ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区)が2016年12月20日に承認申請していた、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果とする、新有効成分含有医薬品「ダラザレックス® 点滴静注100mg、同400mg(一般名:ダラツムマブ®=daratumumab®)」について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は9月8日、製造販売承認を了承する決定をした。
本剤は早ければ年内にも市場投入される見込み。
多発性骨髄腫(Multiple Myeloma=MM)は、骨髄中にある血液細胞の一つ、「形質細胞」と言うリンパ球が腫瘍化した血液癌です。
形質細胞は免疫システムの役割を担っており、ウイルスなどが体内に侵入して来た時に攻撃する免疫グロブリン(抗体)を産生する細胞です。
しかし多発性骨髄腫になると、異常な抗体(M蛋白)が産生され、これが異物が無いのにどんどん増殖し、正常な抗体が低下する為、骨の痛み、病的骨折・圧迫骨折、倦怠感、貧血、出血傾向、感染症に対する抵抗力の低下、腎臓の機能低下、アミロイドーシス(臓器機能の低下)、過粘稠度症候群(血液の粘りが高くなる)、ウイルス感染による体力の低下などで、免疫力の低下などを来たします。
原因は不明ですが、遺伝的素因が疑われている。
日本国内における総患者数は、約18,000人(厚生労働省「2014年患者調査」)と報告されています。死亡数は4185人(国立がん研究センターがん情報サービス「人口動態統計によるがん死亡データ」)。
最新のデータによると、2016年は新たに8700人が多発性骨髄腫と診断されています(国立がん研究センター)。
多発性骨髄腫の患者の5年相対生存率は36.4%であり、新たに診断された患者の29%が診断から1年以内に死亡しています(治療開始の遅れなどで)。
治療によって寛解に至る事もありますが、再発する可能性が極めて高い疾患です。
「ダラザレックス®」は、多発性骨髄腫の細胞表面に過剰発現している、シグナル伝達分子CD38を標的とするモノクローナル抗体です。
病期に関係なくCD38に結合する事によって、複数の免疫介在性作用機序、及び免疫調節効果により患者の免疫機能を活性化させ、がん細胞を攻撃し速やかな、がん細胞のアポトーシス(細胞自滅死)をもたらします。
用語説明【免疫介在性作用機序】:
*CDC ~ 補体依存性細胞傷害作用(抗体が抗原に結合して腫瘍細胞を死滅)
*ADCC~ 抗体依存性細胞傷害作用(免疫細胞のNK細胞を活性化し腫瘍細胞を攻撃)
*ADCP~ 抗体依存性細胞食菌作用(腫瘍細胞をマクロファージが食作用で包み細胞膜から遊離)
腫瘍細胞死に導くことに加え、患者の免疫機能の活性化により腫瘍細胞を攻撃する新たな作用を持つとされる。レナリドミド及びデキサメタゾンとの3剤併用、ボルテゾミブ及びデキサメタゾンと3剤併用する。
海外では欧米など45の国、地域で承認済(2017年5月時点)。