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難治性の全身型重症筋無力症治療薬「ソリリス点滴静注」の承認申請を了承

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アレクシオンファーマ合同会社(本社:東京都渋谷区恵比寿)が2017年3月23日に効能追加申請した、「全身型重症筋無力症(難治性=免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)」を効能・効果とする、抗補体モノクローナル抗体製剤「ソリリス®点滴静注300mg(一般名:エクリズマブ=遺伝子組換え)」について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は12月4日、新効能・新用量医薬品として承認申請を了承した。

本剤は希少疾病用医薬品であり、再審査期間は10年となる。


ソリリス点滴静注300mg
抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の難治性全身型重症筋無力症治療薬
抗補体モノクローナル抗体「ソリリス®点滴静注300mg(一般名:エクリズマブ)」

尚、本剤は既に、(1)発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制〔2010年4月〕(2)非典型溶血性尿毒症症候群における血栓性微小血管障害の抑制〔2013年9月〕――で承認され、販売されています



重症筋無力症は一般的に、眼筋の筋力低下による眼瞼下垂(がんけんかすい)から始まり、ものが二重に見える複視(ふくし)、その後、易疲労性(疲れ易い)が出現します。
更に重症化して、頭部、頸部、体幹、四肢および呼吸筋の筋力低下から麻痺を起こし、呼吸困難を来す事もあります。

眼の症状だけの場合は『眼筋型』、全身の症状がある場合を『全身型』と呼んでいます。

全身型は、難治性の全身型重症筋無力症(gMG=generalized Myasthenia Gravis)として知られ、全身型重症筋無力症の患者の大半の症状は、既存の治療法でコントロール出来ますが、10~15%の患者では、これら治療法では十分な効果が得られない難治性となります。



重症筋無力症の分類
重症筋無力症の分類


難治性の全身型重症筋無力症では、既存の治療法を尽くしても、全身の著しい筋力低下が続き、その結果として、不明瞭な会話、嚥下障害(飲み込みが困難である)、むせ(咳込む)、複視、日常生活に支障を来すほどの疲労感、呼吸筋の筋力低下による息切れを示し、頻繁な通院と、呼吸不全の治療期間も含めたICU治療や長期入院が必要となります。

重症筋無力症は、厚生労働省が指定する難病(特定疾患)の一つで、患者数は1988年で5,989人、2006年には15,100人、現在は20,000人以上と推定されています。




難治性の全身型重症筋無力症は、抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の稀な自己免疫疾患で、補体系(免疫システム血清タンパク質)により神経筋接合部に進行性の炎症をきたし破壊され、その結果、神経筋伝達障害が引き起こされ、筋肉が正常に機能しなくなります。

時に、呼吸器系の深刻な症状に直面し、重症化して生命を脅かす事もあります。

全身性重症筋無力症発症の神経筋接合部のアセチルコリン受容体抗体
神経筋接合部にある神経からの命令を伝えるアセチルコリン受容体が、
抗アセチルコリン受容体抗体が作られる事で、アセチルコリン受容体の働きが減少し発症。


これまで、抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の難治性の全身型重症筋無力症(gMG)に対して、承認された治療法はありませんでした。

全身型重症筋無力症(gMG)では、ヒト補体であるC5転換酵素がC5と結合し、C5a及びC5bの産生を促進させ、c5b-9(膜侵襲複合体、又は終末補体複合体)によって神経筋伝達の欠損を引き起こしていました。


「ソリリス®点滴静注300mg」は、アレクシオンファーマ合同会社が創製したファースト・イン・クラス(画期的医薬品)の終末補体阻害剤です。

ソリリス点滴静注300mg作用機序
ソリリス®(エクリズマブ)点滴静注300mgの作用機序

ヒト補体であるC5に対して高い親和性を有するヒト化モノクローナル抗体で、C5の活性化によるC5a及びC5bの産生を阻害する事で、神経筋接合部でのアセチルコリン受容体の消失と、それに伴う神経筋伝達障害を改善すると考えられている。


難治性の全身型重症筋無力症の治療は、第1選択が経口ステロイド、第2選択がタクロリムスやシクロスポリンのカルシニューリン阻害薬、第3選択が免疫グロブリン静注療法及び血漿交換とされている中、「ソリリス®点滴静注」は第3選択でも治療困難な患者の治療選択肢となる。


海外では難治性の全身型重症筋無力症に関して、2017年8月に欧州で、2017年10月に米国で承認されている。


「ソリリス®点滴静注」の投与に於いて、2016年8月23日、京都大学医学部付属病院で治療を受けていた発作性夜間ヘモグロビン尿症の女性患者が、妊娠に伴い血栓症予防のため本剤を投与。
その後、副作用による急激な発熱に見舞われ、髄膜炎菌敗血症で死亡する事案が発生した。

ソリリスの添付文書には、重大な副作用として「髄膜炎菌感染症を誘発する」と記載されているにも関わらず、京都大学医学部付属病院内の産科の助産師が、発熱の初期段階で髄膜炎菌感染症を疑い、抗菌剤による治療が行われなかった(助産師の範囲を超える)。医師の診断が必要だったにも関わらず情報が共有されなかったとする、事故調査委員会の報告書が出された。
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20170710000020



いかなる薬でも副作用は起こるもの。早い適切な処置によって助かる症状が大多数であり、そのためにも、患者自身も、医師も、どのような薬剤を使っているかを、多くの診療科や医師に伝える事…無駄に思えるような事でも共有する事が、万が一を救う。
知っているだろう…は、不測の事態を招く恐れがある。

*これは国内での唯一の死亡例である。



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