厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会は8月29日、アステラス製薬株式会社(本社:東京都中央区日本橋)が、本年3月23日、 世界で初めて、日本で製造販売承認を申請していた、世界初のFLT3/AXL阻害剤の「再発または難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果とする「ゾスパタ錠40mg(一般名:ギルテリチニブフマル酸塩、開発コード:ASP2215)」について、新有効成分含有医薬品・希少疾病用医薬品・先駆け審査指定医薬品として、承認を了承した。
本剤は、「成人の再発/難治性FLT3(FMS-like tyrosine kinase 3)遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病」の治療薬として3月29日に、米国に於いても同様の対象疾患で、米国食品医薬品局(FDA)に製造販売承認申請を行っている。
今回、申請から5ヶ月余りで、日本で最初に迅速承認が了承された事で、9月下旬にも正式承認となる見通しである。
『白血病』は、進行の速さと癌化した細胞のタイプによって、「急性骨髄性白血病」、「急性リンパ性白血病」、「慢性骨髄性白血病」、「慢性リンパ性白血病」の4つに大きく分ける事が出来ます。
国内で罹患者が最も多いのは「急性骨髄性白血病」で、白血病全体の約6割を占め、成人の白血病では最も多いタイプです。
急性骨髄性白血病(AML=Acute Myeloid Leukemia)は、どの年齢層でも見られますが、時には、別の癌の治療で行った化学療法や放射線療法により、急性骨髄性白血病になる事があります。
急性骨髄性白血病は、加齢と共に患者数が増加し、国内では毎年約5500人が新たに急性骨髄性白血病と診断されています。そのうちFLT3遺伝子変異陽性の患者は約2100人で、そのうち再発または難治性は更に限定される希少疾病です。
急性骨髄性白血病では、骨髄で作られる未熟な白血球が、本来なら好中球→好塩基球→好酸球→単球に成長する細胞が、癌化し骨髄に蓄積して、短期間で正常な血球を作る細胞を破壊する事で発症します。
白血病細胞は血流に乗って他の臓器に運ばれ、頭痛、嘔吐、視力障害、聴力障害、顔の筋肉の異常(白血病性髄膜炎)を引き起こし、時に脳と脊髄を覆う組織(髄膜)に広がる事があります。
〔引用元:MSD(株)マニュアル家庭版:血液の病気/白血病/急性骨髄性白血病(AML、急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性骨髄球性白血病)より〕
急性骨髄性白血病の発症原因については、サブタイプの1つである「急性前骨髄性白血病」に於いて、前骨髄球(成熟した好中球へと成長する初期段階の細胞=分化能力が低下した骨髄球)が染色体変異を起こし、これらの未熟な細胞が蓄積される事ですが、異常となる起因の一因が遺伝子変異で、同定された遺伝子は、KIT、FLT3、NPM1、CEBPA、RAS、WT1、BAALC、ERG、MN1、DNMT、TET2、IDH、ASXL1、PTPN11、CBL及びAXLで、これらが複雑に絡み合って、腫瘍細胞の増殖、癌細胞DNAの分裂速度、薬剤耐性、非治療反応や再発に関わっている、と考えられています。
〔引用元:MSD(株)マニュアル家庭版:血液の病気/白血病/急性骨髄性白血病、2017米国医学図書館/国立衛生研究所 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5767295/〕
急性骨髄性白血病は、治療をしない場合、一般に診断後数週間から数カ月で死に至ります。
治療によって、20~40%の患者が再発せずに5年以上生存できます。
再発は、ほぼ必ず最初の治療から5年以内に起こるため、5年を過ぎても白血病が再発しない場合は治癒したと考えられます。
また、化学療法による治療効果が見られない場合や、寛解には至ったものの再発の可能性が高い(一般に、特定の染色体異常が認められている場合)と考えられる若い人では、化学療法薬の大量投与に続けて、幹細胞移植が行われますが、実施できない再発患者では治療の選択肢が限られてきます。
「ゾスパタ錠」は、癌細胞の増殖に関与する受容体型チロシンキナーゼ(細胞内シグナル伝達酵素の総称)であるFLT3及びAXL(癌細胞膜に発現)を阻害する事で、急性骨髄性白血病の患者の約33.3%で認められる活性化変異(=遺伝子内縦列重複変異(ITD:Internal Tandem Duplication)と、 チロシンキナーゼドメイン変異(TKD: Tyrosine Kinase Domain)FLT3を共に抑制し、癌細胞の増殖を阻止します。
〔急性骨髄性白血病 - 遺伝的変化及びその臨床予後 2017 Oct 1; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5767295/(米国医学図書館/国立衛生研究所)〕
「ゾスパタ錠40mg(ギルテリチニブ フマル酸塩)」が標的とするFLT3タンパク質は、第13番染色体q12.2に存在する遺伝子が作る、細胞表面のシグナルを細胞内部に伝達するタンパク質の一つです。
FLT3受容体型チロシンキナーゼは、信号形質導入と呼ばれるプロセスによって、細胞内部に細胞表面からの信号を送りますが、このFLT3遺伝子変異によって、未熟な白血球が増殖し、癌化する事で白血病を発症します。
〔全国バイオテクノロジー情報(米国医学図書館)センター/ゲノム情報装飾ページより〕
同剤は、腫瘍の増殖に関与するFLT3を介したシグナル伝達を阻害して、更に、AXLの介在による薬剤耐性を阻止する事で、腫瘍の増殖と逃避を抑制すると考えられている。
本剤は1日1回120mgを経口投与する。
FLT3を単独で阻害する薬剤は欧州で承認されているが、本剤のようにFLT3/AXLを同時に標的とした薬剤は、海外ではまだ承認されていない。
AXL遺伝子は、第19番染色体に存在する形質転換遺伝子で、近年の研究で、このAXLが作り出すタンパク質(酵素)が、ヒトの免疫細胞から癌細胞を逃避させ、抗がん剤に対する薬物耐性を促進させる因子として浮上し、予後不良の癌へと変化させる事が分かって来た。
〔引用元:腫瘍細胞の可塑性および治療抵抗性におけるAXL受容体チロシンキナーゼの役割<2017,腫瘍微小環境のバイオマーカーの研究:Davidsen、KjerstiT。 Haaland、Gry S。 Lie、Maria K。 Lorens、James B.(ISBN 978-3-319-39147-2)〕
AXL遺伝子が発するシグナルは、第一選択抗がん剤の特徴を記憶し、
再発時の癌細胞の治療抵抗性を生み出し
癌細胞の生存率と転移を増幅する役割を担っていると考えられている。
癌細胞のDNAを攻撃する事がこれまでの抗がん剤だったが、新たに
(同時に)AXLの働きを阻止する事で治療成績の向上が期待される。
AXLの活動増加は、肺癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、結腸癌、及び悪性黒色腫を含む多数の癌に関連しており、特に生存率の低い癌と強い相関がある事が示されている。
〔https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1501169/肺腺癌におけるAxlの発現および腫瘍進行との相関(PMC1501169:2005年12月7日==米国医学図書館/国立衛生研究所)〕
腫瘍微小環境で合図(シグナル発信)しているAXLは、複数のメカニズムによって腫瘍進行を進めます。
腫瘍と間質独房で合図しているAXLは、免疫抑制、ガン幹細胞表現型、治療に対する抵抗、増殖、上皮間葉転換(EMT)、転移とアポトーシスに対する抵抗を促進する事ができると考えられている。
〔米国国立医学図書館/テヘラン医科大学血液学及び腫瘍学、幹細胞研究 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5767295/〕
本剤は、「成人の再発/難治性FLT3(FMS-like tyrosine kinase 3)遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病」の治療薬として3月29日に、米国に於いても同様の対象疾患で、米国食品医薬品局(FDA)に製造販売承認申請を行っている。
今回、申請から5ヶ月余りで、日本で最初に迅速承認が了承された事で、9月下旬にも正式承認となる見通しである。
『白血病』は、進行の速さと癌化した細胞のタイプによって、「急性骨髄性白血病」、「急性リンパ性白血病」、「慢性骨髄性白血病」、「慢性リンパ性白血病」の4つに大きく分ける事が出来ます。
国内で罹患者が最も多いのは「急性骨髄性白血病」で、白血病全体の約6割を占め、成人の白血病では最も多いタイプです。
急性骨髄性白血病(AML=Acute Myeloid Leukemia)は、どの年齢層でも見られますが、時には、別の癌の治療で行った化学療法や放射線療法により、急性骨髄性白血病になる事があります。
急性骨髄性白血病は、加齢と共に患者数が増加し、国内では毎年約5500人が新たに急性骨髄性白血病と診断されています。そのうちFLT3遺伝子変異陽性の患者は約2100人で、そのうち再発または難治性は更に限定される希少疾病です。
急性骨髄性白血病では、骨髄で作られる未熟な白血球が、本来なら好中球→好塩基球→好酸球→単球に成長する細胞が、癌化し骨髄に蓄積して、短期間で正常な血球を作る細胞を破壊する事で発症します。
白血病細胞は血流に乗って他の臓器に運ばれ、頭痛、嘔吐、視力障害、聴力障害、顔の筋肉の異常(白血病性髄膜炎)を引き起こし、時に脳と脊髄を覆う組織(髄膜)に広がる事があります。
〔引用元:MSD(株)マニュアル家庭版:血液の病気/白血病/急性骨髄性白血病(AML、急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性骨髄球性白血病)より〕
急性骨髄性白血病の発症原因については、サブタイプの1つである「急性前骨髄性白血病」に於いて、前骨髄球(成熟した好中球へと成長する初期段階の細胞=分化能力が低下した骨髄球)が染色体変異を起こし、これらの未熟な細胞が蓄積される事ですが、異常となる起因の一因が遺伝子変異で、同定された遺伝子は、KIT、FLT3、NPM1、CEBPA、RAS、WT1、BAALC、ERG、MN1、DNMT、TET2、IDH、ASXL1、PTPN11、CBL及びAXLで、これらが複雑に絡み合って、腫瘍細胞の増殖、癌細胞DNAの分裂速度、薬剤耐性、非治療反応や再発に関わっている、と考えられています。
〔引用元:MSD(株)マニュアル家庭版:血液の病気/白血病/急性骨髄性白血病、2017米国医学図書館/国立衛生研究所 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5767295/〕
急性骨髄性白血病は、治療をしない場合、一般に診断後数週間から数カ月で死に至ります。
治療によって、20~40%の患者が再発せずに5年以上生存できます。
再発は、ほぼ必ず最初の治療から5年以内に起こるため、5年を過ぎても白血病が再発しない場合は治癒したと考えられます。
また、化学療法による治療効果が見られない場合や、寛解には至ったものの再発の可能性が高い(一般に、特定の染色体異常が認められている場合)と考えられる若い人では、化学療法薬の大量投与に続けて、幹細胞移植が行われますが、実施できない再発患者では治療の選択肢が限られてきます。
「ゾスパタ錠」は、癌細胞の増殖に関与する受容体型チロシンキナーゼ(細胞内シグナル伝達酵素の総称)であるFLT3及びAXL(癌細胞膜に発現)を阻害する事で、急性骨髄性白血病の患者の約33.3%で認められる活性化変異(=遺伝子内縦列重複変異(ITD:Internal Tandem Duplication)と、 チロシンキナーゼドメイン変異(TKD: Tyrosine Kinase Domain)FLT3を共に抑制し、癌細胞の増殖を阻止します。
〔急性骨髄性白血病 - 遺伝的変化及びその臨床予後 2017 Oct 1; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5767295/(米国医学図書館/国立衛生研究所)〕
「ゾスパタ錠40mg(ギルテリチニブ フマル酸塩)」が標的とするFLT3タンパク質は、第13番染色体q12.2に存在する遺伝子が作る、細胞表面のシグナルを細胞内部に伝達するタンパク質の一つです。
FLT3受容体型チロシンキナーゼは、信号形質導入と呼ばれるプロセスによって、細胞内部に細胞表面からの信号を送りますが、このFLT3遺伝子変異によって、未熟な白血球が増殖し、癌化する事で白血病を発症します。
〔全国バイオテクノロジー情報(米国医学図書館)センター/ゲノム情報装飾ページより〕
同剤は、腫瘍の増殖に関与するFLT3を介したシグナル伝達を阻害して、更に、AXLの介在による薬剤耐性を阻止する事で、腫瘍の増殖と逃避を抑制すると考えられている。
本剤は1日1回120mgを経口投与する。
FLT3を単独で阻害する薬剤は欧州で承認されているが、本剤のようにFLT3/AXLを同時に標的とした薬剤は、海外ではまだ承認されていない。
AXL遺伝子は、第19番染色体に存在する形質転換遺伝子で、近年の研究で、このAXLが作り出すタンパク質(酵素)が、ヒトの免疫細胞から癌細胞を逃避させ、抗がん剤に対する薬物耐性を促進させる因子として浮上し、予後不良の癌へと変化させる事が分かって来た。
〔引用元:腫瘍細胞の可塑性および治療抵抗性におけるAXL受容体チロシンキナーゼの役割<2017,腫瘍微小環境のバイオマーカーの研究:Davidsen、KjerstiT。 Haaland、Gry S。 Lie、Maria K。 Lorens、James B.(ISBN 978-3-319-39147-2)〕
AXL遺伝子が発するシグナルは、第一選択抗がん剤の特徴を記憶し、
再発時の癌細胞の治療抵抗性を生み出し
癌細胞の生存率と転移を増幅する役割を担っていると考えられている。
癌細胞のDNAを攻撃する事がこれまでの抗がん剤だったが、新たに
(同時に)AXLの働きを阻止する事で治療成績の向上が期待される。
AXLの活動増加は、肺癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、結腸癌、及び悪性黒色腫を含む多数の癌に関連しており、特に生存率の低い癌と強い相関がある事が示されている。
〔https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1501169/肺腺癌におけるAxlの発現および腫瘍進行との相関(PMC1501169:2005年12月7日==米国医学図書館/国立衛生研究所)〕
腫瘍微小環境で合図(シグナル発信)しているAXLは、複数のメカニズムによって腫瘍進行を進めます。
腫瘍と間質独房で合図しているAXLは、免疫抑制、ガン幹細胞表現型、治療に対する抵抗、増殖、上皮間葉転換(EMT)、転移とアポトーシスに対する抵抗を促進する事ができると考えられている。
〔米国国立医学図書館/テヘラン医科大学血液学及び腫瘍学、幹細胞研究 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5767295/〕