(GOG-0240試験)、及び国内第II相臨床試験(JO29569試験)の成績に基づいており、「治療抵抗性、再発又は転移性子宮頸がん」の患者452人を対象として実施されました。


海外第III相臨床試験(GOG-0240試験)では、標準化学療法(“パクリタキセル”と“シスプラチン”、又は“パクリタキセル”と“ノギテカン”)単独群と、標準化学療法にプラス、「アバスチン」併用群の有効性と安全性を比較検討された。

その結果、アバスチン併用群では、主要評価項目である全生存期間の有意な延長が認められ、標準化学療法単独群に比べOS(全生存期間)中央値が3.9カ月延長し、統計学的に有意に死亡リスクが26%減少しました。





国内第II相臨床試験(JO29569試験)では、8名の患者が登録され、試験治療開始前に中止となった1例を除く7名の進行・再発子宮頸がん患者において、「アバスチン」と「パクリタキセル」及び「シスプラチン」併用時の忍容性、安全性を検討した。

その結果、併用療法で忍容性が確認されると共に、安全性については問題となる有害事象は認められませんでした。




「アバスチン®」は、血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とした抗VEGFヒト化モノクローナル抗体である。
血管内皮増殖因子(VEGF)と結合し、VEGFの受容体への結合を阻害する事で、血管新生を抑制し、癌細胞への栄養供給を遮断、その結果として腫瘍の増殖を抑制する。



▲国立がん研究センター がん対策情報センターがん統計研究部の祖父江友孝氏、同・雑賀公美子氏、大阪府立成人病センター がん予防情報センター企画調査課の井岡亜希子氏、同・津熊秀明センター長、山口大学医学部地域医療推進学講座の福田吉治氏ら、15名共著書『がん・統計白書2012』によると、
 日本において子宮頸がんの新規罹患患者数は年々増加しており、2015から2019年の年間平均新規罹患患者数は10,600人と推計されている。今後3年間で、更に、31,800人の新規子宮頸がん患者が増えると予想される。




食生活が欧米化する事で、日本人全体の免疫能力や、腫瘍阻止能力を持つ、がん抑制遺伝子の活動が低下しつつあると考えられる。
食生活が豊かになると、癌患者が増える────と言う何んとも皮肉な結果になってしまっている。




「アバスチン」は、欧州では進行期乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、腎癌、卵巣癌、子宮頸癌の適応で──、米国では大腸癌、非小細胞肺癌、腎癌、再発膠芽腫、子宮頸癌、再発卵巣癌の適応症で承認を受けている。
尚、アバスチンの子宮頸がんに係る効能・効果は、欧米をはじめとする67の国と地域(2016年1月末現在)において承認されています。



追加された効能・効果
【販売名】
:アバスチン®点滴静注用100mg/4mL, アバスチン®点滴静注用400mg/16mL
【一般名】:ベバシズマブ(遺伝子組換え)
【効能・効果、用法・用量】:進行又は再発の子宮頸癌;
 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として1回15mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は3週間以上とする。


(参考)手術不能又は再発乳癌
 パクリタキセルとの併用において、通常、成人にはベバシズマブ(遺伝子組換え)として1回10mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は2週間以上とする。



中外製薬は、「アバスチンが、治療選択肢が限られ、過去10年間治療成績の進展が見られなかった進行又は再発の子宮頸癌の患者さんの治療に福音をもたらす事を期待しています」とのコメントを発表した。






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