アステラス製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)とアステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社(AABP社=本社:東京都千代田区丸の内)は1月9日、アステラス・アムジェン・バイオファーマ(AABP)が日本で共同開発した、腫瘍細胞表面抗原のCD19とCD3に、二重特異性を有するT細胞誘導(BiTE®)抗体製剤「ブリナツモマブ(遺伝子組換え/開発コード:AMG 103)」について、日本で、『再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病(ALL)』の治療薬として、製造販売承認申請を行ったと発表しました。
B細胞性急性リンパ性白血病(B-cell acute lymphoblastic leukaemia=ALL)は、血液中及び骨髄中に、白血球の一種であるリンパ球が、幼若なリンパ芽球の段階で悪性化し、癌化した細胞が無制限に増殖することで発症する、造血器の悪性腫瘍性疾患です。
白血球は、骨の内部にある造血幹細胞で生成され、このうちリンパ系幹細胞から産生されるのが、B細胞、T細胞、NK細胞などのリンパ球で、B細胞性急性リンパ性白血病はB細胞が腫瘍化したものです。
白血病の発症原因は、いまだにハッキリ解明されていません。
しかし、特定の染色体での遺伝子転座が多く見られる事が分かって来ました。
遺伝子転座は、非小細胞肺がん、胆管がん、神経膠芽腫などでも見つかっていますが、何故、遺伝子転座が起こるのかは分かっていません。
日本国内のB細胞性急性リンパ性白血病(ALL)の患者数は、約5,000人と報告されており(厚生労働省 平成26年患者調査)、このうち、再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病患者は、年間あたり約670人と推定されています(2017年国立がん研究センターがん情報サービス、急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫、基礎知識)。
成人及び小児の再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病患者に対する治療選択肢は限られており、同様の作用機序を持つ、幾つかの薬剤に依存する上、その有効性は限定的です。
この為、再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病患者の病態を改善させるには、「ブリナツモマブ」の様な、単剤で有効性を示し、他の細胞傷害性治療薬とは異なる作用機序を持つ薬剤の開発が求められています。
「ブリナツモマブ(BLINCYTO®(blinatumomab))」が標的とする、腫瘍細胞表面に発現するCD抗原には‥‥
実は多くの、様々な特徴ある抗原が発現している。
その中から、最も治療効果が期待できる抗原をターゲットにする。
*昨年11月24日に承認された抗体-薬物複合体「ベスポンサ®点滴静注用1mg(過去記事参照)」は、CD22抗原を標的とした「再発又は難治性のCD22陽性前駆B細胞性急性リンパ性白血病」が適応でした。
「ブリナツモマブ(blinatumomab)」は、腫瘍細胞表面抗原のCD19とCD3に、二重特異性を有するT細胞誘導(BiTE®=Bispecific T-cell Engager)抗体であり、特にB細胞系の細胞表面に発現するCD19、及びT細胞表面に発現するCD3と結合します。
BiTE®抗体は、生体に備わっている免疫システムが、がん細胞を察知して標的とするのを助ける事によって抗がん作用を発揮する。
この抗体は、T細胞とがん細胞が架橋するように設計された修飾抗体であり、T細胞を標的細胞の近くに誘導し、T細胞を介した殺作用により、がん細胞をアポトーシス(プログラム細胞死)に導くことを目指している。
本剤は、2017年7月17日、米国食品医薬品局(FDA)より画期的治療薬及び優先審査の指定を受け、成人及び小児の再発又は難治性のB前駆細胞性急性リンパ性白血病の治療薬として承認されています。
欧州連合(EU)では、2015年11月に、成人の再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陰性(
Ph-)B前駆細胞性急性リンパ性白血病の治療薬として条件付き承認を取得している。