アストラゼネカ株式会社(本社:大阪府大阪市北区)は1月19日、「(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)気管支喘息」を効能・効果とした、「ファセンラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:ベンラリズマブ(遺伝子組換え)」の国内に於ける製造販売承認を取得したと発表した。
米国食品医薬品局(FDA)承認販売名「Fasenra™ Injection(benralizumab)」
重症喘息について…、
日本では約1,177万人が喘息に罹患していると推定されています(厚生労働省 厚生労働統計一覧2014 主な傷病の総患者数・平成26年10月)。
このうち、高用量吸入ステロイド薬に加えて、その他の長期管理薬(及び/又は全身性ステロイド薬)による治療を要する喘息患者、或いはこうした治療にも関わらず「コントロール不良」である喘息を、『重症喘息』と定義され、喘息患者全体の5~10%に該当するとされています(一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会 監修:喘息予防・管理ガイドライン 2015)。
コントロール不良の『重症喘息』は死に至る事もある過酷な疾患であり、“喘息予防・管理ガイドライン 2015”によると、喘息による死亡者数は2013年が1728人、2014年が1550人と新しい薬剤の登場で、減少傾向にあるものの、吸入や服薬、注射のわずらわしさから、勝手に中断してしまう患者も多く、これが病勢悪化を招いています。
特に、既存の喘息治療で症状のコントロールが出来ない『重症喘息』患者は、頻繁に起こる“喘息悪化”や“呼吸機能の低下”により、高い喘息死リスクと、生活の質(QOL)の著しい低下などで、身体的・経済的な負担を強いられます。
その為、2017年10月、日本アレルギー学会から厚生労働省に、「ファセンラ」の早期承認を求める要望書が提出されていました。
「ファセンラ®」は、ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤で、身体の免疫システムをになう白血球の一種である『好酸球』の表面に発現するインターロイキン-5受容体αに直接結合し、増強された抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)によって、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)等を誘導することで、『好酸球』のアポトーシス(プログラム細胞死)を引き起こし、『好酸球』を直接的かつ速やかに、ほぼ完全に除去します。
この作用機序により、血中だけでなく喀痰中や気道組織中に潜在する『好酸球』まで除去されます。
重症喘息患者の約50%で好酸球値が高い傾向がありますが、好酸球レベルが上昇すると、気道炎症や気道過敏性を引き起こし、その結果、喘息の悪化や呼吸機能の低下を起こし、喘息が重症化します。
「ファセンラ®」は、針刺し防止機能付きプレフィルドシリンジの注射剤で、1回30mgを初回、4週後、8週後に皮下に注射し、以降、8週間隔で皮下に注射します。
類薬に「ヌーカラ皮下注用(2016年6月10日発売)」がありますが、ヌーカラは4週間毎であるのに対し、「ファセンラ®」は呼吸器生物学的製剤で初めての8週間隔維持投与製剤です。
また作用機序も多少異なり、「ヌーカラ」はヘルパーT細胞が産生するIL-5と結合するのに対し、「ファセンラ®」は好酸球に発現するIL-5受容体と結合し、IL-5との結合を阻害します。
【ファセンラ®皮下注30mgシリンジの製品概要】
【製品名】:ファセンラ®皮下注30mgシリンジ
【一般名】:ベンラリズマブ(遺伝子組換え)
【剤 型】:注射剤(プレフィルドシリンジ)
【効果・効能】:気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)
【用法・用量】:通常、成人にはベンラリズマブ(遺伝子組換え)として1回30mgを、初回、4週後、8週後に皮下に注射し、以降、8週間隔で皮下に注射する。
◎ファセンラは、固定用量があらかじめ充填された“プレフィルドシリンジ”の注射剤で、皮下に注射します。
【製造販売承認】:2018年1月19日
【補足事項】
重症喘息患者が一刻も早く、「ファセンラ」の治療が開始できるよう、アストラゼネカ株式会社は、厚生労働省の定める『保険外併用療養費制度』のもとで、薬価収載までの期間、「ファセンラ」の倫理的無償提供を実施します。
「ファセンラ」の倫理的無償提供の対象施設は、本剤開発の治験を実施した施設のうち、承認された効能・効果、及び用法・用量に従ってのみ使用する事。
尚且つ、倫理的無償提供期間中にアストラゼネカ株式会社が実施する、適正使用推進のための活動に協力する事に同意された施設に限定されます。
この倫理的無償提供は、各施設の受入れ準備が整った時点から開始し、薬価収載前日に終了する。
「ファセンラ®皮下注」の国内販売承認は、2017年11月14日の米国食品医薬品局(FDA)による承認、2018年1月10日の欧州委員会(EC)による販売承認に続く、迅速承認となります。