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世界初、難治性の末梢性T細胞リンパ腫治療薬「ムンデシン®カプセル」が製造販売承認を取得

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ムンディファーマ株式会社(本社:東京都港区)は3月30日、再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫を効能・効果とする新有効成分、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤「ムンデシン®カプセル100mg(一般名:フォロデシン塩酸塩)」の国内に於ける製造販売承認を取得したと発表しました。

「ムンデシン®」は、世界に先駆けて日本で初めて承認された新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品です。本薬剤の再審査期間は10年となっている。



ムンデシンカプセル
《再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫治療薬》
プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤「ムンデシン®カプセル100mg」


末梢性T細胞リンパ腫(PTCL=Peripheral T-cell Lymphoma)は、成熟したT細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞を起源とし、リンパ系腫瘍細胞による多彩な臓器浸潤を特徴とする多様な疾患群です。

主な病型としては、非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、ALK陽性未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、ALK陰性未分化大細胞リンパ腫の4つに分けられています。


末梢性T細胞リンパ腫の病態分類
T細胞リンパ腫の分類

これらのうち、ALK陽性未分化大細胞リンパ腫(ALCL)は、他の3つよりも若年(20~30歳代)で発生し、予後が良く治癒しやすいと言う特徴がありますが、その他の病型は治療が難しい場合があります。

末梢性T細胞リンパ腫

日本では、年間発症例は約2000例(国立がん研究センター:がん統計予測2016資料)と推計されており、中悪性度リンパ腫の10~15%を占めるとされています。(国立がん研究センター:末梢性T細胞リンパ腫2015資料) 

また、好発年齢は若年よりも65歳以上の高齢者であり、高齢になるほど発症率が高くなる傾向にあります。
1990年初頭に、数種類の抗がん剤を組み合わせたCHOP療法が中悪性度の非ホジキンリンパ腫の標準1次治療となって以来、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)に対する治療選択肢には、殆ど進歩がありませんでした。

更に、再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)の二次治療以降の標準治療は確立しておらず、予後不良の疾患である事が知られています。



ムンデシンの作用機序
リンパ系T細胞の腫瘍細胞化とムンデシンの作用効果。

今回承認された「ムンデシン®カプセル100mg」は、世界で初めて有効性が確認された新規作用機序のPNP(プリンヌクレオシドホスホリラーゼ=Purine Nucleoside Phosphorylase)阻害剤です。

PNPを阻害する事により細胞内に2-デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)を蓄積させ、アポトーシス(腫瘍細胞死)を誘導し、T細胞由来の腫瘍細胞の増殖を抑制すると考えられています。


ムンデシンの作用機序。
T細胞リンパ腫に対するムンデシンの作用機序1
矢印・大
T細胞リンパ腫に対するムンデシンの作用機序2

ムンデシン®は、PNPに結合し、核酸(DNAおよびRNA)の構成成分であるデオキシグアノシン(dGuo)が、DNAの二重螺旋を構成する成分の一つ、グアニンの分解を阻害する事で、腫瘍細胞DNA複製に必要なdNTP(四つの塩基=dATP,dGTP,dCTP,dTTP)の各塩基のDNAポリメラーゼ(逆転写酵素)作用を阻止し、腫瘍細胞の自滅死を誘導する。

すなわち、dGuo(デオキシグアノシン)とPNPの結合を阻止することで、dGTPが分解されずに蓄積し、バランスが崩れ、腫瘍細胞のDNA複製が出来なくなる。
ムンデシンの作用機序はグアニンの分解を阻止


また、効能・効果を「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」とする治療薬では初めての経口剤であり、患者の通院等の負担が軽減され、自宅での治療が可能となる事が期待されています。




【ムンデシン®の製品概要】

【製品名】: ムンデシン(mundesine)®カプセル100mg
【一般名】: フォロデシン塩酸塩

【効能・効果】: 再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫
【用法・用量】: 通常、成人にはフォロデシンとして1回300mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
【製造販売承認日】: 2017年3月30日



「末梢性T細胞リンパ腫」と「その他および詳細不明のT細胞リンパ腫」の患者数は、計2000人以下と報告されており、「ムンデシン」の効能・効果の「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」となると更に患者数は限定される。
類薬は無く、類似の効能・効果を持つ薬剤としてポテリジオ点滴静注(2012年5月29日発売)やアドセトリス点滴静注(2014年04月17日発売)がある。



尚、一部のメディア報道で薬剤名を「フォロデシン」と報じていますが、これは製品名ではなく、一般名のフォロデシン塩酸塩を指しており、カプセル剤として販売される名称ではありません。





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乳幼児の言葉の遅れ 指さし行動を見極める

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新生児期から乳児になると、言葉の発達が遅い子供の保護者は、周囲の子供との違いに不安を抱きがちです。
ネット検索すると、言葉の発達遅延=小児感音難聴と言う検索結果が多く現れるのも、余計な不安を煽っているようです。

その不安のピークは、おおむね1歳2カ月頃で、その頃になっても言葉が始まらないと、保護者は心配になります。

今回は、横井こどもクリニック院長(東京都世田谷区砧)の横井茂夫氏の「小児診療ABC」から、言葉の遅れについて知っておきたい子供のサインを取り上げましょう。


子供の発語時期平均
なん語

1歳頃になると、「マンマ」「ブーブー」など片言の言葉を話す子供が目立って来ます。
2歳頃には「ワンワン、きた」「パパ、かいしゃ」「ニューニューちょうだい」のような二語文も話すようになります。

発語二音


しかし、1歳2カ月頃になっても言葉が始まらないと、保護者は急に心配になるものです。
掛かりつけの小児科外来を受診し、「言葉が遅いのですが・・・・・・」と相談。
医師はまず、音に対する反応があるかどうかの基本をチェックします。


通常、日本では出産後の新生児期に、聴性脳幹反応(ABR)による聴力検査をしている為、先天的、或いは出産中の物理的処置によって、耳が全く聞こえないと言った重度の聴力障害は早期に拾い上げがされています。

聴性脳幹反応の検査波形
聴性脳幹反応の検査波形
(新生児聴覚スクリーニング)
*流行性耳下腺炎(おたふくかぜ:ムンプス)


では他の子供と比べて言葉の発達が遅い原因は何んでしょう?


【名前や音に反応するなら聴力に問題無い】

後天的な理由として、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ:ムンプス)に自然感染した場合などに、後遺症として難聴になる事があるので、お子さんの既往歴を含めて確認する事が必要です。

新生児聴覚スクリーニングで異常の無い場合、言葉が始まらない原因として、後天的疾患による聴力の問題が考えられますが、『名前を呼ぶと振り向く』、『音楽に合わせて体を動かす』ようなら聴力に問題はほぼ無いと捉えて良いでしょう。


子供の発語2_手を伸ばす


聴力に問題が無いようなら、次のチェックポイントは「指さし」が始まっているかどうかです。
乳幼児の「指さし」は、発達心理学的に「言葉の始まり」と、されているからです。

言葉は、意思や感情を人に伝える為のコミュニケーション・ツールです。
まだ言葉を発せない子供では、『指で何かを指し示す』と言う動作は、人に何かを伝えようとする仕草であり、「人に何かを伝えたい」と言う思いの発現だと考えられます。

こうした思いが動作に現れ、その訴求によって発語につながります。

子供の発語1_壁に触る

ですから、「指さし」が始まっていれば、いずれは言葉が出て来る事が、期待出来ます。

また、子供自身が「指さし」をするだけでなく、保護者が指で指し示した時に、子供がお母さんの指ではなく、お母さんが指し示した方向を見るかどうかも、確認しておくべき点になります。


乳幼児期では、子供は自分の手や足を動かし、自分の手の位置を見ていて、中々他の物に注視しません。それが自分から離れ、目の前の事物を指さす行為は、『指さし行動(指示行動)』と呼ばれ、言葉の出現する前の「前言語行動」と捉えられています。

子供の発語3_花に手を伸ばす子供


「指さし」は、早い子供では生後10カ月頃から始まりますが、多くは1歳前後に始めます。
その後、言葉を話し始めるといった順に発達は進みます。

その為、1歳2カ月頃で片言の言葉がまだ見られなくても、「指さし」が始まっていれば、いずれ言葉が出てくると考えられます。

もし小児科医に相談する場合、「1歳を過ぎても指さしが始まらない」とか、「バンザイ」や「おててシャンシャン」や「アワワワワ」などしても「大人のマネをしない」などを注意深く観察し、何が出来て、何が出来ていないのかをしっかり説明する事が大切です。

その上で、医師の説明を聞き、アドバイスを受けると良いでしょう。




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道端アンジェリカ、乾癬の持病公表と乾癬治療薬2剤が新登場

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 道端アンジェリカ「肌が汚い」という中傷に持病公表。

道端アンジェリカの尋常性乾癬

モデルの道端アンジェリカ(31)が、「肌が汚い」という中傷にコメント。乾癬(かんせん)という皮膚の病気を患っていることを明かした。
 アンジェリカは13日にインスタグラムで、自身に対する「スーパーフードを食べてるのに肌が汚い」というネット上の心ない声に言及。乾癬を患っていることを告白した。
  アンジェリカは、乾癬はストレスで悪化することもあり、完全に治っておらず、テレビ出演時はメイクで隠していると明かした。
  「肌が汚いといわれてもしょうがないんでしょうが、乾癬が悪化しないように日々人一倍努力しているので、悔しくて書かせてもらいました!!(笑)そして、同じ皮膚の病気で悩む人たちに一緒に頑張って付き合っていこうと言いたくて」と公表に至った理由を説明している。[2017年5月14日付/日刊スポーツWebより]


乾癬とは、皮膚が赤くなって盛り上がり、表面に銀白色の鱗屑(皮膚の垢)となり、その一部が白い粉のようにポロポロと剥がれ落ちる病気です。周囲の人に伝染する病気ではありません。(皮膚が剥がれたあと血が滲む事がありますが、その血液や患部に触っても伝染する事はありません)


尋常性乾癬の症例写真


乾癬には症状によってタイプがあり、“尋常性(じんじょうせい)乾癬、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性(のうほうせい)乾癬、滴状乾癬”に分類され、中でも最も多いのが【尋常性乾癬】で、尋常性とは「ありふれた」という意味で、90%位がこの症状です。


また、膿疱性乾癬(汎発型)は稀に重症化をたどる症例があり、医療費助成対象疾病の指定難病となっています。
膿疱性乾癬の症例
膿疱性乾癬の症例。
入院治療が必要となる時もある。


乾癬の患者は国内に43万人、世界での罹患者は1億2500万人いると推定されています。(Kubota K, et al BMJ 2015 Jan BMJ Open 2015)
乾癬は、皮膚症状を含む全身性の慢性炎症性疾患で、免疫調節不全により引き起こされます。(Lowes MA, et al. Annu Rev Immunol. 2014)



乾癬が起こる仕組みは…、人の皮膚は常に新陳代謝を繰り返していて、そのスピードは通常約1ヶ月程度で、皮膚細胞が生まれ変わりますが、乾癬では新陳代謝のスピードが3~10倍(症状により様々)早くなり、皮膚が定着する前に新たな細胞に押し出され、ポロポロと剥がれ落ちます。
 ※乾癬の発症メカニズムは、次の「オテズラ®錠」の項で触れています。

治療は、この新陳代謝のスピードを遅くする事で、病状を寛解させ、疾患が表面に現れない状態を維持する事にあります。


これまでの尋常性乾癬に対する治療は、通常、外用薬(塗り薬)のステロイド剤塗布、紫外線療法(ナローバンドUVB)、ビタミンD3外用薬の3つが基本となります。(ビタミンD3は紫外線治療で効果が見られない場合に追加)
紫外線療法(ナローバンドUVB)は、360°全身用を推奨(軟膏の事前塗布は必要ありません)。

キャビン型紫外線照射装置UV-7001K

紫外線治療器UVBの波長

また紫外線治療は軽い日焼けの状態になるので、治療間隔は、概ね10日ごとが標準となります。

しかし、症状の軽度、中程度に関わりなく、さすがに毎日の軟膏の塗布や通院が欠かせないと言うのは、QOLの低下につながり、もっと簡便な治療薬の登場が待ち望まれていました。



普通の仕切り線

【新薬】

セルジーン株式会社(本社:東京都千代田区)は、乾癬治療薬の経口ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤「オテズラ®錠10mg、同20mg、同30mg」(一般名:アプレミラスト)について、3月1日より販売を開始したと発表しました。本剤は、従来の乾癬治療薬とは異なる作用機序で、日本では乾癬の経口剤として約25年ぶりの新薬となる。


オテズラ錠のスターターパック
経口乾癬治療薬
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤「オテズラ®錠10mg、同20mg、同30mg」


乾癬の患者の免疫細胞や表皮組織では、PDE4(Phosphodiesterase 4)の発現が亢進しており、細胞内のサイクリックAMP(cAMP)が減少している事が知られています。

「オテズラ®錠」は、これら細胞内のPDE4を阻害する事により、サイクリックAMP(cAMP)を上昇させ、炎症性及び抗炎症性メディエーター(仲介)のネットワークを調節する事で、乾癬の症状を改善すると考えられています。

本剤は、乾癬の治療薬として米国、欧州を始め世界37カ国で承認されています(2016年12月現在)。



【製品概要】
【製剤名】:オテズラ®錠10mg、同20mg、同30mg
【一般名】:アプレミラスト

【効能・効果】:局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬
【用法・用量】:通常、成人にはアプレミラストとして以下のとおり経口投与し、6日目以降はアプレミラストとして1回30mgを1日2回、朝夕に経口投与する。
オテズラ錠の用法用量

薬価/1錠
▽10㎎錠=324.20円
▽20㎎錠=648.40円
▽30㎎錠=972.60円。

中央社会保険医療協議会の資料によると、1日薬価は1945.20円とされている。

◆また、有効成分のアプレミラストは、承認審査において提出された非臨床試験及び臨床試験で、催奇形性は認められていないものの、非臨床試験において、胚・胎児毒性を有する事が示されており、妊婦又は妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌となっている。



普通の仕切り線

【新薬】

マルホ株式会社(本社:大阪府大阪市北区)は3月30日、外用頭部乾癬治療剤「コムクロ®シャンプー0.05%」(有効成分:クロベタゾールプロピオン酸エステル)について、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表した。


コムクロシャンプー0.05%
外用頭部乾癬治療剤「コムクロ®シャンプー0.05%」


本剤は、Galderma Pharma S.A.(本社:スイス・ローザンヌ)が開発したシャンプー様外用液剤で、2004年に米国で成人の頭部尋常性乾癬の治療薬として承認されて以降、世界62の国又は地域において「Clobex® Shampoo(米国など)」や「Etrivex® Shampoo(英国など)」の名称で販売されている。(2016年11月現在)

マルホ株式会社は、Galderma S.A.と日本国内における開発・販売に関するライセンス契約を締結し、日本人向けとして開発を進めていました。


尋常性乾癬の好発部位として、頭や髪の生え際、腰臀部、手足の外側など、刺激を受けやすい部位に最初にできる傾向があります。

頭皮乾癬

本剤は、尋常性乾癬の治療薬では初めての、薬剤塗布15分後に洗い流すというShort Contact Therapy(短時間接触療法)を実現したシャンプー様外用液剤であり、頭部の尋常性乾癬に対する治療選択肢の拡大と、コンプライアンスの向上が期待されます。



【製品概要】
【製剤名】:コムクロ®シャンプー0.05%
【一般名】:クロベタゾールプロピオン酸エステル(ストロンゲストクラスのステロイド剤)

【剤形・含量】:1g中に日局クロベタゾールプロピオン酸エステル0.5mgを含有する外用液剤
【効能・効果】:頭部の尋常性乾癬
【用法・用量】:通常、1日1回、乾燥した頭部に患部を中心に適量を塗布し、約15分後に水又は湯で泡立てて洗い流す。

【承認条件】:
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施する事。
本剤は、「頭部の尋常性乾癬」を効能・効果とする新剤形医薬品。再審査期間4年。

尚、同成分で他社からローション剤などの剤形の製品が出ていますが、「コムクロ®シャンプー0.05%」はシャンプーのように用いる事が出来る。


普通の仕切り線


実は、私も尋常性乾癬の治療を続けています。

私が初めて尋常性乾癬を発症したのは、遡る事、26年前。
その頃はまだ全身用キャビン型紫外線治療器は無く、部分照射しか出来ませんでした。

ステロイド軟膏もさほど効果の無いものでした。

その為、次第に症状が悪化し、最初は背中だけだったのが、
肘、膝、両脚、太ももの側面、脇腹、頭髪の生え際など
患部が拡大して行きました。

キャビン型紫外線照射装置UV-7001K

キャビン型紫外線照射装置UV-7001KのA波とB波
全身用キャビン型紫外線照射装置はA波用とB波用の照射管が配置され、
ナローバンドUVB治療はB波管だけが点灯する。

その後、大学病院の皮膚科にようやく「UV-7001K」が導入され、飲み薬なしで症状が軽快してゆきました。


今でも合剤軟膏と紫外線照射を定期的に続け、寛解状態になりました。

全身用キャビン型紫外線治療器は、顔面にも防護メガネ着用で照射可能なので、
眉毛や、口元、こめ髪なども症状が和らぎます。

キャビン型紫外線照射装置UV-7001Kでの設定値1
キャビン型紫外線照射装置UV-7001Kでの設定値
私の場合は、1回の紫外線照射量は0.90J(ジュール)
照射時間は3分55秒です。


道端アンジェリカさんは、女性でモデルと言う事で、随分、辛い思いをされた事と思います。
「乾癬」と言う病気が、あまり知られていない事も問題ですし、「乾癬=感染」と同発音である事も大きな問題です。


しかし今後も、新薬が登場する予定なので、日々、根気よく、また忍耐強く治療を続けてほしいと思いますし、周囲の方には、この病気への理解をお願いしたいと思います。




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国内初「ザーコリ®」ROS1融合遺伝子非小細胞肺がんで新適応の承認取得

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ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)は5月18日、メルクセローノ株式会社(本社:東京都目黒区)とコゥ・プロモーション(Co-promotion=2社の製薬企業が医薬品を並行販促する事)を行っている抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「ザーコリ®カプセル200mg/250mg」(一般名:クリゾチニブ=Crizotinib)に関し、新たな適応症として「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)」の追加承認を取得したと発表した。


抗悪性腫瘍剤ザーコリカプセル
新適応症追加承認
抗悪性腫瘍剤「ザーコリ®カプセル」


肺がんは、顕微鏡で細胞がどのように見えるかによって、非小細胞肺がん(85-90%=扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん)と、小細胞肺がん(10~15%)に分けられます。

更に、非小細胞肺がん(NSCLC)の中でも希少肺がんである、『ROS1(インスリン受容体族の受容体型チロシンキナーゼ)融合遺伝子陽性非小細胞肺がん』は、世界で毎年150万人が新たに非小細胞肺がんの診断を受け(アメリカ癌学会「Detailed Guide」/世界保健機関「GLOBOCAN 2012」)、そのうちのおよそ1万5000症例は、“ROS1遺伝子の再構成”によって生じた肺がんである可能性があります。



日本に於いては、肺がんの総患者数が13万8000人である事から(厚生労働省「平成23年患者調査の概況」)、『ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん』の推定患者数は、1400名程度と考えられます。

第6番染色体のROS1
ROS1は6番染色体にある。
ROS1融合遺伝子変異(キナーゼ)は、ALK遺伝子転座とは異なり、
ROS1のエクソン番号E32,E34,E35のいずれかの部分が融合パートナーと結合。


『ROS1融合遺伝子陽性』は、ROS1遺伝子と別の遺伝子が融合し、ROS1遺伝子-再構成が生じると、各遺伝子の機能が正常に働かず、がん細胞の成長を促進する、癌ドライバーとなる事が報告されています。

疫学データから、非小細胞肺がん(NSCLC)のおよそ1%に、ROS1遺伝子-再構成が認められる事が示唆されています。

ROS1融合遺伝子
これまで非小細胞肺がんに関連する
ROS1融合遺伝子陽性(遺伝子-再構成)は10種類確認されいる。
この他に胆管がん・神経膠芽腫と共通するものが3種類発見された。



「ザーコリ®(Crizotinib)」は、米ファイザー社が開発した分子標的薬であり、作用機序としてROS1阻害作用も有している。ROS1融合蛋白のチロシンキナーゼ活性を阻害する事により、腫瘍細胞の成長と生存に必要な細胞内のシグナル伝達を遮断します。



ザーコリカプセルのROS1への作用機序
「ザーコリ®カプセル(Crizotinib)」の作用機序の模式図。


ROS1陽性クリゾチニブ投与患者
ALK遺伝子変異とROS1融合遺伝子再構成の2つに異常がある
非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療症例。



「ザーコリ®」の承認事項一部変更申請は、2016年8月31日に行い、今年、5月18日の適応拡大承認となった。
新適応症での申請は、「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」を対象とした、海外第Ⅰ相試験、並びに日本を含むアジア共同第Ⅱ相試験において「ザーコリ®」の有効性と安全性を評価し、その結果を取りまとめ行った。



ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)に対して「ザーコリ®」は、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されています。

また「ザーコリ®」は、既に国内に於いて2012年3月、「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応症で承認を取得しています。「ザーコリ®」は、世界初のALK阻害剤であり、これまでに世界で40,000名以上の患者さんの治療に使用されています。




近年、非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬の進歩は目覚ましいものがあります。
話題になった「オプジーボ」や「キイトルーダ」、更に「イレッサ」も今も尚多くの患者に使用されていますが、画期的治療薬と持てはやされたものの、効果の現れない患者さんがいるのも現実です。
その原因は、多様な遺伝子変異や遺伝子融合にある事が分かって来ました。
複数の遺伝子異常に対して、同時に高い効果を発揮する薬剤が求められています。

こうした大学などの研究者や、製薬企業の開発担当者には素直に敬意を表したいと思います。そして、薬剤が高額だと不満を言う前に、自身がそうした病気にならない努力を、惜しまない事を望んでやみません――。




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新機序・多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ®カプセル」が販売を開始

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武田薬品工業株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)は5月24日、経口プロテアソーム阻害薬の多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ®カプセル2.3mg、同3mg、同4mg」(一般名:イキサゾミブクエン酸エステル)について、レナリドミド及びデキサメタゾンとの併用において、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の効能・効果で販売を開始したと発表した。
「ニンラーロ®カプセル」は、今年3月30日に製造販売承認を取得していた。



ニンラーロカプセル
多発性骨髄腫治療剤(経口プロテアソーム阻害薬)
「ニンラーロ®カプセル2.3mg、同3mg、同4mg」


多発性骨髄腫は、治癒が困難な難治性の造血器腫瘍で、骨髄の中にある、ウイルスなどが体内に侵入して来た時に攻撃する、免疫グロブリンと呼ばれる蛋白を造る「形質細胞」というリンパ球が、癌化(腫瘍化)した病気です。

異常な抗体(M蛋白)が、異物が無いのにどんどん増殖し、骨の痛み、病的骨折・圧迫骨折、倦怠感、貧血、出血傾向、感染症に対する抵抗力の低下が起こり、腎臓の機能低下、過粘稠症候群、アミロイドーシス、ウイルスなどの感染による体力の低下などが起こります。


多発性骨髄腫
正常な形質細胞は抗体を作り異物から身体を守るが、
形質細胞が癌化すると、健康な血液の産生を妨げ増殖し、免疫力を低下させる。


正常細胞と多発性骨髄腫細胞
左が通常の骨髄細胞、右が多発性骨髄腫の骨髄細胞。


多発性骨髄腫は、日本における推定総患者数は約14,000人、人口10万人当たりの推計年齢調整罹患率は約3人(国立がん研究センターがん情報サービス・地域がん登録全国推計値2012年)、年間死亡数は4,185人と報告されています(厚生労働省大臣官房統計情報部・人口動態統計によるがん死亡データ2014年)。

近年、本疾患の総患者数、推計罹患数および死亡者数は、徐々に増加する傾向が見られています。



治療には、造血幹細胞移植や薬物療法(抗がん剤療法)による治療が行われますが、ほとんどの患者で再発又は病勢の進行が見られ、治療を繰り返すごとに薬剤への反応性が低下し、難治性の病態に移行して行きます。




今回新たに販売を開始した「ニンラーロ®カプセル」は、多発性骨髄腫治療薬としては日本で初めての、経口プロテアソーム阻害剤で、細胞内で不要となったタンパク質を、分解する酵素の複合体プロテアソームに結合し、そのキモトリプシン様活性を阻害する事で、がん細胞の増殖を抑制します。

ニンラーロカプセルの作用機序
「ニンラーロ®カプセル」の作用機序


本剤は、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の患者を対象に実施した、国際共同臨床第3相試験で得られた安全性、有効性のデータに基づき、製造販売承認を取得。

この試験では、免疫調節薬「レナリドミド」、副腎皮質ホルモン製剤「デキサメタゾン」と併用投与する事で、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)が、イキサゾミブクエン酸エステル群20.6か月に対し、プラセボ(偽薬)の対照群14.7か月と、統計学的に有意な差を示した。



【ニンラーロ®の製品概要】

【製品名】
ニンラーロ®カプセル2.3mg
ニンラーロ®カプセル3mg
ニンラーロ®カプセル4mg
【一般名】:イキサゾミブクエン酸エステル
【効能・効果】:再発又は難治性の多発性骨髄腫

【用法・用量】:免疫調節薬レナリドミド、及び副腎皮質ホルモン製剤デキサメタゾンとの併用に於いて、通常、成人にはイキサゾミブクエン酸エステルとして、1日1回4mgを空腹時に週1回、3週間(1、8及び15日目)経口投与した後、13日間休薬(16~28日目)する。この4週間を1サイクルとし、投与を繰り返す。尚、患者の状態により適宜減量する。

【効能・効果に関連する使用上の注意】
(1)本剤による治療は、少なくとも1つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者を対象とすること。

(2)臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、(添付文書内に記載の)【臨床成績】の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと。

【薬価】
ニンラーロ®カプセル 2.3mg:96,519.00円
ニンラーロ®カプセル 3mg:123,355.60円
ニンラーロ®カプセル 4mg:160,886.00円



本剤は、新規の経口プロテアソーム阻害剤であり、多発性骨髄腫の他に、全身性ALアミロイドーシスを対象に開発を進めています。
本剤は、2017年4月現在、米国、欧州を含む世界40カ国で販売許可を取得しています。






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10年ぶり承認!切除不能な進行肝細胞癌で「スチバーガ錠」の適応拡大了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は5月30日、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認が了承され、本部会での審議が必要ないと判断された、【報告予定品目】について、全て了承した。

今回、適応拡大が了承されたのは、バイエル薬品株式会社(本社:大阪府大阪市北区梅田)が承認申請していた、ネクサバール®錠(一般名:ソラフェニブ)投与歴のある肝細胞癌(HCC=Hepatocellular carcinoma)患者に対する「がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞がん」の効能・効果で、「スチバーガ®錠40mg(一般名:レゴラフェニブ水和物=regorafenib)」の追加が了承された。



スチバーガ錠40mg
『がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞がん』の
適応拡大が報告承認された抗悪性腫瘍薬「スチバーガ®錠(Stivarga)40mg」



肝細胞がん(HCC)は、肝がんに於いて、最も発生頻度が高く、(転移性を除く)原発性肝がん全体の約85~90%を占めています。

肝細胞がんは慢性肝疾患……特に肝硬変と関連しており、発生原因として、B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルスが挙げられますが、最近の調査では、非B型・非C型肝細胞がんの増加が報告されています。

肝細胞がんの第一治療選択肢は外科手術ですが、根治切除後の再発や、診断時には既に進行性で転移が見られる為、手術に適さない場合も多くあります。
全身化学療法歴の無い患者適応で承認されている薬剤は、これまで「ネクサバール®錠(一般名:ソラフェニブ:バイエル薬品:2009年5月承認)」のみで、有効な治療法の無いアンメット・メディカル・ニーズ(満たされていない医療上の必要性が高い疾患)の一つとなっています。



肝がんステージ別分類


肝癌は直径2~3cmの大きさになると、門脈を経由して肝臓内各所に転移を始めます(肝内転移多発)。
一方、肝細胞がんは基礎疾患として慢性肝疾患、特に肝硬変がある事が多く、一旦、根治的に切除しても、新規の発がんを起こして再発する事も少なくありません(多中心性多発)。



毎年、世界で78万人以上(EU=5万2000人、西太平洋地域(日本を含む)=50万1000人、米国=3万人)が肝癌と診断されており、約74万6000人が肝癌の為に亡くなり、そのうち約4万8000人がEU、47万7000人が西太平洋地域、2万4000人が米国での死亡例でした。(GLOBOCAN2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012)

日本では年間、約3万1000人の肝癌による死亡者がおり、その約90%を原発性肝癌である肝細胞癌が占めています。(日本肝臓学会-平成27年度肝がん白書)



スチバーガ錠の作用機序
スチバーガ錠の作用機序


「スチバーガ®錠」は、腫瘍血管新生(VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、TIE2)、発癌(KIT、RET、RAF-1、BRAF)、転移(VEGFR-3、PDGFR、FGFR)と腫瘍免疫(CSF1R)に関与する様々なプロテインキナーゼ(ATPのリン酸基をタンパク質の水酸基に転位させる酵素の総称)を強力に阻害する経口マルチキナーゼ阻害剤です。



レゴラフェニブの肝動脈への作用機序


「スチバーガ®錠40mg(一般名:レゴラフェニブ水和物)」は、過去10年間で、初めての新たな肝細胞癌(HCC)治療薬となる新効能医薬品であり、尚且つ、唯一の全身療法剤です。
また、第Ⅲ相臨床試験RESORCEではネクサバール®錠投与後に病勢進行を認めた肝細胞癌(HCC)患者に対して、二次治療として全生存期間(OS)の有意な延長が示された、初めての治療薬となりました。

本剤は、優先審査品目に指定され、再審査期間は残余(平成33年3月24日)となっている。


【薬価】:5579.3円
【用法・用量】は、本剤で既に適応を持つ「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」などと同じ。
海外では、肝細胞癌の適応について、米国食品医薬品局(FDA)で2017年4月に承認済、欧州医薬品庁(EMA)では審査中(2016年11月申請)である。





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抗悪性腫瘍薬の投与に伴う悪心嘔吐で「オランザピン」の使用が保険適用に

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厚生労働省医薬・生活衛生局は6月9日付けで、日本緩和医療学会、及び日本消化器病学会より要望提出されていた、抗精神病薬の「オランザピン(商品名ジプレキサ)」の公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について、同日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会で、「オランザピン(商品名ジプレキサ:日本イーライリリー)」の公知申請について事前評価が行われ、保険適用が承認された。



オランザピン_商品名ジプレキサ
ベンゾジアゼピン系抗精神病薬「オランザピン(商品名ジプレキサ)」


この追加された効能・効果について、医薬品審査管理課長通知「新たに薬事・食品衛生審議会において公知申請に関する事前評価を受けた医薬品の適応外使用について」を発出し、これまでの適応症である統合失調症・双極性障害における躁症状・うつ症状の改善のほかに、『シスプラチンなどの抗悪性腫瘍薬の投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)』に対して使用した場合に、保険適用の対象とする事を周知した。


抗悪性腫瘍剤シスプラチン
代表的な抗悪性腫瘍薬「シスプラチン」



適応外使用を認めるに当たっては、原則として、副腎皮質ステロイド、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬など、他の制吐薬と併用する事。

通常、成人にはオランザピン5mgを1日1回経口投与し、1日の上限を10mgとする事などを盛り込んだ。

また、抗悪性腫瘍薬の投与前に投与し、癌化学療法の1クールにつき6日間までを投与の目安とする事も示された。



 ◎薬事承認された後、添付文書に反映される予定の効能・効果や用法・用量などは以下の通り。

■【対象となる医薬品】
ジプレキサ錠2.5mg、同錠5mg、同錠10mg、同細粒1%
オランザピン細粒
「ジプレキサ細粒1%(オランザピン細粒1%)」

ジプレキサ・ザイディス錠2.5mg、同ザイディス錠5mg、同ザイディス錠10mg

ザイディス錠
「ジプレキサ・ザイディス錠」

■【追記される予定の効能・効果】
抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)

■【追記される予定の用法・用量】
<抗悪性腫瘍剤の投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)に対して使用する場合>
他の制吐剤との併用において、通常、成人にはオランザピンとして5mgを1日1回経口投与する。尚、患者の状態により適宜増量するが、1日量は10mgを超えないこと。



■【追記される予定の注意喚起】
<抗悪性腫瘍剤の投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)に対して使用する場合>
本剤は、強い悪心、嘔吐が生じる抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)の投与の場合に限り使用すること。


■【用法・用量に関連する使用上の注意】
<抗悪性腫瘍剤の投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)に対して使用する場合>
・本剤は、原則としてコルチコステロイド、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬等と併用して使用する。尚、併用するコルチコステロイド、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬等の用法・用量については、各々の薬剤の添付文書等、最新の情報を参考にし、投与すること。
・原則として抗悪性腫瘍剤の投与前に本剤を投与し、癌化学療法の各クールにおける本剤の投与期間は6日間までを目安とすること。




尚、オランザピンは2001年6月に保険収載されており、その際、基本的注意の項目に、「本剤には嘔吐を抑える作用があるので、薬物中毒、腸閉塞、脳腫瘍などによる嘔吐症状を隠す事があります」と記されていて、この副症状が、今回抗がん剤使用時の制吐薬としての処方で保険適用が認められた事になります。





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初の小児強迫性障害治療薬として「デプロメール/ルボックス」が追加承認を取得

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は6月9日、MeijiSeikaファルマ株式会社(本社:東京都中央区)とアッヴィ合同会社(本社:東京都港区)が共同販売している、「一般名:フルボキサミン(=フルボキサミンマレイン酸塩)」(販売名:デプロメール=Meiji / ルボックス=アッヴィ、)について、小児の強迫性障害を効能・効果に追加する承認申請を了承した。


ルボックス錠25_50_75
デプロメール錠25_50_75
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
上:ルボックス錠(アッヴィ)
下:デプロメール錠(MeijiSeikaファルマ)



「フルボキサミン(デプロメール/ルボックス)」は1999年5月に日本で最初のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)として発売され、成人に対する「うつ病・うつ状態、強迫性障害、並びに社会不安障害」の適応で販売されている。

他にも強迫性障害の適応を持つ製品には、SSRIのパキシル錠(2000年11月)があるが、パキシル錠もデプロメール錠/ルボックス錠も、成人患者に適応が限られている。




小児強迫性障害の症状


強迫性障害(OCD)は、強迫症状と呼ばれる症状(手を繰り返し洗う、鍵を閉めなかったなどと心配し頻繁に確認する等)に特徴付けられる疾患です。
更にこの疾患の特徴は、自分の行動が不合理だと言う自覚が患者自身にある事です。その為、
「自分はおかしい」「周囲から変だと思われてしまう」という恐怖から、行動範囲が非常にせまくなってしまうことがあります。

適切な治療がなされない、もしくは治療が遅れた場合には、“強迫観念”や“執拗な確認行動”等により、日常生活が著しく妨げられ、外出困難などQOL(Quality of life=生活の質)を低下させます。

厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に於いて、強迫性障害治療薬の小児適応の開発が必要とされ、厚生労働省からMeijiSeikaファルマとアッヴィ合同会社の双方に開発要請されていた。


大脳皮質の島皮質
大脳皮質の基底にある島皮質。認知機能への関与は少ないとされ、
活動は味覚、嗅覚、触覚、痛覚、報酬、社会的な痛み、情動、共感、内臓覚などの
本能的記憶や直観力に向けられている。

(筑波大学医学医療系生命医科学域、大学院人間総合科学研究科感性認知脳科学専攻システム脳科学分野2016公開より)


『国立研究開発法人・量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所(千葉県千葉市稲毛区)』は2009年(平成21年)12月、世界で初めて、[11C]DASB(C-11放射性同位元素)を用いた陽電子断層撮像装置(PETプローブ)を使い、これまで不可能だった大脳皮質に於いて、セロトニントランスポーター(セロトニンを細胞内に取り込むタンパク質)を測定した。

その結果、強迫性障害患者群では、健常対照群と比較して、“大脳皮質の『島皮質(とうひしつ)』”でセロトニントランスポーターの減少が認められた。

強迫性障害と制御された脳
強迫性障害の脳と制御された脳のPET画像比較。
矢印部分の両側でセロトニントランスポーターが減少。

国内の小児の強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder Children)の患者数は1万人強と推定されると言う。


小児強迫性障害の症状_恐怖



本2剤は、2013年8月より「SME3110(フルボキサミンマレイン酸塩)の小児強迫性障害患者を対象とした臨床第Ⅲ相試験」を、日本国内で開始。

第Ⅲ相試験では、小児の強迫性障害患者にフルボキサミン又はプラセボ(偽薬)を10週間投与し、“小児用Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale 日本語版(JCY-BOCS)”の総スコアの投与開始時と最終評価時との変化量を比較。
無作為化二重盲検法による有効性の検証と、安全性を検討した。

その結果、フルボキサミン投与群はプラセボ投与群に比較して、主要評価項目であるJCY-BOCSの総スコアに於ける、投与開始時と最終評価時の変化量に有意な差が認められた。
また安全性に於いて、特に問題となるような事象は観察されなかった事を受け、2015年9月15日に結果を公表、追加承認申請に至った。




【製品概要】

【販売名】:
■ ルボックス錠25、同50、同75(フルボキサミンマレイン酸塩、アッヴィ)
■ デプロメール錠25、同50、同75(フルボキサミンマレイン酸塩、Meiji Seika ファルマ)

【追加される効能・効果】:小児強迫性障害
【用法・容量】:発売時に指示
【その他】:新用量医薬品。再審査期間4年。



本2剤(フルボキサミンマレイン酸塩)は、小児の強迫性障害の適応を持つ初の薬剤となります。
小児の強迫性障害について、海外では欧米など90の国・地域で承認済となっている。






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「ジヒドロコデインリン酸塩」含有市販薬等、12歳未満の使用禁止へ

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市販の総合感冒薬や、咳止め薬に広く配合されている「ジヒドロコデインリン酸塩」などの、麻薬系中枢神経鎮咳薬の「コデインリン酸塩水和物」「ジヒドロコデインリン酸塩」など、コデイン類含有製剤について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会安全対策調査会は6月22日、12歳未満の小児への使用を禁忌(使用禁止)とする方針を決めた。


主な市販の総合感冒薬(錠剤と微粒)及びシロップ剤の成分用量表。
ジヒドロコデインリン酸塩含む_新ルルゴールド成分表
成分用量の24mgは、1日3回服用した合計で表示。

ジヒドロコデインリン酸塩_パブロンゴールド微粒成分表
成分用量の8mgは、1回の服用量で1日3回服用すると24mgになる。

ジヒドロコデインリン酸塩_佐藤の新トリン液
15才以上は、1回服用量5mLなので30mgは1日6回分に相当。
通常は1日4回(通常1日量20mg)となっているが、分かりにくい。



一定の経過措置期間が必要との判断から、当面は、添付文書の「重要な基本的注意」などで注意喚起しつつ、小児用量製剤の用量削除や配合変更などの対応を進める。
経過措置期間を2018年末までとし、2019年に改めて「禁忌」の改訂指示を行う予定。

医療用医薬品だけでなく、OTC薬などのドラッグストアで買える市販薬も同様の措置を行うとした。

コデイン配合市販薬0

コデイン配合市販薬1

米国では、18歳未満の患者で、コデイン類含有製剤による呼吸抑制などの、モルヒネ中毒関連症例について、2015年5月までの過去46年間で、死亡例24例を含む64例が報告された。
全死亡例の約9割に当たる21例が12歳未満の小児の症例だった事などから、米国食品医薬品局(FDA)は2017年4月20日、コデイン類を含む医療用医薬品を12歳未満の小児に禁忌とする事を発表した。


コデイン類は、薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)2D6により、モルヒネやジヒドロモルヒネに代謝され、鎮咳などの薬効を示す。
しかし遺伝的にCYP2D6活性が過剰な人などでは、モルヒネなどの血中濃度が上昇し、呼吸抑制などが生じやすくなる。

コデイン配合市販薬2

コデイン配合市販薬3

この発表を受け、日本製薬団体連合会安全性委員と日本OTC医薬品協会、及び日本小児科学会は、日本も同様に12歳未満の小児への使用を制限するよう厚生労働省に要望。
尚且つ、医療関係者への周知徹底の為、一定の期間が必要との見解を示した。


18歳以下のコデイン類含有製剤の使用患者で、呼吸抑制などのモルヒネ中毒関連症例に係る重篤な副作用報告は、国内でこれまでに4例(医療用医薬品2例、OTC薬2例)報告されている。死亡例の報告は無い。


コデイン配合市販薬4



尚、医療用「コデインリン酸塩水和物」の保険収載日は1954年5月、「ジヒドロコデインリン酸塩」の保険収載日は1952年11月で、その殆どは1%散剤となっている。





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閉経後乳癌治療剤「フェソロデックス」、閉経後再発乳癌で初回治療から使用可能に

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アストラゼネカ株式会社(本社:大阪府大阪市北区)は6月5日、抗エストロゲン剤/閉経後乳がん治療剤「フェソロデックス®筋注250mg(一般名:フルベストラント=Fulvestrant)」に関して、添付文書の一部改訂を行ない、閉経後進行・再発乳がんに於いて初回治療からの使用が可能となったと発表しました。


フェソロデックス筋注250mg
抗エストロゲン剤/閉経後乳癌治療剤「フェソロデックス®筋注250mg」


「フェソロデックス®筋注250mg」は、閉経後乳がんを適応として2011年9月に製造販売承認を取得し、同年11月の薬価収載をもって国内における販売を開始した、抗エストロゲン剤/閉経後乳がん治療剤です。
 *エストロゲンとは…卵胞ホルモン、又は発情ホルモンの事。


ホルモン受容体陽性乳がんは、乳がん患者全体の80%以上を占めるとされ(Robertson JFR et al. Lancet 2016)、中でも、閉経後進行・再発乳がんは、現状の治療法では治癒が困難とされています。
この為、治療は患者のQOL(Quality of Life=生活の質)を維持しながら、癌の進行を遅らせる事を目的に行われている。


乳がん細胞の増殖を促進するエストロゲン(卵胞ホルモン)が作られる場所は、閉経前と閉経後では異なります。
アロマターゼ阻害薬
アロマターゼ阻害薬の作用。

閉経前の女性では、エストロゲンは主に「卵巣」で作られます。


閉経後の女性では、卵巣機能が低下し、エストロゲンの量が減ります。その代わりに、副腎からアンドロゲンと言う男性ホルモンが分泌され、脂肪組織などに存在している“アロマターゼ”と言う酵素の働きによって、少量のエストロゲンが作られ続けます。

エストロゲン受容体とは

エストロゲン受容体にエストロゲンが結合
エストロゲンがエストロゲン受容体と結合する事で
癌細胞が増殖する。
AF-1とAF-2はエストロゲン受容体にある転写活性化領域(AF)。


この為、閉経の前と後では、治療に使う薬が異なる事があります。“アロマターゼ阻害薬”は、閉経後の乳がんのエストロゲンの合成を抑え、乳がん細胞が増殖しないようにする薬剤です。



今回の添付文書改訂は、昨年公表された第Ⅲ相国際共同臨床試験(FALCON試験)の結果に基づき、内分泌療法(ホルモン療法)による治療歴の無い『閉経後ホルモン受容体陽性進行乳がん』患者を対象に、現在の標準治療である“アロマターゼ阻害剤”の「アリミデックス®(一般名:アナストロゾール)」と比較した試験に於いて、「フェソロデックス」は主要評価項目である無増悪生存期間(Progression-Free Survival)を有意に改善。

患者の病勢進行リスクを約20%減少させる事が示されました。
また、同試験で認められた有害事象は概ねこれまでの安全性プロファイルと一致していました。


効能効果の改訂前と改訂後
効能・効果の改訂前と改訂後

この結果を受け、本剤の「効能・効果に関連する使用上の注意」の項に記載されていた「本剤の内分泌療法未治療例における有効性及び安全性は確立していない。」が削除された事により、閉経後進行・再発乳がんの患者に、初回治療から、より長期の病勢コントロールが期待出来る、新たな治療選択肢を提供する事が可能になったとしている。

またこれに伴い、副作用の項目についても「削除」と「追加」が行われた。

副作用の改訂前と改訂後
副作用の改訂前と改訂後



エストロゲン受容体にアロマターゼ阻害薬が結合し増殖阻止
アロマターゼ阻害薬(アリミデックス等)は、
エストロゲン受容体と結合しエストロゲン受容体の増殖を阻止する。
この時、AF-1の転写活性は生きている。



「フェソロデックス®筋注250mg」の作用機序。
エストロゲン受容体にフェソロデックスが結合ERそのものを破壊
「フェソロデックス」はエストロゲン受容体と結合し増殖を阻止すると同時に
エストロゲン受容体そのものを破壊(細胞死)する。



「フェソロデックス®筋注250mg」は、現在、標準治療の“アロマターゼ阻害剤”のように、エストロゲンの合成を抑えるだけでなく、エストロゲン受容体そのものを分解する作用機序を持っており、欧米に先駆け、閉経後進行・再発乳がんの1次治療薬として使用可能になった事で、病勢の進行を有意に阻止すると期待される。







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認知症行方不明者、実人口に占める割合ランキング~統計数値の怪

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警察庁は6月15日、認知症が原因で行方が分からなくなったとして、2016年に全国の警察に届け出があった行方不明者は、前年比26.4%増の1万5432人だったと公表しました。

2012年の統計開始から4年連続で増え、過去最多を更新し続け、このうち年内に、警察や家族などによって98.8%は所在が確認されているものの、行方不明者全体の総数は8万4850人で、過去10年間ほぼ横ばいですが、認知症者が占める割合は前年比3ポイント増の18%と、深刻な状況が続いている。

 ~と、ここまでは報道されている通りですが、
一番気になったのは、こういった全国統計で必ず出てくる『都道府県別』と言う数字。


認知症行方不明者の数を発表したのは警察庁なので、この場合は『都道府県警別』となりますが、
大阪府が1830人で全国最多。埼玉県1641人、東京都1487人、兵庫県1300人、愛知県1265人と5つの都府県で1000人を超えた(2016年(平成28年))…とあります。



しかし考えてみれば、人口が多いと当然、認知症行方不明者も多いと思いますが、
本当にそうだろうか?



そこで実際に、全年齢を加えた都道府県別の人口に占める、認知症行方不明者の割合を算出してみた。

尚、2016年の全都道府県警別の人数が分からないので、2014年(平成26年)に公表された認知症行方不明者数に基づいて一覧にしました。

都道府県別認知症行方不明者の人口にしめる割合


2015年12月発表の、厚生労働省の推計によると、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人と推計され、2025年には、全国で認知症を患う人が700万人を超えるとの推計を発表しています。


所で、病気別の患者数など、多くの統計数値に登場する『人口10万人あたり○○○人』と言う、10万人あたりの数字。ほとんどは昭和60年(1985年)モデル人口を基準にした、5歳ごとの年齢調整率であらわされている。

例えば、男性で一番多い肺がん患者数も、年齢調整率で修正されたのち、都道府県別の順位が付けられる。

しかし単純に考えると、少なくとも未成年で肺がんの診断を受けた患者が、何人いるのか?
或いは、県人口が100万人に届かない場合、どうするのか?

更には、10万あたり0人でも、11万人に1人の場合は、20万人あたりでも1人にとどまってしまうのではないか?

更に更に、鳥取県のように総人口が57万4000人の場合、10万人あたりにすると、年齢調整率そのものが意味がなくなるのではないか?


基準人口-昭和60年モデル人口
10万あたりの基準となる昭和60年の基準モデル人口


矢印下向き
しかし現在は偏りが生じ、高齢化社会真っただ中!


基準人口-平成27年モデル人口
単純にグラフを上方向にスライドさせて、
平成27年の基準モデル人口を作って見ると。


基準値が古すぎて、時代に合っていないのでは…
と言う事で、都道府県別の実数値が出てくるのなら、交通事故死亡者数のように、単純に都道府県ごとの総人口に占める割合で見た方が、分かりやすくないか…
との気まぐれなので…あまり参考にはならないかもしれませんが、あしからず。



しかし、認知症行方不明者数では、西高東低がハッキリ出てしまった。
第1位・大阪府、第2位・埼玉県、第3位・東京都、第4位・兵庫県、第5位・愛知県だったのが、
総人口に占める割合で見ると、第1位・兵庫県、第2位・大阪府、第3位・富山県、第4位・京都府、第5位・徳島県となった。

愛知県は11位、埼玉県は36位、東京都はなんと47位のダントツの最下位だった。



これを見ると、西日本が上位を占めている事が分かる。
しかも人口が多いから、認知症行方不明者が多いという訳でもなく、また逆に高齢者が多いとされる人口減少が進んでいる所が、意外に少ない事も分かる。



発表される統計数値は、全都道府県で公平になるよう調整されている。
勿論、統計学者が苦心して生み出した計算方法だろう。

しかし、現在のように、あまりにも人口が偏り過ぎてしまい、年齢構成もいびつになると、時々、果たしてこの数字はマトを得ているのだろうか? と疑いたくなる時がある。


私たちが用心しなければならないのは、統計数値には、必ず偏りがあって、別方向からの見方もあると言う事。

ただ単純に鵜呑みにするのではなく、
数値や順位に隠れた、見えていない部分を探して見る努力を惜しんではならない、と思うのだ。


そこには、次の不運を回避するための、重要な証拠が潜んでいるかもしれない……






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乳児型脊髄性筋萎縮症治療薬「スピンラザ®髄注12mg」が製造販売承認を取得

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バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区)は7月3日、「スピンラザ®髄注12mg」(一般名:ヌシネルセンナトリウム)について、乳児型脊髄性筋萎縮症の適応症で、製造販売承認を取得したと発表しました。
「スピンラザ®髄注12mg(SPINRAZA®)」は、日本で初めて承認された*アンチセンス核酸医薬品です。



スピンラザ髄注12mg-ヌシネルセンナトリウム瓶

 *アンチセンス核酸医薬品とは……疾患に関連するタンパク質を造るRNA(mRNA、mRNA前駆体、miRNA)を標的とする核酸医薬品の事。


▲尚、本剤の承認申請は2016年12月12日に行われましたが、その時に脊髄性筋萎縮症の疾患や、本治療薬の作用機序について、2016年12月21日の記事に図説と共に掲載していますので、併せてお読みいただくと、分かりやすいと思います。
 http://ameblo.jp/aki-prism/entry-12229753769.html


脊髄性筋萎縮症(SMA=Spinal Muscular Atrophy)は、幼児と小児の脊髄や下位脳幹における進行性の“運動ニューロン(神経細胞)の脱落”を特徴とする、常染色体劣性遺伝神経筋疾患で、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を起こします。

最も重篤なタイプ(タイプ1、2)の脊髄性筋萎縮症では、最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下(えんげ=食物を飲み込む)など、生命維持の為の基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

脊髄性筋萎縮症の患者では、生存運動ニューロン遺伝子1(SMN1=Survival of Motor Neuron 1)の欠失または変異により、運動ニューロン維持に必要な、SMNタンパク質を十分に産生することが出来ず、SMN1遺伝子が無ければ、脊髄の運動ニューロンは退化し死滅します。
欠失は、SMN1遺伝子そのものが欠落している事です。

そこで、SMN2遺伝子のイントロンにSMN1遺伝子の役割を持たせ、RNA転写によって必要なタンパク質を作り出します。

脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者の重症度は、このSMNタンパク質の量と相関関係があると言う。



ヌシネルセンナトリウムの作用機序
「スピンラザ®髄注12mg」の作用機序。



脊髄性筋萎縮症(SMA)は、乳幼児の死亡の主要な遺伝的原因の一つであり、進行性で筋力の低下を特徴としています。
乳児型脊髄性筋萎縮症の適応症は、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定のもと、申請から約7カ月で承認されました。また遅発型脊髄性筋萎縮症の適応症についても、現在、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)による迅速審査が進められています。




【製品概要】

【製品名】: スピンラザ®髄注12mg
【一般名】: ヌシネルセンナトリウム
【効能・効果】: 乳児型脊髄性筋萎縮症

【用法・用量】
通常、ヌシネルセンとして、1回に付き下表の用量を投与する。初回投与後、2週、4週及び9週に投与し、以降4カ月の間隔で投与を行う事とし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。
スピンラザ
スピンラザ髄注-ヌシネルセンナトリウム
「スピンラザ」の投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。
これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液(CSF)中に直接送達するものです。


【副作用】
脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された乳児を対象とした第III相シャム(疑似的)処置対照二重盲検試験(Study CS3B、日本を含む国際共同試験)において、本剤群80例のうち9例(11.3c)に副作用が認められた。主な副作用は発熱(2.5%)、頻脈、貧血母斑、蜂巣円、処置後腫脹、眼振、血管炎、体温低下、体温上昇(各1.3%)であった。

【製造販売承認日】: 2017年7月3日





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民間の11クリニック、無届けで臍帯血治療…緊急停止命令

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無届け臍帯血投与で停止命令

厚生労働省は6月28日、他人の臍帯血(さいたいけつ)を投与(輸血)する医療を無届けで行ったとして、東京と大阪、福岡の11の『民間クリニック』に対し、再生医療安全性確保法違反に基づき、治療を一時停止させる緊急命令を出したと発表した。


【違反概要】


~再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について~


以下の医療機関に対し、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号。)第24条第1項又は第2項に基づく立入検査を行ったところ、下記の法律違反が確認されました。

●保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると判断したため、法律第85号第22条に基づき、当該再生医療等の提供の一時停止を命じましたのでお知らせいたします。


無届け臍帯血投与で停止命令2

【確認された法律違反】
・第一種再生医療等提供計画を提出せず、他人の臍帯血を用いた第一種再生医療等を提供していたこと(法第4条第1項違反)。


  医療機関名       住所   一時停止命令日
1)表参道首藤クリニック(東京都渋谷区/平成29年5月16日)
2)クリニック真健庵(東京都港区/平成29年5月16日)
3)大阪タワークリニック(大阪府大阪市/平成29年5月17日)
4)医療法人社団博心厚生会
   アベ・腫瘍内科・クリニック(東京都千代田区/平成29年6月2日)
5)医療法人社団健若会
   赤坂AAクリニック(東京都港区/平成29年6月2日)
6)医療法人恵聖会
   恵聖会クリニック心斎橋院(大阪府大阪市/平成29年6月2日)
7)天神皮ふ科(福岡県福岡市/平成29年6月2日)
8)医療法人社団向笑会
   花岡由美子女性サンテクリニック(東京都練馬区/平成29年6月2日)
9)品川荏原ライフケアクリニック(東京都品川区/平成29年6月2日)
10)六本木ドクターアンディーズクリニック(東京都港区/平成29年6月6日)
11)医療法人社団創輝会
   東京国際美容クリニック(東京都港区/平成29年6月8日)


●発出:厚生労働省 医政局研究開発振興課 再生医療等研究推進室


尚、この命令発出以前に、厚生労働省は2017年2月20日付で、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、埼玉県内のクリニックに対して、再生医療等の提供の一時停止を命じる緊急命令を出しています。

無届け臍帯血投与で停止命令1



小林麻央さん通ったクリニックが「無届け医療」で業務停止命令

6月22日に逝去した小林麻央さん(享年34)。その壮絶な死から約1週間後の6月28日、驚きのニュースが飛び込んできた。他人のさい帯血を投与する医療を無届けで行ったとして、全国11のクリニックに業務停止命令が下った。そのうちの1施設が、麻央さんの昨年から何度も通っていたAクリニックだったのだ。「11カ所の民間クリニックではがん治療などの..........
≪続きを読む≫


これを受けて一般社団法人 日本再生医療学会は、声明を発表し、
 第三者の細胞を患者に投与する行為は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」で、「第一種再生医療等技術」として分類されています。

 第一種再生医療等技術は、「人の生命及び健康に与える影響が明らかでない、又は相当の注意をしても人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれ」があるものとして、

(1)高度な審査能力を持つ「特定認定再生医療等委員会」の意見を聴いた上で、必要書類を厚生労働大臣に提出し、
(2)厚生科学審議会の意見に基づく安全性等の確認、を受けなければ実施できません。

つまり、現状の科学的常識に照らして、有効性と安全性のバランスを慎重に検討されるべき医療行為が、無届けで実施された、と言うことを意味します。

安全性確保の観点からは、絶対に許すことの出来ないものです。


もし受診したクリニックにおいて、細胞の移植や、それに類する治療法を勧められた場合、法律に基づいた対応を行っているか?
日本再生医療学会の認定医であるか?

と、言ったことを医師にご確認ください。

もし不安・不明な点がある場合は、かかりつけの医師にご相談されるなど、新規の治療法を受けるべきかの判断については、慎重に検討されることを推奨いたします。
無届け臍帯血投与で停止命令3

法律に触れる行為や、不誠実な医療の排除のためには、日本再生医療学会の会員自身が自らを律するのは勿論のこと、国民の皆様の厳しい視線を絶対に欠かすことが出来ません。

再生医療という新しい医療を、社会と共に構築して行けるよう、国民の皆様のお力添えをお願いいたします。






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がん治療に伴う口内炎の疼痛緩和液材「エピシル口腔用液」が製造販売承認を取得

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ソレイジア・ファーマ株式会社(本社:東京都港区海岸一丁目)は7月7日、がん化学療法、及び放射線治療法による口内炎に伴う疼痛緩和用・口腔用液状材「エピシル™口腔用液」(開発コード:SP-03)に関し、厚生労働省より7月6日付けで、日本国内における医療機器製造販売承認を取得したと発表しました。


エピシル口腔用液10ml
がん化学療法及び放射線療法による口内炎に伴う疼痛緩和口腔用液材
「エピシルTM口腔用液10ml」


~がん化学療法及び放射線療法による口内炎について~

がん治療に伴う口内炎(=口腔粘膜炎)は、化学療法剤が口腔粘膜へ直接作用して障害が生じるものや、放射線照射により唾液腺組織に障害が生じ、唾液の分泌低下により、口腔内の自浄作用が低下し、局所感染が起こる事で発生する「一次口内炎」、白血球減少などに伴う骨髄抑制による口腔内感染が原因となる「二次口内炎」があります。


抗がん剤治療の口内炎の副作用

口内炎は症状として、接触痛、出血、冷温水痛、口腔乾燥、口腔粘膜の発赤・腫脹、開口障害、構音(発声)障害、嚥下(食物の飲み込み)障害、味覚障害などが見られます。

臨床経過は、抗がん剤投与後数日~10日で口内炎が発生。その後、2~3週間で徐々に改善し、予後は良好です。


厚生労働省の『重篤副作用疾患別対応マニュアル(抗がん剤による口内炎)』によると、抗がん剤による口内炎の発現頻度は、▽通常の抗がん剤使用時で30~40% ▽造血幹細胞移植時(大量の抗がん剤使用)で70~90% ▽抗がん剤と頭頸部への放射線治療併用時でほぼ100%、とされている。


抗がん剤治療の口内炎発症頻度

放射線治療の口腔粘膜炎の症例
放射線治療による口腔粘膜炎の症例。


しかし、抗がん剤の多剤併用や投与期間が長い場合は、口内炎の発生頻度が高まり、重篤になると、治療の継続に悪影響(苦痛)を及ぼす事もあります。

がん治療による口内炎に伴う疼痛緩和に対して、確立された治療は存在しません。
現在は、対症療法に頼っているのが現状で、新たな対処法が求められていました。




エピシル口腔用液3ml
「エピシルTM口腔用液3ml」

「エピシル口腔用液」は、スウェーデンのルンド市に本社を置くカミュラスAB社(Camurus AB)の特許技術に基づいて開発された、脂質ベースの液体で、口腔内に適用されると口腔粘膜を覆う強固な生体接着保護膜を形成し、患部を物理的に保護します。

臨床試験の結果、適用後数分以内に口腔内の疼痛を緩和し、その効果は8時間程度持続する事が示されています。

使用は簡便で、ノズルヘッドをプッシュして口腔内に適用します。

携行に便利なポケットサイズの容器に充填され、海外では、2009年に欧州で最初に販売され、現在では米国を含む多くの国で販売されている。





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膵・消化管神経内分泌腫瘍で「ソマチュリン®皮下注120mg」が追加承認を取得

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帝人ファーマ株式会社(本社:東京都千代田区)は7月3日、フランスのパリに本社を置くイプセン社(ADR:IPSEY)から導入している、先端巨大症および下垂体性巨人症治療剤「ソマチュリン®皮下注120mg」(一般名:ランレオチド酢酸塩)について、厚生労働省より、「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET=Neuroendocrine Tumor)」の効能・効果の追加承認を取得したと発表した。


ソマチュリン皮下注120mg
「ソマチュリン®皮下注120mg」


膵臓や小腸・直腸などの消化管に発生する「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)」は、ホルモンを分泌する神経内分泌細胞から発生する悪性腫瘍で、ホルモン(ガストリン、インスリン、グルカゴンなど)の過剰分泌により様々な症状が現れる「機能性」と、ホルモン分泌による症状がない「非機能性」に大別されます。

「機能性」タイプでは、低血糖や消化性潰瘍、重度の下痢などの症状を引き起こす事がある。

神経内分泌腫瘍の発症部位別頻度
神経内分泌腫瘍の発症部位別頻度。


日本人が、1年間に新規発症する割合は、人口10万人当たりで膵神経内分泌腫瘍が約1.3人、消化管神経内分泌腫瘍が約3.5人と言われています。
いずれも比較的稀少な疾患ですが、患者数が年々増加傾向にある事から、その治療意義が高まっている。



膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)に対しては、第一選択として外科的切除による全摘が標準的な治療となっていますが、切除不能や手術後に腫瘍が残った場合には、腫瘍増殖を抑えて、生命予後を改善させる薬物治療が用いられている。

微妙なコントラストの膵臓神経内分泌腫瘍の画像

膵頭部の神経内分泌腫瘍
膵頭部の神経内分泌腫瘍では、
肝転移などが無ければ腫瘍切除による機能温存手術が可能。

消化管・直腸神経内分泌腫瘍の内視鏡画像
消化管(直腸)神経内分泌腫瘍の内視鏡画像。


身体症状が見られる膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)の薬物治療としては、*ソマトスタチンアナログ製剤が第一選択とされています。

しかし、日本国内には、抗腫瘍効果で膵神経内分泌腫瘍に使用可能なソマトスタチンアナログ製剤はなく、消化管神経内分泌腫瘍には1剤のみで、薬剤の選択肢が限られていました。

*ソマトスタチンアナログ製剤とは…
  内分泌ホルモンの分泌を抑制する効果を持つ▼ソマトスタチンの類似化合物の事。(▼ソマトスタチンは、視床下部などから分泌される成長ホルモン放出抑制ホルモン)




今回、先端巨大症および下垂体性巨人症治療剤「ソマチュリン®皮下注120mg」の追加承認の取得は、イプセン社が欧州14か国で実施した、切除不能、または遠隔転移を有する膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)を対象に、『ランレオチド酢酸塩』の有効性・安全性を検証した、プラセボ対照の「CLARINET®試験」、及び帝人ファーマが日本で実施した、2013年以降の第2相臨床試験の結果に基づくもの。


ソマチュリン皮下注
「ソマチュリン®皮下注120mg」は、日本で初めての膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)を適応症に持つソマトスタチンアナログ製剤となります。




【製品概要】
【販売名】:ソマチュリン®皮下注60mg、ソマチュリン®皮下注90mg
      ソマチュリン®皮下注120mg
  『膵・消化管神経内分泌腫瘍の効能・効果は「ソマチュリン®皮下注120mg」のみ承認されています。』

【一般名】:ランレオチド酢酸塩
【剤 形】:徐放性注射剤(針付きプレフィルドシリンジ製剤)

【効能・効果】
■ 下記疾患における成長ホルモン、IGF-I(ソマトメジン-C)分泌過剰状態及び諸症状の改善。
先端巨大症・下垂体性巨人症(外科的処置で効果が不十分な場合又は施行が困難な場合)

膵・消化管神経内分泌腫瘍

【用法・用量】
■ 通常、成人にはランレオチドとして90 mgを4週毎に3ヵ月間、深部皮下に注射する。その後は患者の病態に応じて60 mg、90 mgまたは120 mgを4週毎に投与する。

通常、成人にはランレオチドとして120 mgを4週毎に、深部皮下に注射する。





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国内初の新規乳がん治療剤「イブランスカプセル」が製造販売承認を取得

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は7月27日、新有効成分含有の乳がん治療剤「イブランス®(IBRANCE®)カプセル25mg、同125mg(一般名:パルボシクリブ=®palbociclib)」ついて、「手術不能または再発乳がん」を効能・効果とする製造販売承認を了承した。
同剤は、早ければ9月末にも正式に承認される見通し。

(適応症/予定:HR+HER2-=ホルモン受容体陽性ヒト上皮増殖因子受容体2陰性の進行性又は転移性再発乳がん)

新たに製造販売承認を取得したのは、ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)が、2016年10月31日に「手術不能又は再発乳癌」の効能・効果で、国内に於ける製造販売承認申請を行っていた、世界初・国内初のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬「イブランス®カプセル25mg、同カプセル125mg(一般名:パルボシクリブ)」です。



イブランスカプセル120mg_ドイツ
欧州(ドイツ)で販売されている「イブランス®(IBRANCE®)カプセル125mg」
尚、現在までの所、25mgカプセルの承認は日本のみで、欧米では販売されていない。


乳がんは、世界に於いて、女性の罹患率が第一位のがん種であり、全世界で約170万人が新たに乳がんと診断されています(2012年=World Cancer Research Fund International)。

日本に於いては、乳がんの年間罹患数は約7万4000人で、女性の部位別罹患数として第一位(2012年)、乳がんの年間死亡者数は1万3000人を超えています(2014年=国立がん研究センターがん情報サービス『がん登録・統計』)。

初診断時に転移がある場合、5年生存率は26.3%と予後は大変厳しい状況です(National cancer institute=米国立がん研究所)。

転移がない場合でも、原発巣に対する根治的治療後に推定20~30%の割合で転移・再発が見られ(Metastatic Breast Cancer Network=米国転移性乳癌ネットワーク)、転移・再発乳がんは切除可能な局所再発を除いて、治癒は極めて困難です(日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン2015年版)。

乳癌の再発転移の部位別発症割合

転移・再発乳がんの化学療法後の10年生存率は、僅か5%です(日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン2015年版)。




ガン細胞の細胞周期と増殖
細胞周期は正常細胞もガン細胞も同じですが、
ガン細胞では増殖のスピードが速くなる。


サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6は、細胞周期の調節に主要な役割を果たしており、細胞増殖を引き起こします。
「イブランス®カプセル25mg、同125mg(®palbociclib)」は、世界初の経口サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6に対する阻害作用を有する低分子化合物で、CDK4及びCDK6を選択的に阻害して、細胞周期の進行を停止させる事で、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。



イブランスカプセルの作用機序
サイクリンD1-CDK4/6複合体を阻害する事で、細胞周期に必要な
RBタンパク質を不活性化し、E2Pタンパク質を放出する事で
腫瘍細胞の増殖を抑制する。




【効能・効果】:「手術不能、または再発の乳がん」

【用法・用量】:「内分泌療法剤(ホルモン療法剤)との併用において、通常、成人にはパルボシクリブとして1日1回125mgを3週間連続して、食後に経口投与し、その後は1週間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返し、患者の状態により適宜減量する」

◎閉経の有無に関わらず使用できる。
◎7月27日の部会では、これに伴い、ホルモン療法剤の「フェソロデックス®筋注250mg(一般名:フルベストラント)」について、イブランスカプセルと併用出来るようにするための承認事項の一部変更が報告された。

◎再審査期間8年。



尚、米国(FDA)に於ける適応症は、2015年2月に「HR+HER2-(ホルモン受容体陽性ヒト上皮増殖因子受容体2陰性)閉経後進行または転移乳がんに対する初回内分泌療法(レトロゾールとの併用)」
「内分泌療法により疾患が進行したHR+HER2-進行又は転移乳がん(閉経の有無を問わない)に対する治療(フルベストラントとの併用)」となっている。

欧州医薬品庁(EMA)の承認勧告では、2016年9月に「HR+HER2-局所進行又は転移乳がん(アロマターゼ阻害薬との併用、又は内分泌療法を受けた患者ではフルベストラントとの併用)」が適応症となっている。


本剤の承認で、閉経の有無に関わらず、『ホルモン受容体(HR)陽性かつヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)陰性の手術不能または再発乳がん』の患者さんにとって、革新的治療選択肢が増える事は、精神的・肉体的に大きな支えになるものと期待されます。






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遺伝性卵巣がん治療薬「Olaparib」の国内での製造販売承認を申請

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アストラゼネカ株式会社(日本法人本社:大阪府大阪市北区 / 本社:英国・ロンドン)は8月8日、遺伝性卵巣がん治療薬「Olaparib(日本での一般名:オラパリブ)」について、国の医薬品審査機関である、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に承認申請した事を明らかにした。

親から子に受け継いだ遺伝子が原因で発症する「遺伝性がん」に対する薬剤の申請は、国内では初めてとなる。


オラパリブ_Olaparib
遺伝性再発卵巣がん治療薬「Olaparib(オラパリブ)」
本剤は2014年12月に米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)から
「Lynparza(リンパルザカプセル)」として承認を取得。


国内での卵巣癌の1年間の罹患者数は、9,000人で、死亡者数は4,700人となっています(平成24年=2012年)。
卵巣癌の2014年の患者数はおよそ26,000人と報告されています。

最新の年齢別罹患者数と死亡者数は下図の通り(国立がん研究センターがん対策情報センター)。


卵巣癌年齢別罹患者数

卵巣癌年齢別死亡者数


この内、代表的な癌抑制遺伝子として知られる「BRCA1」遺伝子及び/又は「BRCA2」遺伝子の病的変異を伴う、『遺伝性のBRCA遺伝子変異陽性卵巣癌』は、推定患者数が3,500人未満と極めて稀であるものの、散発性の卵巣癌とは異なる病態的特性を持ち、遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome)という確立された疾患概念の一部として認識されています(卵巣がん全体の約1割)。


日本人を対象とする多施設共同研究に於いて、本人が乳がんを発症し、本人を含む第2度近親以内の親族(貴女から見た場合に、きょうだい、父母から祖父母、叔父、叔母、孫までの範囲の血縁者を指す)に、40歳未満で乳がんになった人がいる場合、両方の乳房にガンができた人や、卵巣癌になった人がいる場合には、「BRCA1/BRCA2遺伝子変異」の陽性率は38~46%でした(国立がん研究センターがん対策情報センター)。


17番BRCA1遺伝子
遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC)に関与しているBRCA1とBRCA2遺伝子は、
第17染色体と第13染色体上に存在する。


細胞が何らかの原因で損傷した場合、DNAにはその細胞を修復し、腫瘍化(異常化)を防ぐ癌抑制遺伝子が存在し、修復の為のタンパク質を放出しますが、この遺伝子に異常があると、DNAは修復されないまま分裂を繰り返し、やがて腫瘍細胞へと変化します。

乳がんや卵巣がんに於いては、BRCA1とBRCA2遺伝子がそのDNA損傷修復の指令を出し、腫瘍化を阻止しますが、遺伝的にこの遺伝子に異常があると、抑制作用が発現せず、発症リスクが高まる事になります。




「Olaparib(オラパリブ)」は、革新的なファースト・イン・クラス(画期的な作用機序をもつ医薬品)のポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であり、DNA損傷応答(DDR)経路に異常を来たしたガン細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導します。

審査期間は9か月間程度と見られ、早ければ来年前半にも承認される可能性が高いという事です。


オラパリブ_Olaparib_カプセル


本剤が承認される事で、患者にとって治療の選択肢が広がる一方、家族の発症リスクも解かる可能性があるため、関係学会は家族のケアを含めた適切な診療体制の検討を始めました。


尚、現在「Olaparib(オラパリブ)」は、原発乳がんに対する術後補助療法を検討する第III相試験(OlympiA)が行われています。

BRCA1およびBRCA2遺伝子変異に関連する乳がん患者、並びに卵巣がん患者は、非遺伝性の患者に比べ若年期に発症する傾向があります。

その為、再発する場合も多く、DNA損傷修復機能とがん細胞のDNA損傷応答による細胞死機能を持った薬剤の登場によって、治療の選択肢が広がる事が期待されています。






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末梢性T細胞リンパ腫・抗悪性腫瘍剤「イストダックス点滴用」が製造販売承認を取得

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セルジーン株式会社(本社:東京都千代田区丸の内)は7月3日、「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)」の治療薬として、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤「イストダックス®点滴静注用10mg」(一般名:ロミデプシン=Romidepsin)の製造販売承認を取得したと発表した。
本剤は今回の承認により、「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)」の治療薬として、日本で初めてのHDAC阻害剤となります。



末梢性T細胞リンパ腫治療薬ロミデプシン
再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)治療薬
「イストダックス®点滴静注用10mg」


末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:Peripheral T-cell lymphoma)は、ホジキン病と非ホジキンリンパ腫に大別される悪性リンパ腫の一つで、免疫細胞のリンパ球の中の“T細胞”から発生する非ホジキンリパ腫です。

日本国内の患者数は、2000人以下と推計されています(厚生労働省大臣官房情報部 患者調査報告(傷病基本分類別統計)2014)。
月単位で病勢進行する「中悪性度」に分類され、中悪性度リンパ腫の10~15%を占めるとされています(国立がん研究センター:末梢性T細胞リンパ腫2015.)。



末梢性T細胞リンパ腫の病態分類
T細胞リンパ腫の分類

*「ホジキン」とはイギリスの医師の名前で、リンパ節を始めとする造血器細胞が系統的に侵される病気を指し、日本国内では非ホジキンリンパ腫(造血臓器以外)の発症率が高いのが特徴です。
*「ヒストン」とは、染色体の中にあるタンパク質の一種でDNAに結合している。



非ホジキンT細胞リンパ腫
濃い藍色に変化し点在している部分が癌化したT細胞。
本来正常なT細胞はピンク色をしている。


最初に行った化学療法(多剤併用療法=シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの4種)で部分奏効や難治性、または再発の場合、予後は厳しいのが現状です。

末梢性T細胞リンパ腫に対する標準治療は、未だに確立されておらず、特に再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫に対する治療選択肢は限られている為、新しい薬剤の開発が求められていました。



「イストダックス®点滴静注用10mg」は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤で、HDACの活性を阻害します。

HDACの活性を阻害する事によりアセチル化ヒストンが細胞内に蓄積し、ガンの細胞周期の停止や細胞死(アポトーシス)が誘導され、その結果、抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。


再発又難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)治療薬イストダックスの作用機序
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤「イストダックス®」の作用機序




【製品概要】

【販売名】:イストダックス®点滴静注用10mg
【一般名】:ロミデプシン
【効能・効果】:再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫

【用法・用量】:通常、成人にはロミデプシンとして14mg/m2(体表面積)を 1日目、8日目、15日目に4時間かけて点滴静注した後、休薬(16~28日目)する。
この28日間を1サイクルとして投与を繰り返す。尚、患者の状態により適宜減量する。

【その他】:新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。



「イストダックス」は、治療歴がある末梢性T細胞リンパ腫に対して、現在、米国を含め世界5ヵ国で承認を取得しています(2017年3月)。





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閉経後乳癌治療剤「フェソロデックス」、閉経後再発乳癌で初回治療から使用可能に

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アストラゼネカ株式会社(本社:大阪府大阪市北区)は6月5日、抗エストロゲン剤/閉経後乳がん治療剤「フェソロデックス®筋注250mg(一般名:フルベストラント=Fulvestrant)」に関して、添付文書の一部改訂を行ない、閉経後進行・再発乳がんに於いて初回治療からの使用が可能となったと発表しました。


フェソロデックス筋注250mg
抗エストロゲン剤/閉経後乳癌治療剤「フェソロデックス®筋注250mg」


「フェソロデックス®筋注250mg」は、閉経後乳がんを適応として2011年9月に製造販売承認を取得し、同年11月の薬価収載をもって国内における販売を開始した、抗エストロゲン剤/閉経後乳がん治療剤です。
 *エストロゲンとは…卵胞ホルモン、又は発情ホルモンの事。


ホルモン受容体陽性乳がんは、乳がん患者全体の80%以上を占めるとされ(Robertson JFR et al. Lancet 2016)、中でも、閉経後進行・再発乳がんは、現状の治療法では治癒が困難とされています。
この為、治療は患者のQOL(Quality of Life=生活の質)を維持しながら、癌の進行を遅らせる事を目的に行われている。


乳がん細胞の増殖を促進するエストロゲン(卵胞ホルモン)が作られる場所は、閉経前と閉経後では異なります。
アロマターゼ阻害薬
アロマターゼ阻害薬の作用。

閉経前の女性では、エストロゲンは主に「卵巣」で作られます。


閉経後の女性では、卵巣機能が低下し、エストロゲンの量が減ります。その代わりに、副腎からアンドロゲンと言う男性ホルモンが分泌され、脂肪組織などに存在している“アロマターゼ”と言う酵素の働きによって、少量のエストロゲンが作られ続けます。

エストロゲン受容体とは

エストロゲン受容体にエストロゲンが結合
エストロゲンがエストロゲン受容体と結合する事で
癌細胞が増殖する。
AF-1とAF-2はエストロゲン受容体にある転写活性化領域(AF)。


この為、閉経の前と後では、治療に使う薬が異なる事があります。“アロマターゼ阻害薬”は、閉経後の乳がんのエストロゲンの合成を抑え、乳がん細胞が増殖しないようにする薬剤です。



今回の添付文書改訂は、昨年公表された第Ⅲ相国際共同臨床試験(FALCON試験)の結果に基づき、内分泌療法(ホルモン療法)による治療歴の無い『閉経後ホルモン受容体陽性進行乳がん』患者を対象に、現在の標準治療である“アロマターゼ阻害剤”の「アリミデックス®(一般名:アナストロゾール)」と比較した試験に於いて、「フェソロデックス」は主要評価項目である無増悪生存期間(Progression-Free Survival)を有意に改善。

患者の病勢進行リスクを約20%減少させる事が示されました。
また、同試験で認められた有害事象は概ねこれまでの安全性プロファイルと一致していました。


効能効果の改訂前と改訂後
効能・効果の改訂前と改訂後

この結果を受け、本剤の「効能・効果に関連する使用上の注意」の項に記載されていた「本剤の内分泌療法未治療例における有効性及び安全性は確立していない。」が削除された事により、閉経後進行・再発乳がんの患者に、初回治療から、より長期の病勢コントロールが期待出来る、新たな治療選択肢を提供する事が可能になったとしている。

またこれに伴い、副作用の項目についても「削除」と「追加」が行われた。

副作用の改訂前と改訂後
副作用の改訂前と改訂後



エストロゲン受容体にアロマターゼ阻害薬が結合し増殖阻止
アロマターゼ阻害薬(アリミデックス等)は、
エストロゲン受容体と結合しエストロゲン受容体の増殖を阻止する。
この時、AF-1の転写活性は生きている。



「フェソロデックス®筋注250mg」の作用機序。
エストロゲン受容体にフェソロデックスが結合ERそのものを破壊
「フェソロデックス」はエストロゲン受容体と結合し増殖を阻止すると同時に
エストロゲン受容体そのものを破壊(細胞死)する。



「フェソロデックス®筋注250mg」は、現在、標準治療の“アロマターゼ阻害剤”のように、エストロゲンの合成を抑えるだけでなく、エストロゲン受容体そのものを分解する作用機序を持っており、欧米に先駆け、閉経後進行・再発乳がんの1次治療薬として使用可能になった事で、病勢の進行を有意に阻止すると期待される。







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認知症行方不明者、実人口に占める割合ランキング~統計数値の怪

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警察庁は6月15日、認知症が原因で行方が分からなくなったとして、2016年に全国の警察に届け出があった行方不明者は、前年比26.4%増の1万5432人だったと公表しました。

2012年の統計開始から4年連続で増え、過去最多を更新し続け、このうち年内に、警察や家族などによって98.8%は所在が確認されているものの、行方不明者全体の総数は8万4850人で、過去10年間ほぼ横ばいですが、認知症者が占める割合は前年比3ポイント増の18%と、深刻な状況が続いている。

 ~と、ここまでは報道されている通りですが、
一番気になったのは、こういった全国統計で必ず出てくる『都道府県別』と言う数字。


認知症行方不明者の数を発表したのは警察庁なので、この場合は『都道府県警別』となりますが、
大阪府が1830人で全国最多。埼玉県1641人、東京都1487人、兵庫県1300人、愛知県1265人と5つの都府県で1000人を超えた(2016年(平成28年))…とあります。



しかし考えてみれば、人口が多いと当然、認知症行方不明者も多いと思いますが、
本当にそうだろうか?



そこで実際に、全年齢を加えた都道府県別の人口に占める、認知症行方不明者の割合を算出してみた。

尚、2016年の全都道府県警別の人数が分からないので、2014年(平成26年)に公表された認知症行方不明者数に基づいて一覧にしました。

都道府県別認知症行方不明者の人口にしめる割合


2015年12月発表の、厚生労働省の推計によると、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人と推計され、2025年には、全国で認知症を患う人が700万人を超えるとの推計を発表しています。


所で、病気別の患者数など、多くの統計数値に登場する『人口10万人あたり○○○人』と言う、10万人あたりの数字。ほとんどは昭和60年(1985年)モデル人口を基準にした、5歳ごとの年齢調整率であらわされている。

例えば、男性で一番多い肺がん患者数も、年齢調整率で修正されたのち、都道府県別の順位が付けられる。

しかし単純に考えると、少なくとも未成年で肺がんの診断を受けた患者が、何人いるのか?
或いは、県人口が100万人に届かない場合、どうするのか?

更には、10万あたり0人でも、11万人に1人の場合は、20万人あたりでも1人にとどまってしまうのではないか?

更に更に、鳥取県のように総人口が57万4000人の場合、10万人あたりにすると、年齢調整率そのものが意味がなくなるのではないか?


基準人口-昭和60年モデル人口
10万あたりの基準となる昭和60年の基準モデル人口


矢印下向き
しかし現在は偏りが生じ、高齢化社会真っただ中!


基準人口-平成27年モデル人口
単純にグラフを上方向にスライドさせて、
平成27年の基準モデル人口を作って見ると。


基準値が古すぎて、時代に合っていないのでは…
と言う事で、都道府県別の実数値が出てくるのなら、交通事故死亡者数のように、単純に都道府県ごとの総人口に占める割合で見た方が、分かりやすくないか…
との気まぐれなので…あまり参考にはならないかもしれませんが、あしからず。



しかし、認知症行方不明者数では、西高東低がハッキリ出てしまった。
第1位・大阪府、第2位・埼玉県、第3位・東京都、第4位・兵庫県、第5位・愛知県だったのが、
総人口に占める割合で見ると、第1位・兵庫県、第2位・大阪府、第3位・富山県、第4位・京都府、第5位・徳島県となった。

愛知県は11位、埼玉県は36位、東京都はなんと47位のダントツの最下位だった。



これを見ると、西日本が上位を占めている事が分かる。
しかも人口が多いから、認知症行方不明者が多いという訳でもなく、また逆に高齢者が多いとされる人口減少が進んでいる所が、意外に少ない事も分かる。



発表される統計数値は、全都道府県で公平になるよう調整されている。
勿論、統計学者が苦心して生み出した計算方法だろう。

しかし、現在のように、あまりにも人口が偏り過ぎてしまい、年齢構成もいびつになると、時々、果たしてこの数字はマトを得ているのだろうか? と疑いたくなる時がある。


私たちが用心しなければならないのは、統計数値には、必ず偏りがあって、別方向からの見方もあると言う事。

ただ単純に鵜呑みにするのではなく、
数値や順位に隠れた、見えていない部分を探して見る努力を惜しんではならない、と思うのだ。


そこには、次の不運を回避するための、重要な証拠が潜んでいるかもしれない……






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