ノバルティスファーマ株式会社(本社:東京都港区西麻布)は8月25日、トロンボポエチン受容体作動薬「レボレード®錠12.5mg、同25mg(一般名:エルトロンボパグオラミン)」について、再生不良性貧血に対する適応追加の承認を取得し、また、同時に、サイトカイン免疫抑制剤「ネオーラル®内用液10%/ネオーラル®カプセル10mg、同25mg、同50mg(一般名:シクロスポリン)」の非重症の再生不良性貧血に対する承認も取得したと発表しました。
再生不良性貧血(AA=aplastic anemia)は、骨髄にある造血幹細胞(血液を造る基になる細胞)が減少する事により、汎血球減少(白血球、赤血球、血小板の全てが減少する事)を引き起こす疾患で、厚生労働省から難病に指定されています。
国内における総患者数は、約1万4000人(平成26年度厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究・2013年時点)と推定され、男女ともに10~20歳代と、70~80歳代に発症のピークがあるとされています(厚生労働省難病情報センター:2017年8月1日時点)。
主な症状は、酸素を身体中に運搬する“赤血球”の減少によって、酸素欠乏の状態になるため、労作時の息切れ、動悸、めまいなどの貧血症状と、“血小板”の減少によって、皮下出血斑(アザが出来やすい)、鼻出血や歯肉出血といった出血傾向になり、“白血球”のうち好中球の減少が強い場合には、細菌感染などに伴う発熱が見られます。
進行すると骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病といった、生命に関わる疾患に移行するケースも見られます。
再生不良性貧血(AA)の治療は、“血小板”の減少による出血傾向の抑制に『輸血』などの支持療法と、免疫抑制療法、造血幹細胞移植などの『造血回復』を目指した治療がありますが、“移植非適応”の場合や、既存治療で効果不十分な患者の治療は、『輸血療法』が中心となります。
しかし、頻回に血小板輸血を行うと、血小板に対する抗体が体内に誘導されるため、血小板を輸血しても血小板が増えなくなり、感染症や出血、輸血依存症と言った一定のリスクを伴い、更に、通院に伴う生活面の負担が増す事になります。
一方で、移植非適応の未治療な再生不良性貧血の患者に対する標準治療は、免疫グロブリンのATG(サイモグロブリン®)及びシクロスポリン(免疫抑制薬)の併用療法ですが、このような免疫抑制療法の治療効果を更に向上しうる薬剤の開発も望まれています。
「レボレード®(REVOLADE)」は、トロンボポエチン(TPO)受容体との特異的な相互作用を介して、巨核球や骨髄前駆細胞の増殖及び分化を促進させる、経口投与が可能なトロンボポエチン受容体(TPO-R)作動薬です。
「レボレード®」は、国内に於いて、慢性特発性血小板減少性紫斑病の治療薬として、2010年10月27日に製造販売承認を取得しています。また、2016年11月に「再生不良性貧血」を予定効能・効果として、希少疾病用医薬品の指定を受けています。
「REVOLADE®(米国では「Promacta®」として)」は、慢性特発性血小板減少性紫斑病、C型肝炎ウイルス感染に伴う血小板減少症、既存治療で効果不十分な重症再生不良性貧血に対する治療薬として、世界70カ国以上で承認されています。
「ネオーラル®」は、免疫をつかさどるT細胞を活性化するシグナル伝達を阻害し、インターロイキン2 に代表されるサイトカインの産生を抑制する事で、免疫抑制作用を示します。
現在、臓器移植(腎、肝、心、肺、膵、小腸)における、拒絶反応の抑制、骨髄移植における拒絶反応、及び移植片対宿主病(いしょくへんたいしゅくしゅびょう)の抑制、更にベーチェット病、非感染性ぶどう膜炎、尋常性乾癬(重症)、ネフローゼ症候群、全身型重症筋無力症、アトピー性皮膚炎(重症)などの自己免疫疾患の治療薬として、広い領域に使用されており、世界でも100カ国以上で承認されています。
【「レボレード®」の製品概要】
【製品名】:
「レボレード®錠12.5mg」(REVOLADE® Tablet 12.5mg)
「レボレード®錠25mg」(REVOLADE® Tablet 25mg)
【一般名】:エルトロンボパグ オラミン(Eltrombopag Olamine)
【効能又は効果(下線部は今回追加承認された効能又は効果)】:
1.慢性特発性血小板減少性紫斑病
2.再生不良性貧血
【用法及び用量(下線部は今回追加承認された用法及び用量)】:
1.慢性特発性血小板減少性紫斑病の場合
通常、成人には、エルトロンボパグとして初回投与量12.5mg を 1 日 1 回、食事の前後 2 時間を避けて空腹時に経口投与する。なお、血小板数、症状に応じて適宜増減する。また、1 日最大投与量は 50mg とする。
2.再生不良性貧血の場合
抗胸腺細胞免疫グロブリンで未治療の場合。
抗胸腺細胞免疫グロブリンとの併用において、通常、成人には、エルトロンボパグとして75mgを1日1回、食事の前後2時間を避けて空腹時に経口投与する。尚、患者の状態に応じて適宜減量する。
既存治療で効果不十分な場合。
通常、成人には、エルトロンボパグとして初回投与量25mgを1日1回、食事の前後2時間を避けて空腹時に経口投与する。尚、患者の状態に応じて適宜増減する。また、1日最大投与量は100mg とする。
【承認取得日】:2017年8月25日
*効能又は効果に関連する使用上の注意並びに用法及び用量に関連する使用上の注意は、添付文書をご覧下さい。
【「ネオーラル®」の製品概要】
【製品名】:
「ネオーラル®10mgカプセル」(NEORAL®10mg Capsule)
「ネオーラル®25mgカプセル」(NEORAL®25mg Capsule)
「ネオーラル®50mgカプセル」(NEORAL®50mg Capsule)
「ネオーラル®内用液10%」(NEORAL®)
【一般名】:シクロスポリン(Ciclosporin)
【効能又は効果(下線部は今回追加承認された効能又は効果)】:
1.下記の臓器移植における拒絶反応の抑制
腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植
2.骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制
3.ベーチェット病(眼症状のある場合)、及びその他の非感染性ぶどう膜炎(既存治療で効果不十分であり、視力低下のおそれのある活動性の中間部又は後部の非感染性ぶどう膜炎に限る)
4.尋常性乾癬(皮疹が全身の 30%以上に及ぶものあるいは難治性の場合)、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬
5.再生不良性貧血、
6.ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイドに抵抗性を示す場合)
7.全身型重症筋無力症(胸腺摘出後の治療において、ステロイド剤の投与が効果不十分、又は副作用により困難な場合)
8.アトピー性皮膚炎(既存治療で十分な効果が得られない患者)
【用法及び用量(下線部は今回追加承認された用法及び用量)】:
8.再生不良性貧血の場合
通常、シクロスポリンとして1日量6mg/kgを1日2回に分けて経口投与する。尚、患者の状態により適宜増減する。
この数年間、再生不良性貧血に対する新たな治療薬の承認はなされていませんでしたが、今回の「レボレード」および「ネオーラル」の承認により、新たな治療選択肢が二つ同時に提供される事になります。
ノバルティスでは、今後も、再生不良性貧血の患者さんの治療の質の向上に努めてまいります、とのコメントを発表しています。