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全身性エリテマトーデス抗体医薬「ベンリスタ点滴用/皮下注用」の製造承認を了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は9月8日、グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都渋谷区千駄ヶ谷)が承認申請していた、「既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス」を効能・効果とする新規皮下注射剤、「ベンリスタ®(Benlysta®)点滴静注用120mg、同400mg、同皮下注200mgオートインジェクター、同皮下注200mgシリンジ(一般名:ベリムマブ(belimumab))」について、承認の可否を審議し、承認を了承した。
厚生労働省は早ければ1か月程度で正式承認する見込みである。



ベンリスタ点滴静注用belimumab
既存治療で効果不十分な
全身性エリテマトーデスを効能・効果とする新有効成分含有医薬品
「ベンリスタ®(Benlysta)点滴静注用120mg、同400mg」

ベンリスタ皮下注200mgオートインジェクター
「ベンリスタ®(Benlysta)皮下注200mgオートインジェクター/シリンジ」



全身性エリテマトーデス(SLE=Systemic Lupus Erythematosus)は、エリテマトーデス(紅斑性狼瘡(ロウソウ))の最も代表的な疾患で、文字通り、エリテマトーデスが全身に起こる疾患です。
全世界の約500万人と言われているエリテマトーデス患者の約70%が罹患(りかん)しています。

国内では1万人に1人くらいが発病し、全国に約6~10万人程の患者がいると考えられていますが、2013年に全身性エリテマトーデス(SLE)として難病の申請をしている人は、61,528人で、特に20~30代の女性に多く、男女比は1対10です。

このうち小児患者は、約5000人がいると推定され、発症割合は、女子が男子に比べ5倍多く発症しています。


全身性エリテマトーデス(SLE)は、自分の体の細胞核成分と反応する抗体が作られてしまう為に、全身の様々な臓器で炎症を引き起こす病気で、寛解と増悪を繰り返し、慢性に経過します。

全身性エリテマトーデスの発症要因
リンパ球は本来、ウイルスなどの対外からの異物に対し免疫を発揮するが、
SLEでは自分の組織を異物と見なし攻撃する。


症状は、多臓器が侵されるため、関節症状、蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)皮疹、円板状紅斑、中枢神経病変、腎障害、心肺病変、血液異常などが見られます。特に、中枢神経病変、腎障害があると命に係わる危険性が高くなり、約8割の小児に慢性腎炎による腎障害(ループス腎炎)が起こります。
全身性エリテマトーデスSLE症例写真
全身性エリテマトーデスの特徴である『蝶形紅斑』と『円板状紅斑』、
更に関節症状と背面紅斑の症状写真。



膠原病(SLE)の一群に分類されていますが、膠原病には厳密な医学的基準が無いため、各疾患ごとに理解すると良いでしょう。

全身性エリテマトーデス, ▼全身性強皮症, ▼多発性筋炎・皮膚筋炎, ▼混合性結合組織病, ▼ベーチェット病, ▼大動脈炎症候群(高安動脈炎), ▼ウェゲナー肉芽腫症, ▼悪性関節リウマチ, ▼結節性動脈周囲炎(結節性多発動脈炎・顕微鏡的多発血管炎)

膠原病に分類される疾患のうち、国の難治性疾患克服研究事業により、治療費を補助する“特定疾患”に指定されている病気は、上述の10疾患です。


全身性エリテマトーデスの分類
*尚、全身性エリテマトーデスと膠原病は、共に『SLE』と略称されています。



「ベンリスタ®点滴用/皮下注用」は、全身性エリテマトーデス(SLE)患者に過剰発現し、疾患の活動に重要な役割を果たしていると見られる、可溶性Bリンパ球刺激因子(BLyS)を標的とする抗体医薬品です。

可溶性Bリンパ球刺激因子(BLyS)の機能を特異的に阻害する「ベンリスタ®(Benlysta)」は、可溶性Bリンパ球刺激因子(BLyS)に結合する完全ヒト型モノクローナル抗体です。
「ベンリスタ®(Benlysta)」は、B細胞に直接結合せず、可溶性Bリンパ球刺激因子(BLyS)に結合する事により、自己反応性B細胞などの生存を阻害し、B細胞の免疫グロブリン産生形質細胞への分化を抑制します。

ベンリスタの作用機序
「ベンリスタ®(Benlysta)」の作用機序。

標準治療薬である副腎皮質ステロイド薬との併用で、疾患活動性が高い(抗dsDNA抗体陽性、及び低補体など)自己抗体陽性SLE成人患者の治療薬に想定されると言う事です。




【本剤の使用上の注意点】

■ 患者は医療関係者からトレーニングを受けた後、単回投与のオートインジェクター、又はプレフィルドシリンジのいずれかを使用して、自宅で、週1回、200mgを投与する事が可能となります(皮下注射製剤)。
■ 点滴静注用製剤は、10mg/体重1kgを、医療関係者が患者に対して投与するもので、(0、14および28日目に投与する初回負荷投与後)4週間ごとに1時間、医療機関にて点滴静注します。

【使用制限】:「ベンリスタ®(Benlysta®)」の有効性は、重症で進行性のループス腎炎、又は重症で進行性の中枢神経系ループス患者で、評価は達成されていないため、使用する事は出来ない。
ループス腎炎

また、他の生物製剤や静脈内シクロホスファミドとの組み合わせは検討されていません。これらの状況での使用は推薦されません。

【その他の注意事項は、正式承認後のプレスリリースでご確認下さい。】



「ベンリスタ®(Benlysta®)」は、海外において点滴静注用では欧米など65か国で承認済。皮下注製剤は米国で承認済ですが、欧州連合では承認されていません(2017年7月21日現在)。

今回の承認了承によって、新有効成分含有医薬品の皮下注射製剤が、患者自ら、医療機関へ通う代わりに、自宅で薬剤を自己投与する事が出来るようになり、治療選択肢の幅が広がるものと期待されています。






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