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国内初のステージIII非小細胞肺がん治療薬「イミフィンジ®点滴静注」が販売を開始

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アストラゼネカ株式会社(本社:大阪府大阪市北区)は8月29日、「切除不能な局所進行の非小細胞肺癌(NSCLC)における根治的化学放射線療法後の維持療法」を効能・効果とした『イミフィンジ®点滴静注120mg、同500mg(一般名:デュルバルマブ(遺伝子組換え)』の販売を開始したと発表しました。

「イミフィンジ®点滴静注」は、切除不能(手術適応外)な局所進行(ステージIII)非小細胞肺がん(NSCLC)に対する治療薬として承認された、国内初の抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体(抗PD-L1抗体/がん免疫療法薬)です。


非小細胞肺癌治療薬イミフィンジ点滴静注-デュルバルマブ
「切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法」剤
『イミフィンジ®点滴静注120mg、イミフィンジ®点滴静注500mg」
<切除不能な局所進行(ステージⅢ)非小細胞肺がん(NSCLC)に対する治療薬>




ステージIIIの非小細胞肺がん(別称=局所進行肺がんとも言う)は、癌の大きさや、局所浸潤、リンパ節転移の程度などによって、通常3つのステージ(ステージIIIA、IIIBおよびIIIC)に分類されます。

*癌が他の臓器に転移したステージIVとは区別されます。

ステージIIIの非小細胞肺がんの患者数は、日本国内では非小細胞肺がん全体の約20%を占めており、肺がん全体の年間死亡者数は7万7300人で、癌の中で第1位となっている。〔公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計’17」/2016年がん統計予測・国立がん研究センター〕

非小細胞肺癌のステージ3病気の治療方法
非小細胞肺癌ステージⅢ期治療法

ステージIIIは、局所コントロールと遠隔転移抑制によって根治が目標となる最後の病期です。
しかし、多くの場合が切除不能で、根治的化学放射線療法(根治的CRTとは=化学療法と放射線療法の併用)の適応となっていますが、根治的化学放射線療法を行っても、89%は病勢が進行、又は転移しており、5年生存率は15%と極めて低い。〔Aupérin A, et al 2010; 28(13):2181-90/全米バイオテクノロジー情報センター◇https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20351327〕

現在の標準治療は、根治的化学放射線療法(根治的CRT)後の無治療経過観察に留まることから、新たな治療方法や治療薬の登場が強く望まれていました。



非小細胞肺がんステージ3の臨床状態



アストラゼネカ株式会社によると「イミフィンジ®点滴静注」は、ステージIII非小細胞肺がん治療では、日本で最初の抗PD-L1抗体となる。

同じ抗PD-L1抗体薬で、がん免疫療法で非小細胞肺がんの適応を持つ「オプジーボ(小野薬品)」、「キイトルーダ(MSD)」、「テセントリク(中外製薬)」はいずれも、切除不能な進行・再発のケースを適応としているが、「イミフィンジ®点滴静注」は、局所進行の根治的化学放射線療法(CRT)後の維持療法と、他剤と適応が異なっている。




肺がん治療は、近年、がん免疫療法‥‥特に、非特異的免疫調節制御因子に抑制的に作用する『免疫チェックポイント阻害剤』の登場で、治療に大きな変化がもたらされました。

免疫チェックポイント阻害剤とは――

癌細胞が、体内の免疫システムにブレーキを掛けて逃れる為に、免疫細胞(T細胞やNK細胞など)に活動の抑止を働きかけるシグナルを送っていますが、このシグナル伝達を「薬剤」によって阻害し、免疫細胞の活動を活発化させ、癌細胞を消滅させる薬剤の事です。

標的となるシグナル伝達の発信元が、PD-1とPD-L1や、CTLA-4などの細胞表面に発現する抗原で、PD-1(プログラム細胞死1=Programmed cell Death-1)と、PD-L1(プログラム細胞死リガンド1=Programmed cell Death Ligand-1)、それにCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4)などのT細胞表面分子を介した経路を、選択的に阻害する事で、効果を発揮します。

従って、免疫療法と言っても、体内の免疫力をアップするのではなく、癌細胞が持つT細胞などから逃避する能力を奪う事で、体内の免疫細胞の働きを援護する薬剤を意味する。






根治的化学放射線療法後のイミフィンジ点滴静注の作用機序

「イミフィンジ®点滴静注(Durvalumab/Imfinzi®)」は、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)と同じようにPD-L1に結合し、PD-L1とその受容体であるPD-1の相互作用を阻害する、切除不能な局所進行非小細胞肺がん治療薬として承認された、ステージⅢの適応を有する国内初の抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体(抗PD-L1抗体)です。

「イミフィンジ®」は、PD-L1に結合し、その受容体であるPD-1と、更にCD80とCTLA-4の相互作用をも阻害する事で、癌細胞の免疫逃避機構を抑制し、T細胞の抗腫瘍免疫反応を増強します。


イミフィンジ点滴静注-デュルバルマブの作用機序





【製品概要】
【製品名】:イミフィンジ®点滴静注120mg、イミフィンジ®点滴静注500mg(Imfinzi®)
【一般名】:デュルバルマブ(Durvalumab=遺伝子組換え)
【効能・効果】:切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法
【用法・用量】:通常、成人にはデュルバルマブ(遺伝子組換え)として、1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で60分間以上かけて点滴静注する。但し、投与期間は12ヵ月間までとする。
【薬価】:
120mg1バイアル 112,938円
500mg1バイアル 458,750円




尚、「がん細胞が免疫にブレーキをかける」仕組みに働きかけ、解除するような『免疫チェックポイント阻害剤』は、一部の薬剤に限られ、他のチロシンキナーゼ阻害剤などとの併用療法が推奨されています。

また、治療効果が認められる癌の種類も今はまだ限られており、ほとんどの免疫療法(広義)は研究開発中です。
現在、効果が明らかにされ、診療ガイドラインに記載されて、標準治療となっている治療方法は、1,)体内の免疫(T細胞など)の活性化を持続する(=ブレーキが掛かるのを防ぐ)方法2,)体内の免疫を強める(アクセルを強める)方法の一部に限られます。





ペタしてね月ペタしてね鳥

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