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抵抗性又は難治性白血病治療薬「アイクルシグ®錠」が製造販売承認を取得

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大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区神田司町)は9月28日、既存の分子標的薬であるBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病(CML)と、再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)の治療薬「アイクルシグ®錠15mg(一般名:ポナチニブ塩酸塩)」の、国内における製造販売承認を取得したと発表した。

この「アイクルシグ®錠」(一般名:ポナチニブ塩酸塩)について厚生労働省は9月29日、国内での治験症例が極めて限られている事から、使用に当たって、心筋梗塞などの血管閉塞性事象、肝毒性といった重篤な副作用が表れる事がある旨の、留意事項を周知する通知を発出した。



アイクルシグ錠15mgポナチニブponatinib
「アイクルシグ®錠15mg(一般名:ポナチニブ塩酸塩,ponatinib)」


慢性骨髄性白血病(CML)及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)は、どちらもフィラデルフィア染色体異常によって発生する血液腫瘍です。

慢性骨髄性白血病は、殆どの場合、第9番染色体と第22番染色体が途中で切断され、それぞれ相手方の染色体と結合する「染色体転座」によって、異常なタンパク質を生じる事で発病します。


フィラデルフィア染色体
この転座した異常な染色体を「フィラデルフィア染色体」と呼び、
発症原因は、この異常な染色体からBCR-ABLタンパク質が産生され、
これが造血幹細胞を無制限に増殖させ、白血病の原因となります。

しかし何故、染色体転座が起こるのかは分かっていません。


一方、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病は、リンパ球が癌化し増殖する血液腫瘍の中で、成人の約30%に認められる、「染色体転座」によってフィラデルフィア染色体を有する急性リンパ性白血病の症状の事を言います。

既存の3種類のチロシンキナーゼ阻害薬
既存のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の治療効果。
3剤とも治療効果は高いが、副作用がひどく、薬を飲み続けられない「不耐容」が生じる。
治療抵抗性によって薬剤を変えても、最終的に投与が中止される場合も。


抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病(CML)や、再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)の治療には、第一選択薬として、BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が使用されます。

チロシンキナーゼ阻害薬の作用機序
しかし治療中に、BCR-ABL遺伝子変異による、変異型のBCR-ABLチロシンキナーゼが発現します。

この変異型のBCR-ABLチロシンキナーゼは、既存のチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性を示す為、十分な治療効果が得られなくなる場合がある。
また、既存のチロシンキナーゼ阻害薬の治療で発現する副作用により、約8%の患者で治療を継続出来ず、投与が中止される場合もあります。


従って、これら治療抵抗性や不耐容の患者においては、これまでと異なる新しい治療薬が望まれていました。



ポナチニブ作用機序
「アイクルシグ®錠15mg(一般名:ポナチニブ塩酸塩)」の作用機序。


「アイクルシグ®錠」は、米国アリアド・ファーマシューティカルズ社が創製した経口BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)で、特に既存のTKIへの抵抗性の原因となる、『T315I』変異による変異型チロシンキナーゼを阻害します。

『T315』が『T315I』に変異したBCR-ABLチロシンキナーゼを有する、慢性骨髄性白血病、及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に効果を示します。




「ポナチニブ」Iclusigアイクルシグ
Iclusig®(FDA=米国食品医薬品局)
米国では15mg錠と45mg錠が販売。
本薬剤は2012年に「Iclusig®」として米国で、2013年に欧州で承認を取得しました。
大塚製薬は、2014年に米国アリアド・ファーマシューティカルズ社から、アジア10カ国/地域における本剤の共同開発・商業化の権利を取得。

尚、「アイクルシグ®錠」は国内において希少疾病用医薬品の指定を受け、2016年1月に製造販売承認を申請していたものです。



今回、異例の早さで承認を取得した背景には、9月23日に国立がん研究センター・先進医療評価室が公表した、『国内で薬事法上未承認・適応外である医薬品について』と言う“未承認薬データベース”の結果が表れているのではないか…?
とも思われる。

それが『米国か欧州で承認され、日本未承認である、がん領域の医薬品数の推移~領域別~』と言う下表のデータ。


米国と欧州で承認され日本未承認薬の数
“ドラッグラグ”とも呼ばれている承認医薬品の時間差。
海外で開発・承認された薬が、日本国内で厚生労働省に承認され
医療現場で使用可能になるまでの期間や時間差の事。

この中で最も“ドラッグラグ”が深刻なのが、血液がんの治療薬で25品になり、日本で発売されていない為、海外から取り寄せるケースも多い。

未承認薬・適応外薬は基本的に米国での価格が反映されるので、一カ月当たり600万円を超す例もある。


このような背景から、大塚製薬は「アイクルシグ®錠15㎎」について、治療の選択肢が限られている患者に、倫理的観点から一日でも早く本剤が届けられるように、承認後から薬価基準収載までの期間、本剤の国内第Ⅰ/Ⅱ相試験実施施設の内、薬剤提供が受け入れ可能である一部の施設にて、「アイクルシグ®錠15㎎」の無償提供を実施する。

本剤の承認条件に従い、製造販売承認後、一定期間全ての症例で使用成績調査(全例調査)を実施し、使用実態下での有効性、安全性に関する情報を蓄積し、本剤の適正使用を更に進めるとしている。



【効能・効果】
◆ 前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病
◆ 再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病

【用法・用量】
◆ 通常、成人にはポナチニブとして45mgを1日1回経口投与する。尚、患者の状態により適宜減量する。

「アイクルシグ®錠15㎎」の薬価収載前無償提供に関するお問い合わせ先は…
◆◆ 電話番号:0120-983-688 ◆◆
◆◆ 受付時間:9時~17時(土・日・祝日・休業日を除く)◆◆







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抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」が製造販売承認を取得

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《超高額がん治療薬オプジーボ、最大25%値下げ》

オプジーボ薬価25%引き下げ超高額薬剤で医療保険財政への打撃を指摘されて来た抗癌剤「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」が、2018年度に予定される定期的な薬価改定を待たずに、緊急的に引き下げる案を、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会が4日提案した事を受けて、厚生労働省の中央社会保険医療協議会・薬価専門部会が、薬価を引き下げる案を提示し、診療側(日本医師会)・支払側(全国健康保険協会)とも大筋で了承した。
最大で25%引き下げる方向で検討する。「オプジーボ」は1年間使うと、最高1人当たり約3500万円掛かる。


さすがに高過ぎると、「いい加減な薬価決定をするな」と、財務省が厚生労働省に文句を言った形となった。



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MSD株式会社(本社:東京都千代田区九段北)は9月28日、根治切除不能な悪性黒色腫に対する効能・効果について、抗悪性腫瘍剤/ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(抗PD-1抗体)「キイトルーダ®点滴静注20mg、及び100mg」(一般名:ペムブロリズマブ,遺伝子組換え)の製造販売承認を取得したと発表した。

抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ(keytruda®)点滴静注」は、米製薬大手メルク社が開発している免疫チェックポイント阻害薬で抗PD-1抗体製剤。
癌抗原特異的なT細胞の活性化、及び癌細胞に対する細胞傷害活性を増強し、腫瘍の増殖を抑えるとされる。



キイトルーダ keytruda-100mg
抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ(keytruda®)点滴静注」


「キイトルーダ」は、がん免疫チェックポイント阻害薬としては、既発売で高額過ぎると問題になっている、抗PD-1抗体の「オプジーボ」、抗CTLA-4抗体の「ヤーボイ」に続く3番手となる。
また同じクラスの抗PD-1抗体としては、抗がん剤「オプジーボ」に次ぐ2番手で、作用機序で競合薬となり、「オプジーボ」のライバル製品が国内で初めて登場する事になる。





悪性黒色腫の症例写真(上)と
悪性黒色腫の進行期別の浸潤度(下)。

悪性黒色腫の症例写真
悪性黒色腫の進行期

皮膚がんの一種である悪性黒色腫は、国内で約4,000人が罹患し、1年間で約600人が死亡しています。
切除不能、又は転移性の悪性黒色腫の予後は依然として悪く、治療の選択肢も限られています。




「キイトルーダ」は、免疫チェックポイント阻害薬で抗PD-1抗体。がん抗原のT細胞に特異的に発現する、PD-1受容体の活性化を阻害し、がん細胞に主に発現するリガンドPD-L1及びPD-L2の相互作用を阻害する事で、腫瘍細胞のアポトーシス(細胞自死)活性を増強して、腫瘍の増殖を抑えるとされる。


「キイトルーダ®点滴静注20mg、及び100mg」の
免疫チェックポイント阻害作用機序。

T細胞の通常の免疫反応

矢印下向き

T細胞不活性化による腫瘍回避

矢印下向き

T細胞がKEYTRUDAによって活性を復活


「キイトルーダ」は、国内において悪性黒色腫以外に、非小細胞肺がんにも承認申請されており、2017年前半にも判断が下される見通しで、いずれも「オプジーボ」と対象疾患が重なり競合するが、両薬剤の悪性黒色腫に対する効果の優劣は、現時点では明らかになっていない。

また本薬剤は国内において、乳がん、肺がん、膀胱がん、大腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中で、特に、治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する効能・効果について、厚生労働省から『先駆け審査指定制度』施行後初めての対象品目の一つに指定されている。



同様の免疫チェックポイント阻害薬は、現在、ロシュ社(スイス)、アストラゼネカ(英国)、米ファイザー社などでも開発中で、米国において悪性黒色腫を対象とした承認は、「キイトルーダ」の方が「オプジーボ」より先に承認されているが、日本国内では逆になってしまった。

その結果、「オプジーボ」を使用する医師が急増し、同時に患者数も激増した。



【抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®(Keytruda®) の製品概要】

【製品名】
◆キイトルーダ®点滴静注 20mg
◆キイトルーダ®点滴静注 100mg
【一般名】: ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)
【効能・効果】: 根治切除不能な悪性黒色腫
【用法・用量】: 通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回2mg/kg(体重)を3週間間隔で30分間かけて点滴静注する。
【承認申請日】:2015年12月22日
【承認取得日】:2016年9月28日

「キイトルーダ®」の製造販売はMSDが行い、大鵬薬品工業株式会社と共同してプロモーションを行う。


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《若年進行性転移性のトリプルネガティブ乳がん患者を対象とした
エンザルタミド併用第III相試験》

アステラス製薬株式会社は2014年12月17日、経口アンドロゲン受容体阻害剤「エンザルタミド」の第1/2相臨床試験を、ステージ1/2の患者で実施し、その結果を踏まえ、2016年06月03日、第3相試験のための治験患者の登録を開始している。

トリプルネガティブ乳がんは、ホルモン受容体陽性乳がんと比較して、悪性度が高く、予後不良である事が知られ、遠隔転移や骨転移の場合、抗がん剤の複数療法は患者のQOLが著しく低下し、現実的ではなく、化学療法以外の薬剤との併用が探索されています。

「エンザルタミド」は経口アンドロゲン受容体阻害剤で、転移性前立腺がんの適応で承認されていますが、アステラス製薬は「エンザルタミド」とタキソール(一般名:パクリタキセル)との併用で、病勢進行の抑制への有効性と安全性を評価する第3相試験を実施する。

治験患者の登録数は予定数に達したと報じられており、第3相試験が間もなく始まるものと思われる。

トリプルネガティブ乳がんは、進行が早い為、LH-RHアゴニストの使用より、卵巣の切除術の方が有効とされているが、国内では卵巣切除術は認められていない。
骨転移については、放射性塩化ラジウム(Ra223)医薬品「ゾーフィゴ」が有効とされているが、海外では既に臨床試験が開始されているものの、日本国内では骨転移を有する前立腺がんのみの適応で、乳がんでの臨床試験は行われていない。

しかし卵巣切除術も、「ゾーフィゴ」の適応外使用も、患者次第で不可能ではないと思われる。







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下垂体機能障害に伴う無排卵症排卵誘発剤「オビドレル皮下注シリンジ」が国内承認

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厚生労働省は9月28日、メルクセローノ株式会社(本社:東京都目黒区下目黒)のコリオゴナドトロピンアルファ(遺伝子組換え)製剤「オビドレル®(Ovidrel®)皮下注シリンジ250μg」について、“視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵又は希発排卵における排卵誘発及び黄体化”と、“生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化”の効能又は効果で、製造販売を承認した。


オビドレル皮下注シリンジ250μg
「オビドレル®皮下注シリンジ250μg」
(OVIDREL® injectable)



効能・効果の、“視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵又は希発排卵における排卵誘発及び黄体化”と、“生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化”とは―――

脳の視床下部にあって、7種類のホルモンが分泌されている下垂体前葉から、ゴナドトロピンと呼ばれる排卵や妊娠に必要な黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されるが、何らかの機能障害によってゴナドトロピンの分泌が明らかに欠乏した場合、無月経、無排卵周期症、稀発月経などの無排卵症になり、成熟卵胞の排卵を認めない状態の事。


下垂体機能障害による無排卵症


これまで日本では、無排卵性不妊症治療薬として、ヒト尿由来絨毛性性腺刺激ホルモン(u-hCG)製剤が30年以上、又、排卵誘発剤としてヒト下垂体性性腺刺激ホルモンhMG(FSH)-hCGが無排卵症などの効能・効果で使用されて来ました。


オビドレルOvidrel_injection_use

今回新たに承認された「オビドレル®(Ovidrel®)皮下注シリンジ250μg」は、遺伝子組換えヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(r-hCG)製剤であり、ヒト尿由来製剤より安定的に供給出来るといった利点がある。



【本剤の組成・性状(1本中含量)】
有効成分:コリオゴナドトロピン アルファ(遺伝子組換え)250μg

【用法及び用量】
コリオゴナドトロピンアルファ(遺伝子組換え)として250μgを単回皮下投与する。
注意事項:血清エストラジオール濃度や超音波検査により十分な卵胞の発育を確認した上で投与する事。

【投与の際の注意】
本剤の投与に当たっては、患者及びパートナーの検査を十分に行い、本剤の投与の適否を判断する事。特に、甲状腺機能低下、副腎機能低下、高プロラクチン血症及び下垂体又は視床下部腫瘍等が認められた場合、当該疾患の治療を優先する事。
 尚、排卵誘発及び黄体化の場合、本剤の投与対象は、WHOグループⅠ又はⅡ(多嚢胞性卵巣症候群を含む)に相当する排卵障害である。

◎ 本剤は、不妊治療に十分な知識と経験のある医師が使用する事。
◎ 本剤投与により、予想されるリスク及び注意すべき症状について、あらかじめ患者に説明を行う事。







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日本初、経口抗凝固薬特異的中和剤「プリズバインド®静注液」が製造販売取得

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日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区大崎)は9月28日、直接トロンビン阻害剤プラザキサ®(ダビガトラン)の特異的中和剤「プリズバインド®静注液2.5g〈一般名:イダルシズマブ(遺伝子組換え)製剤〉」の製造販売承認を取得したと発表した。

直接トロンビン阻害剤やXa因子阻害剤などの、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC:Direct oral anticoagulant)に対する特異的中和剤の製造販売承認取得は、日本初となる。



プリズバインド静注液2.5g_EMA名Praxbind
DOAC特異的中和剤イダルシズマブ製剤「プリズバインド®静注液2.5g」
EMA:欧州医薬品庁承認名「Praxbind®(Idarucizumab®)」


「プリズバインド®」は、頻度は非常に低いものの、経口抗凝固薬「プラザキサ」を服用中に、生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時や、重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時において、ダビガトラン製剤(プラザキサ)の抗凝固作用を迅速に中和する必要がある場合に使用される。


経口抗凝固薬「プラザキサ」は、 血栓(血の塊り)が出来にくい状態にする抗凝固薬で、心房細動(突発的な不整脈)患者における脳卒中発症抑制を適応とする薬剤で、肺塞栓症、静脈塞栓症、心筋梗塞、脳血栓なども含まれます。

血栓防止には、これまでは長年、標準抗凝固薬の「ワルファリン」が使われて来ましたが、定期的な血液検査が必要な事や、ビタミンKを含む食物(納豆など)との相互作用があり、食事に注意が必要などの制約があった。


ワルファリンとプラザキサの比較

これに対して「プラザキサ」は、定期的な血液検査や納豆などの摂取を制限しなくても良い薬剤として、約50年ぶりに登場した新薬でしたが、「ワルファリン」から「プラザキサ」に切り替えて服用する患者が増えるに伴い、「プラザキサ」を服用中に、血痰や鼻血、肺出血、消化管出血など、全身から大量の出血を来たし、呼吸不全で死亡する事例が複数発生しました。



血小板凝集・血管壁を修復
本来、血液凝固は血管の損傷部位に血小板が凝集して、傷を塞ぐのだが、この凝集が心臓や脳の血管で起こると、血液の流れが滞り、血栓となって血管を塞ぎ、心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすくなる。
このような傾向の患者に対して、凝集・凝血を抑制するのが抗凝固薬である。



こうした事から、『生命を脅かす出血、又は、止血困難な出血の発現時や、重大な出血が予想される緊急を要する手術、又は処置の施行時において、「プラザキサ(ダビガトラン製剤)」の抗凝固作用を、迅速に中和する薬剤の必要に迫られていました。


イダルシズマブの作用機序

DOAC特異的中和剤「プリズバインド®」は、ヒト化抗体断片化で、血液凝固阻止剤「プラザキサ」の成分であるダビガトランに特異的に結合し、凝固カスケード(連鎖反応)を妨げる事なく抗凝固作用を中和します。

今回、国内で初めて承認された「プリズバインド®静注液2.5g」は、ドイツに本社を置く、ベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim)社の研究者らによって創薬・開発され、その研究プログラムは、経口抗凝固薬「プラザキサ」が日本で製造販売承認を取得した2011年より前の、2009年に開始された。
米国、欧州、カナダでは2015年に「Praxbind®」の製品名で承認を取得している。

尚、日本での本剤の対象患者数は推定100人/年間だと言う。
本中和剤の登場で、抗凝固薬「プラザキサ」を服用している患者が、大きな外科手術や帝王切開などで大量出血した場合でも、迅速に抗凝固作用を中和し、止血処置が可能となると期待される。



【承認内容の概要】
【販売名】:プリズバインド®静注液2.5g
【一般名】:イダルシズマブ(遺伝子組換え)製剤

【効能・効果】:以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和
 ◎生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時
 ◎重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時

【用法・用量】:通常、成人にはイダルシズマブ(遺伝子組換え)として1回5g(1バイアル2.5g/50mLを2バイアル)を点滴静注又は急速静注する。但し、点滴静注の場合は1バイアルにつき5~10分かけて投与する事。

【医】:新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。






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フェキソフェナジン配合剤など3成分が第2類医薬品に

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厚生労働省は10月19日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第36条の7 第1項第1号及び第2号の規定に基づき、厚生労働大臣が指定する第1類医薬品及び第2類医薬品の一部を改正する件」が告示され、下記の通り、リスク区分が第1類医薬品又は要指導医薬品から変更になった一部改正医薬品を、各都道府県衛生主管部(局)長宛てに通知しました。

これまで第1類医薬品に区分されていた、下記の医薬品名について、第2類医薬品指定に移行。

◆ フェキソフェナジン(フェキソフェナジン塩酸塩)
   ◎配合商品名『アレグラFX』
 
◆ アシタザノラスト(アシタザノラスト水和物)
   ◎配合商品名『アイフリーコーワAL』

◆ セチリジン(セチリジン塩酸塩)
   ◎配合商品名『ストナリニZ』、『コンタック鼻炎Z』



アレグラFX第2類へ変更
『アレグラFX』(フェキソフェナジン)

アイフリーコーワAL第2類へ変更
『アイフリーコーワAL』(アシタザノラスト)

ストナリニZ第2類へ変更
『ストナリニZ』(セチリジン)

コンタックZ第2類へ
『コンタック鼻炎Z』(セチリジン)

これらの市販薬は、薬剤師などのいないドラッグストアでも第2類医薬品として、購入できるようになりました。

この改正により、リスク区分が第1類医薬品から変更になった医薬品については、薬剤師のほか、登録販売者による販売が可能となる事から、新区分に応じた適切な情報提供が行われるよう、指導される旨も併せて通知された。




指定第2類へ移行
イブプロフェン(1日最大用量600mgのもの)

また、イブプロフェン(1日最大用量600mgのもの)については、リスク区分の検討の結果、
「医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第159条の2の表第2号に規定する期間終了後、平成28年10月19日より、指定第2類医薬品とする事とされたが、既にイブプロフェンは指定第2類医薬品として分類されている為、一般用医薬品の区分リストの変更はない。

イブプロフェン(1日最大用量600mgのもの)に関しては、現在、要指導医薬品(第1類)に指定されているが、指定第2類医薬品に移行した。




【要指導医薬品とは‥‥】
薬局での販売時に、薬剤師による対面での情報提供・指導が義務付けられた医薬品の事。
平成25年(2013年)改正薬事法で規定され、医療用医薬品から一般用医薬品に移行したばかりで(スイッチOTC)、市販第四相臨床試験(3年)での安全性評価が終わっていない市販薬と劇薬がこれに相当する。

【OTCとは‥‥】
「Over The Counter」の略で、街の薬局のカウンター越しに売られる薬と言う意味で、これまでは医師の判断でしか使用できなかった医薬品を、薬局で買えるようにしたのがスイッチOTC薬です。








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歯周組織再生剤「リグロス®歯科用液キット」の製造販売承認を取得

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科研製薬株式会社(本社:東京都文京区)は9月28日、歯周組織再生剤「リグロス®歯科用液キット600µg/1200µg(一般名:トラフェルミン(遺伝子組換え))」について、「歯周炎による歯槽骨の欠損」の効能・効果で製造販売承認を取得したと発表した。

組換え型ヒトbFGF
有効成分の組換え型ヒト塩基性線維芽細胞成長因子
「bFGF」

「リグロス®」は、遺伝子組換え型ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF※)を有効成分とする、世界初の歯周組織再生医薬品製剤で、褥瘡(じょくそう=組織が壊死)や皮膚潰瘍に用いるフィブラストスプレーの主成分であるトラフェルミンが、表皮形成などを促す作用によって、手術により歯肉を剥離し、歯根、歯槽骨を露出させ、処置が必要な重度の『歯周病』に用いる。

     ※bFGF(basic fibroblast growth factor; 塩基性線維芽細胞成長因子)とは…
【元来、生体内に存在し、細胞の増殖や分化の調節を行っているタンパク質の一種。 皮膚、血管、骨、軟骨と言った、様々な組織の形成に強く関与している、細胞成長因子の1つで、種々の細胞の増殖作用、及び血管新生作用を持つ事から、再生医療の分野で期待されている物の1つである】



歯周炎、又は歯周病は、主に歯と歯ぐきの間に付着した"プラーク"や"歯石"によって生じる慢性炎症疾患です。
症状が進むと、炎症の進行と共に、歯を支えている歯槽骨などの歯周組織が徐々に破壊され、これをそのまま放置すると最終的には抜歯に至る事があります。



歯槽骨の歯周炎

矢印下向き

虫歯は、歯のエナメル質や象牙質などの硬組織が侵食される疾患ですが、
歯周炎は、歯周組織である歯肉、セメント質、歯槽骨、歯根膜が徐々に破壊される疾患。
矢印下向き


歯槽骨の欠損

進行した歯周炎(歯周病)では、歯周組織の破壊を阻止する為に、「フラップ手術(歯肉剥離掻爬(そうは)手術)」と呼ばれる外科手術が実施される場合があります。

この手術は、メスで歯肉(歯ぐき)を切開して、歯肉を歯槽骨から剥離し、歯根及び歯槽骨を露出させたのち、"プラーク"や"歯石"、及び炎症によりダメージを受けた"歯肉などの組織"を取り除いた後、剥離した歯肉を元の状態に戻し、縫合するものです。


フラップ手術の手順と処置
フラップ手術の手順


悪化した歯周炎(歯周病)で、歯ぐきを形成する歯槽骨が欠損した場合、「フラップ手術」では病気の進行は止められても、骨は失われたままの為、歯周組織本来の構造と機能は復元されませんでした。


歯周炎の進行度

これまで様々な方法で歯周組織の再生が試みられて来ましたが、骨の欠損部の歯槽骨の形成スピードより歯肉の増殖スビートの方が早く、本来再生される組織に歯肉が侵入するため、決め手となる有効な治療法が見いだせませんでした。



科研製薬では、約1,000名の「フラップ手術」を施行する歯周炎患者を対象とした、複数の臨床試験を日本国内で実施。
その結果、手術時に「リグロス®」を歯槽骨欠損部に塗布する事で、歯槽骨の増加など歯周組織再生に対する有効性・安全性が確認され、これ受けて2015年10月に製造販売承認申請を行っていた。



「リグロス®歯科用液キット600μg/1200μg」は、手術時に歯槽骨の欠損部に塗布し(単回使用)、縫合した後に、内部で歯周組織の欠損部にある幹細胞の増殖が促される事で、歯周組織の再生を促進すると考えられている薬剤です。

◎新投与経路医薬品。再審査期間6年。


【承認内容の概要】

【販売名】:リグロス®歯科用液キット600µg、歯科用液キット1200µg
【一般名】:トラフェルミン(遺伝子組換え)
【効能・効果】:歯周炎による歯槽骨の欠損

【効能・効果に関連する使用上の注意】
 1. 本剤は、歯周ポケットの深さが 4mm以上、骨欠損の深さが3mm以上の垂直性骨欠損がある場合に使用すること。
 2. 本剤は、インプラント治療に関する有効性及び安全性は確立していない。

【用法・用量】:歯肉剥離掻爬手術時に歯槽骨欠損部を満たす量を塗布する。

【用法・用量に関連する使用上の注意】
 本剤の使用にあたっては[臨床成績]の項を参照し適切な量を用いること。





褥瘡・皮膚潰瘍治療剤フィブラストスプレー
褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「フィブラストスプレー」

尚、「リグロス®」の有効成分である「トラフェルミン(遺伝子組換え)」は、遺伝子組換え技術により製造したヒトbFGFで、2001年6月に褥瘡(じょくそう)・皮膚潰瘍治療剤「フィブラスト®スプレー」として、科研製薬より発売されている。






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消えた新薬…助かる命と間に合わない命〔1〕

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多剤耐性菌のイメージ

既存の抗菌薬が効かない薬剤耐性菌は、2016年5月のG7伊勢志摩サミットにおいて、対策の強化が協議されるなど、今や世界的に極めて重大な社会問題となっている。


多剤耐性菌は、現在使われているあらゆる抗菌薬が効かない、強力に変異した細菌の事で、特に緑膿菌やアシネトバクター、グラム陰性菌を原因菌とする感染症は、重病化・難治化するリスクが高くなっている。

緑膿菌とグラム陰性桿菌

新たな感染症に対して、殆ど抵抗性を持たない乳幼児や小児では、特にその影響は深刻で、助かったとしても、重い後遺症が残る場合がある。






人と病気との戦いは、自分自身の体内で起こる遺伝子の突然変異に拠る病気と、外部から侵入してくる細菌・ウイルスなどによる感染症によって発症する病気に別けられる。

そして感染菌との戦いは、そのまま抗菌薬(抗生物質)の開発の歴史でもある――。






終戦から18年余り―――。

傷痍軍人
小学生の頃、正月、神社に初詣に行くと、傷痍軍人が募金箱を首から下げ、神社の入口や駅前に立ってる姿を見て、子供心に恐いおじさん‥‥、と思ったのを覚えている。


その頃、ようやく抗生物質が、地方の小さな山あいの医院でも扱われるようになりました。

その普及に寄与したのは、保険収載、すなわち保険適応となった事です。
全国津々浦々の人々が、等しく抗生物質(抗菌薬)を使用するためには、是非とも保険適応が必要だったのです。




日本では1944年(昭和19年)9月某日。
日本全土がB29の空襲に見舞われていた戦争末期、東京帝国大学細菌学教室の助手・梅沢浜夫氏が、菌膜を発見。

国産ペニシリン碧素

黄色い粉末に精製したのが、国産第一号の碧素(ペニシリン)でした。碧素は640万倍に薄めても、ブドウ球菌の発育を阻止する極めて高い抗菌作用を持っていました。
しかしこの碧素(ペニシリン)は、物資不足などで生産に限界があり、戦地の負傷兵に使用されるなど、限られていました。

貧しい人々が、安価に抗生物質の恩恵を受けられるようになるには、まだまだ時間が必要だったのです―――。





テトラサイクリン系抗生物質アクロマイシン
戦後、国内で最初の抗生物質の保険適応収載は、テトラサイクリン系のテトラサイクリン塩酸塩で、1958年4月の事です。
肺炎や気管支炎、外傷・熱傷、梅毒や淋菌に対して効果を発揮し、この抗菌薬の登場で多くの命が救われました。
しかし当時テトラサイクリン系は、8歳未満の小児には、骨発育不全を起こすため、使用出来ませんでした。


翌年、1959年3月にはクロラムフェニコール系抗生物質が保険収載されましたが、この抗菌薬も小児にはグレイシンドローム(グレイ症候群=小児の未熟な肝臓がクロラムフェニコールを代謝出来ない事で起こる致死性循環不全)を起こすとして、使用出来ませんでした。


これらの抗生物質は、欧州や米国での、実投与による小児での副作用発現で明らかにされ、日本では小児への投与が禁忌となった。

1955年の日本の総人口は、8,927万6,000人余り、米国は1億6,800万人、西ヨーロッパは5億5,000万人余りで、臨床例が豊富だった事が挙げられます。


斯くして、小児の肺炎や猩紅熱(しょうこうねつ)や扁桃炎、急性気管支炎に使用出来る抗生物質は、1961年に保険収載される「ペニシリン」の登場を待つ事になります。


しかし不思議な事に、大人が使用出来る抗生物質のテトラサイクリン系は、1945年にベンジャミン・M・ダガー(米国)により放線菌の一種から発見されましたが、この抗生物質が日本で保険適応になるまで、僅か13年しか掛かっていません。

それなのに、「ドラマ-仁-」や「漫画-仁-」でも描かれたペニシリンの発見は1928年の事です。
この世界初の抗生物質ペニシリンが、私たち日本人が誰でも手に出来るようになるまで、実に33年もの月日を要しています。

何故、こんなにも差がついてしまったのでしょう‥‥?



ペニシリンG注射剤
グラム陽性菌用ペニシリンが保険適応となり、貧しい人や、地方の僻地に住む人でも、安価に抗生物質の恩恵を受けられるようになったのは、1961年9月の事です。
それは、ペニシリンが小児にも、安心して使用できる抗生物質だったからに他なりません。

もし当時、先に保険収載されたテトラサイクリン系抗生物質や、クロラムフェニコール系抗生物質が乳幼児や小児に使用されていたら、多くの薬害患者が出ていたかもしれません。



所で、ペニシリンの登場まで33年を費やした理由は、アオカビから安定して抽出する事が難しく、臨床応用に適さなかった事で、単に忘れ去られてしまっただけですが、1940年にオックスフォード大学のハワード・フローリー(米国)とエルンスト・チェイン(米国)が精製に成功、動物実験などを経て、1943年大量生産に漕ぎつけました。

ペニシリンはアレクサンダー・フレミング(英国)によって1928年に発見され、フローリーとチェインの2人によって実用化された事で、フレミング、フローリー、チェインの3名が1945年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。―――奇しくも、太平洋戦争が終結した年です。

ペニシリンの発見は、それが前人未踏の功績だからと言う理由ではなく、のちに薬剤として、大人から小児まで使用可能な抗生物質になり得た事が、人類への大きな貢献となりました。





優れた薬剤は、一朝一夕(いっちょういっせき)に生まれる物ではありません。

1つの医薬品が誕生するまでには、途中で開発を断念したものや、臨床試験で予想された効果が出ないもの、又、副作用が重篤なため試験を中止したものなど、多くの徒労に終わった新薬候補が存在します。


私たちは、その日の目を見ないまま埋もれてしまった、新薬候補の事‥‥開発に携わった国内外の多くの研究者や、臨床試験に参加された患者を忘れないように、次回はその一端を振り返って見ましょう。







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消えた新薬…助かる命と間に合わない命〔2〕

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国のがん政策の根拠法、「がん対策基本法」の改正案が10月28日に公表されました。
「がん対策基本法」は、主に、次の要点について定められた法律です。

第二条
     1、がんの克服を目指し、がんに関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進するとともに、がんの予防、診断、治療等に係る技術の向上その他の研究等の成果を普及し、活用し、及び発展させること。

     2、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)を受けることができるようにすること。
(最終改正:平成26年6月13日法律第六七号より抜粋)


11月4日、がん対策基本法の改正案は、基本法の成立から10年になるのに合わせて、がん患者が安心して暮らせる社会の構築や生活支援の充実などを目指すとした。

その上で、治療が難しく、患者数が少ないがんの治療法の研究促進や、患者の就労の支援、それに、必要な教育や治療を受ける為の環境整備などを、国や自治体、企業などに求めています。

全国31のがん患者の団体で作る、「全国がん患者団体連合会」の天野慎介理事長は、がん患者や家族の為に、一日も早く改正案を成立させて欲しいと訴えた。




今の医療では、患者が多い胃がん、大腸がん、乳がんなどの治療法は確立して来ているが、膵臓がんやスキルス性胃がん、小児がんなど、治療が難しいとされる「難治性がん」や、患者が少ない肉腫など「希少がん」は、治療法開発や支援が遅れている。

これらの"がん"に詳しい医師が少なく、製薬会社が新薬開発に積極的ではない事が背景にある‥‥、と分析している。



携帯
結局、利益の乏しい新薬の開発は、他の製造業と同じように、見捨てられ、ガラパゴスと揶揄され、生産を取りやめるしかない――。

と、思われているかもしれないが、だからと言って全く挑戦を止めた訳ではない―――。
ただ私たちは、その実情を知らないまま、高額な画期的新薬が登場すると、その値段ばかりに注目が集まる。




新薬の開発プロセス
新薬の開発プロセス
近年の新薬開発に費やす期間は平均15年に及ぶ。


ここにざっと、昨年以降、開発を断念もしくは中止した新薬の候補を、幾つか紹介しよう――。

【1】再発・難治性の末梢性T細胞性リンパ腫

2015年5月13日、武田薬品工業株式会社は、オーロラAキナーゼ阻害薬「alisertib」(開発コード:MLN8237)について、第3相臨床試験の中間解析結果に基づき、標準治療に勝る有効性を示す可能性が低いと判断、試験を中止すると発表。

【2】デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)
2015年6月11日、国立精神・神経医療研究センターが、国産初のアンチセンス核酸医薬品の開発を目指していた、モルフォリノ核酸のエクソン・スキップ医薬品のマウスおよび犬モデルの実証研究から、第1相臨床試験の開始が未だに始まっておらず、有望性に乏しい可能性がある。

【3】アルツハイマー型認知症治療薬
2015年9月15日、田辺三菱製薬株式会社は、米国のフォーラムファーマシューティカルズ社と共同で実施していた、アルツハイマー型認知症患者を対象とした新規α7ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト製剤「MT-4666」(EVP-6124、国際一般名:encenicline)について、重篤な消化器系副作用が少数例報告された事から、日本における国際共同第3相試験の中止を発表した。

【4】高リスク動脈硬化性心血管疾患治験薬「Evacetrapib」
2015年10月19日、日本イーライリリー株式会社の親会社、米イーライリリーはコレステリルエステル転送タンパク(CETP)を阻害してHDLコレステロールを増加、LDL・VLDLコレステロールを減少させるとされた「CETP阻害薬Evacetrapib」について、第3相試験及びその他の全ての試験を、効果不十分として開発中止を発表。

【5】1型および2型糖尿病治療薬
2015年12月4日、日本イーライリリー株式会社の親会社、米イーライリリーは1日1回投与治療薬として開発して来た、1型および2型糖尿病の持効型インスリン製剤「basal insulin peglispro」の、第3相臨床試験において肝脂肪含量の変化が観察されたとして、開発の中止を発表した。

【6】筋萎縮性側索硬化症(ALS)
2016年3月22日、エーザイ株式会社は日本で承認申請していた筋萎縮性側索硬化症(ALS)に用いる高用量メコバラミン製剤について、医薬品医療機器総合機構(PMDA)から有効性が確認できず、審査困難である旨の見解が出された為、開発を断念、承認申請を取り下げと発表。

【その他過去10年以内の開発中止、又は承認申請取り下げ医薬候補品】

●アントラサイクリン系又はタキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴を有する局所進行又は転移性乳がん治療薬〔イクサベピロンixabepi〕について、欧州不承認の為、日本国内での開発予定なし。

●骨髄異形成症候群治療薬〔デシタビンdecitabine=ヤンセンファーマ→大塚製薬〕について、ヤンセンファーマ(株)が日本開発断念。大塚製薬が引き継ぐ。

●非転移性で顕微鏡的に完全切除後の骨肉腫治療薬〔ミファムルチドmifamurtide=武田薬品〕について、米FDA不承認のため、日本での開発中断。(がんワクチン製剤)

●去勢抵抗性の転移性前立腺がん治療薬〔シプリューセルT sipuleucel‐T〕について、欧州承認取り下げで日本での開発予定なし。(前立腺がんのがんワクチン)

●再発又は難治性の多発性骨髄腫治療薬〔カルフィルゾミブcarfilzomib=小野薬品工業〕の国内での開発断念。

●2つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤に増悪又は不耐の慢性骨髄性白血病治療薬
〔オマセタキシンomacetaxine mepesuccinate〕について、欧州で申請取下げに付き、日本での開発予定なし。


◇◇ 現在、悪性腫瘍(消化器系)の中で最も予後不良と言われる膵臓がん(膵がん)については、〔イリノテカン水和物 リポソーム注射剤irinotecan hydrochloride liposome injection〕が、昨年10月欧州で承認されましたが、米国では未だ承認させていません。
日本ではシャイアー・ジャパン社が開発中ですが、進捗せず。



新薬の発見開発工程
新薬の発見開発工程
(医薬品候補の選別)


これら新作用機序の医薬品は、殆ど、欧州委員会、米FDAでの承認を経て、日本での承認申請になる場合が多い。
また新規医薬品の場合、日本・欧州・米国の共同臨床試験によって、ヨーロッパ人、北米人、アジア人のグローバル試験を実施する事で、使用量や副作用の強弱を大規模に知る事が出来る為、今後、益々増えて行くでしょう。



より安全で、適正な使用のため、医薬品の開発は、まるで国際宇宙ステーションのように国家の隔たりを排除し、各国が多額の費用を分担する事で成り立っています。

今日では、新薬の誕生は偶然の産物ではなくなりました。

多くの研究者と、多額の予算、そしてたくさんの患者の協力を経て、その上で多くの失敗を積み重ね、長い年月の末、世に送り出されている事を、少しだけ心に留めておいて欲しいと思います――――。







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インプラント治療後、43%定期検診せずインプラント周囲炎に

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インプラント治療の恐怖

歯のインプラント(人工歯根埋込み)治療は、歯周病や歯槽膿漏、歯髄炎などで歯を失った人の顎の骨に金属を埋め込み、人工の歯を固定する治療法で、顎の骨に、直接穴を開け、天然歯の代わりにチタン製などの人工歯根(金属)を埋め込み、その上に人工の歯を作製し取り付ける外科的治療方法です。


日本で信頼性の高いインプラント治療が本格的に導入されたのは、1983年の事。
しかし任意治療と言う事もあり、当初はあまり普及しませんでした。

インプラント治療は、健康保険が適用されない為、1本の歯に付き30万円~40万円ほどを患者本人が負担しなければなりません。


インプラント治療の恐怖1

インプラント治療の恐怖2

しかしその後、インプラント治療を行う病院が増えた事と、入れ歯よりも見た目が自然で、自分の歯に近い感覚が得られるなどとして、希望する人が増え、国内では約300万人が治療を受けたと見られています。

この中で、治療した部分の周りに細菌が感染して炎症が起き、金属を埋め込んだ骨が溶ける「インプラント周囲炎」と言う病気になる人が増え、日本歯周病学会が全国の実態を初めて調査しました。


インプラント治療の恐怖4

治療後、3年以上たった267人を調べた所、9.7%の人が、細菌に感染する事で顎の骨が溶ける歯根嚢胞や歯周病などの「インプラント周囲炎」に罹っていて、更に、この病気になる前段階の歯肉炎症が起きた人を含めると、43%に上ると言う事が分かりました。

インプラント治療の恐怖3
インプラント治療の恐怖5

治療後には、周辺の組織に細菌が感染して炎症が起き、金属を埋め込んだ骨が溶ける「インプラント周囲炎」と言う病気になる事があり、専門家は、『この病気を防ぐため、定期的に検診を受け、必要に応じて専門的な処置を受ける事が重要だ』と、指摘しています。


インプラント治療の恐怖6

また専門医は、『インプラント治療で取り付けた人工歯根は、何もしなくても長持ちすると誤解している患者は多い。インプラント周囲炎になると進行が非常に早く、自覚症状も少ないので、気がつくと深刻な状態になっている事も多い。メンテナンスが重要な事を十分理解して欲しい』と話しています。



結局、口の中は食事や会話、飲み物など常に空気に触れている場所。

それだけ酸化が進み、汚れが繁殖し易いと言うのは、インプラント治療後も何ら変わらないと言う事の一語に尽きます。







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新規乳がん治療薬「パルボシクリブ」の国内製造販売承認を申請

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ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)は10月31日、「手術不能又は再発乳癌」の効能・効果で、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬「パルボシクリブ(開発番号:PD-0332991)」の、国内における製造販売承認を申請したと発表した。

「パルボシクリブ(palbociclib)」は、世界初の経口CDK4/6阻害薬で、米国をはじめ世界20カ国以上で承認されており、米国食品医薬品局(FDA)により、2013年4月にブレイクスルー・セラピー(breakthrough therapy=画期的治療薬)の指定を受け、2015年2月に迅速承認されました。


米国ではIBRANCE®の製品名で、これまでに4万人以上の患者に使用されている。


パルボシクリブ_IBRANCE
「パルボシクリブ(IBRANCE®)」


乳がんは、世界において女性の罹患率が第一位の癌種で、2012年、全世界で約170万人が新たに乳がんを発症し、日本に於いては、乳がんの年間罹患数は約7万4000人(2012年)で、女性の部位別罹患数として第1位となっています。

乳がんの年間死亡者数は、1万3000人を超えています(2014年・国立がん研究センターがん情報サービス統計)。


米国5年生存率
米国での5年生存率(National cancer institute)

初診断時に転移がある場合、5年生存率は26.3%と予後は大変厳しい状況です(National cancer institute)。
転移が無い場合でも、原発巣に対する根治的治療後に、推定20~30%の割合で転移・再発が見られ、転移・再発乳がんは、切除可能な局所再発を除いて、治癒は極めて困難です(日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン2015年版)。

日本での平均5年生存率
日本での5年生存率(1994~2006年統計値)

日本での平均5年生存率1
日本での5年生存率(2003~2008年統計値)

乳がん患者の5年生存率は、統計数値の取り方で変わる為、日本では元々患者数が少なった事もあり、現在では治療成績も幾分向上しています。
しかし同時に患者数が増えている事、又再発・転移性乳がんの患者が増えている事で、5年生存率の足踏みが続いている。

そして転移・再発乳がんの化学療法後の10年生存率は、僅か5%となっています(日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン2015年版)。




デンスブレスト高濃度乳腺

日本人には乳腺密度が高い「デンスブレスト」の女性が多く、マンモグラフィで癌を検出するのが困難なケースが多い。
乳腺は、周囲の脂肪組織と比べてX線の透過性が低く白く映り、「癌」も白く映るため、マンモグラフィ写真では区別するのが困難な事が要因となっている。

しかし米国と同じように、高濃度乳腺の女性を対象に超音波検診を併用するのか、意見はまとまっていない。




今回申請を行った「パルボシクリブ(palbociclib)」は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6を阻害する新規の経口分子標的薬です。

CDK4/6阻害薬
RB proteinは網膜芽細胞腫タンパク質と言い、癌抑制遺伝子(タンパク質)の事。

CDK4/CDK6は、細胞周期の調節に主要な役割を果たしている、細胞増殖を引き起こすタンパク質複合体で、「パルボシクリブ」はCDK4/CDK6を選択的に阻害して、細胞周期の進行を停止させる事により、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。



日本も参加した2つの国際共同第3相試験(韓国と台湾も参加)、および海外/国内第2相試験の結果、「パルボシクリブ」は進行乳がんに対して内分泌療法との併用で臨床的に意義のある有効性が認められ、これらの結果を取りまとめ、今回の申請に至ったと言う。


本剤の米国における適応症は、「HR+HER2-閉経後進行、又は転移乳がんに対する初回内分泌療法(レトロゾールとの併用)」「内分泌療法により疾患が進行したHR+HER2-進行、又は転移乳がん(閉経の有無を問わない)に対する治療(フルベストラントとの併用)」。


米国5年生存率

この新規CDK4/6阻害薬「パルボシクリブ(palbociclib)」が、米FDAで承認を取得したのは2015年2月3日。
アジア人と米国人で、乳がん好発年齢に差があるものの、これまでのmTOR阻害薬(アフィニトール)と比べ、口内炎がひどく出たり、間質性肺炎などの自覚症状的な副作用が少ない利点がある。


レトロゾール、フルベストラントいずれの併用についても、全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)や米国臨床腫瘍学会(ASCO)など、種々のガイドラインにおいて推奨されている。

欧州医薬品庁(EMA)には、2015年8月に承認申請、2016年9月にEMAの医薬品委員会(CHMP)により、「HR+HER2-局所進行、又は転移乳がん(アロマターゼ阻害薬との併用又は内分泌療法を受けた患者ではフルベストラントとの併用)」を適応症として、承認勧告を受けている。







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遺伝性高アンモニア血症治療剤「カーバグル®分散錠」が薬価収載

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株式会社ポーラファルマ(本社:東京都品川区西五反田 /ポーラ・オルビスグループ)は11月18日、新規作用機序のカルバモイルリン酸合成酵素Ⅰ活性化作用を有する、有効成分カルグルミン酸薬剤を含有する高アンモニア血症治療剤「カーバグル®分散錠200mg」について、薬価に収載されたと発表しました。


本剤は、フランス・パリに本社を置くオーファンヨーロッパ(Orphan Europe)社により開発され、「N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症による高アンモニア血症」の治療薬として欧州で2003年に、米国で2010年に承認された。
また、「イソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症及びプロピオン酸血症による高アンモニア血症」の治療薬としては、欧州で2011年に承認されている。



カーバグル分散錠200mg
高アンモニア血症治療剤「カーバグル®分散錠200mg」

国内では、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を経て開発要請され、希少疾病用医薬品に指定。

株式会社ポーラファルマが、2014年に本剤の日本国内開発に着手し、2016年9月28日に、N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症、並びにイソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症による「高アンモニア血症(hyperammonemia)」に対して、血中アンモニア濃度を下げる医療用医薬品として製造販売承認を取得した。



高アンモニア血症は、体内で有毒なアンモニアが分解されないまま血中濃度が高くなる事で、神経障害や意識障害を起こす、先天性尿素サイクル異常症の一群の一つで、尿素合成経路の代謝系に遺伝的な異常がある事で発症します。


N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症
アンモニアは肝臓に於いて、尿素サイクルを経て無害な尿素に代謝される。
尿素サイクルの最初の反応をつかさどる、カルバミルリン酸合成酵素1 (CPS1)であるが、
N-アセチルグルタミン酸(NAG)は、CPS1を活性化させる機能を持っている。

しかし、N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症では、
N-アセチルグルタミン酸の合成低下を起こし、高アンモニア血症となる。


重症例では、出生後、哺乳の開始と共に、活気不良・哺乳不良・嘔吐などの症状が出現し、治療をしなければ次第に昏睡状態となる。

軽症例では、乳幼児期以降に繰り返す嘔吐、食欲不振、成長障害、発達遅延などの形で明らかとなり、急激に悪化して異常行動や意識障害を呈したり、成人期になって症状が出てくる場合もあります。

重症・軽症を問わず、血中アンモニア濃度を速やかに低下させる事が治療上極めて重要な疾患ですが、しかし既存の治療法では、血中アンモニア値のコントロールが必ずしも十分では無い場合があるのが現状です。





先天性尿素サイクル異常症の種類と関連遺伝子
尿素サイクル異常症の関連遺伝子

原発性(先天性)の尿素サイクル異常症(UCD=Urea cycle disorder)には、カルバミルリン酸合成酵素欠損症(CPS-D)、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTC-D)、アルギニノコハク酸合成酵素欠損症(シトルリン血症Ⅰ型)、アルギニノコハク酸分解酵素欠損症(アルギニノコハク酸尿症)、アルギナーゼ欠損症(アルギニン血症)、および、N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症(NAGS-D)などがあり、OTC-DはX染色体関連遺伝であるほかは、すべて常染色体劣性遺伝である。



「カーバグルⓇ分散錠」の有効成分であるカルグルミン酸は、尿素サイクルを活性化する事により尿素生成を復活させる、N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症、及び二次的NAGS欠損症の発症機序に特化した、高アンモニア血症治療薬です。

本剤の開発に於いては、未承認薬等開発支援センターより助成を受けています。

尚、国内での高アンモニア血症全体の発症頻度は、8,000~44,000人に1人とされていますが、長期生存が難しい例も多く確定患者数は発表されていません。

但し、本剤の適応となる患者数は、メチルマロン酸血症が62人、プロピオン酸血症が30人、イソ吉草酸血症が3人で、N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症は報告されていない。



【カーバグル®分散錠200mgの概要】

【販売名】:カーバグル®分散錠200mg(英名:CARBAGLU® dispersible tablets)
【効能・効果】:下記疾患による高アンモニア血症
    ・N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症
    ・イソ吉草酸血症
    ・メチルマロン酸血症
    ・プロピオン酸血症

【成分・含量】:本剤は1錠中にカルグルミン酸を200mg含有する
【剤形】:錠剤(分散錠)
【用法・用量】:通常、1日に体重kgあたり100 mg~250 mgより開始し、1日2~4回に分けて、服用時、水に分散して経口投与する。その後は患者の状態に応じて適宜増減する。

【承認取得日】:2016年9月28日
【薬価基準収載日】:2016年11月18日
【販売開始予定日】:2017年1月上旬

対象疾患に対して治療手段を提供する初めての医薬品である。







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自家造血幹細胞移植動員促進剤「モゾビル®皮下注」の製造販売を承認

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は11月11日、サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区西新宿)が承認申請していた、「自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員促進」を効能・効果とする新規C-X-Cモチーフ ケモカイン受容体4阻害剤(CXCR4-inhibitor)「モゾビル®皮下注24mg(一般名:プレリキサホル注射液)」について、製造販売承認を了承した。

モゾビル皮下注24mg_Mozobil-Plerixafor
CXCR4阻害剤「モゾビル®皮下注24mg」
(米国販売名:Mozobil®Plerixafor)

「モゾビル®皮下注24mg」は、非ホジキンリンパ腫(NHL)患者と多発性骨髄腫(MM)患者に於ける、造血幹細胞採取や、その後に続く自家造血幹細胞移植に向けて、造血幹細胞の血中動員の目的で「顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)」と併用投与する、CXCR4阻害作用を持つ薬剤である。



そもそも自家造血幹細胞移植とは―――
血液がん
(急性・慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫など)の治療で広く行われている、骨髄移植や自家末梢血幹細胞移植を合わせて指す言葉で、特に難治性の血液疾患に対する根治療法として、有効な内科的治療法です。



自家造血幹細胞移植の流れと経過
自家造血幹細胞移植の流れと経過


この治療法は、あらかじめ患者本人から採取した造血幹細胞(血液の元となる細胞)を、凍結保存して置きます。

その後、大量の抗がん剤を用いた“大量化学療法”や“放射線照射”により、体内の悪性細胞や機能不全の骨髄を徹底的に根絶(移植前処置)した後、保存して置いた正常な造血幹細胞を静脈内投与することにより、骨髄の再構築をはかる治療法(自家移植と言う)です。



自家末梢血幹細胞移植のプロセス
自家末梢血幹細胞移植のプロセス

しかし副作用として、血液を作り出す骨髄の機能が抑制される為、治療後の造血機能及び免疫機能の回復が必要になります。

多発性骨髄腫の原因となる骨髄腫細胞を抗がん剤で死滅させた後、あらかじめ採取しておいた患者自身の造血幹細胞(血液をつくる細胞)を戻す(移植する)ことにより、正常な造血機能を回復させる。




血液疾患別生存率
1988-2011年までの推計値。

急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病の生存率は良好で、10年以上再発なしの場合、治癒と見なすとしていますが、骨髄異形成症候群や多発性骨髄腫、及び悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)の患者に対する造血幹細胞移植は、5年の寛解以降でも、再発するケースが目立ち、まだまだ治癒が難しい状況です。


G-CSF製剤フィルグラスチムBS
G-CSF製剤
造血幹細胞の末梢血中への動員薬「フィルグラスチムBS(グランの後発品)」

その主な要因として、これまでは一部の多発性骨髄腫の患者では、G-CSFと化学療法では、正常な機能を有する末梢血幹細胞の採取が不十分な事があり、結果として自家移植を断念せざるを得ない場合がありました。
また、十分量の末梢血幹細胞を収集する為に、1日数時間、連日行う必要があり、患者の負担も大きくなります。




「モゾビル®皮下注」は、造血幹細胞を骨髄から末梢血へ循環させる「動員」を促進させる働きを持ち、造血幹細胞採取の回数の減少と採取率の向上が確認されている。
また本剤の使用によって、目標の細胞数を回収する日数が1日だけで済む患者が増えるとされる。


通常と癌化した造血肝細胞
(A)が正常な造血幹細胞、(B)は癌化した造血幹細胞

造血幹細胞の動員とは
「動員」は、G-CSF製剤を投与する事で骨髄から血液中に、
造血幹細胞が誘導され、血液中に多く流れ出す事を言う。
しかしこれまでは、採取量が不十分で自家移植に適さない症例があった。



【作用機序】
    ◎造血幹細胞採取や、その後に続く自家造血幹細胞移植に向けて、骨髄から末梢血へ造血幹細胞を遊離させる。

【投与とその時期】
    ◎各日の造血幹細胞採取の約11時間前に皮下投与。最大連続投与は4日間。
    ◎「モゾビル®皮下注」投与に先立ち、午前中に毎日4日間、また、造血幹細胞採取(アフェレーシス)に先立ち午前中に毎日、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を投与。


本薬剤は、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」からの開発要請品目で、希少疾病用医薬品に指定され、再審査期間は10年となっている。
「モゾビル®」はG-CSF製剤と併用して用い、海外では54の国・地域で承認済(2016年7月時点)。








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成人関節リウマチ治療薬「シルクマブ」が日米欧で同時製造承認を申請

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ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区)は10月20日、新規作用機序のヒト型抗IL-6モノクローナル抗体製剤「シルクマブ(遺伝子組換え)」を、抗リウマチ薬として製造販売承認申請を行った。

「シルクマブ」は、ヒト型抗IL-6免疫グロブリンG1Kモノクローナル抗体で、関節リウマチのようなIL-6(インターロイキン6)が関与している炎症・免疫疾患の発症メカニズムに作用し、その炎症状態を抑制する。



シルクマブのイメージ薬
*写真はイメージです。
「シルクマブ」は欧州・米国でも現在承認申請中のため、薬剤の写真はありません。


関節リウマチは、身体の多くの関節に慢性の炎症が起こる、自己免疫疾患の一種で、手と足にその症状が表れるのが典型的です。遺伝的要因や細菌・ウイルスの感染などが考えられていますが、原因は良く分かっていません。

関節リウマチの発症しやすい部位
関節リウマチの発症部位

日本における中等度から重度の関節リウマチ患者は、約70~80万人程度と言われており、20~40歳代の女性に多く発症する慢性の炎症性疾患です。

主に関節の滑膜(かつまく=関節を囲む膜)で起こる炎症により、関節が変形するなど日常生活に多大な影響を及ぼす疾患です。
最近では、症状が現れてから2年の間に急速に炎症が進み、早い時期から関節破壊が起こる事が分かって来ました。その為、疾患の進行を抑え、関節機能を守るには、出来るだけ早い時期に治療を開始する事が重要だと考えられるようになりました。


関節リウマチの進行


今回の申請は、第3相臨床試験である国内臨床試験と国際共同臨床試験を含む計5試験(SIRROUND試験)の結果に基づくもの。

米国国立衛生研究所(ClinicalTrials.gov)のウェブサイトによると、国際共同臨床試験に参加した国名と研究機関は以下の通り。

アメリカ合衆国: FDA(食品医薬品局)
オーストラリア: オーストラリア保健省
ブルガリア: ブルガリア医薬品庁
チリ: チリ公衆衛生研究所
アルゼンチン: 国立食品管理医薬品・医療技術研究所
ベルギー: FAMHP(連邦医薬品局)
カナダ: カナダ保健省
オランダ: CCMO(ヒト被験者に関する研究中央委員会)
ポーランド: Office for Registration of Medicinal Products, Medical Devices and Biocidal Products
メキシコ: COFEPRIS(衛生リスクに対する保護のための連邦委員会)
セルビア: セルビア医薬品医療機器総合機構
コロンビア: INVIMA(医薬品監視・食品総合研究所)
日本: 医薬品医療機器総合機構
プエルトリコ: 食品医薬品局
ドイツ: ドイツ連邦医薬品医療機器研究所
グレートブリテン: MHRA(イギリス医薬品・医療製品規制庁)
南アフリカ: MCC(医薬品管理委員会)
リトアニア: リトアニア保健省・医薬品管理局
ウクライナ: ウクライナ保健省・健康管理局
ルーマニア: 国立医薬品医療機器局
フランス: ANSM(フランス医薬品・保健製品安全庁)

これらの臨床試験結果は、2016年の欧州リウマチ学会年次総会(EULAR)、及び2015年の米国リウマチ学会(ACR)年次総会で発表された。
その後、「シルクマブ」は、欧州、米国に於いて2016年9月に成人関節リウマチに対する製造承認申請を行っている。


Sirukumabシルクマブのイメージ


また国内臨床試験では、

■ 疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs=免疫調節・免疫抑制薬)に対して効果不十分だった患者群(D試験)。
■ 抗TNFα薬(生物学的製剤)に対して効果不十分だった患者群(T試験)。
■ メトトレキサート(MTX=抗リウマチ薬)に対して効果不十分だった患者群(H試験)。
■ MTXもしくはスルファサラジン(抗リウマチ薬)に対して効果不十分だった日本人の患者群(M試験)。
■ SIRROUND-D試験とSIRROUND-T試験を完了した患者群対象の長期試験(LTE試験)。

以上の国際共同臨床試験を含む計5試験を実施し、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)に対し効果不十分だった、成人関節リウマチ患者を対象としたSIRROUND-D試験では、「シルクマブ」が16週でプラセボ(偽薬)と比較して関節リウマチの症状の改善を示し、52週まで関節破壊を有意に抑制。

また、既存治療で十分な反応を示さなかった日本人患者を対象としたSIRROUND-M試験では、「シルクマブ」の単剤での安全性と効果を確認したとしている。


IL-6(インターロイキン-6)は、感染や疾患に対する身体の自然な反応を改善する事が出来る物質=生物学的反応修飾物質と言い、これらの物質は通常、体内で作られ、免疫として働く。

IL-6シルクマブ作用機序
シルクマブ作用機序
しかし関節リウマチのような炎症疾患では、免疫が過剰になる自己免疫疾患に陥るため、IL-6R(受容体)との作用を抑制する必要がある。



既に、成人関節リウマチ患者の多くで既存薬への不耐応や、効果不十分の症例が増えている事から、更なる治療薬の登場が望まれている。

今回のように、欧州、米国とほぼ同時期に国内でも製造販売承認申請を行った新規作用機序の薬剤は、最近では"エボラ出血熱"の治療薬があるのみで、極めて稀有な例と言える。







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抗インフルエンザ薬「タミフル」1歳未満への処方が保険適用に

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厚生労働省は11月24日に開催された、“医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議”で、抗インフルエンザ薬「タミフル(一般名オセルタミビルリン酸塩)」のドライシロップ製剤について、新生児と乳児への用法用量を追加し、保険適用の対象とした。


タミフルドライシロップ製剤

「タミフル」の小児への処方について、日本ではこれまで1歳以上の用法用量のみ承認され、1歳未満への使用は、添付文書上認められていなかった。

しかし、米国では2012年12月に生後2週から1歳未満への処方が承認され、英・独・仏では2015年5月に0歳(正期産の新生児)以上1歳未満への処方が承認された。
米国疾病対策センター(CDC)のガイドラインでも、0歳児を含む2歳未満の小児への抗インフルエンザ薬による治療が推奨されている。


これらの状況を受け、日本感染症学会、日本小児感染症学会、日本新生児生育医学会は、「タミフル」の適応に新生児、乳児の用法用量を追加するよう、要望書を提出。

11月24日、公知申請が適当とされ、薬事承認上は適応外だが『保険適用の対象』となる。



Influenza_infants


用法・用量は、幼小児(1歳以上)が2mg/kg(体重1kg当たり)なのに対し、新たに認められた用法用量は、現時点では以下の通り。

◎新生児と乳児(生後から1歳未満)は3mg/kg(体重1kg当たり)となっている。これは(1)欧米で1歳未満に承認されている用法用量が3mg/kgである事、(2)オセルタミビルの薬物動態で民族差が認められていない事、(3)1歳未満の小児を対象とした国内使用実態調査で、3mg/kgが投与された患者が22例あり、うち81.8%で有効と判定され、有害事象や副作用の発現が報告されていない事――などから、1歳未満の用量を3mg/kg(体重1kg当たり)に設定する事は可能と判断された為。

◎新生児と乳児(生後から1歳未満)に対し、3mg/kg(体重1kg当たり)を1日2回5日間、用時懸濁して経口投与する。


◎尚、「新生児、乳児」とは、生後から1歳未満を指し、特に制限はないものの、しかし海外臨床試験では、2週齢未満の新生児または1歳未満の早産児(在胎期間36週未満)に対する「タミフル」の有効性と安全性の情報は得られておらず、承認されていない。

厚生労働省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に於いて、こうした「新生児、乳児」に関する情報を、医療現場に提供する必要があるとの見解が示されている――。






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世界初、肺動脈性肺高血圧症治療薬「ウプトラビⓇ錠」の販売を開始

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日本新薬株式会社(本社:京都府京都市南区)は11月21日、アクテリオン・ファーマシューティカルズ・ジャパン株式会社(本社:東京都港区)と共同開発した、肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療剤「ウプトラビⓇ錠0.2mg、同0.4mg」(一般名:セレキシパグ)の販売を開始したと発表した。

ウプトラビ錠_肺動脈性肺高血圧症治療薬

本剤は、日本新薬株式会社が創薬した、世界で初めての経口投与可能な選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬で、導出先のアクテリオン社(本社:スイス)が、日本を除く全世界で実施した第3相国際共同試験(GRIPHON試験)に於いて、その有効性と安全性が確認され、国内の臨床試験に於いても、日本人での有効性と安全性が確認されている。



ヒトが生きる為には、「呼吸」によって「大気中の酸素」を肺に取り入れ、その酸素を肺から身体中に送り届ける必要があります。同時に身体に有害な二酸化炭素を、「呼吸」によって体外に排出します。

これを「肺のガス交換」と言います。
肺のガス交換機能

しかし「呼吸」するだけでは身体の中に酸素は取り込めません。

「肺に取り込んだ酸素」を、心臓に一度戻して、心臓の力を借りて全身に送る必要があります。

この時、心臓から肺に血液を送るための血管を「肺動脈」と言い、この肺動脈の圧力(血圧)が何らかの原因で異常に上昇するのが「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」で、予後不良な疾患となっており、「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されています。



肺動脈性肺高血圧症は、肺動脈そのものに異常が起こる病気です。
肺動脈性肺高血圧症のメカニズム


国内の肺動脈性肺高血圧症の患者数は2,587人(2013年度/呼吸不全に関する調査研究班)、最新では2,946人(2014年度/(公)難病医学研究財団)で、患者の男女比は1:2.17と女性が男性の2倍以上となっており、発症年齢は20歳代が多く、その後40歳代まで減り、70歳代で増える傾向にあります。


肺動脈の圧力が上昇する理由は、肺の細い血管が異常に狭くなったり、或いは硬くなるために、血液の流れが悪くなる事で起こりますが、原因は以下のように分類されています。


肺動脈性肺高血圧症は、
原因によって5群に分類される肺高血圧症の中で、第1群に該当します。

肺動脈性肺高血圧症の原因
肺動脈性肺高血圧症の原因は、(1)原因不明の特発性、(2)遺伝性、(3)薬物・毒物に伴うもの、(4)他の疾患(膠原病やHIV感染症、先天性心疾患等)に伴うものに分類されます。


その薬物治療に於いては、プロスタサイクリン系薬剤(PGI2)、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)およびホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)の、3種類の作用機序の薬剤が汎用されています。

肺動脈性肺高血圧症PAH治療薬
肺動脈性肺高血圧症の推奨治療薬


「ウプトラビⓇ錠」は、世界で初めての経口投与可能な選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬であり、選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)は、プロスタサイクリン(PGI2)が結合する事によって血管拡張等に働く。

肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者では、この血管拡張作用の働きが弱まっており、IP受容体作動薬は、この働きを強める薬剤です。


日本新薬株式会社では、これまでERA(エンドセリン受容体)製剤「オプスミットⓇ錠」、PDE5i(ホスホジエステラーゼ5)製剤「アドシルカⓇ錠」を発売しており、今回の選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)製剤「ウプトラビⓇ錠」を加え、3種類の異なる作用機序の肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療剤を揃える事になる。



【製品概要】

【薬価収載日】:2016年11月18日
【発売日】:2016年11月21日
【製品名】:ウプトラビⓇ錠0.2mg、ウプトラビⓇ錠0.4mg
【一般名】:セレキシパグ
【効能・効果】:肺動脈性肺高血圧症
【用法・用量】:通常、成人にはセレキシパグとして1回0.2mgを1日2回食後経口投与から開始する。
忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量して維持用量を決定する。尚、最高用量は1回1.6mgとし、いずれの用量においても、1日2回食後に経口投与する。
【薬価】 ウプトラビⓇ錠0.2mg :1,407.90円
     ウプトラビⓇ錠0.4mg :2,815.80円






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子宮内膜症治療薬「ディナゲスト錠」が子宮腺筋症での追加承認を取得

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持田製薬株式会社(本社:東京都新宿区)は、子宮内膜症治療剤「ディナゲスト錠1mg」及び「ディナゲストOD錠1mg」(一般名:ジエノゲスト)について12月2日、新たに「子宮腺筋症に伴う疼痛の改善」の効能・効果追加の承認を取得したと発表した。

ディナゲスト錠1mgの箱
「ディナゲスト錠1mg / 同OD錠1mg」



子宮腺筋症は、子宮内膜、或いはその類似組織が、子宮体部筋層内に増殖する疾患で、月経時、日常生活に支障を来す程の強い疼痛を訴える事が多く、発症年齢のピークは40歳代で、閉経周辺期女性の15~20%が子宮腺筋症を有するとされています。

根治療法は外科的方法(手術療法)ですが、妊娠を希望する場合は、臨床症状の改善を目的とした内科的方法(ホルモン療法)が選択されます。



子宮腺筋症のMRI画像。
思春期の子宮筋層は滑らかですが、
腺筋症では子宮内膜が筋層内に入り込み増殖する疾患です。

子宮腺筋症_MRI



■ 子宮腺筋症の確定原因は不明である。

最も有力な説は、内膜基底層の腺管が筋層内へ、はまり込むとする説である‥‥。
子宮内膜――子宮筋層境界には、はっきりした組織学的境界構造は判別出来ないが、内膜腺組織が筋層内に向かって進入するのを阻止する機能があると推定されているが、この防御機能が、何らかの理由で、子宮内膜――子宮筋層境界が、内膜細胞の筋層側への進入を阻止出来なくなった時に子宮腺筋症が生じる。

この原因として、①境界面のバリア機能の破綻(帝王切開や子宮手術などの外傷)、②内膜細胞の浸潤能の亢進(内膜腺細胞の細胞活性の変化)、③浸潤阻止能力の低下(筋細胞や免疫担当細胞の変化)などが推定されている。



子宮腺筋症の進行度

しかし、これまで子宮腺筋症の適応を持つ医薬品は無く、長期に安全に使用できる治療薬が求められていました。


「ディナゲスト錠」は、持田製薬株式会社がドイツ・イエナファーム社(JenaFarm=現:バイエル・ファーマAG社のグループ会社)より導入・開発し、2008年より国内販売している子宮内膜症治療剤です。
プロゲステロン受容体(黄体ホルモン,PgR)を選択的に活性化し、卵巣機能抑制作用、及び子宮内膜細胞増殖抑制作用を持つ事から、子宮腺筋症に伴う疼痛に対しても有効性が認められました。




【承認内容の概要】
   今回、下線部が追加承認されました。

【販 売 名】 : ディナゲスト錠1mg/ディナゲストOD 錠1mg
【一 般 名】 : ジエノゲスト
【剤型・含量】 : 1錠中 ジエノゲスト1mg含有(錠剤)
【効能・効果】 : 子宮内膜症
          子宮腺筋症に伴う疼痛の改善 
【用法・用量】 : 通常、成人にはジエノゲストとして1日2mgを2回に分け、月経周期2~5日目より経口投与する。
【追加申請日】 : 2016年1月27日

【副作用】 服用中は通常の月経周期よりも子宮内膜が薄くて剥がれやすい状態になっているので、予期しない時に不正出血が起こりやすくなります。
医師の指示のもと、適切な指導を受けて下さい。







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脊髄性筋萎縮症核酸治療薬『ヌシネルセンナトリウム』を国内承認申請

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バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区)は12月12日、脊髄性筋萎縮症の治療薬として、『ヌシネルセンナトリウム(一般名)』の国内製造販売の申請をしたと発表した。
承認されれば、国内初のアンチセンス*核酸医薬品(=疾患に関連するタンパク質を造るRNA(mRNA、mRNA前駆体、miRNA)を標的とする核酸医薬品)となる見込みです。


イメージ写真_ヌシネルセンナトリウム
*写真はイメージです。
「ヌシネルセンナトリウム」は欧州・米国でも現在同時承認申請中のため、
薬剤の写真はありません。


脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy ; SMA)は、幼児と小児の脊髄や下位脳幹における進行性の“運動ニューロン(神経細胞)の脱落”を特徴とする、常染色体劣性遺伝神経筋疾患で、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を起こします。

脊髄性筋萎縮症の分類
脊髄性筋萎縮症(SMA)の臨床分類

最も重篤なタイプ(タイプ1、2)の脊髄性筋萎縮症では、最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下(えんげ=食物を飲み込む)など、生命維持の為の基本的な身体機能に支障をきたす恐れがある。


正常なSMN遺伝子
DNA遺伝子の情報(塩基配列)を写し取るのがmRNA。
正常では、mRNAの情報を基に必要なタンパク質合成が行われる。


脊髄性筋萎縮症の病態は、生存運動ニューロン遺伝子1(SMN1)の異常である事が知られており、SMN1遺伝子の異常か或いは欠失していると発症し、更にSMN1遺伝子が無ければ、脊髄の運動ニューロンは退化し死滅します。

日本国内に於いては小児慢性特定疾病に認定されており、国内の患者数は平成27年度(2015年度)の医療受給者証保持者数(難病情報センター)によると、874人。

現在、脊髄性筋萎縮症の根本治療として承認された治療法はありません。



脊髄性筋萎縮症の遺伝保因者


脊髄性筋萎縮症(SMA)の発症原因遺伝子座は、第5染色体の5q13.2部位上に存在する、ヒト生存運動神経細胞(SMN=survival motor neuron)遺伝子で、SMN遺伝子には“SMN1遺伝子”と“SMN2遺伝子”の塩基対が存在します。
脊髄性筋萎縮症・第5染色体遺伝子座

SMN1遺伝子とほぼ同一の遺伝子であるSMN2遺伝子のDNA中には、イントロン(遺伝情報をもたない)と言う部分があり、通常、イントロンはmRNAに転写された時点で、スプライシング(DNA中で遺伝情報を持たない部分がタンパク質合成と連結する反応)機能ではじかれ、正しい部分だけが転写されます。


脊髄性筋萎縮症の患者では、SMN1遺伝子が欠失しているため、運動ニューロンが次第に退化しますが、『ヌシネルセンナトリウム』はSMN2遺伝子のイントロン(遺伝情報をもたない部分)に結合するようデザインされており、これによって運動ニューロン遺伝子の発現を調節し、完全に機能するSMNタンパク質の産生量を増やす可能性を備えています。


ヌシネルセンナトリウムの作用機序
「ヌシネルセンナトリウム」の作用機序

アンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)はSMN2遺伝子のスプライシング(遺伝情報をもたない部分)を変えて、mRNA(タンパク質合成の為の遺伝情報を写し取って伝えるRNA)に、機能的なSMNタンパク質を生産するための遺伝情報を伝え、SMNタンパク質の量を増やすよう設計されている。


ヌシネルセンナトリウムは、米国食品医薬品局(FDA)に対して9月に、欧州医薬品庁(EMA)に対しては10月にそれぞれ承認申請を行い、現在審査が行われています。

欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CHMP)は、加速審査評価対象に指定すると共に、米国食品医薬品局(FDA)も本剤を優先審査対象に指定しました。
日本でも、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けています。



バイオジェン・ジャパン株式会社代表取締役・スティーブ・スギノ社長は、
「米国、EUに続いて日本でも早期に承認申請が出来た事を嬉しく思います。遺伝的要因で発症するSMAは多くの場合、乳児期から症状が現われ、これまで治療薬もありませんでした。患者さんにこの薬を早期にお届けする事が実現できるよう、社員一丸となって承認に向けて取り組んでまいります」
と述べている。



核酸医薬品とは==ざっくり言うと、塩基とDNAおよびRNAが結合した高分子物質の医薬品を言います。




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排卵日予測検査薬「ハイテスター」や「ドゥーテスト」等、一般薬局で販売開始

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武田薬品工業株式会社(本社:大阪府大阪市中央区道修町)は12月27日、排卵日予測検査薬「ハイテスター®H」(第1類医薬品)及び妊娠検査薬「ハイテスター®N」(第2類医薬品)の発売を開始したと発表しました。

これまで排卵日予測検査薬は、処方箋調剤薬局でのみ販売されていましたが、2016年8月の厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会に於いて、医療用検査薬を一般用に転用する動きに呼応する形で、検討が行われました。

その結果、11月に検査薬として、国内で25年ぶりに排卵日の検査に使う一般用医薬品7品目を承認、一般の薬局でも購入できるようになったものです。



排卵日予測検査薬ハイテスターH
排卵日予測検査薬「ハイテスターH」(第1類医薬品)


排卵日予測検査薬「ハイテスター®H」は、赤ちゃんを望む方が、妊娠しやすい排卵日を自分で簡単にチェックできる一般用検査薬です。
独自技術によるトリプルライン検出法を採用しており、ラインの本数で判定する為、排卵日のサインがひと目で判かるのが特徴です。

本年3月に提携した株式会社ミズホメディー(本社:佐賀県鳥栖市藤木町)が製造し、武田ブランドの「ハイテスター®H」という商品名で販売する。


排卵日予測検査薬ハイテスターN


排卵日予測検査薬(一般用黄体形成ホルモンキット)は、女性が妊娠しやすいとされる排卵日を予測する検査薬で、尿中の排卵を促す女性ホルモンを検出する事で、女性が最も妊娠しやすい時期とされる、排卵日を1日前に予測します。

検出する黄体形成ホルモン(LH)は、常時少量分泌されていますが、卵子が成熟した際に大量分泌が起こり(LHサージ)、それが引き金となって約40時間以内に排卵が起きる。

排卵日予測検査薬キットは、このLHサージを検出するもので、排卵日予測の補助に使用される。




また、既にロート製薬株式会社(本社:大阪府大阪市生野区)は12月21日に、排卵日予測検査薬「ドゥーテストLHa」(第1類医薬品)を発売しており、こちらは反応する感度がよく、尿をかける時間が2秒と短く済む。
同時に妊娠検査薬(第2類医薬品)も、発売されている。


排卵日予測検査薬ドゥーテストLHa

妊娠検査薬ドゥーテストhCG



尚、同種の検査薬は、アラクス株式会社(本社:愛知県名古屋市中区)も来年早々に売り出す予定である。






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抗悪性腫瘍酵素製剤「アーウィナーゼ®筋注⽤」が製造販売承認を取得

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⼤原薬品⼯業株式会社(本社:滋賀県甲賀市甲賀町)は12月19日、抗悪性腫瘍酵素製剤「アーウィナーゼ®筋注⽤10000(=Erwinase®/ 一般名:クリサンタスパーゼ/ 開発コード:OP-01)」について、厚⽣労働省より「急性⽩⾎病(慢性⽩⾎病の急性転化例を含む)、悪性リンパ腫(但し、L-アスパラギナーゼ製剤に過敏症を⽰した場合に限る)」の効能・効果で、製造販売承認を取得したと発表した。


Erwinase_エルウィナーゼ
抗悪性腫瘍酵素製剤「アーウィナーゼ®筋注⽤10000」
(Erwinase®/ 一般名:クリサンタスパーゼ)
米国Erwinase®、欧州Erwinaze®で既に承認取得。


急性⽩⾎病、悪性リンパ腫では、⼤腸菌由来L-アスパラギナーゼ製剤が標準薬剤として使⽤されていますが、治療中に過敏症が発現し、投与継続が困難となる患者があり、本剤は⼤腸菌由来L-アスパラギナーゼ製剤の代替薬として切望されていました。


国内に於いては、日本小児血液学会、日本小児がん学会からの開発要望書(要望番号:75)が提出され、厚⽣労働省の「医療上の必要性の⾼い未承認薬・適応外薬検討会議」で、本剤の医療上の必要性が評価され、2010年12月に、厚⽣労働省より開発要請を受け、新たな代替薬として、非大腸菌由来のアスパラギナーゼ製剤の開発に着手しました。

その結果、日本で実施した大腸菌由来L-アスパラギナーゼ製剤の投与により、アレルギー反応が⽣じた急性リンパ性白血病、及び悪性リンパ腫を対象とした臨床試験に於いて、本剤の有効性と安全性が確認され、2015年12月17日、国内での製造販売承認申請を行った。


小児がんの疾病割合
小児がんに占める急性白血病と悪性リンパ腫の割合は
合計42%になる。



「Erwinase®(アーウィナーゼ)」は、製造元の英国ポートン・バイオファーマ社からアイルランドのジャズファーマシューティカルズ社に対して、販売活動、商品供給、及び流通に関する独占的ライセンスが与えられており、日本国内で希少疾病用医薬品に指定された事を受け、臨床試験を積み重ねて来たものです。

そしてこれまでの大腸菌由来から、植物病害菌の黒脚病(くろあしびょう)の病原菌から抽出精製されました。


黒脚病菌_Erwinia_chrysanthemi菌
ペクトバクテリウム属のエルウィニア・クリセンテミ菌(Erwinia_chrysanthemi)。

「アーウィナーゼ®筋注⽤10000(クリサンタスパーゼ)」の新規有効成分は、Erwinia Chrysanthemi菌と言う国内ではジャガイモを腐敗させる黒あし病(黒脚病)の病原菌から分離されたアスパラギナーゼ(抗腫瘍酵素)です。

ペクトバクテリウム菌で細菌性腐敗病になったタマネギ
ペクトバクテリウム菌類に属する黒脚病(こっきゃくびょう)菌の、
Erwinia chrysanthemi(Pectobacterium)によって
細菌性腐敗病になったタマネギ(米国中西部)。



⼩児急性リンパ性白血病を中心とした、幾つかの血液がんは、アミノ酸の一つであるアスパラギン(タンパク質を構成するアミノ酸の一種)を合成する酵素を殆ど持っていません。

その為、外部から補給されたアスパラギンが、アスパラギナーゼ(抗腫瘍酵素)で分解されてしまうと、腫瘍細胞の増殖に必要なアスパラギンが枯渇し、蛋白合成が出来なくなる為、腫瘍細胞は死滅してしまいます。


L-アスパラギナーゼ製剤ロイナーゼ注用5000
L-アスパラギナーゼ製剤「ロイナーゼ注用5000」(協和発酵キリン)
《本剤に後発品はありません》

この作用によって、大腸菌由来アスパラギナーゼが日本で承認され、他の抗がん剤との併⽤で血液がんの治療に既に使われています。
血液がんは、抗がん剤に良く反応し、治療成績は近年格段と上がって来ました。



しかし、アスパラギナーゼ(抗腫瘍酵素)の欠点の一つとして、アレルギー症状を起こしやすい事が知られており、蕁麻疹以外に、アナフィラキシーショックなどのアレルギー症状を起こし、治療継続が不可能となる患者が出て来ます。

アナフィラキシーショック

「アーウィナーゼ®筋注⽤10000」は、大腸菌と異なる細菌から作られる為、大腸菌由来アスパラギナーゼに対してアレルギー症状が起こり、治療継続不可になった患者に於いても、使⽤が可能となる。

このため、本剤は第二選択薬として多くの患者や医師から望まれている薬剤となっています。


「アーウィナーゼ®筋注⽤10000」は、海外において『Erwinase®/ Erwinaze®』として、現在までに22カ国で承認されており、65カ国以上で販売されています。


新規アスパラギナーゼ製剤Asparaginase


【承認の製品概要】

【販売名】: アーウィナーゼ®筋注⽤10000
【⼀般名】: クリサンタスパーゼ
【効能・効果】: 急性⽩⾎病(慢性⽩⾎病の急性転化例を含む)、悪性リンパ腫。但し、L-アスパラギナーゼ製剤に過敏症を⽰した場合に限る。
【⽤法・⽤量】: 他の抗悪性腫瘍剤との併⽤において、通常、1⽇1回体表⾯積1平方メートル当たり25,000 U を週3回、筋⾁内投与する。






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