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未熟児動脈管開存症治療剤「イブリーフ」の製造販売承認を取得

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千寿製薬株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)は1月19日、厚生労働省より未熟児動脈管開存症治療剤として、「イブリーフ®静注20mg(一般名:イブプロフェン L-リシン)」の製造販売承認を取得したと発表しました。

「イブリーフ」の開発に当たっては、日本未熟児新生児学会(現:日本新生児成育医学会)が、厚生労働省に未承認薬・適応外薬の要望書を提出。
開発支援品目として選定された後、開発企業が公募され、千寿製薬株式会社が開発を受諾。
未承認薬等開発支援センターの助成金を活用して、国内での開発を進めていたものです。



イブリーフ静注20mg_イブプロフェンL-リシン剤
*製品の参考写真(国内品とは異なります)
米国で2006年7月に未熟児動脈管開存症治療剤として発売された
イブプロフェン L-リシン静注(Ibuprofen-Lysine Injection)製剤10mg
日本国内承認品は「イブリーフ®静注20mg」で1バイアル(イブプロフェンとして20mg)×3



未熟児動脈管開存症(PDA=Patent ductus arteriosus)とは、非常に小さい体重(2500g未満の低出生体重児)で生まれた赤ちゃんにおいて、最も多い先天性心疾患の一つで、全体の5~10%を占めています。

動脈管は、胎児が母親のお腹の中にいる時は肺呼吸をしていないので、卵円孔(らんえんこう)と共に、胎児の血液循環系に見られる血管で、肺動脈と大動脈とを連結して肺への血液循環をバイパスしている血管の事を言います。

先天性心疾患の卵円孔開存と動脈管開存症

動脈管があるおかげで、空気の無い子宮内でも、胎盤を通して酸素を効率良く取り込む事が出来ています。

出産により肺が機能を始めると、卵円孔と共に生後2日~2週までに狭搾し閉じて、肺への血液循環が始まります。
しかし、この動脈管が自然に閉じずに残っているものを『動脈管開存症』と言います。

 ◇卵円孔(らんえんこう)は……胎児期の心臓の左右の心房を貫く孔(あな)の事で、生後間もなく、肺呼吸開始に伴って閉じます。


未熟児動脈管開存症
動脈管閉鎖前(胎盤呼吸)と閉鎖後(肺呼吸の始まり)。


低出生体重児にとって、太い動脈管では肺や心臓に大きな負担となり、“呼吸が荒く回数が多い”“ミルクの飲みが悪い”“ミルクを飲むが体重が増えない”“汗っかき”などの心不全症状が見られ、心雑音が特徴的で、その場合には早期に治療を必要とする場合があります。

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米国では、未熟児動脈管開存症(PDA)の治療のための第一選択薬は、インドメタシン静脈注が処方され、日本でもインドメタシン静脈注が使われています。

しかし、インドメタシンは腎臓、胃腸、及び脳灌流(のうかんりゅう=脳へ血を送る事)に影響を及ぼすため、インドメタシンの使用に関する安全性に懸念があり、更に一時的な腎機能障害を招く場合がある事から、新しい薬剤が求められていました。

未熟児動脈管開存症のプロセスと作用機序


2006年4月、米国食品医薬品局(FDA)は、未熟児の臨床的に重要な未熟児動脈管開存症(PDA)の閉鎖にイブプロフェン-リシン(NeoProfen)を使用する事を承認。イブプロフェン-リシンは、副作用が少なく、尚且つインドメタシンと同等に有効である事が示されています。

イブプロフェンは、プロスタグランジン(血管平滑筋を収縮させる作用の生理活性物質)合成の阻害を介して作用すると考えられている。


 ◆国立バイオテクノロジー情報センター(アメリカ国立医学図書館)の「Ibuprofen lysine (NeoProfen) for the treatment of patent ductus arteriosus(動脈管の治療のためのイブプロフェンリジン)」に関する米国食品医薬品局(FDA)の承認要覧により。

【注釈】
 ◆尚、市販薬のイブプロフェン鎮痛解熱剤は最低用量、及び中用量の低濃度な製品のため、連続投与しない限り、腎機能障害を起こす事はありません。これはインドメタシン貼り薬/塗り薬でも同様です。

 ◆動脈管開存症に使われているインドメタシン、及び今回のイブプロフェン L-リシン製剤は高濃度で、静脈内点滴するもので、市販薬とは異なります。





【製品概要】
【製品名】:イブリーフ®静注20mg
【一般名】:イブプロフェン L-リシン
【剤形・含量】:1バイアル2mL中にイブプロフェン L-リシンとして34.18mg(イブプロフェンとして20mg)を含有する水性注射剤

【効能・効果】:下記疾患で保存療法(水分制限、利尿剤投与等)が無効の場合。
        未熟児動脈管開存症。
【用法・用量】:通常3回、イブプロフェンとして初回は10mg/体重1kg、2回目及び3回目は5mg/kgを15分以上かけて、24時間間隔で静脈内投与する。

【使用上の注意】:
▼ 新生児医療及び未熟児動脈管開存症患者の管理に習熟した医師が使用するか、又はそれら医師の監督下で使用すること。

▼ イブプロフェンはアルブミン結合部位からビリルビンを置換させることがあるので、総ビリルビンの上昇がみられる患者では、黄疸の発現に注意し、慎重に投与すること。

▼ 他のプロスタグランジン合成阻害剤と同時に投与しないこと。


「イブリーフ®静注20mg」は、治験症例が限られているため、発売後において「一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象とした使用成績調査(全例調査)を実施する」旨の承認条件が付されている。
このため、当該承認条件が解除されるまでは、使用成績調査に協力できる施設に限定して使用するよう、当局から指導を受けていると言う。




本剤は米国で2006年7月に未熟児動脈管開存症治療剤として発売。また、イブプロフェン L-リシンの活性体であるイブプロフェンフリー体の静注製剤も、EUで2004年9月に発売され、2017年6月時点で46の国と地域で製造販売されている。

なお、同剤は薬価基準収載後の発売を予定しており、現在のところ、2018年6月頃の発売を見込んでいる。また販売元は武田薬品工業となる。





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