CSLベーリング株式会社(本社:東京都江東区)が2016年8月25日に製造販売承認申請していた、“ビタミンK拮抗薬投与下の急性重篤出血時及び緊急手術時などの出血傾向の抑制”を効能・効果とする新有効成分含有医薬品、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体製剤「ケイセントラ®静注用500単位、同1000単位(開発コード:BE1116)」について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は3月3日、製造販売承認を了承した。
◆耳慣れない「単語」が羅列しましたが、CSLベーリング株式会社が、正式に本薬剤について発売時製剤名を発表していない為、承認申請時と、3月3日の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会の資料、及びCSL Behring LLC(本拠地:オーストラリア・メルボルン)と開発部門のあるアメリカ・CSL Behringの先行承認された英文資料を基に、本稿を作成しています。
「ケイセントラ®静注用500、同1000(乾燥濃縮人プロトロンビン複合体)」は、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会」の第2回開発要望募集(2011年)に於いて、日本脳卒中学会から、「欧米等において標準的療法に位置づけられており、国内外の医療環境の違い等を踏まえても、国内における有用性が期待できると考えられる」製剤として、早期開発の要望が提出され、その後、検討会議で、医療上の必要性の高い未承認薬と認められた。
2012年4月、この決定を受けて、CSLベーリング株式会社は厚生労働省から、「BE1116」製剤の開発要請を受け開発した。
ビタミンK拮抗薬(ワルファリン/ワーファリン等)は、血液を固まりにくくする作用が強く、脳血栓、心筋梗塞、静脈塞栓症、肺塞栓症などの『血栓塞栓症』の予防と治療に用います。
しかしビタミンK拮抗薬の服用患者は、血液が固まりにくい“抗凝固状態”である為、出血時や出血が予測される際の止血管理が極めて重要となります。
一般的には、ビタミンK拮抗薬の「休薬」や「ビタミンK」の投与で対処しますが、出血抑制効果が認められるまで数時間以上を要します。
この為、重篤出血時や緊急手術時など、抗凝固状態を早急に是正する必要がある場合の十分な対処法がありませんでした。
「ケイセントラ®静注用」は、このような場合に、必要な血液凝固因子を補充する事で出血傾向を速やかに是正する事が期待されます(PT-INR=プロトロンビン時間の是正)。
【乾燥濃縮人プロトロンビン複合体製剤「ケイセントラ®静注用」について】
血液凝固第II(2)因子、第VII(7)因子、第IX(9)因子、および第X(10)因子はビタミンKの作用により肝臓で合成される凝固因子で、これらを合わせた製剤は、一般にプロトロンビン複合体製剤と呼ばている。
「ケイセントラ®静注用」には、これらの凝固因子が高濃度で含まれており、また、ビタミンK依存性の凝固阻害因子のプロテインC、及びプロテインSも含まれている。
ケイセントラの作用機序。
「ケイセントラ®静注用」には、血液凝固因子である第II(2)因子、第VII(7)因子、第IX(9)因子、第X(10)因子、及び凝固阻害因子プロテインC、プロテインSが高濃度に含まれ、
ビタミンK拮抗薬の作用を抑制し、止血する。
「ケイセントラ®静注用」は、ビタミンK拮抗薬の投与により減少した血液凝固第II因子、第VII因子、第IX因子、および第X因子を、簡便で速やかに補充する事が可能であり、出血リスクの高い、過度に促進した抗凝固状態を是正する事が可能な薬剤である。
【「ケイセントラ®静注用」の特徴】
▼ABO血液型に従う必要がない。
▼投与終了までに要する時間が短い(融解不要、投与容量が少ない)
▼製造工程に病原体の不活化/除去工程を含むのが特徴。
2016年7月1日現在、本製剤は欧州諸国、米国を含む42の国と地域で承認されている。