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3種配合C型慢性肝炎治療剤「ジメンシー®配合錠」が製造販売承認を取得

ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社(BMS, 本社:東京都新宿区)は12月19日、3種類の直接作用型抗ウイルス剤(DAA)を配合した経口治療薬「ジメンシー®配合錠」(Ximency=一般名:ダクラタスビル塩酸塩/アスナプレビル/ベクラブビル塩酸塩)について、セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎、又はC型代償性肝硬変に於けるウイルス血症の改善の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表した。


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ジメンシー配合錠_箱

抗ウイルス剤「ジメンシー®配合錠」(Ximency)

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ジメンシー配合錠 錠剤写真2

「ジメンシー®配合錠」錠剤写真①


C型肝炎は、現在日本では、190万~230万人がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているとされています。
日本赤十字血液センターで、初めて献血を行った方(初回供血者)3,748,422人のHCV抗体陽性率は、全体で0.26%でした。
高齢になるほど頻度は高く、2005年時点の60~69歳では1.18%に昇っています。(日本赤十字社資料より)



感染経路は母子感染によるものと、血液を介しての感染に別けられますが、C型肝炎の場合はB型肝炎ウイルスと異なり、母子感染は多くはありません。

現在、C型肝炎ウイルスに感染している方の殆どは、過去の輸血や注射が原因です。

以前のように、医療現場での注射針の使い回しも行われる事は無く、最近ではピアスの穴開けや、医療現場での不注意な針刺し事故などによる感染が見られます。
C型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスより感染力は弱く、性交渉や体液で感染する事は殆どありません。
【注意、性交渉で感染すると言う記述のWebサイトがありますが、それはB型肝炎の場合であり、C型肝炎では多くはありません】
(国立感染症研究所 IDWR 2011年 第21号「速報」、及びブリストル・マイヤーズ スクイブ(株)HPから抜粋)


C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、約3割は自然にウイルスが排除されますが(一過性感染)、約7割は持続感染に移行します。
持続感染は、感染したウイルスが、身体から排除されず、肝臓の中に住みつく事で、一部の人は慢性肝炎を発症します。






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ジメンシー配合錠 錠剤写真1

「ジメンシー®配合錠」錠剤写真②


「ジメンシー®配合錠」は、米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社が開発したNS5A複製複合体阻害剤である「ダクラタスビル塩酸塩」、及びNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤である「アスナプレビル」に、新規DAAである「ベクラブビル塩酸塩」を配合した固定用量配合の抗ウイルス薬です。


新規DAAである「ベクラブビル」は、非構造蛋白5B(NS5B)ポリメラーゼに対する非核酸系阻害剤であり、作用点の異なる“ダクラタスビル”及び“アスナプレビル”に「ベクラブビル」を追加することで、相加・相乗効果、及び耐性発現の抑制効果が認められています。
作用点の異なる3種類のDAAを配合した製剤としては、日本初となります。



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ジメンシー配合錠の作用機序

「ジメンシー®配合錠」の作用機序


国内第Ⅲ相試験において‥‥

ジェノタイプ1bのC型慢性肝炎、又はC型代償性肝硬変患者に於ける「ジメンシー投与群」のSVR12(投与終了から12週後のHCV RNAが定量下限未満)達成割合は95.9%(95%信頼区間:90.8~98.7%)でした。
また、ジェノタイプ1a/1bのC型慢性肝炎及び代償性肝硬変患者の合計に於いても95.9%を示し、サブグループ解析では、年齢、性別、線維化の程度、前治療歴、代償性肝硬変の有無、IL28B遺伝子型などの背景因子、NS5A-L31、及びY93の耐性変異の有無に関わらず、優れた有効性が確認された。




【ジメンシーの製品概要】

【製品名】: ジメンシー®配合錠
【一般名】: ダクラタスビル塩酸塩/アスナプレビル/ベクラブビル塩酸塩
【効能又は効果】: セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

【用法及び用量】: 通常、成人には1回2錠を1日2回食後に経口投与し、投与期間は12週間とする。
【成分・含量】: 1錠中にダクラタスビル塩酸塩16.5mg(ダクラタスビルとして15mg)/アスナプレビル100mg/ベクラブビル塩酸塩39.6mg(ベクラブビルとして37.5mg)を含有する。

【主な副作用】: ジメンシーによる主な副作用は、ALT(GPT)増加が23.0%、AST(GOT)増加が19.4%、好酸球増加症が17.1%、発熱が16.6%、高ビリルビン血症が14.7%等でした。











医療ドラマの手術シーンが変わる!世界初「アクロサージ」が製品化

本題の前に、まずこちらのシーン‥‥。(それぞれ拡大出来ます)


昨年末の第4シーズンも、米倉涼子演じる外科医・大門未知子の、眼光鋭い視線が圧巻だった『ドクターX~外科医・大門未知子~』の手術シーン!




患部を剥離・切除する際、出血を止める目的で使われる焼灼器具(エネルギーデバイス)の煙(微小霧)を、毎回何気なく見ていた人…、或いは臨場感の一部として見ていた人もいるでしょう。

医療ドラマに欠かせない手術シーン。
その場面で当たり前のように登場する、焼灼の煙が、これからは姿を消すかもしれない新たな製品が、間もなく登場する‥‥!!







日機装株式会社(本社:東京都渋谷区)は昨年7月29日に発表し、臨床試用を開始していた世界初のマイクロ波を活用した外科手術用エネルギーデバイス「アクロサージ(Acrosurge)」を製品化し、本年(2017年)1月末までに市場投入を開始する予定だ。

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アクロサージのハサミ型の刃

「アクロサージ」のハサミ型(刃)

マイクロ波を使って生体組織を焼灼する、針型のエネルギーデバイスは以前からあったが、今回新たに製品化されたのは、ハサミ型・鑷子型(せっし型=ピンセット型)・プローブ型のディスポーザブル・デバイスの3種類。

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アクロサージのピンセット型

アクロサージの鑷子型(せっし型=ピンセット型)

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アクロサージのマイクロ波ジェネレーター

アクロサージのマイクロ波ジェネレーター(発電機)

組織焼灼の際、周辺組織に影響を与えない“焼き過ぎない”病変切離と、高い止血性能を両立している。



従来のエネルギーデバイスは、バイポーラ(高周波電流)エネルギーや、超音波振動エネルギーを用いた物で、デバイスと組織の間に生じる摩擦熱などを使い、組織の外側から加熱する仕組みです。
この為、組織を「焼き過ぎる事で表面が黒くこげ、生体内の水分子がミスト(微小霧)となり術者の視界を悪くする」などの恐れがありました。



更に海外のサイト(Outpatient Surgery Magazine=米国外来患者手術誌)の「外科的な煙の危険性を減らしてください」とする研究報告の中に、
http://www.outpatientsurgery.net/surgical-facility-administration/personal-safety/reduce-the-risk-of-surgical-smoke--staff-patient-safety-15

『Airborne threats(空中脅威)』の項には‥‥
外科的な煙と関連した幾つかの潜在的危険があります。

血断片、生存可能な血液媒介病原菌、バクテリアとウイルス、肺に有害なガスと蒸気と塵。揮発ガスの幾つかには、発癌の突然変異誘発性の可能性を示しました。
 
発生する粒子状物質は、計装に依存していて、0.07から6.5マイクロメートルのサイズです。

CO2(炭酸ガス)レーザーで照射を受ける1グラムの組織が、3本のフィルター無しタバコの煙によって突然変異誘発性と同程度の物質を放つことが証明されました‥‥。

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手術中の空気の脅威

Outpatient Surgery Magazine

その為、執刀医ら外科手術チームの健康被害を防止するよう、対策が求められています。

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焼灼煙避難電気メス束

電気メスに焼灼煙避難束が付いたもの

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有毒な生物噴霧の効率濾過システム

吸引式の有毒な生物噴霧の効率濾過システム

これら病原菌微生物の混じった煙やミストを、執刀医らが吸い込むリスクを減らす為にも、焼灼煙とミストの出ない手術器具が求められていました。





「アクロサージ」は、マイクロ波加熱作用を利用する。
これは、電子レンジに使われている加熱原理で、マイクロ波を誘電体に照射すると、分子が振動して誘電体が熱を発する現象。

例えば、水にマイクロ波を照射すると水分子が振動し、その振動で水が発熱する。

その為、外側の変色で内部を含めた凝固の状態が判かる。更に、生体内の水分子が無くなればそれ以上にマイクロ波が作用する事はないので、焼き過ぎる事がない。


この事によって、高周波電流や超音波振動を使う外科手術用エネルギーデバイスに比べ、優れた止血能力と、1つのデバイスで生体組織の剥離、凝固、止血、脈管シーリングなどの一連の手術操作が可能となり、手術時間の短縮をもたらし、患者の負担軽減にも繋がると期待されている。



アクロサージの特徴としては、
  ■ マイクロ波の波長域は、電子レンジと同じ2.45Ghz(ギガヘルツ)
  ■ マイクロ波の照射対象に含まれる水分子に直接、均一に作用。凝固にムラが少なく、高い止血作用
  ■ アンテナとアースの間の限局された部分にのみ照射可能であり、近傍の熱損傷が非常に少ない
  ■ マイクロ波の作用中、煙やミストが殆ど出ないため、手術野が見やすい
  ■ 形状がハサミ型(刃)であり、生体組織の剥離、凝固、止血、脈管シーリングといった幅広い手術範囲に対応



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手術の流れと選択デバイス

手術の流れと選択デバイス


昨年8月から臨床試用を行った医療機関からは、期待の声が寄せられていると言う。

医療法人社団 仁生会 甲南病院(滋賀県甲賀市)院長の渡田正二氏は、「アクロサージは鋭利な剥離切開や血管などの組織凝固を正確に行う事ができ、電気メスなどの使い分けが不要になると期待している」とのコメントを寄せている。 



最先端医療をテーマにしたドラマは今後も制作される事でしょう。
しかし手術中に、執刀医の前で揺らめく煙やミストは、最先端であればある程、不自然になってしまう時代となります。






健康食品で“肺動脈性肺高血圧症”の恐れ


厚生労働省は、潰瘍性大腸炎に効能・効果が期待されるなどして販売されている健康食品の「青黛(せいたい)」を摂取した人に、肺動脈性肺高血圧症の副作用が出たとして、関連学会に注意を促す通知を出した。

現在、潰瘍性大腸炎への有効性を調べる臨床研究が大学病院などで行われているが、効果を期待した患者が、自己判断で摂取するケースが相次いでいる。

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青黛の葉と粉・植物

「青黛(せいたい)の葉と粉末」

この為、肺動脈性肺高血圧症の疑いがある場合、患者に摂取を中止させるよう求めている。

「青黛」は、リュウキュウアイなどの植物から得られる物で、中国では生薬として、国内では主に染料などに用いられて来た。




注意喚起通知は、平成28年(2016年)12月27日付けの「薬生監麻発1227 第9号」及び「生食監発1227 第8号」として、それぞれ厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長名と、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課長名で出された。

「植物由来製品による健康被害(疑い)について」

今般、青黛(せいたい)を摂取した潰瘍性大腸炎患者において、肺動脈性肺高血圧症が発現した症例が、複数存在する事が判明しましたので、お知らせします。

① 青黛の摂取により肺動脈性肺高血圧症が生じる可能性があること
② 自己判断で青黛を摂取せず、必ず医師に相談するよう患者を指導すること
③ 肺動脈性肺高血圧症が疑われる場合には、青黛の摂取を中止させ適切な処置を行
うこと
について注意喚起いただきたく、ご協力をお願いいたします。




1日の「青黛」の摂取量について、2g/日で発現した症例もある事から、日本内科学会など13学会と日本医師会、日本薬剤師会に速やかな注意喚起を要請した。







抗悪性腫瘍剤「イムブルビカ®」がマントル細胞リンパ腫で追加承認を取得

ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区)は昨年12月2日、抗悪性腫瘍剤のブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤「イムブルビカ®カプセル140mg(一般名:イブルチニブ)」について、「再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫(rrMCL)」を効能・効果に追加する事について承認を取得したと発表した。


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イムブルビカ(R)カプセル140mg

抗悪性腫瘍剤「イムブルビカ®カプセル140mg」
(∴再発又は難治性マントル細胞リンパ腫の効能・効果追加承認を取得)


マントル細胞リンパ腫(MCL)は、白血球の一種(リンパ球)であるB細胞に起因する進行性の血液がんです。

国内ではリンパ腫全体の約2.8%を占め、男女比は2対1で男性優位に発症し、発症年齢の中央値は60歳代半ば~70歳で、B細胞性リンパ腫の中では最も予後不良の病型です。

日本に於ける、現在のマントル細胞リンパ腫の患者数は約1,600人と推定され、生存期間の中央値は3~4年で、治癒が難しく、既存の薬物治療後に病勢進行が認められた患者に対する有効な治療法は限られています。


 全身にあるリンパ節の、マントルゾーンに存在するB細胞リンパ球(三日月形B細胞)に起因する血液がん。

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マントル細胞リンパ腫のマントルゾーン拡大図

胚中心(濾胞中心)の周囲にあるのがマントルゾーンで、
この中にBリンパ球が存在する。


マントル細胞リンパ腫の起因は、これまでの所、遺伝子/染色体レベルに於いて、第11番染色体q13と第14番染色体q32の染色体転座により、第11番染色体q13に存在する「BCL-1/PRAD-1遺伝子」に脱制御を生じ、その結果、細胞増殖周期を制御するたんぱく質の、サイクリン(cyclin)D1が過剰に発現する。

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マントル細胞リンパ腫の染色体転座

マントルゾーンのB細胞の染色体転座で発現。

これによってマントルゾーンのBリンパ球が異常増殖し、これがマントル細胞リンパ腫の原因と考えられています。



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マントル細胞リンパ腫B細胞リンパ球病変

マントル細胞リンパ腫B細胞リンパ球病変への過程。


マントル細胞リンパ腫の適応では、2010年12月に「トレアキシン®(エーザイ/シンバイオ製薬)」が、低悪性度のB細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の効能・効果で販売されているが、病勢進行後の選択肢が限定されていた。


「イムブルビカ®」は、1日1回経口投与の新しい作用機序を有するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤で、BTKは、B細胞の成熟と生存を制御する細胞内シグナル伝達に関与する重要なタンパク質で、「イムブルビカ®」は、このBTKを標的にする事で腫瘍細胞の生存シグナルを阻害し、増殖を抑制します。


本剤の効能・効果追加により、マントル細胞リンパ腫の患者へ新しい治療選択肢を提供できると期待される。

現在同剤は、再発または難治性のマントル細胞リンパ腫(rrMCL)の治療薬として、米国と欧州を含む世界40か国以上で承認されており、国内では、小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(rrCLL)の成人患者用治療薬として、2016年3月28日に日本で承認を取得している。




【イムブルビカ®の製品概要】

【販売名】:イムブルビカ®カプセル140mg
【一般名】:イブルチニブ
【剤型】:経口カプセル
【効能・効果】
再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫

【用法・用量】
1) 再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
通常、成人にはイブルチニブとして420mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

2) 再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫
通常、成人にはイブルチニブとして560mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。


【製造販売元】:ヤンセンファーマ株式会社
【薬価】:9,367円/イムブルビカ®カプセル140mg

【製造販売承認取得日】
2016年3月28日(再発又は難治性の慢性リンパ性白血病)
2016年12月2日(再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫)

【薬価収載日および発売日】
2016年5月25日(再発又は難治性の慢性リンパ性白血病)
2016年12月2日(再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫)








血液脳関門通過型ハンター症候群治療剤「JR-141」第I/II相試験3月に開始

JCRファーマ株式会社(本社:兵庫県芦屋市)は1月19日、かねてより研究を進めて来た『血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用した、血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤「開発番号:JR-141」(血液脳関門通過型遺伝子組換えイズロン酸2スルファターゼ)』について、2016年12月に、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験計画届を提出、所定の調査が終了し、第I/II相臨床試験を、本年3月に開始予定であると発表した。


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ムコ多糖症新治療薬JR-141

*写真はイメージです。
治験薬「JR-141」はPMDAに治験開始申請したばかりであり、
薬剤の写真はありません。



血液脳関門(BBB:Blood-Brain Barrier)は‥‥
 様々な有害物質から、脳の神経細胞を守るために、血液から脳内への物質の移行を制限する防御機能の事で、脳の恒常性維持に不可欠となっている。

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血液脳関門の機能

血液脳関門は、脳全体に細かく網の目のように張り巡らされ、全長約600~650キロメートルに及ぶ脳毛細血管に隙間なく張り巡らされている。


 これによって、脳の神経活動のエネルギー源となる栄養素(グルコース、アミノ酸、ヌクレオチドなど)やブドウ糖などの必要な物質は、脳内に選択的に輸送されるが、それ以外の多くの物質は、この防御システム(バリア機能)により脳内に自由に入る事が出来ない。

また、何らかの要因で脳毛細血管内皮細胞内に入ってしまった不必要な物質は、排泄を司るP糖タンパク質などの排泄トランスポーターがそれらを血中へ戻す事により、脳内への侵入が防がれている事も知られる。




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ハンター症候群酵素治療薬エラプレース

ハンター症候群(ムコ多糖症II型)治療薬
「エラプレース(一般名:イデュルスルファーゼ)」
国内では2007年10月17日に薬価収載・同日発売されている。


ハンター症候群は、日本で最も多く報告されているムコ多糖症II型(MPS:Mucopolysaccharidosis II)で、体内のライソゾーム酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ)が生まれつき欠損する事で、全身の細胞にムコ多糖が蓄積する遺伝性代謝異常症です。
 ※ムコ多糖は、アミノ酸を含む多糖(ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸)の総称です。

ムコ多糖症は7つに分類され、ハンター症候群はII型と呼ばれ、中枢神経障害を伴う重症型と、中枢神経障害を伴わない軽症型に大別されていますが、疾患の重なる型もあります。



ハンター症候群は、ムコ多糖症の中で唯一、男児にのみ遺伝する(X染色体連鎖劣性遺伝)病態で、国内での患者数は2009年まででは、255例が報告されている。

よく見られる症状は、記憶・学習障害、発達の遅れ、低身長、骨格変形、特徴的な顔立ち、固い関節、お腹の膨れ(肝脾腫)、臍・鼠径ヘルニア、心弁膜症(心雑音)、中耳炎、難聴などです。

これらの症状は赤ちゃんの頃は目立たず、3~5歳頃になるとハッキリして来ます。重症の患者では、徐々に症状が進行し10歳代になると、歩けなくなる・自分で食事が出来なくなる・自発呼吸が困難になる・寝たきりになる、などの状態になります。
また軽症の患者では、軽度の低身長や心雑音のみで、大人になるまで診断されない事もあります。



ハンター症候群に対する既存の治療酵素製剤(エラプレース)は、血液脳関門(BBB:Blood-Brain Barrier)を通過出来ない為、脳内で薬の効力を発揮できず、中枢神経症状に効果が期待できないと言う課題があった。




血液脳関門通過技術とは‥‥
 本来は脳への薬効が制限される事で、治療薬が効果を発揮出来ず、中枢神経症状に対しては、髄腔内投与などの特殊な投与方法も試みられているが、患者にとって負担が大きい。

 また、血液脳関門のために、脳実質全体に薬剤が到達出来ないなどの問題が懸念されている。



治験計画届が出された、新規酵素製剤「JR-141」は、マウスやサル(=治験申請に霊長類は必要不可欠)を用いた動物試験で、通常の酵素製剤と比較して、静脈内投与による「JR-141」の脳への薬剤移行や中枢神経系障害の改善効果において、脳内の濃度が数十倍に上昇する非常に良好な結果を示した。




血液脳関門通過技術は、ハンター症候群の原因となっている欠損酵素「イズロン酸2スルファターゼ」を、遺伝子組換え技術によって血液脳関門通過型の酵素にする。


これらの結果を踏まえ、ハンター症候群(ムコ多糖症II型)の患者を対象として、2017年3月より第1/2相臨床試験を実施する予定となった。


今後、JCRファーマ株式会社は、「JR-141」に引き続き、病態発症に中枢神経系が関与している他のライソゾーム病に対して、『J-Brain Cargo®』を適用した治療酵素の開発を順次行い、希少疾病治療薬のスペシャリティファーマとして、より多くの患者の治療に貢献出来るよう取り組んで行くとしている。







便秘型過敏性腸症候群治療薬「リンゼス錠」が製造販売承認取得

アステラス製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)は2016年12月19日、米Ironwood社より導入し、日本に於いて開発しているグアニル酸シクラーゼC受容体作動薬「リンゼス®錠0.25mg(一般名:リナクロチド)」について、便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)の効能・効果で、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表しました。


尚、本剤は2017年2月15日に薬価収載される。




過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)は、器質的病変を伴わない、腹痛・腹部不快感と便通異常(下痢、便秘)が主体で、それら消化器症状が長期間持続、もしくは悪化や改善を繰り返す機能性疾患です。

過敏性腸症候群の便通異常や腹部症状は、ストレスを始めとする種々の病因によって引き起こされ、最終的には腸管神経の過度の活性化に伴う、消化管運動の昂ぶりによって生じると考えられています。




今回の承認取得は、主に、日本人の便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)の成人患者を対象として、国内で実施した第3相試験の結果に基づいています。

「リンゼス®錠」は、腸粘膜上皮細胞に発現している、グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体に局所的に結合して、活性化する事により、腸管分泌及び腸管輸送能を促進し、更に内臓痛覚過敏(痛み刺激に対する過敏性)を改善します。



「リンゼス®錠」は、成人のIBS-Cと慢性特発性便秘(CIC)の適応症で、世界30か国以上で承認されています。
日本では成人の2.9%が便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)であると言われていますが、IBS-Cの効能・効果で承認されている薬剤はありませんでした。



【承認内容の概要】

【販 売 名】:リンゼスⓇ錠0.25mg
【一 般 名】:リナクロチド
【薬効分類】:239 その他の消化器官用薬(内用薬)
【効能・効果】:便秘型過敏性腸症候群
【薬 価】:0.25mg1錠 92.40円(原価計算方式で算定)
【投与患者数】:17万人




尚、本剤の薬価について、類似の効能・効果を有する、トリメブチンマレイン酸塩、ポリカルボフィルカルシウムは薬価収載後10年以上、後発医薬品が収載されている事などから、総合的に類似の効能・効果、薬理作用をもつ新薬算定最類似薬は無いと判断し、原価計算方式で算定したと説明している。






抗造血器悪性腫瘍剤「レブラミド®カプセル」がATLへの効能追加で承認取得

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は2月3日、セルジーン株式会社(本社:東京都千代田区)が承認申請していた、抗造血器悪性腫瘍剤「レブラミド®カプセル2.5mg、5mg(一般名:レナリドミド水和物®)」ついて、「再発又は再燃・難治性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)」に対する効能・効果追加の承認申請を了承した。


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レブラミドカプセル2.5mgと5mg

抗造血器悪性腫瘍剤「レブラミド®カプセル2.5mg、5mg」は
既に「再発又は難治性の多発性骨髄腫」と「5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群」で
承認取得済の新効能・新用量医薬品。


本剤は厚生労働省より、2016年6月20日に「再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫」を予定される効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定された、新効能・新用量医薬品である。


成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)は、白血球の中のT細胞に、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)が感染し、 がん化する事で発症する悪性リンパ腫の一つです。
HTLV-1に感染している人は、日本全国で約120万人と推定されており、発症するのはそのうち、感染者10,000人について年間6人余りで、国内の患者数は2,000人(政府統計(厚生労働省).平成26年患者調査)と推計されています。

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ヒトT細胞に感染しているHTLV-Iウイルス

T細胞(リンパ球)に感染したHTLV-1(蛍光電顕加工画像)


HTLV-1に感染しても、多くの場合は発症する事はなく経過し、発症した場合でも感染者のごく一部で、約30~50年間(花細胞になるまで)の潜伏期間があります。

しかし何故、HTLV-1に感染している人が成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)を発症するのかは、はっきりと解明されていません。


成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の治療では、多剤併用化学療法や同種造血幹細胞移植が行われますが、多くの場合、再発又は再燃し、病勢進行します。
再発又は病勢進行したATLに対する有効な治療法は十分ではなく、新しい薬剤の登場が待ち望まれています。






「レブラミド®カプセル」は既に国内に於いて、2010年6月に「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の治療薬として、製造販売承認を取得、2015年12月には「未治療の多発性骨髄腫を含む『多発性骨髄腫』」の効能・効果を取得しており、2010年8月には「第5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群」の効能・効果で承認を取得している。

この為、本剤は『報告品目』となっていた。
  ※報告品目は、原則として医薬品部会の審議日までに医療用医薬品として承認されたもの。
  報告品目は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断されたもの(新医薬品以外)。



今回、再発又は再燃・難治性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の患者を対象とした、国内の臨床試験において「レブラミド®」の有効性と安全性が確認された事から、2016年6月29日に効能・効果の承認事項一部変更承認申請を起こっていた。

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レブラミドの作用機序と薬理作用

レブラミド®の作用機序と薬理作用
(細胞障害性は、細胞に対して自滅死、もしくは機能障害や増殖阻害の影響を与える物質や薬理作用)


「レブラミド®」は、米国セルジーン社で創製された経口の免疫調節薬(IMiDs®)で、腫瘍壊死因子(TNF-α)等のサイトカイン産生抑制作用Tリンパ球及びナチュラルキラー(NK)細胞の活性化造血器腫瘍細胞に対する増殖抑制作用血管新生阻害などの薬理作用を持ち、これら作用によって腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

海外では、成人T細胞白血病リンパ腫を対象とした開発は行われていない(2016年6月現在)。



抗血小板薬「ブリリンタ®錠」の国内販売開始

アストラゼネカ株式会社(本社:大阪府大阪市)は、抗血小板薬「ブリリンタ®錠60mg / 90mg」(一般名:チカグレロル)について、急性冠症候群(ACS)、及び陳旧性(ちんきゅうせい)心筋梗塞(OMI)の適応で、2月8日に日本国内で新発売したと発表した。
「ブリリンタ®錠60mg/90mg」は、2016年9月29日に国内製造販売承認を取得、同年11月18日に薬価収載されていた。




抗血小板薬は、動脈硬化によって作られたプラーク(アテローム)が破裂する事によって血管に傷がつくと、血小板が活性化して血栓(血液凝固)が作られ、冠動脈を詰まらせる作用を阻止する薬剤。




急性冠症候群(ACS:Acute Coronary Syndrome)は、動脈硬化により形成された不安定プラークが破綻し、そこに血栓が出来る事によって冠動脈内腔が急速に狭窄または閉塞した病態を言う。(冠動脈とは、心臓を取り巻く心臓に血液を供給している動脈)



陳旧性心筋梗塞(OMI:Old Myocardial Infarction)は、発症から30日以上が経過した心筋梗塞の事で、症状は安定しているものの、壊死した心筋は線維化している状態。(急性心筋梗塞の場合は発症から3日以内で、胸痛があるが、陳旧性心筋梗塞では発症時に胸の痛みを感じない)





「ブリリンタ®錠」は、血小板(血液凝固や止血に重要な役割を果たしている血液成分)のアデノシン二リン酸(ADP)受容体(P2Y12)に対して選択的、直接的な阻害作用を有し、ADPによる血小板凝集を抑制するシクロペンチルトリアゾロピリミジン群(cyclo-pentyl-triazolo-pyrimidines:CPTPs)に分類される、新規化合物製剤である。

「ブリリンタ®錠」によるP2Y12受容体阻害は、既存のチエノピリジン系P2Y12受容体阻害薬とは異なり、可逆的(変化したものを、元の状態に戻す事が出来る)性質である為、投与終了後には速やかに作用が消失する特徴がある。

また、肝臓での代謝活性化を必要とせずに作用が発現し、投与後早期に血小板凝集阻害作用が得られ、代謝酵素の遺伝子多型による影響を受けず、効果の患者個体差が少なくなっている。



【製品概要】

【販売名】:ブリリンタ錠60mg、同90mg
【一般名】:チカグレロル
【効能・効果】
   1)ブリリンタ錠90mg:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)(但し、アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、尚且つ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る)

   2)ブリリンタ錠60mg:以下のリスク因子を1つ以上有する陳旧性心筋梗塞のうち、アテローム血栓症の発現リスクが特に高い場合

  ・65歳以上
  ・薬物療法を必要とする糖尿病
  ・2回以上の心筋梗塞の既往
  ・血管造影で確認された多枝病変を有する冠動脈疾患
  ・末期でない慢性腎機能障害

【薬価】:60mg1錠/100.70円、90mg1錠/141.40円
【用法・用量】
  ■ 急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
     通常、成人には、チカグレロルとして初回用量を180mg、2回目以降の維持用量を90mgとして、1日2回経口投与する。

  ■ 陳旧性心筋梗塞
     通常、成人には、チカグレロルとして1回60mgを1日2回経口投与する。



「ブリリンタ®錠」は、欧米を含む世界120カ国以上で急性冠症候群(ACS)の適応症で承認されており、米国とヨーロッパにおいては心筋梗塞の既往の適応でも承認を受けている。




多発性硬化症治療薬「テクフィデラ®カプセル」が国内販売を開始

バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区)は、2016年12月19日に国内での製造販売承認を取得した、「多発性硬化症の再発予防、及び身体的障害の進行抑制」の適応症で「テクフィデラ®カプセル120mg, 同240mg(一般名:フマル酸ジメチル)」について、2月15日に薬価収載された事を受け、これに基づき2月22日から発売を開始した。


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テクフィデラカプセル120mg240mg

多発性硬化症治療薬「テクフィデラ®カプセル120mg, 同240mg」
Tecfidera®(dimethyl fumarate)は2013年に米国、2014年に欧州で承認された、
抗炎症作用と神経保護作用を有する経口薬です。



多発性硬化症(MS=Multiple Sclerosis)は、深刻な慢性進行性神経疾患であり、視力障害、運動障害、認知機能、感覚障害、心理社会的機能の全てに様々な神経症状を呈する、中枢神経系の“脱髄疾患”の一つで、ミエリン破壊、オリゴデンドロサイトの細胞死、軸索損傷、及びその後の神経細胞の喪失を特徴とする、自己免疫疾患です。

  ※多発性硬化症(MS)の原因は自己免疫疾患で、身体を細菌やウイルスから守る白血球やリンパ球などが、自分の脳や脊髄を攻撃する事で発症しますが、何故、自己免疫攻撃が起こるかは分かっていません。


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脳内の神経細胞と脊髄

大脳、脳幹、小脳、脊髄や視神経などの中枢神経に発症する。

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神経細胞から伸びる髄鞘

神経細胞から出た神経線維(軸索)は脊髄を通って全身へ信号を伝える。
軸索は髄鞘(オリゴデンドロサイト)と言う節状細胞に覆われているが……

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被膜の剥がれた髄鞘が剥き出し

多発性硬化症を発症すると、軸索を包む髄鞘(ずいしょう)が破壊され、
脱髄と言う状態となり様々な神経機能障害が起こる。



多発性硬化症の有病率は人種間及び地域間で差があり、日本における推定有病率は、欧米諸国の10%程度と報告されています(多発性硬化症・EBMに基づく脳神経疾患の基本治療指針2015)。

また、多発性硬化症の日本での罹患率は、10万人当たり10.8~14.4人と報告されています。男女比は1:3.3と女性が多く、20~30歳代に好発します。

日本で多発性硬化症に罹っている方の数は、視神経脊髄炎の方も含めて現在2万人と推定され(一般財団法人 北海道多発性硬化症・視神経脊髄炎総合支援センター)、再発を繰り返す再発寛解型が9割を占めている。(2014年特定疾患医療受給者証交付件数)




多発性硬化症(MS)の治療では、早期に診断して薬物治療を開始する事で、病勢進行を抑制させると共に、再発させない事が重要となりますが、患者の中には、『指先の痺れ』や『視力低下』、『構音障害(話し言葉を正確・明瞭に発音出来ない)』、『歩行障害』などの自覚症状から、整形外科や脳神経外科を受診したものの、「異常なし」とされたり、「脳梗塞」など他の疾患と診断された例があると言う。


多発性硬化症の再発・進行抑制に用いる疾患修飾薬(disease modifying drug)は、2000年以降、IFN-β-1a製剤、IFN-β-1b製剤、フィンゴリモド、ナタリズマブ、グラチラマー酢酸塩の5剤が登場、用いられて来た。 


既存の治療薬。
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アボネックス筋注_インターフェロンベータ-1a

IFN-β-1a製剤「アボネックス筋注」

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イムセラとジレニア_フィンゴリモド塩酸塩

フィンゴリモド塩酸塩製剤「イムセラ」と「ジレニア」

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タイサブリ点滴静注_ナタリズマブ

ナタリズマブ製剤「タイサブリ点滴静注」

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コパキソン皮下注_グラチラマー酢酸塩

グラチラマー酢酸塩製剤「コパキソン皮下注」



しかしそれぞれの薬剤は、欧米で長期の使用経験があるものの、ナタリズマブでは副反応として進行性多巣性白質脳症(PML)の発生リスクが報告され、フィンゴリモドは、長期の安全性についてはデータの蓄積が無い事、グラチラマー酢酸塩は毎日注射、IFN-βは隔日または週1回の投与による注射部位反応が問題となり、IFN-βではインフルエンザ様症状が発現し、患者のQOLを低下させるという難点がある。

日本人の病状は欧米に比べ軽症例が多く、錠剤化(カプセル剤)されているのが、フィンゴリモドのみだけであり、この薬剤を初期から使用するのは難しいのが現実となっている。



多発性硬化症は……
 若年で発病し、終生罹患する為、「就学・資格の取得が困難」「就職先を見つけるのが困難」「資産形成の機会喪失」「結婚・出産の機会喪失」「育児の困難」と言った、様々な困難にも見舞われる。

 その為、初期から使いやすい経口薬で、身体的な負担が少なく、継続して使用できる第一選択薬が待ち望まれていました。





【製品概要】

【製品名】:テクフィデラ®カプセル120mg, 240mg
【一般名】:フマル酸ジメチル(dimethyl fumarate)
【効能・効果】
多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制(進行型多発性硬化症に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。)

【用法・用量】
通常、成人にはフマル酸ジメチルとして1日240mgを1日2回に分けて経口投与する事から開始し、1週間後に増量し1日480mgを1日2回に分けて経口投与する。

【収載薬価】
テクフィデラ®カプセル120mg: 2037.20円
テクフィデラ®カプセル240mg: 4074.40円

【副作用】
国内で実施された再発寛解型多発性硬化症患者を対象とした臨床試験において、本剤1回240mg/1日2回を投与された111例中62例(55.9%)に副作用が認められた。
主な副作用は、潮紅(20.7%)、下痢(9.0%)、腹痛(6.3%)、悪心(6.3%)、ほてり(5.4%)、そう痒症(5.4%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(5.4%)であった。






消費者庁「水素水でダイエット」根拠なし、3社に措置命令


消費者庁は3月3日、水素を溶かしたとする「水素水」や「水素サプリ」について、合理的な裏付けが無いのに「水素のパワーでダイエット」などと宣伝(広告)していたのは、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、通信販売会社「マハロ(東京都港区)」、通販会社の「メロディアンハーモニーファイン(大阪府八尾市)」と「千代田薬品工業(東京都千代田区)」の3社に対し、再発防止策などを求める措置命令を出した。


数年前からブームになっている“水素水”について、消費者庁が景品表示法違反で処分をするのは初めて。


消費者庁によると、「マハロ」、「メロディアンハーモニーファイン」と「千代田薬品工業」の3社は、水素が入っているとする飲料水「ビガーブライトEX」、「水素たっぷりのおいしい水」や、サプリ「ナチュラ水素」について、「燃焼ダイエット」「炎症を抑える効果で肩こりが軽減」などとする広告を、ホームページに載せていた。


消費者庁が3社に、“広告の根拠となる資料の提出”を求めたが、科学的に十分な物が示されなかったと言う。


これら水素水などの水素関連商品は、“芸能人やスポーツ選手がブログで紹介”した事もあってブームになり、コンビニやスーパーにも商品が並ぶようになっている。
一方で、国民生活センターが昨年12月(※下記記事参照)、禁じられている健康効果を謳う表示や広告が目立つ上、水素自体が検出されなかった商品もあったとして、注意を呼びかけていた。


【朝日新聞デジタル/2017年3月3日15時00分配信】



国民生活センターによる注意喚起
【朝日新聞デジタル/2017年1月7日21時45分配信】

芸能人がブログなどで紹介してブームとなっている「水素水」について、国民生活センターが違法と見られる表示や宣伝(広告)が目立つと、注意を呼びかけている。
禁じられた健康効果を謳うだけでなく、水素自体が検出されなかった製品もあった。

「痒(かゆ)い部分に水素水をつけて」、「最先端のアンチ・エイジング」、「老化や病気の原因となる悪玉活性酸素を消去」――。

ネット上に記載された水素水や水素水生成器についての商品説明には、健康への効果を謳う最もらしい文言が並ぶ。

国民生活センターは、特に売り上げが多いと見られる『容器入り水素水』と『水素生成器の19商品』について、表示や広告の表現を調査。このうち13商品で、パッケージや販売サイトなどに健康効果と受け取れる表現があった。

飲料や食品は、健康効果を謳う事を医薬品医療機器法などで禁じられている。
勿論、もっともらしい体験談も禁止!


特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品であれば可能だが、“水素水で許可・届け出されたものは無い”。
国民生活センターは、健康効果を謳った事業者に表示の改善を求めた。





しかし残念ながら、これらの改善勧告を無視し、販売を続けるのが、こう言う『サプリ』を売る側の常套手段!!
販売差し止め等の行政処分が発動するまで、儲けようと言う魂胆な訳だ。

消費者庁の措置命令は、法律違反で更に厳しい行政処分(販売停止期間の指示など)が下される一歩手前となる。

くれぐれも広告に惑わされないように……






小児期の注意欠陥/多動性障害治療薬「インチュニブ®錠」の製造販売を了承

塩野義製薬株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)が2016年1月27日に製造販売承認申請していた、小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療薬「インチュニブ®錠1mg、同3mg(一般名:グアンファシン塩酸塩徐放性製剤、『国内開発コード:S-877503』)」について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は3月2日、承認の可否について審議し、国内での製造販売承認を了承した。


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インチュニブ錠1mgと3ミリグラム

小児期の注意欠陥/多動性障害治療薬「インチュニブ®錠(Intuniv®)」
欧米では1mg、2mg、3mg及び4mgが発売されているが、剤形が異なる為、
日本国内では丸く飲みやすい1mgと3mgのみが承認申請され、了承された。


  ▼本稿では『AD/HD』の日本語表記について、日本精神神経学会が示した「注意欠陥/多動性障害」を疾患名として使用していますが、塩野義製薬株式会社が承認申請した疾患名は「注意欠如・多動症」となっています。どちらも正しいのですが、現時点で疾患名は統一されていません。


注意欠陥・多動性障害(注意欠如/多動症=Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、注意を持続させる事が困難(意識的に集中出来ない)、多動性及び衝動性(突然乱暴な行動をする)の3つの主要症状で定義され、知的障害の合併があっても良いとされます。
これまでは小児期の疾患とされて来ましたが、近年では、症状が成人期になっても持続する場合がある事が認められるようになりました。


ADHDの原因病態メカニズムは、先天性の、脳の微細な機能的障害と考えられています。
大脳の前頭前野にある、神経細胞(前シナプス)と神経細胞(後シナプス)の間にある隙間(シナプス)に放出される、神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)の低下によって‥‥


‥‥衝動感情・随意運動・認知・注意力と言った機能を制御する「大脳基底核」の働きが弱くなってる事が分かっています。


ADHDは、WHO(世界保健機関)に於いても疾患分類がなされており、世界での罹患率は5.29~7.1%、小児及び18歳未満の学童期では3~5%未満と推定されています。男児に多く、男女比は3~5対1です(2012-2013アメリカ精神医学会)。

ADHDの発症要因は解明されていませんが、遺伝的要因と環境要因の両方が重なり、発症すると考えられています。



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ADHDの診断基準

ADHD 注意欠陥・多動性障害(注意欠如/多動症)の診断基準



「インチュニブ®錠『S-877503』」は、2011年11月に塩野義製薬とシャイアー社(本社:アイルランド)との間で締結した、国内における共同開発・商業化に関するライセンス契約に基づき、小児期のADHD治療薬として共同開発されて来た。

国内に於いて、ADHDに対する適応が承認されている薬剤は2剤のみで、欧米などと比較して使用出来る治療薬が少ない為、新たな治療薬が望まれていました。



「インチュニブ®錠」は、シナプス(神経細胞と神経細胞の連結部の隙間)に存在する受容体を介して、ノルアドレナリン作動性神経を活性化する事で症状を改善する、非中枢神経刺激薬で、前頭前野皮質に於ける後シナプス性α2A受容体の活性化作用により、ADHD症状を改善すると考えられています。


更に「インチュニブ®錠」は、培養げっ歯類の前頭前野大脳皮質における樹状突起のシナプス構造の一種である成熟を促進し、数および密度を増加させる事が示されている。

本剤は、「小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」を効能・効果とする新有効成分(グアンファシン塩酸塩)含有医薬品で、再審査期間8年となっている。




【承認内容の概要】

【販 売 名】:インチュニブ®錠1mg、同3mg
【一 般 名】:グアンファシン塩酸塩徐放性製剤
【効能・効果】:小児期の注意欠陥/多動性障害
【用法・用量】
体重50kg未満の小児では1日1mg、50kg以上の小児では1日2mgより投与を開始し、1週間以上の間隔を空けて、1mgずつ体重別の維持用量まで増量する。症状により適宜増減する。
いずれも1日1回経口投与する。



ADHD治療薬の既承認類薬としては、中枢刺激薬の「コンサータ(メチルフェニデート徐放剤)」、非中枢刺激薬の「ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)」があり、いずれも第一選択薬に位置づけられていますが、厚生労働省の審議担当官によると、「インチュニブ®錠」もこれらと同様に、第一選択薬に位置づけられると想定されるとしている。

尚、海外では欧米など33の国で承認済(Intuniv®として2016年11月末現在)。






ビタミンK拮抗薬の抗凝固状態抑制薬「ケイセントラ静注用」が製造販売承認を取得

CSLベーリング株式会社(本社:東京都江東区)が2016年8月25日に製造販売承認申請していた、“ビタミンK拮抗薬投与下の急性重篤出血時及び緊急手術時などの出血傾向の抑制”を効能・効果とする新有効成分含有医薬品、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体製剤「ケイセントラ®静注用500単位、同1000単位(開発コード:BE1116)」について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は3月3日、製造販売承認を了承した。


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ケイセントラ静注用 Kcentra

静注用人プロトロンビン複合体製剤「ケイセントラ®静注用500、同1000」
(米国名:Kcentra)

  ◆耳慣れない「単語」が羅列しましたが、CSLベーリング株式会社が、正式に本薬剤について発売時製剤名を発表していない為、承認申請時と、3月3日の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会の資料、及びCSL Behring LLC(本拠地:オーストラリア・メルボルン)と開発部門のあるアメリカ・CSL Behringの先行承認された英文資料を基に、本稿を作成しています。


「ケイセントラ®静注用500、同1000(乾燥濃縮人プロトロンビン複合体)」は、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会」の第2回開発要望募集(2011年)に於いて、日本脳卒中学会から、「欧米等において標準的療法に位置づけられており、国内外の医療環境の違い等を踏まえても、国内における有用性が期待できると考えられる」製剤として、早期開発の要望が提出され、その後、検討会議で、医療上の必要性の高い未承認薬と認められた。

2012年4月、この決定を受けて、CSLベーリング株式会社は厚生労働省から、「BE1116」製剤の開発要請を受け開発した。




ビタミンK拮抗薬(ワルファリン/ワーファリン等)は、血液を固まりにくくする作用が強く、脳血栓、心筋梗塞、静脈塞栓症、肺塞栓症などの『血栓塞栓症』の予防と治療に用います。


しかしビタミンK拮抗薬の服用患者は、血液が固まりにくい“抗凝固状態”である為、出血時や出血が予測される際の止血管理が極めて重要となります。
一般的には、ビタミンK拮抗薬の「休薬」や「ビタミンK」の投与で対処しますが、出血抑制効果が認められるまで数時間以上を要します。

この為、重篤出血時や緊急手術時など、抗凝固状態を早急に是正する必要がある場合の十分な対処法がありませんでした。

「ケイセントラ®静注用」は、このような場合に、必要な血液凝固因子を補充する事で出血傾向を速やかに是正する事が期待されます(PT-INR=プロトロンビン時間の是正)。




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ケイセントラの作用機序1

ビタミンK拮抗薬は、血小板の働きを抑制する為、出血してもなかなか止血出来ない。
これは主に6種類の血液凝固因子が、非活性化している事で血小板凝集が作用しないため。




【乾燥濃縮人プロトロンビン複合体製剤「ケイセントラ®静注用」について】
血液凝固第II(2)因子、第VII(7)因子、第IX(9)因子、および第X(10)因子はビタミンKの作用により肝臓で合成される凝固因子で、これらを合わせた製剤は、一般にプロトロンビン複合体製剤と呼ばている。

「ケイセントラ®静注用」には、これらの凝固因子が高濃度で含まれており、また、ビタミンK依存性の凝固阻害因子のプロテインC、及びプロテインSも含まれている。


ケイセントラの作用機序。
「ケイセントラ®静注用」には、血液凝固因子である第II(2)因子、第VII(7)因子、第IX(9)因子、第X(10)因子、及び凝固阻害因子プロテインC、プロテインSが高濃度に含まれ、
ビタミンK拮抗薬の作用を抑制し、止血する。

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ケイセントラの作用機序2

「ケイセントラ®静注用」は、ビタミンK拮抗薬の投与により減少した血液凝固第II因子、第VII因子、第IX因子、および第X因子を、簡便で速やかに補充する事が可能であり、出血リスクの高い、過度に促進した抗凝固状態を是正する事が可能な薬剤である。


【「ケイセントラ®静注用」の特徴】
▼ABO血液型に従う必要がない。
▼投与終了までに要する時間が短い(融解不要、投与容量が少ない)
▼製造工程に病原体の不活化/除去工程を含むのが特徴。


2016年7月1日現在、本製剤は欧州諸国、米国を含む42の国と地域で承認されている。






世界初、悪性脳腫瘍に対する「変異型IDH1阻害剤」の第1相臨床試験を開始

国立研究開発法人 国立がん研究センター(所在地:東京都中央区築地)と第一三共株式会社(本社:東京都中央区日本橋)は3月1日、悪性脳腫瘍(神経膠腫(しんけいこうしゅ)/グリオーマ)・急性骨髄性白血病・胆管がん・骨肉腫(軟骨肉腫)などの悪性腫瘍に対する新規分子標的薬として、世界で初めて、変異型イソクエン酸脱水素酵素IDH1に対する選択的阻害剤(開発コード:DS-1001)を共同開発し、人(患者)を対象に、第I相臨床試験を開始したと発表しました。

プレスリリース:http://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/press_release_20170301.html


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悪性脳腫瘍治験薬_変異型IDH1阻害剤

*写真はイメージです。
治験薬「変異型IDH1阻害剤(DS-1001)」は第I相臨床試験を開始したばかりで、
薬剤の写真はありません。


今回の第I相臨床試験は、標準的治療法の無い、再発のIDH1変異のある神経膠腫(グリオーマ)の患者を対象とするもので、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)にて実施するほか、他の施設でも実施されます。

尚、本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)・革新的がん医療実用化研究事業、及び国立がん研究センター研究開発費等の支援を受け、国立がん研究センター中央病院 臨床研究コーディネーター室と、第一三共株式会社で行っている。



■ 神経膠腫(しんけいこうしゅ/グリオーマ)とは、脳に発生する悪性腫瘍で、転移性を除く原発性脳腫瘍の約30%を占めます。 脳に染み込むように広がって行き、正常な脳との境界が不鮮明で、手術による全摘出は困難です。

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IDH1突然変異によるヒト脳腫瘍細胞

IDH1突然変異によるヒト脳腫瘍細胞。
【© 2013ジョンズホプキンス大学病院, and Johns Hopkins Health System】


通常は再発予防の目的で、手術後の放射線治療や化学療法などが必要となりますが、悪性神経膠腫(脳腫瘍)の多くは、数ヵ月~数年で再発し、その際、更に治療が困難になっているのが現状で、その為、新規薬剤開発が強く求められています。

尚、グレード1は小児に好発する脳腫瘍で、良性腫瘍がほとんどであり、手術で全て摘出すれば再発は稀です。



今回開発した「変異型IDH1選択的阻害剤(DS-1001)」は、悪性脳腫瘍(神経膠腫/グリオーマ)・急性骨髄性白血病・胆管がん・軟骨肉腫などの悪性腫瘍では、*IDH1/IDH2遺伝子に高頻度に変異が見られる事に着目。

*IDH1(Isocitrate DeHydrogenase 1)とは……
イソクエン酸脱水素酵素を造らせるために指示する遺伝子で、この酵素が細胞質の中を流体充填する事で、脳細胞などを潜在的に有害な活性酸素分子から保護しています。

【用語説明出典:U.S.National Library of Medicine - IDH1 gene - Genetics Home Reference
https://ghr.nlm.nih.gov/gene/IDH1 】


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IDH1とIDH2遺伝子座標

IDH1遺伝子は第2染色体の2q34に位置し、
IDH2遺伝子は第15染色体の15q26.1に位置している。

国立がん研究センター研究所の造血器腫瘍研究分野・北林一生研究分野長の研究グループが、変異型IDH1/2を阻害する事により、IDH1/2変異を持つ急性骨髄性白血病の“*がん幹細胞”が消失する事を発見した。

*がん幹細胞とは……
  分化せず自身を増殖させる事が可能な自己複製能力と、複数種の細胞へ分化可能な多能性(化学療法抵抗性など)を有し、特定の組織を再構成できる細胞で、がん幹細胞は、がんを再生する能力を持つ細胞の事。



悪性脳腫瘍は、正常脳との境界が不明確な為、手術で摘出後、残存腫瘍に対しての化学療法が血液脳関門と言うバリアー機能で阻止され、届きにくいと言う難点があった。

しかし「変異型IDH1選択的阻害剤(DS-1001)」は、脳内移行性を有し、患者由来組織移植(PDX)モデル等を用いた非臨床試験(実験動物マウス)では、IDH1変異を持つ悪性脳腫瘍、急性骨髄性白血病、軟骨肉腫の増殖を抑制する事が示されていると言う。


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侵襲性の再発悪性脳腫瘍

侵襲性(正常脳との境界が不明確)の再発悪性脳腫瘍。



これまで開発されて来た悪性腫瘍に対する分子標的薬は、主に、がん細胞で活性化や高発現している分子を標的としたものでした。

これらの標的分子は、正常な細胞でも一定の発現がある為、正常な細胞にも作用し、副作用が生じる事がありましたが、今回開発した「変異型IDH1選択的阻害剤(DS-1001)」は、がん細胞だけで発現する“変異型IDH1”を選択的、及び特異的に阻害し、正常細胞で発現する野生型のIDH1に対する作用は極めて弱い事が示されている。



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脳腫瘍のタイプ100種以上

脳腫瘍は組織学的におおよそ150に分類されます。
そのうちグレードⅡ・Ⅲ・Ⅳの脳腫瘍の高頻度腫瘍は、13~14腫瘍。

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脳腫瘍のグレード別病態

悪性脳腫瘍のグレード別病態と生存率。
(東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科資料より作成)


悪性脳腫瘍のIDH1変異は、グレードⅡ・Ⅲの神経膠腫(*星細胞腫(せいさいぼうしゅ)・*乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ))と診断された患者の7割以上に認められ、これらのIDH1変異のある神経膠腫は、30-50歳に多い腫瘍で、再発を繰り返し、治療経過も長い事から、「変異型IDH1選択的阻害剤(DS-1001)」の効果が期待されています。

*星細胞腫とは……
  脳、又は脊髄の星細胞と呼ばれる星の形をした小さな細胞から発生する腫瘍。

*乏突起膠腫……
  脳と脊髄に於いて、神経細胞を覆って保護している乏突起細胞から発生する、極めて稀で増殖の遅い腫瘍。



日本国内での脳腫瘍の発生頻度は、年間におおよそ2万人と考えられます。(国立がん研究センター 希少がんセンター2016-05より)

悪性脳腫瘍は「治らない病気ではない」と、記述しているWebもありますが、最も厄介なのは、再発した場合や、脳の深部に発症した場合など、一次治療で寛解しても、次の治療が限定される病態です。
特定の病院でしか治療出来ないと言うのは、治療法の確立とは言えません。
手術→→放射線→→化学療法→//→その後「再発」した時の標準治療の確立があってこそ、治る病気と言えるでしょう───。






5歳児の母親8割「知らなかった」…肺炎球菌ワクチンの補助的追加接種




ファイザー株式会社(本社:東京都)は、5歳の子供を持つ母親2,793人に、子供の『肺炎球菌ワクチン接種』の実態を調査、2月1日に“子どもの肺炎球菌ワクチン接種に関する意識調査”として、結果を公表した。

その結果、8割以上の母親が、お子さんが*“補助的追加接種”の対象である事を知らなかった───。
しかし、医師などから勧められれば、接種したいと言う人は半数以上存在する事が明らかになりました。


■小児用肺炎球菌ワクチン[7価]しか接種していない5歳児の補助的追加接種の対象者は8割以上(84.5%)
■肺炎球菌ワクチンの「補助的追加接種」について知らないと答えた割合は8割以上(82.9%)と低い認知度


1度でも「肺炎球菌ワクチン」を接種した事がある、5歳児の母子手帳に記載している『肺炎球菌ワクチンの接種月』を確認した所、2013年(平成25年)10月以降で、肺炎球菌ワクチンの接種を実施していない5歳のお子さんは8割以上(84.5%:2,243人)、と非常に高く、このお子さんは6歳になるまでに、任意で[13価]のワクチンを接種出来る、『補助的追加接種』の対象者になります。

■補助的追加接種について知っていたが接種しなかった理由として最も多かったのが「接種する必要がないと思っていたから」(30.5%)、次いで「値段が高いから」(22.7%)。


■補助的追加接種について知らなかった理由


肺炎球菌による感染症は、副鼻腔炎、急性中耳炎、肺炎、菌血症や髄膜炎などの重篤な合併症を引き起こす。

特に、「細菌性髄膜炎」を引き起こした場合は、2%の子供が死亡し、10%に難聴や精神発達遅滞、四肢の麻痺やてんかんなどの後遺症を残すと言われている。

[7価]の小児用肺炎球菌ワクチンの発売後、小児の侵襲性肺炎球菌感染症の発症数は減少傾向にある。
但し一時、ワクチンでカバーされている血清型は、感染者からの球菌分離数が減少した一方、19Aなどのカバーされていない血清型の分離数は、増加傾向を示した。

[13価]は、この19Aもカバーしており、切り替え後は減少傾向に転じていると言う。




今回の調査結果について、外房こどもクリニックの黒木春郎理事長は、「肺炎球菌ワクチンの補助的追加接種は、肺炎球菌感染症の予防の為に必要な事。 未接種の子供が未だに多い事、接種推進には、自治体やかかりつけ医からの勧奨が有効である事が示された」と、調査結果を評価。

現在使用されているワクチンを任意接種できるのは、6歳になる前(小学校入学前)までです。
医師や医療従事者は、母子手帳で予防接種歴を確認し、必要に応じて保護者へ案内するようコメントを寄せている。


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細菌性髄膜炎バクテリア

細菌性髄膜炎バクテリア(細菌)


ファイザー社は、"補助的追加接種"による効果が十分に浸透しておらず、費用負担の方に関心がいっている」と分析。
「接種の必要性や効果について、医療従事者からの説明が母親の接種意向に大きな影響を与えている」としている。


5歳は、MR(麻しん風しん混合)ワクチンの2回目の接種時期。ファイザー社は、MRワクチン接種目的での来院時が、母子手帳を確認する良い機会であるとして、「肺炎球菌ワクチン」の接種歴についても併せて確認し、[7価]しか接種していない小児がいたら、[13価]の"補助的追加接種"について説明して欲しいと述べている。



*補助的追加接種:
2013年10月までに小児用肺炎球菌ワクチン[7価]の接種を終えた、現在6歳未満のお子さんが対象。
2013年11月より新しい小児用肺炎球菌ワクチン[13価]が、日本でも接種出来るようになり、従来のワクチンの接種を全て終えた乳幼児に対しては、新しい[13価]のワクチンを追加で接種しておくと、従来のワクチンよりも予防の範囲が広がります。





経口抗菌剤「オゼックス®細粒小児用」が小児肺炎マイコプラズマ感染症で適応追加承認

富士フイルムグループの富山化学工業株式会社(本社:東京都新宿区西新宿)は3月2日、ニューキノロン系経口抗菌製剤「オゼックス®細粒小児用15%」(一般名:トスフロキサシントシル酸塩水和物)について、適応菌種に「肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)」を追加する承認を取得したと発表しました。


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オゼックス細粒小児用15%

小児用に適応追加承認を取得した「オゼックス®細粒小児用15%」


現在、マイコプラズマ肺炎の治療には、マクロライド系抗菌薬が一般的に使用されていますが、近年、マクロライド系抗菌薬への耐性菌が増加している。

その為、日本小児感染症学会、日本感染症学会、及び日本小児科学会より、厚生労働大臣等に対して、「小児の肺炎マイコプラズマ感染症におけるキノロン系抗菌薬の適応拡大に関する要望書」が提出されていました。

また「オゼックス®細粒小児用15%」は、「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011追補」において、マクロライド系抗菌薬への耐性を持った「肺炎マイコプラズマ」感染時の治療の選択肢とされている。
これらの状況を受けて、富山化学工業は適応菌種追加のための開発を進め、今回の追加承認を取得した。



【肺炎マイコプラズマについて】

肺炎の中でも、「肺炎マイコプラズマ」が原因菌のマイコプラズマ肺炎は、気管支や肺胞の外部の間質に炎症を引き起こし、小児や若い人の肺炎の原因としては比較的多く、発熱や咳が長引くなどの症状が出る、患者の約80%は14歳以下です。



マイコプラズマ肺炎は、抗菌薬(抗生物質)によって治療しますが、効果のある抗菌薬は一部に限られています。また近年、通常使用される抗菌薬に耐性を示す『薬剤耐性菌』が増えて来ているとされる。



『~2016年11月、マイコプラズマ肺炎、過去10年で最多の報告数~』
こんなニュースが駆け巡った‥‥





元々、「オゼックス®錠」は、富山化学が1990年より経口剤(錠剤)として販売している既存薬でしたが、薬剤耐性菌の増加により、小児用の「肺炎マイコプラズマ」適応の抗菌製剤が望まれていました。

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極端な異形肺炎マイコプラズマ

極度の変異形肺炎マイコプラズマ
(電子顕微鏡写真2万460倍+染色)


これまでも要望に応える形で「オゼックス®錠」は、小児用として小児の肺炎、中耳炎に適応を有する国内初の小児用ニューキノロン系経口抗菌製剤として、2009年に製造販売承認を取得し、2010年より大正富山医薬品株式会社(本社:東京都豊島区)から販売を行っていました。



今回の適応菌種追加により、マイコプラズマ肺炎の小児に対して、「オゼックス®細粒小児用15%」の投与が可能となりました。

<製品概要>

【販売名】:オゼックス®細粒小児用15%
【一般名】:トスフロキサシントシル酸塩水和物

【効能又は効果】
 <適応菌種>
トスフロキサシンに感性の肺炎球菌(ペニシリン耐性肺炎球菌を含む)、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、炭疽菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ=新適応)

 <適応症>
肺炎、コレラ、中耳炎、炭疽

【用法及び用量】
 通常、小児に対してはトスフロキサシントシル酸塩水和物として、1回6mg/kg (トスフロキサシンとして4.1 mg/kg) を1日2回経口投与する(=新規修正)
但し、1回180mg、1日360mg(トスフロキサシンとして1回122.4mg、1日244.8mg)を超えない事とする。




これまで「オゼックス®細粒」は、インフルエンザ様肺炎、もしくは気管支炎で小児に多用されて来た経緯があります。
ほかにも使える薬剤があるのに、小児用抗生物質と言う事で、頻繁に処方された結果、「肺炎マイコプラズマ」に薬剤耐性菌が現れる一方で、インフルエンザ様肺炎、もしくは気管支炎でも感染菌類に薬剤耐性が生じてしまっています。


咳や発熱で苦しがっているお子さんを、早く治してあげたいと言う母親の気持ちと、これに対応しようと医師が安易に強力な抗菌剤(抗生物質)を処方したがる傾向は、今に始まった事ではありませんが、小児に強い抗菌剤(抗生物質)を投与する事は、腸内の有用な菌類も、一緒に死滅させてしまいます。

これは決して好ましい事ではありません。

これからは感染菌の特定と遺伝子検査による病原菌種の特定によって、薬剤の乱用を防ぐ必要があります。

それには検査技術の進歩と、万が一、「薬剤耐性菌」が拡散した時、使える薬剤を一つでも残しておく事が、異形菌への最後の切り札となるでしょう。


新しい抗菌薬は、容易に造り出す事が困難になっているのです。







結腸・直腸がん抗悪性腫瘍剤「ザルトラップ®点滴静注」が製造販売承認を取得

サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区)は3月30日、抗悪性腫瘍剤/VEGF(血管内皮細胞増殖因子)阻害剤の「ザルトラップ®点滴静注100mg/同200mg(一般名:アフリベルセプト ベータ(遺伝子組換え))について、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん(大腸癌)」の効能・効果で、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表しました。


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ザルトラップ点滴静注

VEGF阻害薬「ザルトラップ®点滴静注100mg、同200mg」
(米国食品医薬品局(FDA)承認名:ZALTRAP®(一般名:ziv-aflibercept))


「ザルトラップ®点滴静注」は、がんの増殖や転移に関与するVEGF-A、VEGF-B、及び胎盤増殖因子(PlGF)と呼ばれるタンパク質を標的にした分子標的薬です。

VEGF阻害剤は、癌組織(悪性腫瘍)が自らに栄養となる血液を送り込む為、新しく血管を作る「血管新生」作用を阻害する効果のある薬剤で、国内では2007年に製造が承認された、「アバスチン」が最初となりました。

癌の進行を遅らせ、また抗癌剤と併用する事で抗がん剤の効果を促進させる効果も期待出来る。



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抗VEGF剤の作用機序

抗VEGF剤の働き
(血管新生阻害作用と腫瘍増殖抑制作用を併せ持つ)



オキサリプラチンを含む化学療法で治療中、又は治療後に増悪した転移性結腸・直腸がんについて、2次治療として、『イリノテカン塩酸塩水和物』、『レボホリナート』及び『フルオロウラシル(FOLFIRI 療法)』との併用に於いて、「ザルトラップ®点滴静注」の効果をプラセボ(偽薬)と比較検証した海外第Ⅲ相臨床試験(VELOUR 試験)では、主要評価項目である全生存期間、並びに副次評価項目である無増悪生存期間を有意に改善した事が示されている。

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ザルトラップ併用抗癌剤3種

「ザルトラップ®点滴静注」は他の化学療法薬や活性型葉酸製剤と併用。


「ザルトラップ®点滴静注」は、海外では既に70以上の国と地域で承認されており(2017年3月現在)、日本では、2016年4月にサノフィ株式会社が製造販売承認申請を行っていた。

結腸・直腸がん(大腸癌)は国内の患者数が最も多い癌であり、今後も増加する事が予測されています。



【承認された製品概要】

【販売名】:ザルトラップ®点滴静注100mg/200mg
【一般名】:アフリベルセプト ベータ(遺伝子組換え)
【効能又は効果】:治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌

【用法及び用量】:イリノテカン塩酸塩水和物、レボホリナート及びフルオロウラシルとの併用において、通常、成人には2週間に1回、アフリベルセプト ベータ(遺伝子組換え)として1回4mg/kg(体重)を60分かけて点滴静注する。尚、患者の状態により適宜減量する。


◎対象患者はオキサリプラチン(DNA合成阻害薬)を含む化学療法歴を有する、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん患者。
類薬には、「アバスチン」や「サイラムザ」などが有り、臨床上の位置付けは“セカンドライン”以降での治療選択肢の一つとなる。








ドラマ「海と空をこえて」から学ぶ~乳児ボツリヌス症で死亡

4月7日、東京都は、足立区の生後6カ月の男児が「乳児ボツリヌス症」で死亡したと発表した。
離乳食として与えられた【蜂蜜】が原因と見られ、東京都によると、発症データのある1986年以降、国内で「乳児ボツリヌス症」による死亡事例は初めて。


 男児は2月16日から咳や鼻水などを発症。その後、痙攣や呼吸不全を起こして救急搬送された。乳児ボツリヌス症と診断され、3月20日に死亡した。
 男児は1月中旬からの約1カ月間で1日平均2回、離乳食として蜂蜜を混ぜたジュースを飲んでいた。摂取量は1日10グラム程度と推定されるという。
 乳児ボツリヌス症は、1歳未満の乳児が口からボツリヌス菌を摂取して感染する。腸内で毒素が発生し、便秘や筋力の低下などの症状が出るが、死亡するのは稀れ。東京都は1歳未満の乳児に蜂蜜を与えないよう注意喚起している。



この報道には、さすがに驚きましたImage may be NSFW.
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!!



過去に「からしれんこん」でボツリヌス中毒が発生し、死者が出たと言うのは記憶にありましたが、今回の原因が【蜂蜜】である事や、
1歳未満の乳幼児には与えないよう、注意書きがある事も、初めて知りましたImage may be NSFW.
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何故、離乳食として【蜂蜜】を与えていたのか‥Image may be NSFW.
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はてなマーク

と言う、情報をどこから入手したのかも気になる所です。





既に、かなり報道されていて、ネット『検索』で色々と調べた人もいらっしゃるでしょう。
国内では、過去に死亡例も出ていますが、その実態はほとんど知られていないかもしれません。


1989年9月16日、後藤久美子・主演で長編ドラマ化された、ボツリヌス菌中毒を扱ったドラマ「空と海をこえて」と言う作品があるので、ちょっと紹介しましょう。

ストーリーの詳細は、wikipediaにもあるで、そちらを見て頂くとして、
このドラマで描かれているのは、ボツリヌス菌がどこに生息しているか…
ボツリヌス菌が嫌気性(空気を嫌う)バクテリアである為、密閉された容器や袋で増殖する事…

そして血清の効力のタイムリミットが48時間だと言う事と、本編で扱っているのは「ボツリヌス菌異形株-G型」と言うタイプである事です。(G型も実際にあるそうですが)









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後藤久美子主演・海と空をこえて4

全てクリックで拡大します。


ドラマは3時間枠の日立による1社提供で、本編は2時間27分。

ドラマの中で、子供たちが次々に体調不良で倒れて行きますが、その時の症状が、実際の「ボツリヌス菌」A型、B型、E型、F型の中毒症状を表わしています。

1)下痢はひどくなく、激しい嘔吐。
2)物が2重に見える複視(ふくし)。
3)めまい、頭痛を伴う全身の脱力感。

特にボツリヌス中毒が、ほかのO-157や、ノロウイルス、サルモネラ菌と異なるのは、視力低下、かすみ目、複視、対光反射(瞳孔の開閉)の遅延・欠如などの眼症状が発現する事です。

これらの異常を感じたり、子供が異常を訴えたら、稀有ですがボツリヌス中毒を疑い、直ぐ病院へImage may be NSFW.
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!!


ボツリヌス中毒には、パブに噛まれた時と同じように、血清が必ず効きます。






高度の癌疼痛治療剤「ナルラピドⓇ錠」「ナルサスⓇ錠」が製造販売承認を取得

第一三共株式会社(本社:東京都中央区)は3月30日、国内グループ会社の第一三共プロファーマ株式会社が、『中等度から高度の疼痛を伴う各種がんの癌疼痛治療剤「ナルラピドⓇ錠1mg・2mg・4mg(即放性製剤)」及び「ナルサスⓇ錠2mg・6mg・12mg・24mg(1日1回投与型徐放性製剤)」(一般名:ヒドロモルフォン塩酸塩)』について、国内製造販売承認を取得したと発表しました。
 
▼プレスリリース: http://www.daiichisankyo.co.jp/news/detail/006615.html



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ナルラピド錠はヒドロモルフォン塩酸塩製剤

米国で発売されている「ヒドロモルフォン塩酸塩製剤(Hydromorphone Hydrochloride)」
左が自己注射剤、右が国内未認定の4mg徐放性錠。
国内では今回、錠剤タイプのみが承認。



【ヒドロモルフォン製剤】である「ナルラピド錠Ⓡ」と「ナルサス錠Ⓡ」は、μオピオイド受容体*作動薬で、「ナルラピド錠Ⓡ」は即放性製剤、「ナルサス錠Ⓡ」は徐放性製剤と言う違いがあります。

【ヒドロモルフォン製剤】は、海外に於いて、80年以上販売されている“アヘン系麻薬性鎮痛剤”で、WHO(世界保健機関)のがん疼痛治療のためのガイドライン等に於いて、疼痛管理の標準薬に位置付けられ、使用されています。
しかし日本国内ではこれまで承認されていませんでした。


がん患者のうち、がん性疼痛のある患者の割合は慢性期で30~50%、進行期で70%以上と推定されています。
がん性疼痛に対する薬物療法の基本とされる、WHO方式がん性疼痛治療法を用いても10~30%の患者で疼痛が消失しないと言われています。



本剤は、厚生労働省が主催する「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に於いて検討され、開発企業の募集が行われた薬剤で、2012年に、第一三共株式会社が開発を実施する事が決定したものです。
また、本剤の開発にあたり、一般社団法人 未承認薬等開発支援センターより助成を受けた薬剤でもあります。




 *μ(ミュー)オピオイド受容体とは……

まずは、オピオイド(opioid)とは何かと言うと、中等度から重度の疼痛に対する治療に用いられる薬物(医療用麻薬性鎮痛薬)など、合成ペプチド類の総称を指す言葉です。

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神経細胞のμオピオイド受容体

神経細胞の細胞表面に突き出ている樹枝状結晶が
俗に言われる「アヘン鎮痛剤受容体(μオピオイド受容体)」

海外では古くから“アヘン(opium)”が鎮痛薬として用いられて来ましたが、日本国内でのオピオイド剤は、医療用モルヒネやコデインなどのアヘン剤に類似しているが、アヘンを含まず、アヘンから合成される事も無い薬剤が使われて来ました。

これらのオピオイド剤は、細胞表面オピオイド受容体タンパク質(上の写真矢印)への作用により、モルヒネの様な作用を現す物質の総称で、オピオイド受容体にはμ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパ)と言う種類がある。

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オピオイド受容体とモルヒネ

オピオイド受容体とモルヒネの作用。

この中でμオピオイド受容体は、鎮痛作用に最も関与するとされ、オピオイドの中でもモルヒネ(医療用)、オキシコドン、フェンタニルなどは、μ受容体に対して強い作用を現し、脊髄をはじめとして脳、末梢神経などのμ受容体への作用などにより高い鎮痛効果を現します。

疼痛は人にとってストレスの原因であり、これが個々の許容量を超えるとドーパミン(楽観物質)の分泌が減少し、痛みに敏感になります。

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オピオイド受容体とアヘン鎮痛薬

オピオイド受容体とヒドロモルフォン塩酸塩(アヘン鎮痛薬)

オピオイド剤がオピオイド受容体に作用する事で、神経伝達物質のドーパミンの働きが活発化し、セロトニンやγアミノ酪酸(GABA=ギャバ)、プロスタグランジン等の「痛み伝達物質」を抑制する事によって、ドーパミンの効果がよみがえり鎮痛効果を現します。



【製品概要】

【製剤名】
ナルラピドⓇ錠1mg、2mg、4mg(即放性製剤)
ナルサスⓇ錠2mg・6mg・12mg・24mg(1日1回投与型徐放性製剤)

【一般名】:ヒドロモルフォン塩酸塩(Hydromorphone Hydrochloride)
【効能・効果】:中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
【用法・用量】:通常、成人にはヒドロモルフォンとして1日4~24mgを4~6回に分割経口投与する。尚、症状に応じて適宜増減する。

【使用上の注意】:疼痛が増強した場合や鎮痛効果が得られている患者で、突発性の疼痛が発現した場合は、直ちに本剤の臨時追加投与を行い鎮痛を図ること。
  定時投与時:(基本)1日用量を4分割して使用する場合には、6時間ごとの定時に経口投与すること。
  初回投与:オピオイド鎮痛剤による治療の有無を考慮。

 1)オピオイド鎮痛剤を使用していない患者:1回1mg、1日4mgから開始し、鎮痛効果及び副作用の発現状況を観察しながら用量調節を行うこと。
 2)オピオイド鎮痛剤を使用している患者:他のオピオイド鎮痛剤から本剤に変更する場合には、前治療薬の投与量等を考慮し、投与量を決めること。本剤の1日用量は、ヒドロモルフォンとして、モルヒネ経口剤1日用量の1/5量を目安とすること。

【その他】:本罪は「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品であり、再審査期間8年。



今回、モルヒネ製剤とは異なる医療用麻薬製剤が承認された事で、強オピオイド薬の選択肢が増え、患者のQOLが向上される事が期待される。





国内唯一、遺伝性血管性浮腫治療剤「ベリナート®」が急性発作の予防的投与で適応追加

CSLベーリング株式会社(本社:東京都江東区)が販売する遺伝性血管性浮腫(HAE)治療製剤「ベリナート®P静注用500」(一般名:乾燥濃縮人C1インアクチベーター製剤)が3月24日、「侵襲(医療における外部からの刺激)を伴う処置による遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」の適応が追加承認されたと発表しました。

▼プレスリリース: http://www.cslbehring.co.jp/s1/cs/jpjp/1154051148566/news/1252904428536/prdetail.htm



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遺伝性血管性浮腫治療剤ベリナートP静注用500

遺伝性血管性浮腫治療製剤「ベリナート®P静注用500」


遺伝性血管性浮腫(HAE:Hereditary angioedema)は、遺伝子の変異が原因で、血液中のC1インヒビター(別名:C1インアクチベーター/C1-INH欠損/C1エステラーゼ・インヒビター)の減少、もしくは機能異常を起こす病気で、咽頭浮腫による気道の閉塞から呼吸困難、命に関わる場合もある国の指定難病「原発性免疫不全症候群」の疾患の一つに認定されています。

▼国の指定難病「原発性免疫不全症候群」の疾患の一つに認定されており、認定されると 医療費助成を受けられます。
 
詳しくはHAE情報センターをご覧ください: http://www.hae-info.jp



補体第1成分阻害因子(C1インヒビター)が上手く機能しない事により、皮膚や腹部(腸)に、痒みを伴わない粘膜下浮腫、吐き気・嘔吐・下痢など、身体中のあらゆる箇所に繰り返し腫れが起こり、喉が腫れると気道を塞いで呼吸困難から、窒息する恐れもあると言う。

むくみ(浮腫)が起こる原因は様々で、精神的ストレス、外傷や抜歯、過労などの肉体的ストレス、妊娠、生理、薬物などで誘発される事が知られている。

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遺伝性血管性浮腫の発症前後

遺伝性血管性浮腫の症状変化。

むくみ(浮腫)が引くまでに通常1~3日ぐらい掛かります。また、遺伝性血管性浮腫は、しばしば蕁麻疹に見られる事があります。
病態は急に皮膚が腫れますが、血管が腫れるわけではないので、皮膚のどこにでも発現します。



遺伝性血管性浮腫(HAE)患者の半数以上は、生涯のうちに、少なくとも1度は窒息の危険がある喉頭部(のど)の浮腫が生じる可能性があります。
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遺伝性血管性浮腫で喉頭膨張にる窒息死k

咽頭部や口腔内の浮腫は稀れですが、この場合、窒息に至る事があり致命的となります。
ノドの中に浮腫が発症した場合は、速やかに救急医療を求めなければならない。


特に、抜歯などの歯科治療や出産、外科手術、検査等に於いて、侵襲を伴う処置は急性発作の強力な誘因として知られています。
患者数は1万人~15万人に1人とされ、5万人に1人とする報告が多い。

エストロゲン(卵胞ホルモン)が影響すると言われ、女性の有症率は男性の2.2倍との報告もあります。発症は10~20歳代に多く見られますが、あらゆる年齢で発症します。




「ベリナート®P静注用500」は、国内唯一のC1インアクチベーター製剤です。

これまで、遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者に対する外科的処置や、歯科処置など、侵襲(医療における外部からの刺激)を伴う治療が誘因となり、舌や喉頭に浮腫を起こして死に至った症例が国内外で報告されていた事から、日本口腔外科学会、日本皮膚科学会は、「ベリナート」製剤に対する処置前における短期予防について、「適応外薬の要望」を提出していました。

この要望は、「医療上の必要性の高い未承認・適応外薬検討会議」で公知申請が妥当と判断され、2016年11月24日の「薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会」で了承されたものです。


つまり、あらかじめ遺伝性血管性浮腫の患者が麻酔や手術を受ける際、予防的処置として、C1インヒビターを補填しておくと言う処置が、可能となりました。

今回、"遺伝性血管性浮腫の急性発作時"の治療に加え、"身体への侵襲を伴う処置前の予防的な投与"に対しても、適応追加された事により、患者が外科的治療や歯科治療を受ける際、急性発作のリスクを大きく低減出来る事が期待されます。




子宮内膜症に伴う疼痛・月経困難症治療剤「ヤーズフレックス配合錠」の販売開始

バイエル薬品株式会社(本社:大阪市北区梅田)は4月21日、日本で初めて、最長120日までの連続投与可能な子宮内膜症に伴う疼痛・月経困難症治療剤「ヤーズフレックス™配合錠(一般名:ドロスピレノン・エチニルエストラジオール)」の販売を開始したと発表しました。

本剤は、2016年12月19日に国内製造販売を取得、今年2月15日に薬価収載されています。



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ヤーズフレックス配合錠

『ヤーズフレックス配合錠』
(ドロスピレノン/エチニルエストラジオール)


             
◆子宮内膜症は、『本来、子宮内腔にしか存在しないはずの子宮内膜やその類似組織が、子宮以外の場所(卵巣・ダクラス窩・S状結腸・直腸・仙骨子宮靱帯・腟・外陰部・膀胱・腹壁・へそなど)に存在する疾患』で、月経痛、月経以外の下腹痛、腰痛、性交痛などの疼痛や、妊孕性(にんようせい=受胎能力)の低下、生活の質(QOL)の低下を招きます。


治療方法としては、手術療法、及び薬物療法【非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)等による対症療法、EP配合剤(卵胞-黄体ホルモン合剤)、ジエノゲスト(黄体ホルモン製剤)、ダナゾール(男性ホルモン拮抗誘導体)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト等の内分泌療法】が治療選択肢として推奨されていますが、日本では子宮内膜症の適応を有するLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン)製剤はありませんでした。

    
◆月経困難症は、『月経に随伴して起こる下腹痛、腰痛、腹部膨満感、悪心、頭痛、脱力感などの病的症状」で、子宮頸管狭小やプロスタグランジン(PG)などの内因性生理活性物質の過剰分泌に関連する、子宮の過収縮が原因と考えられている。

治療は通常、PG合成阻害剤である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、中用量経口避妊剤を含むヤーズ配合錠などのEP配合剤(卵胞-黄体ホルモン合剤)等が用いられる。




「ヤーズフレックス配合錠」は、名前からも分かる通り、成分として、28日周期処方の同一成分・含量を有するヤーズ配合錠とは異なり、最長120日まで連続投与が可能となった国内初の、合成黄体ホルモン/ドロスピレノン(DRSP)と卵胞ホルモンとして国内最低用量となるエチニルエストラジオール20μg(発情ホルモン=卵胞ホルモンの一種)を含有している。


国内第Ⅲ相試験(子宮内膜症・月経困難症)に於いて、連続投与である「ヤーズフレックス配合錠」は、子宮内膜症に起因する最も高度な骨盤痛を有意に改善し、慢性骨盤痛や性交痛・排便痛等の子宮内膜症に伴う様々な疼痛を改善すると共に、周期投与であるヤーズ配合錠と比較して、月経痛の日数を有意に減少する事が証明されています。



【製品概要】

【製剤名】:ヤーズフレックス™配合錠
【一般名】:ドロスピレノン・エチニルエストラジオール
【効能・効果】:子宮内膜症に伴う疼痛の改善、月経困難症

【用法・用量】:1日1錠を経口投与する。24日目までは出血の有無に関わらず連続投与する。25日目以降に3日間連続で出血(点状出血を含む)が認められた場合、又は、連続投与が120日に達した場合は、4日間休薬する。
休薬後は、出血が終わっているか続いているかに関わらず、連続投与を開始する。以後同様に連続投与と休薬を繰り返す。

【重要な基本的注意】:
※ 日本国内では「避妊」の適応はありません。
(1)本剤を避妊目的で使用しないこと。[日本人における避妊目的での有効性及び安全性は確認されていません]

(2)本剤の服用により、年齢、喫煙、肥満、家族歴等のリスク因子の有無に関係無く、血栓症が現れる事があるので、血栓症が疑われる症状が現れた場合は、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
 ※血栓症が疑われる症状(下肢の疼痛・腫脹・しびれ・発赤・熱感,頭痛,嘔気・嘔吐等)

(3)血栓症のリスクが高まる状態(体を動かせない状態、顕著な血圧上昇、脱水等)が認められる場合は,投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
血栓症が疑われる症状が現れた場合や、血栓症のリスクが高まる状態になった場合は、症状・状態が軽度であっても直ちに服用を中止し、医師等に相談すること。

【臨床試験中の副作用】:
国内第Ⅲ相臨床試験に於いて、本剤投与例346例中231例(66.8%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。
主な副作用は性器出血99例(28.6%)、プラスミノーゲン上昇58例(16.8%)、不規則な子宮出血44例(12.7%)、悪心35例(10.1%)、頭痛25例(7.2%)、トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体上昇23例(6.6%)、フィブリンDダイマー上昇15例(4.3%)であった。(承認時)


本剤は、日本で初の連続投与が認められた、二つの適応症を取得した国内唯一の超低用量LEP(Low dose Estrogen Progestin=低用量エストロゲン・プロゲスチン)製剤です。
ヤーズフレックス™は、2016年7月までで、オーストラリア、ドイツ、コロンビア、チリおよびロシアの5カ国で販売されています。






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