ムンディファーマ株式会社(本社:東京都港区)は3月30日、再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫を効能・効果とする新有効成分、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤「ムンデシン®カプセル100mg(一般名:フォロデシン塩酸塩)」の国内に於ける製造販売承認を取得したと発表しました。
「ムンデシン®」は、世界に先駆けて日本で初めて承認された新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品です。本薬剤の再審査期間は10年となっている。
末梢性T細胞リンパ腫(PTCL=Peripheral T-cell Lymphoma)は、成熟したT細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞を起源とし、リンパ系腫瘍細胞による多彩な臓器浸潤を特徴とする多様な疾患群です。
主な病型としては、非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、ALK陽性未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、ALK陰性未分化大細胞リンパ腫の4つに分けられています。
これらのうち、ALK陽性未分化大細胞リンパ腫(ALCL)は、他の3つよりも若年(20~30歳代)で発生し、予後が良く治癒しやすいと言う特徴がありますが、その他の病型は治療が難しい場合があります。
日本では、年間発症例は約2000例(国立がん研究センター:がん統計予測2016資料)と推計されており、中悪性度リンパ腫の10~15%を占めるとされています。(国立がん研究センター:末梢性T細胞リンパ腫2015資料)
また、好発年齢は若年よりも65歳以上の高齢者であり、高齢になるほど発症率が高くなる傾向にあります。
1990年初頭に、数種類の抗がん剤を組み合わせたCHOP療法が中悪性度の非ホジキンリンパ腫の標準1次治療となって以来、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)に対する治療選択肢には、殆ど進歩がありませんでした。
更に、再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)の二次治療以降の標準治療は確立しておらず、予後不良の疾患である事が知られています。
今回承認された「ムンデシン®カプセル100mg」は、世界で初めて有効性が確認された新規作用機序のPNP(プリンヌクレオシドホスホリラーゼ=Purine Nucleoside Phosphorylase)阻害剤です。
PNPを阻害する事により細胞内に2-デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)を蓄積させ、アポトーシス(腫瘍細胞死)を誘導し、T細胞由来の腫瘍細胞の増殖を抑制すると考えられています。
ムンデシン®は、PNPに結合し、核酸(DNAおよびRNA)の構成成分であるデオキシグアノシン(dGuo)が、DNAの二重螺旋を構成する成分の一つ、グアニンの分解を阻害する事で、腫瘍細胞DNA複製に必要なdNTP(四つの塩基=dATP,dGTP,dCTP,dTTP)の各塩基のDNAポリメラーゼ(逆転写酵素)作用を阻止し、腫瘍細胞の自滅死を誘導する。
すなわち、dGuo(デオキシグアノシン)とPNPの結合を阻止することで、dGTPが分解されずに蓄積し、バランスが崩れ、腫瘍細胞のDNA複製が出来なくなる。
また、効能・効果を「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」とする治療薬では初めての経口剤であり、患者の通院等の負担が軽減され、自宅での治療が可能となる事が期待されています。
【ムンデシン®の製品概要】
【製品名】: ムンデシン(mundesine)®カプセル100mg
【一般名】: フォロデシン塩酸塩
【効能・効果】: 再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫
【用法・用量】: 通常、成人にはフォロデシンとして1回300mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
【製造販売承認日】: 2017年3月30日
「末梢性T細胞リンパ腫」と「その他および詳細不明のT細胞リンパ腫」の患者数は、計2000人以下と報告されており、「ムンデシン」の効能・効果の「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」となると更に患者数は限定される。
類薬は無く、類似の効能・効果を持つ薬剤としてポテリジオ点滴静注(2012年5月29日発売)やアドセトリス点滴静注(2014年04月17日発売)がある。
尚、一部のメディア報道で薬剤名を「フォロデシン」と報じていますが、これは製品名ではなく、一般名のフォロデシン塩酸塩を指しており、カプセル剤として販売される名称ではありません。