■7月30日、京都大学医学部付属病院がiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使ったパーキンソン病患者の脳に移植する医師主導の臨床試験(治験)を8月1日から始めると発表、大きなニュースとなって日本中を駆け巡りました――。
これまでは薬剤でドーパミンを補い、神経細胞間の情報伝達を助けて来ましたが、iPS細胞を使った神経細胞の補充という、新たな治療法が開けると期待されてます。
京都大学の高橋淳教授らは、この医療が保険適用を受けて、治療費全体で「将来的に数百万円くらい」を目指す、と話しています。心臓ペースメーカーやICD(植込み型除細動器)が130~150万円程度で、高額医療費助成制度を利用すると3割負担で40~45万円ほどなので、決して高くはないと言う所でしょうか…。
その13日前――。
7月17日、量子科学技術研究開発機構(QST)は、脳幹などの深部に発生する脳組織に直接浸潤している【悪性脳腫瘍】の患者を対象とした、放射性治療薬「64Cu-ATSM」の治験薬を使用した第1相臨床試験を、国立がん研究センター附属病院で開始したと発表した。
放射性治療薬「64Cu-ATSM」は、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構の量研放射線医学総合研究所・吉井幸恵主幹研究員らと、国立がん研究センターの栗原宏明医長、成田善孝科長らと共同で開発した日本発の放射性治療薬で、今回、製剤化に成功し、共同で悪性脳腫瘍患者対象とした第1相臨床試験を開始したもの――。
『脳腫瘍』の治療は、腫瘍の位置と種類によって異なり、その分類は組織学的に150にもなります。
悪性の原発性脳腫瘍のうち、最も多いのは神経膠腫(しんけいこうしゅ=グリオーマ)です。
神経膠腫には幾つかのタイプがあり、神経膠腫は原発性脳腫瘍全体の65%を占めています。
可能な場合は、頭蓋骨を開く開頭手術で腫瘍を摘出します。
脳に殆ど、または全く損傷を与えずに摘出できる脳腫瘍もあります。しかし、脳腫瘍の多くは非常に際どい位置に発生するため、従来の手術では重要な脳の構造を破壊せずに摘出する事が困難、または不可能です。
『悪性脳腫瘍』では、多くの場合、手術、放射線療法、化学療法が併用されますが、再発した場合の有効な治療法が確立していないのが現状です。〔MSDマニュアル家庭版 09.脳、脊髄、末梢神経の病気//神経系の腫瘍「脳腫瘍」より〕
化学療法(抗がん剤)が効きづらい事が大きな理由で、その原因として、悪性脳腫瘍は活発に増殖するため、血管新生が追い付かず、酸素の供給が乏しい低酸素環境になり、低酸素環境に置かれた悪性脳腫瘍に於いては、既存の治療法の効果が弱まってしまう事が知られています。
今回、製剤化に成功した「64Cu-ATSM」は、低酸素化した治療抵抗性腫瘍を体内から攻撃する、新しいメカニズムの治療法です。
「64Cu-ATSM」は、“放射性核種64Cu(銅の放射性同位体)”を使用した64Cu-ATSM(64Cu-ジアセチル-ビス=N4-メチルチオセミカルバゾン)で、放射性核種64Cu(物理学的半減期12.7時間)は、既存の放射性治療薬(*I-131や90-Y)で放出されるベータ線の他に、がん細胞DNAを効果的に損傷できるオージェ電子を放出するため、がん細胞に対し、高い殺傷効果が期待できる。
A)、右側頭葉の壊死で強化された障害を示している軸のT1加重のガドリニウムMRI(核磁気共鳴画像法)用造影剤の強化されたMRイメージング。
B)、64Cu-ATSM PET画像。病変で高い細胞取り込みを示している 。
C)、造影剤増強の範囲内で64Cu-ATSM取り込みを示しているPET/MRI合成画像。
D)、強烈なHIF-1α(低酸素誘導性転写因子-1α)免疫反応性を示している抗HIF-1αで傷つけた最も高い64Cu-ATSMの取り込み組織の顕微鏡写真。×200
しかも「64Cu-ATSM」は、腫瘍低酸素環境に高集積する事が明らかになっており、低酸素環境下で治療抵抗性を有する腫瘍に対し、高い治療効果を発揮する。
尚、ベータ線は、一般に最大飛程がミリメートルオーダーで、PET検査などと同様、従来の放射性治療薬に使用される。
オージェ電子は、一般に最大飛程がナノメートルオーダーと更に短いため、薬剤の近傍(きんぼう→近い空間)に高いエネルギーを付与する事ができる。
今回始まった第1相臨床試験や今後行われる臨床試験で、「64Cu-ATSM」の安全性・有効性が示されれば、悪性脳腫瘍患者に対する新たな治療の選択肢を提供できる可能性がある、と研究グループは述べている。
これまでは薬剤でドーパミンを補い、神経細胞間の情報伝達を助けて来ましたが、iPS細胞を使った神経細胞の補充という、新たな治療法が開けると期待されてます。
京都大学の高橋淳教授らは、この医療が保険適用を受けて、治療費全体で「将来的に数百万円くらい」を目指す、と話しています。心臓ペースメーカーやICD(植込み型除細動器)が130~150万円程度で、高額医療費助成制度を利用すると3割負担で40~45万円ほどなので、決して高くはないと言う所でしょうか…。
その13日前――。
7月17日、量子科学技術研究開発機構(QST)は、脳幹などの深部に発生する脳組織に直接浸潤している【悪性脳腫瘍】の患者を対象とした、放射性治療薬「64Cu-ATSM」の治験薬を使用した第1相臨床試験を、国立がん研究センター附属病院で開始したと発表した。
放射性治療薬「64Cu-ATSM」は、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構の量研放射線医学総合研究所・吉井幸恵主幹研究員らと、国立がん研究センターの栗原宏明医長、成田善孝科長らと共同で開発した日本発の放射性治療薬で、今回、製剤化に成功し、共同で悪性脳腫瘍患者対象とした第1相臨床試験を開始したもの――。
『脳腫瘍』の治療は、腫瘍の位置と種類によって異なり、その分類は組織学的に150にもなります。
悪性の原発性脳腫瘍のうち、最も多いのは神経膠腫(しんけいこうしゅ=グリオーマ)です。
神経膠腫には幾つかのタイプがあり、神経膠腫は原発性脳腫瘍全体の65%を占めています。
可能な場合は、頭蓋骨を開く開頭手術で腫瘍を摘出します。
脳に殆ど、または全く損傷を与えずに摘出できる脳腫瘍もあります。しかし、脳腫瘍の多くは非常に際どい位置に発生するため、従来の手術では重要な脳の構造を破壊せずに摘出する事が困難、または不可能です。
『悪性脳腫瘍』では、多くの場合、手術、放射線療法、化学療法が併用されますが、再発した場合の有効な治療法が確立していないのが現状です。〔MSDマニュアル家庭版 09.脳、脊髄、末梢神経の病気//神経系の腫瘍「脳腫瘍」より〕
化学療法(抗がん剤)が効きづらい事が大きな理由で、その原因として、悪性脳腫瘍は活発に増殖するため、血管新生が追い付かず、酸素の供給が乏しい低酸素環境になり、低酸素環境に置かれた悪性脳腫瘍に於いては、既存の治療法の効果が弱まってしまう事が知られています。
今回、製剤化に成功した「64Cu-ATSM」は、低酸素化した治療抵抗性腫瘍を体内から攻撃する、新しいメカニズムの治療法です。
「64Cu-ATSM」は、“放射性核種64Cu(銅の放射性同位体)”を使用した64Cu-ATSM(64Cu-ジアセチル-ビス=N4-メチルチオセミカルバゾン)で、放射性核種64Cu(物理学的半減期12.7時間)は、既存の放射性治療薬(*I-131や90-Y)で放出されるベータ線の他に、がん細胞DNAを効果的に損傷できるオージェ電子を放出するため、がん細胞に対し、高い殺傷効果が期待できる。
A)、右側頭葉の壊死で強化された障害を示している軸のT1加重のガドリニウムMRI(核磁気共鳴画像法)用造影剤の強化されたMRイメージング。
B)、64Cu-ATSM PET画像。病変で高い細胞取り込みを示している 。
C)、造影剤増強の範囲内で64Cu-ATSM取り込みを示しているPET/MRI合成画像。
D)、強烈なHIF-1α(低酸素誘導性転写因子-1α)免疫反応性を示している抗HIF-1αで傷つけた最も高い64Cu-ATSMの取り込み組織の顕微鏡写真。×200
しかも「64Cu-ATSM」は、腫瘍低酸素環境に高集積する事が明らかになっており、低酸素環境下で治療抵抗性を有する腫瘍に対し、高い治療効果を発揮する。
尚、ベータ線は、一般に最大飛程がミリメートルオーダーで、PET検査などと同様、従来の放射性治療薬に使用される。
オージェ電子は、一般に最大飛程がナノメートルオーダーと更に短いため、薬剤の近傍(きんぼう→近い空間)に高いエネルギーを付与する事ができる。
今回始まった第1相臨床試験や今後行われる臨床試験で、「64Cu-ATSM」の安全性・有効性が示されれば、悪性脳腫瘍患者に対する新たな治療の選択肢を提供できる可能性がある、と研究グループは述べている。