Quantcast
Channel: 好奇心の扉
Viewing all articles
Browse latest Browse all 297

子供の成長障害(低身長)~低出生体重児では病気が原因の可能性も

$
0
0

身長の低い子供は、両親も背が低いなど、90%以上が遺伝的・体質的な原因によるものです。身長は低いが、健康には全く問題が無いと言うケースです。

しかし、中には成長を促すホルモンが出ていない事や、染色体や、骨の異常によって子供の成長にブレーキが掛かっている場合もあります。
これらは、稀有なケースなので、見逃されてしまう可能性があります。(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社「低身長とその原因」より)




また遺伝や家系をさかのぼって、明らかに背の低い血統であっても、
「うちの子、背の順でずっと1番前なんです。ちゃんと背は伸びるのでしょうか?」
「早産で生まれて、直ぐに他の子に追い付くと言われたのですが、中々背が伸びなくて…」
などと心配になり、小児科医に相談をされた方もいると思います。


早稲田大学理工学研究所研究院教授:福岡秀興氏によると、
『出生時の体重が、2500g未満の新生児を【低出生体重児(Low-birth-weight baby)】と言いますが、日本では今や、全新生児の9.6%が低出生体重児です。この数字は、男子と女子を合わせたもので、女子だけで見れば10%を大きく超えています。
つまり、100万人の新生児のうち、10万人が【低出生体重児】なのです。この数字は、先進国の中では突出して高いと言える』
との事。


低出生体重児の出産割合
新生児に占める低出生体重児(2500g未満)の出産割合。



■「小さく産んで大きく育てる」‥‥
この意見は、誤りです!■



子供の誕生は、卵子と精子が受精してから胎児期を経て出生し、乳幼児期へ、と言う人生最初の僅か約1000日間に、母体の影響による環境と、受け継がれた遺伝子の相互作用により、種々の疾病リスクが決定すると言う考え方があります。

これを、DOHaD説(ドーハッド:Developmental Origins of Health and Disease=健康と病気の発達上の起因)と言い、小さく生まれると将来、高血圧、糖尿病、肥満など生活習慣病のほか、アレルギー疾患、うつ病などの精神疾患など、様々な疾患に罹患するリスクが高くなる事が統計学的にも明らかになっており、実際、様々な疫学研究の結果が、このDOHaD説を支持しています。

つまりどう言う事かと言うと‥‥

受精期、胎生期に低栄養状態の環境(母体が痩せている体型)にさらされると、生後に貧しい環境で生きられる様に、遺伝子の働きが制御(コントロール)されます。
生まれた後も低栄養状態であれば、疾病リスクは高くなる事はありません。身体が低栄養に順応するからです。

受精胚から出産までのプロセス
受精胚から出産までのプロセス。


しかし、豊かな環境(衣・食・住)で成長すると、低栄養状態に適応した代謝系の仕組みになっているため、栄養が過多となり、ここぞとばかりに栄養を過分に体内に蓄えてしまい、メタボリックシンドロームや糖尿病、心筋梗塞、更にうつ病などに罹患しやすくなると考えられています。


そこで早産などによって出生時の身長・体重が小さかった子供、すなわち【低出生体重児】の場合、SGA性低身長症が含まれている場合があり、その後の成長も遅い場合を【低出生体重児のSGA性低身長症】と言います。

▲SGA(small-for-gestational age)性低身長症とは‥‥
母親のお腹の中にいる期間(在胎月齢、又は在胎週数)に相当する標準身長・標準体重に比べて、小さく生まれる子供の事。


SGA性低身長症の成長曲線
SGA性低身長症の成長曲線。
SD値(標準偏差)が-2.5以下で成長障害の疑い。

しかし低身長が、成長障害によって引き起こされる病気で、治療が必要なのか…?

それとも子供の代謝状態や、様々なホルモンの出方、生活環境などによる個人差なのか…?

まず成長曲線を作成して置く事。血液検査を受ける事。
この2点が重要です。

採血で分かるホルモンの検査(内分泌検査)のうち重要なのは、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、IGF-I(ソマトメジンC)です。また、手のレントゲン写真は、骨の成熟度(骨年齢)を知るために必要な検査です。

これらの検査結果で、成長ホルモン療法による治療が必要な「低身長症」と判断された場合は、SGA性低身長症としてホルモン治療の対象となります。(*但し骨端線閉鎖を伴わない)

診断をした上で、「治療の必要がない低身長」と判断された場合は、成長ホルモンによる治療を受ける必要はありません。


SGA性低身長症の治療基準ガイドライン
SGA性低身長症の治療基準ガイドライン


国内におけるSGA性低身長症の罹患率は0.06%とされ、約9600人の患者数がいると考えられています。
近年、高齢出産の増加などに伴い、2500g未満で出生する小児は、10人に1人となっており、そのため、SGA性低身長症の患者数は増加傾向にあります。


SGA性低身長症可能性が大きい


東京都世田谷区の「たなか成長クリニック(東京都世田谷区)」院長 田中敏章氏は、
「【低出生体重児】出産の親御さんには乳児健診の際に、母子手帳などで身長・体重の成長曲線を描くように率先し、3歳時点で-2SD以下と、低身長が疑われたら、出来るだけ早く専門医を受診ほしい」
と、話す。


SGA性低身長症の追いつき率
SGA性低身長症のキャッチアップ率(追いつき率)。
ホルモン治療が効果を現しやすいのは、3歳時点以降。


■但し、成長ホルモン治療は高額‥‥
経済的な理由で治療中断のケースも!■


◇東京都世田谷区の成育医療研究センター内分泌・代謝科の堀川玲子氏によると、
「専門医が適切な治療を実施したとしても、SGA性低身長症児では、成長ホルモンを投与していても平均身長に届かない例がほとんど」
と話す。

その理由として、思春期になると骨端線閉鎖が始まるので、思春期が始まるまでに平均身長に追い付けない事が挙げられる。

また、治療費が高額な為、効果不十分なまま治療を中断せざるを得ないケースもあると言う。
成長ホルモンは薬価が高く、月に体重当たり約1万円の費用が生じる。
体重12kgの小児を治療する場合、3割負担でも薬剤の費用だけで約3万6000円掛かってしまう。


子供の成長が進むにつれて、成長ホルモン製剤の投与量は増加する。「SGA性低身長症」は、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患ではないので、途中で治療を中断しない覚悟も必要となる。



尚、低身長治療を行っていると標榜する医療機関の中には、効果が不明な口腔内へのスプレーや、舌下投与スプレーなどで成長ホルモンを投与する、高額な治療を自費診療で実施している医療機関や、成長ホルモン投与をせずに、漢方薬を処方している医療機関もあると言うから、注意が必要です。


治療を受けたいと思ったら、掛かりつけの小児科から、日本小児内分泌学会の理事、及び評議員のいる医療機関の専門医を紹介してくれるよう求めると良いでしょう。
一般社団法人 日本小児内分泌学会 理事および評議員名簿サイト(2017.9.28~2021):http://jspe.umin.jp/public/sub.html





ペタしてね月ペタしてね鳥

Viewing all articles
Browse latest Browse all 297

Trending Articles