厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は11月24日、ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)が、本年4月27日に、国内における製造販売承認を申請していた「再発又は難治性の前駆B細胞性急性リンパ性白血病」の効能・効果で、抗悪性腫瘍剤/抗腫瘍性抗生物質結合抗CD22モノクローナル抗体「ベスポンサ®点滴静注用1mg(一般名:イノツズマブ オゾガマイシン®「遺伝子組換え/開発番号:PF-05208773 /CMC-544」)」について、新有効成分含有医薬品として承認を了承した。
前駆B細胞性急性リンパ性白血病(B cell precursor acute lymphoblastic leukaemia=ALL)は、骨髄に於いてリンパ芽球(大型化したリンパ球)が増殖する造血器の悪性腫瘍性疾患です。
通常、急性リンパ性白血病(ALL)と呼ばれます。
リンパ芽球の増殖により、正常な造血が損なわれるほか、リンパ芽球の浸潤によるリンパ節や肝臓・脾臓などの腫大が見られる事がある。
リンパ芽球は中枢神経や精巣へと浸潤する事や、皮下腫瘤を形成する事もあります。
前駆B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)の、日本に於ける患者数は2005年に約3000例、2008年に約4000例、2011年に約5000例、2014年に約5000例と報告されており、近年増加傾向にあり【厚生労働省 患者調査/総務省 統計局】、成人の場合は、予後は不良です【米国立癌研究所】。
尚、国内での小児急性リンパ芽球性白血病の年間新規発症数は約500人と推定され、発症のピークは2~6歳、このうち前駆B細胞性ALLが約80~85%、T細胞性ALLが約10~15%、成熟B細胞性ALLが約5%である。
小児での治療成績は年々向上しているものの、乳児早期に発症した患者や、初期治療に対する反応性が不良の患者の、長期生存率は40~60%に留まっている。
成熟B細胞性ALLは、短期集中型の治療で80%を超える長期生存率が達成され、治癒可能な疾患となっています。
しかし、前駆B細胞性ALLと新たに診断された成人患者のおよそ20%~40%は、現在の治療の用量や用法、治療計画によって治癒しますが、再発又は難治性の成人前駆B細胞性ALL患者の5年生存率は、10%以下であり、治療成績はまだ満足できる所まで届いておらず、治癒は一部の患者に限られている状況です【日本成人白血病治療共同研究グループJALSG】。
現在の標準治療は、米国でも日本でも、白血病細胞を根絶するための強力な化学療法を繰り返し行う事です【米国癌学会、日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版」】。
寛解に至らないケースでは、発症年齢、初診時の白血球数、染色体異常、治療反応性によって、治療効果が異なるため、予後因子が増える事で治療成績は低下します。
「ベスポンサ®点滴静注用1mg(イノツズマブ オゾガマイシン=Inotuzumab ozogamicin)」は、B細胞性悪性腫瘍のおよそ90%に発現している細胞表面抗原であるCD22を標的とするモノクローナル抗体(mAb)と、殺細胞性薬剤「カリケアマイシン(calicheamicin)」とを結合した抗体-薬物複合体(ADC=Antibody-Drug Conugate)です。
「ベスポンサ®(イノツズマブ オゾガマイシン®)」がCD22抗原に結合すると、腫瘍細胞内に取り込まれ、「カリケアマイシン」を放出して腫瘍細胞を破壊します。
「ベスポンサ®(Besponsa)点滴静注用1mg」は、日本も参加した国際共同第3相試験と海外での第1/2相試験の結果に基づくもの。
再発又は難治性前駆B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)の成人患者326人が登録されたINO-VATE 1022試験は、オープンラベル無作為化フェーズ3試験で、イノツズマブ オゾガマイシン群と、標準化学療法群の比較が行われた。
イノツズマブ オゾガマイシンは3週間の間に週1回静脈内投与され、3~4週間を1サイクルとして、6サイクルまで行った。
化学療法は、FLAG療法(フルダラビン、シタラビン、G-CSF)、高用量シタラビン(HIDAC)、またはシタラビン+ミトキサントロンの中から、治験担当医師が選択した用量や用法、治療期間や治療計画によって投与された。
試験の結果、血液学的完全寛解率、無増悪生存期間(PFS)などの評価項目において、イノツズマブ オゾガマイシン群が優れる事が明らかとなった。
本剤は2017年7月12日、欧州委員会に於いて「再発又は難治性のCD22陽性前駆B細胞性急性リンパ性白血病」の成人患者に対する単剤療法として承認され、9月1日、米国食品医薬品局(FDA)に於いても同様の効能・効果で承認されている。
「ベスポンサ®(BESPONSA)」は1時間かけて静脈内投与します。
適切な患者には外来で投与する事が出来ます。
*注:生殖能力を有する患者では、治療期間中、及び最終投与から最低5~8カ月間は有効な避妊法を用いるよう指示する事。また授乳期の母親では、治療期間中、及び最終投与から2カ月間は授乳を行わないよう指示する事。